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微アルコールビールが凄い (マーケティング、製法、利益)

最近、微アルコール飲料が流行っていますね。

アサヒ:BEERY
サッポロ:DRAFTY
など、各社微アルコールビールを出し始めました。

アサヒ 「BEERY」

私も何度も飲みましたが、ビールの味をしっかり残しつつ、あまり酔わないので、記事を執筆しながら飲んだりできて、うれしいです。

この微アルコールビールは、もはやビジネスのイノベーションともいうべき要素が含まれているので、それを解説いたします。

顧客に受ける理由

アサヒビールの統計によると、20~60代の人口約8千万人のうち半数は普段、酒を飲んでいない。特に20代、30代の若年層ほど低アルコール飲料を好む傾向があるようだ。

また、コロナ禍の巣ごもり需要で、飲酒の機会はさらに減っているが、そんな中、家事や趣味の合間に飲んでもらうことも想定している。

確かに、家でお酒を飲むときは、ビール1缶でも多すぎると感じるときがある。そんな時に、これまではアルコール5%の通常のビールか、ノンアルかの二択だったが、「微アル」という選択肢ができ、手に取る人が増えた。

まさに顧客の飲酒習慣の変化やコロナ禍に刺さった製品というわけである。

おいしい理由

ノンアルコールは、ビールと比べるとおいしいとは言い難い。「ビールを模した何か」であるが、決してビールを飲んだ満足感は得られない。

しかし、BEERYはそんな常識を覆すほどのおいしさと、そのおいしさを達成するための技術がある。

ノンアルコールビールは、ホップなどの原料や香料を混ぜて、ビールに近い味の飲料を作っている。もしくは、酵母の種類を変えたり、発酵を途中で止めたり、ビールとは異なる方法で発酵生産する。

一方で、微アルコールビールの作り方は、麦芽に酵母を加えて発酵させるところまではビールと同じ。
ビールはこの後、濾過するが、微アルコールビールは蒸留してアルコールだけを取り除いて濾過している。
この、アルコール除去の限界が0.5%なので、この濃度で販売している。
おそらく社内では、0%にするような技術も開発しようとしていたのだろうが、この濃度を逆に武器に使ってアルコールの満足感も出すことで、ノンアルコールビールよりもビールらしい味にできている。

ラベルでも製法をアピールしている。

利益が段違い

酒税は、ビール350 mLあたり70円である。これはビールという製品が他の酒に比べて高い理由である。

一方、BEERYはアルコール度数が0.5%なので清涼飲料水カテゴリである。
なので、酒税が掛からない。

なのに、ほとんど同じ値段で売っているのだ。
値段を比較してみた。

BEERY:350 mL, 24本 4,014円
一本当たり168円
スーパードライ:350 mL, 24本 4,258円
一本当たり177円

Amazonの価格より筆者計算

これは、ものすごいビジネスメリットがある。

ビールの酒税は記事を執筆時で、350 mLあたり70円であり、なんとビールの40%は税金である。
一方で、微アルコールビールは酒税が掛からないので、一本当たりの利益が60円も増えるのである。

参照記事を基に作成、原価を39円、流通マージンを50円で固定した。

一本当たりの利益が4倍もあるのであれば、それはめちゃくちゃ儲かります。これはノンアルコールビールにも言えることですが、ビールメーカーはビールを売るより、微アルコールビールを売る方が都合がいいのです。

まとめ

以上のように、微アルコールビールは、

①マーケティングの鋭い洞察
②製造技術の革新
③利益構造の革新

という3つの凄さが、ビジネスとしての魅力的な点です。

最後の利益に関しては、たくさん発信されて、顧客が知るところとなれば、もう少し微アルコールビールの値段が下がるかもしれません(笑)

まだ飲んだことのない方がいれば、ぜひ試してみてください。

今回は、趣向を変えて、ビジネス面の観点も含めさせて頂きました。

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