見出し画像

【夜よこノ窓は塗らないデ】七草にちか感想【シャニマス】

はじめに

 普段はnoteは読む専なのですが、先日実装された【夜よこノ窓は塗らないデ】七草にちかがあまりに良かったのでnoteでお気持ちを表明するオタクになりました。拙文でお恥ずかしい限りですが自分の備忘録としても残しておきます。

Screenshot 2022-06-12 at 17-41-06 アイドルマスター シャイニーカラーズ

第1話「昼昼昼姉昼」

 ここではシャニPとにちかの関係の再確認が行われます。シーズとしてのテーマとは別ににちか個人には「家族」というテーマが与えられています。最初のpSSRである【♡まっクろはムウサぎ♡】にて、シャニP含め周りの人間は彼女の「家族」にはなれないということが明言されています。この「家族になれない関係」がシャニPとにちかの間で描かれます。

Screenshot 2022-06-12 at 17-47-15 アイドルマスター シャイニーカラーズ

【♡まっクろはムウサぎ♡】「あた」より

 第1話はメイクスタッフとにちかの会話から始まります。メイクスタッフの「自分の両親ににちかの写真を見せたい」という発言にシャニPは反応してしまいます。父親と死別し、母親も入院中のにちかの境遇が脳裏に浮かび、彼女のことを気にかけますが、同時に自分は考えすぎなのだろうかと悩みます。シャニPはにちかの家族になれないという線引きをしている一方で、にちかを幸せにしたいと考えています。しかし家族でもないのにどこまでのことができるのか、それはプロデューサーとして、また他人としては越権行為なのではという葛藤が彼にはあるようです。

Screenshot 2022-06-12 at 17-03-48 アイドルマスター シャイニーカラーズ

 第1話の後半で保護者懇談会の話が出ます。はづきの予定を気にするにちか。シャニPははづき(=家族)の代わりはできないけどそれをサポートしたいと言います。

 実はこの懇談会、にちかの信頼度(Lv9)セリフにも出てきてそこではシャニPを懇談会に誘うにちかが描かれています。これはシャニPを父親と重ねているという描写でキャラクターの特徴を端的に伝えているとは思いますが、様々なコミュで描かれている彼女の内面はもっと複雑で、にちかがシャニPを懇談会に誘うということは実際には少し考えにくいようにも思えます。

第2話「昼白飯昼昼」

 第2話はファミレスでの食事シーン、にちかはすき焼き膳を頼みます。そんなにちかを見つめて(若干引かれる)シャニP。WING編では床や天井ばかりを見つめて、にちか自身と向き合ってこなかったシャニPは、彼女が優勝してもなお彼女個人のことがあまり分かっていないようでした。

Screenshot 2022-06-12 at 19-53-17 アイドルマスター シャイニーカラーズ

W.I.N.G.編プロデュースコミュ「そうだよ」より

しかし彼はその後「にちかを幸せにしたい」という自身の想いに気付きます。それからは彼女と向き合おうとしていることが伝わりますね。

Screenshot 2022-06-12 at 17-14-05 アイドルマスター シャイニーカラーズ

 そしてすき焼き鍋にご飯を投入するにちか。行儀が悪い自覚はあるようです。鍋にご飯を入れる行為は、ここでは単なるもったいない精神のように見えますが、後のコミュも踏まえるともう少し理由があるように思われます。

 ここで印象的なのは、シャニPの気にするなという発言に対して「他人だから気にする」とにちかが言っている点です。

Screenshot 2022-06-12 at 17-17-23 アイドルマスター シャイニーカラーズ

 シャニPがそうであるように、にちかもまた「家族ではない他人」という線引きを認識していることが分かります。感謝祭コミュにて共演者の芸人から「自分は共演者(=仕事上のつきあい)であって、お前の兄貴じゃない」と言われたように、にちか側にもこの線引きは提示されているんですよね。

Screenshot 2022-06-12 at 17-52-10 アイドルマスター シャイニーカラーズ

ファン感謝祭編プロデュースコミュ「コンコルディア」より

第3話「家夕夜族夜」

 漢字5文字の羅列なのにタイトルの情報量がすごい。(これまでの)昼や(その後の)夜の長さに対して夕が一瞬であること、夕から夜に移行する中で家族が引き裂かれてることが伝わる不穏なタイトルです。

 仕事終わりにスーパーのタイムセールに参加するにちかとシャニP。にちかの生活感あふれる描写と程よく振り回されるシャニPが描かれ、今までのすれ違いに比して二人が心通わせているように見える温かい時間です。しかしこの「夕」の時間はやはり一瞬で終わってしまいます。

 きっかけは一家族につき一つ限定のタマゴパックです。これをにちかはシャニPとにちかの二家族分で二つ買おうとしますが、シャニPにそれはルール違反じゃないかと止められます。

Screenshot 2022-06-12 at 17-20-44 アイドルマスター シャイニーカラーズ

 この生活感あふれる「一家族一つのタマゴパック」を二人の隔たりに用いる発想もすごいですよね。にちかは「シャニPは家族ではない他人である」と認識しています。それなのに「我々は一家族だからズルはいけない」と諭してくるシャニP。もちろんこの一家族というのが周りから見た便宜上の話というのはにちかも理解しているはずです。でも家族じゃない男が、家族だからダメだと自分に道徳を説いてくる。その「越権行為」が彼女を混乱させ、苛立たせます。

