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香り創りは人間関係と同じ。

毎年、この季節に思い出す言葉がある。
その当時、マウイ島にいらした 錬金術師のJackさんの言葉だ。


Jackさんはとても繊細な香りの調合をされる方で、
その香りの中に、自然の栄枯盛衰が見えるような香りを作られる。


世界には心を動かす素晴らしいブレンドがたくさん存在して、
それぞれに世界が広がっている。
どんなブレンドをしたいか、と言われると、
植物の生命力を大切にしたものを創りたい。というのが私の目標である。


初めてJackさんの香りを手にした時、
どうしたらこんな香りが作れるのか。
どんな風に作っているのかを知りたくて、
次にお会いする時には、それを聞こうと思っていた。

だけれど、その質問をすることはなかった。
それはその質問をする前にこう仰ったからだ。



「私もみなさんと同じビギナーです。
  香りの調合は、人間関係と同じです。」


あぁ、方法を聞くのが愚問だと思った。
自分で、香りとの関係を築いて、
初めて創れるものなのだと思った。


植物を観察することが好きなんです。と彼は言った。
彼の暮らしの1つ1つもきっとそうなのだろうと簡単に想像できた。


エッセンシャルオイルを混ぜ合わせる。というのは、
思いの外、時間がかかる。
ブレンドの作業は、割と短時間ではあるのだけれど、
その後の香りの観察に時間がかかる。


混ぜ合わせることよりも、
香りを観察していくことの方がはるかに時間がかかって、
愛情や時間、忍耐を要すると私は感じている。


焦っても、慌てても、
時間を早めて、その変化を先回りして確認することができないから。


想像はつく。
きっとこんな風に香りは変化するんだろうなぁ、ということは、
経験と共に増えていくけれど、
知らない変化の方が圧倒的に多い。


ゆっくりと待つ時間
変化を眺める余裕
個性を楽しむこと。


香りの移り変わりを観察することは、
1つの言葉が広げる影響力を眺めることと似ている。


その時は何気なく聞き流していた言葉も、
時が経って、重みのある言葉だなとか、
図らずも、心の指針のようになっていることさえある。


言った本人は忘れているような言葉でさえ、
誰かの中に残っていることってたくさんある。


香りもそれと似ていて、
私が何気なく作った香りをものすごく大切なものとして
記憶してくださっていたり、感謝されたりする。


誰かにとっての何気ないものが、
誰かにとって大きなものとなり得る。
香りも同じ。


綺麗な言葉をたくさん並べられるより、
実感のこもった一言の方が雄弁だ。


香りも「いい香り」以上のエネルギーをもつものは、
本当に感動する。
 


香り作りは奥が深くて、何が正解かもわからないけれど、
「いい香り創り」を目標とするのではなく、
植物の神秘のチカラを掛け合わせて、
その融合の結果、美しい香りに出逢ってしまった!
そういう瞬間にたくさん出会いたい。
 


それには、植物の神秘のチカラ、
芳香がもつチカラと出会って、信じていくことなのだよね。


そう。
人間関係と同じ。
出会いから始まる。

出逢って、知り合って、わかり合って、
関係が構築され、信頼が深まっていく。


香りと絆を結べるように。
まずは、3年。
その関係が薄くても、途切れ途切れでも、
香りを自分のそばに置いておくことをオススメする。


3年経つ頃には、
グッと距離が近づいていて、
暮らしと人生のいい相棒となっているはず。


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