微睡みと君と
アラームの無機質な音が部屋に響く
寝ぼけ眼を擦り携帯を手に取る
6:00
はぁ、と欠伸ともため息ともつかない息を吐き出したら身体を起こし布団をたたみ顔を洗いに行く
朝
君が隣にいない朝なんて
考えられないと思っていたけれど
いつしか時は流れ
一人の朝に慣れてしまった
6:20
卵を一つフライパンにおとす
簡単に食べられるロールパンを二つ
牛乳を注いでそのままキッチンで食べる
忙しくてもご飯はテーブルで食べようね
そんな約束だって、先に破ったのは君じゃないか
6:40
髪の毛をセットして着替えも済ます
スーツを身に纏い
はぁ、と一息。
これはため息。
家の鍵を持って外に出る。
鍵を閉めたら今日もまた1日が始まる。
7:00
人が溢れる電車で会社に向かう
始業の1時間前に行くのは何故だろう
朝はやらなくていい仕事で溢れている
7:40
何故かそれを全て済ませてしまう
自分がやらなくても誰かがやってくれるのに
8:30
おはようございます
そんな掛け声とともにわたしの意識は薄れていく
ふらふらと流れゆく時間の中で
忘れていったものはなんだろう
それを考えていくうちに頭が痛くなってくる
君が与えてくれたその愛だって
時間が流れていくうちに
実体を持たずに消えていく
21:00
ガチャリという音を立てて
部屋の扉をあける
歩き疲れた靴を脱ぎ捨て
そのままベッドに倒れこむ
大きいんだよなぁ。
君がいたスペースの分が空いている
君と選んだ柔軟剤
その香りはいつきえたのだろう
君と選んだもの全て
そのままにして置いてある
カーテンも、お皿も、ベッドシーツも。
それを捨ててしまったら
一人になってしまうから
そんなことを考えていたら
微睡みの中から目を覚ます
3:48
頬を一筋の涙が伝う
手を放り投げたベッドの上は嫌に冷たい
はぁ。
きっとこれは深呼吸
目を瞑るとさっきより溢れてくる涙
嗚咽を堪えてもその苦しさは止まらなくて
こめかみの方に流れる涙は
つめたかった
なんで……
と呟いた言葉はどこにも響かずに分解する
そしてまた眠気が襲う
涙はいつしか枯れて
規則正しく呼吸する
微睡みの中に沈んでいく
毎日朝が来るように
何気ない日々は進んでいく
自分を殺して働く日々も
あの人と過ごしたあの時間も
同じ時間なのに何故こんなにも鮮明に覚えているのだろう
忘れていた方がいいのに
目が覚めたその時覚えてなければいいと願う
一生忘れないと思ったらあの時の幸せすら
思い出すたびに辛いだけで
6:00
無機質なアラームの音が部屋に響く
そうして今日もわたしは目覚める
一日の始まりに希望なんて抱かない
ただの1日の始まり
今日もまたあなたに出会えたら…とどこかで思いながら
fin.
洋梨2019/09/19
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