 シャニP自身もまた、自分の道理でにちかの価値観(稼いだお金を節約して大事に使うこと)に干渉したことを申し訳なく思っているようです。にちかのために別のタマゴパックを探しに行きたいと提案します。しかしこれも「プロデューサーの仕事」としては明らかに逸脱しており、苛立つにちかにムダな仕事だと一蹴されてしまいます。

 タイムセールという夕の温かい時間から一転して「家族の隔たり」が描かれ、二人に長い夜が訪れます。

第4話「夜夜夜夜夜」

 これもすごいタイトルですね。夜と言って想像するのは「静けさ」「孤独」「見えない暗闇」などでしょうか。

 レッスンで心身ともに疲弊するにちか、にちかの懇談会のために奔走するシャニPがそれぞれ描かれます。更にシャニPはにちかのためにレッスン室を訪れますが、これが余裕のないにちかの逆鱗に触れます。

Screenshot 2022-06-12 at 17-24-54 アイドルマスター シャイニーカラーズ

 シャニPに当たり散らすにちか。【♡まっクろはムウサぎ♡】で言及されたように、彼女は自分の行動が半ば八つ当たりなのも分かっています。そして余計に自分に苛立ってしまうのです。しかし彼女の言うことにも一理あって、それはやはり「仕事なら仕事をしていてくれ」ということです。

Screenshot 2022-06-12 at 17-27-48 アイドルマスター シャイニーカラーズ

 他人なら他人らしくいて欲しい。それなのに他人を越えた視線を向けてくるシャニPに、その想いにどうしていいか分からない自分に苛立つ訳です。

 シャニPもまた、自分は家族の代わりはできない、寄り添えないことを分かっています。二人の間には線が引かれており、絶対に越えられない隔たりがあります。でも彼はにちかに寄り添おうとする姿勢を変えません。寄り添えないのに寄り添おうとしている。それは線の外から「勝手に言ってるだけ」ですが彼はそれが正解になる日を信じているようです。

Screenshot 2022-06-12 at 17-31-00 アイドルマスター シャイニーカラーズ

 対するにちかは寄り添えないくせに寄り添うふりをするシャニPの「アピール」に困惑し腹が立ちます。

True end「夜夜夜窓夜」

 再びファミレスで食事する二人、今度はシャニPもにちかと同じすき焼き膳を頼みます。これはにちかに寄り添いたいシャニPの姿勢と現実を象徴しています。二人は同じものを食べていますが、同時にそれは別々の鍋です。彼らは家族のように一つの鍋を囲うことはできない他人なのです。

 にちかはメイクスタッフとの会話からシャニPが自分のために奔走していたことを知ります。それに対して彼女はそんなものはシャニPの「アピール」だと言う訳ですが、メイクスタッフに「あんなに必死に思って貰えるならアピールでもいい」と言われます。

Screenshot 2022-06-12 at 17-34-32 アイドルマスター シャイニーカラーズ

 そんな言葉を思い出してか、自身のすき焼きに関する思い出をシャニPに話し始めるにちか。七草家では鍋の〆にタマゴとご飯を入れ、その際に願い事を言っておまじないをかけていたそうです。

 その話を聞いて自身のすき焼き鍋にご飯を入れるシャニP。「にちかが大きい鍋ですき焼きを食べられますように」と願いを込めます。この願いは【♡まっクろはムウサぎ♡】のtrueとも重なりますね。

Screenshot 2022-06-12 at 19-45-16 アイドルマスター シャイニーカラーズ

【♡まっクろはムウサぎ♡】「家」より

 ビッグになって家族のための「家」を建てたいというにちか。その願いに添うようなおまじないをシャニPはかけます。大きい鍋ですき焼きを食べるというのは「家族とともにある」ということでもあります。その家族に当然シャニPは含まれません。でも「にちかが家族とともにあって欲しい」とシャニPは願うのです。彼女とは別々の、自身の鍋にご飯を入れながらおまじないをかけます。

Screenshot 2022-06-12 at 17-37-05 アイドルマスター シャイニーカラーズ

 この味を忘れないと言うシャニP。にちかとは別の鍋ですが、にちかの幸せを願った鍋を彼は忘れないと言います。他人という「外側」に居ながら彼女を幸せにするという彼の決意にも感じられます。そんなシャニPに対して、にちかはやはり困惑した表情を浮かべ、しかし最後に一瞬はにかんだような笑顔を見せます。

スクリーンショット 2022-06-12 174045

終わりに

 最後にpSSRタイトルの【夜よこノ窓は塗らないデ】について触れて終わります。窓は内から外を、外から内を眺めるもので、同時に内と外、家と外の世界を隔てる境界でもあります。シャニPがどんなににちかのことを想っても、寄り添おうとしてもそれは窓の外からでしかありません。でもそんな窓の外からのアピールでも、必死に想ってることは内から見ているにちかに伝わるはずです。家族のように家の中で寄り添うことはできないけれど、窓を隔てて、二人は視線を交わし手を重ね肩を寄せ合うこともできるかもしれません。窓は二人の隔たりであると同時に繋がりでもあります。この「窓」を失いたくないというのは当然シャニPの願いであり、またにちかの願いでもあるのでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?