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かけ算の順序固定の弊害について論点整理

小学校算数の「かけ算の順序固定」の教育上の弊害を整理します。かけ算の順序強制が、いかにバカげているか、分かっていただきたいです。

かけ算の順序固定の問題とは、

「3つの箱に2個ずつ球があります。球は全部でいくつですか?」

のような問いの立式について、正誤の意見が対立する問題です。

数学上は「3×2」「2×3」のどちらでも当然正しいです。しかし、一部の教師は、「2×3」のみ正答、「3×2」は誤答として、順序を固定化を強制しています。

このようなデタラメを教えられた子どもに、教育上どのような弊害が生じうるか、3つの論点で考察します。

論点1:論理の普遍性・一貫性の欠如による混乱


「かけ算には、常に正しい順序があり、逆順は間違いである」という誤った認識が定着することが懸念されます。

「かけ算とは、必ず『1つ分の数 × いくつ分』で表されなければならない」

というウソ論理を繰り返し教えられることが背景にあります。

しかし、この論理が当てはまらない例は、世の中に無数に存在します。
例えば、

電力 = 電流 × 電圧 (または 電力 = 電圧 × 電流)

のような物理現象が良い例です。もちろんどちらの順序も正しいです。

また物理現象に限らず、事象の多くは「1つ分、いくつ分」という概念に適合しません。

例えば

「3つの箱のそれぞれに、赤・青の2色の球があります。球は全部でいくつですか?」

のような問題の場合、 
「2個 × 3箱」
という考え方もあれば、
「3個 × 2色」(赤3個+青3個だから)
という考え方も成立します。

つまり、どちらが「1つ分」でどちらが「いくつ分」と決められないし、決めることに意味がありません。このような例は挙げればキリがありません。

これに対して、掛け算順序強制派は、「順序が固定される場合と、されない場合がある」と強弁する人もいますが、論外です。

論点2:科学的真理を軽視する姿勢の問題

「かけ算の順序は問わない」という正統派の教師に混じって、「かけ算の順序は片方だけが正答」とする順序強制派の教師が存在すると、子どもはどう考えるでしょうか。

順序強制派の教師の言い分として、
「まだ教えてないから × (バツ)」
「オレが採点するテストでは × (バツ)」
などと子どもに説明するのでしょうか。

こんな教え方をされると、子どもが「科学的真理よりも、相手に忖度することが大事だ」という姿勢を身につける危険性があります。

こんな子どもが増えてしまって、日本の科学技術のレベルが維持できるのか疑問です。

論点3:中学生以上の学力への影響

子どもが混乱して現状が、中学生以上の数学の学力に悪影響を与えないのか気になるところです。

これについて、興味深い調査結果があります。

TIMSS 2015という国別の生徒の数学の学力を比較したレポートです:
http://timssandpirls.bc.edu/timss2015/international-results/wp-content/uploads/filebase/full%20pdfs/T15-International-Results-in-Mathematics.pdf

本資料のP.95を見ると、下図のように、8th Grade (中学2年)の日本の生徒の学力は、全世界で5位となっています。

TIMSS 2015 (P.95) より抜粋

一方で、本資料のP.103を見ると、下図のとおり、四則演算の可換性(かけ算の順序を逆にしても答えが同じか?など)を問う問題では、日本の成績は7位となっています。

TIMSS 2015 (P.103) より抜粋

つまり、日本の算数教育全体の中で、四則演算の可換性(かけ算の順序を含む)については、他の分野より成績が低く、相対的に教え方が悪い、と言えます。

本来なら、世界5位の潜在能力があるはずのところが、この問題では7位なのです。改善の余地が大きいはずです。

(補足すると、上記の四則演算の問題は、"Intermediate"レベルと問題に分類されています。このレベルの問題に限れば、P.95の図で日本は世界4位の成績となっています。にもかかわらず、この四則演算の問題に限れば 7位まで落ちているのです)

まとめ

かけ算の順序を固定する教え方の弊害として、「論理の普遍性・一貫性の欠如による混乱」「科学的真理を軽視する姿勢の問題」「中学生以上の学力への影響」という観点で整理しました。特に3点目について、調査結果を考慮すると少なくとも現状の算数教育のままでは問題があり、改善が求められる状況と考えます。

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