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【ふラiとぅTHE】七草にちか 感想【シャニマス】



はじめに


 こんにちは。こちらは先日実装されたpSSR【ふラiとぅTHE】七草にちかの感想記事になります。コミュ内容のネタバレがありますので予めご承知おきください。
 本コミュはその実装時期から先日実装されたLanding Point編との関わりが深い内容となっています。また当カードはいわゆるマイコレであり、これまた先日発売されたソロ曲「フェアリー・ガール」とも関連しています。LP編や「フェアリー・ガール」にも触れつつコミュ内容を見ていきたいと思います。

Landing Point編について


 にちかLP編は、シーズとしての到達点を描くのと同時に、彼女の課題と現状を整理したコミュであると感じました。
 LP編でも引き続きにちかは(美琴を)追う者であり(ルカに)追われる者という焦燥感を抱いていました。もっとも283プロに加入した現在のルカがにちかを本当に追い立てているかと言われればそうでない可能性も高く、ルカの存在も含めバラエティなどで笑われ消費され忘れられることへの漠然とした焦りというニュアンスが強いのかもしれません(ステージではないものに時間を割くこと自体も彼女を焦らせます)。
 にちかは未だ焦燥感を抱いており、自分を追い込むことで足を痛める危険性を有しています。LP冒頭では彼女がシャニPの用意した靴をまだ履いていないことも説明されます。

Landing Point編第1話「まだ、どこにも」より


 しかし子供たちとのダンス教室やシャニPの言葉を通じてにちかは気づきを得ます。彼女の懸命さは子供たちに勇気を与える彼女自身の輝きです。また懸命さだけなく妥協せず高みを目指すシーズの崇高さをシャニPは評価します。にちかの自分を追い込む姿勢は彼女を傷つける恐れがありますが、シャニPはその姿勢自体を否定しません。代わりに彼女が傷つかないように見守り続けるのだと言います。

Landing Point編第5話「懸命さと、あと」より


 シャニPとにちかはお互いの姿勢を理解し、受け入れます。シーズはユニットワンマンライブを無事成功させますが、にちかはレッスン室に向かい次のステージを目指します。

Landing Point編ライブ後コミュより


 シーズのシナリオは斑鳩ルカの283プロ加入というイベントを挟み、ドラマチックに展開されました。反面、公式インタビューで触れられているようにこれは当初の想定通りの展開ではなかったため、シーズシナリオの焦点が不明瞭になるリスクもありました。にちかに関して言えば「斑鳩ルカとの対立」という焦点です。ルカの283プロ加入によりこの問題は有耶無耶になる可能性がありましたが、LP編で再定義されます。ルカは直接乗り越えるべき壁でこそなくなったかもしれませんが、にちかの焦燥感や自らを傷つけようとする姿勢は再度強調され、彼女の課題とされました。
 そして課題に対する進展もありました。シャニPはにちかが走り続けることを止めず、彼女を見守るという決意を伝えます。にちかもその決意を受け入れ、両者はともに前へ進んでいきます。
 LP編に続く【ふラiとぅTHE】では何が描かれるのでしょうか。前置きが長くなりましたが以下で内容を見ていきます。

第1話「まぁ、いいか」


 バラエティ番組に出演するにちかのシーンから始まります。仕事が無事終わり、共演者のお笑い芸人にもソロ曲についてにちからしく良い曲だと褒められます。しかし同時ににちかがバラエティ番組の仕事に対して疲弊していることがLP編に引き続き描写され、彼女を駆り立てる焦燥感も再度示されます。


 しかしLP編からの変化もあります。LP編冒頭ではバラエティを見守るシャニPの視線について、にちかは「どうでもいいけど」と返し彼の想いを受け取ろうとはしませんでした。対して本コミュではにちかはソロ曲を褒めるシャニPの言葉を素直に受け取り、また彼の差し入れを受け取ります。


 差し入れと言えば【泣けよ洗濯機】ですれ違いの象徴として使われていました。本話ではにちかにシャニPの想いを受け取る変化が生じています。LP編でお互いの姿勢について理解したことからの続きであり、また個人コミュで積み重ねてきたシャニPの献身に対して彼女が心を開きつつあるということの続きでもあります。

第2話「わかんない、から」


 空港で移動の合間に自分のソロ曲のポップを考えているにちか。ソロ曲のポップを自分で考えるというのは彼女のキャラクターを考えるといかにもありそうな企画です。ポップについて悩むにちかにシャニPは声をかけますが手伝えることはないと一蹴されます。
 しかし彼は続けて、にちかも見守りたいということを再度伝えます。にちかもその言葉は無下にせず彼女なりに受け止めているようです。ここはLP編の繰り返しで改めてシャニPの決意が示されます。


 そして空港で空を見上げるにちかのシーンになります。空に向かって進んでいく彼女の姿にみとれると同時にシャニPの中には複雑な感情があるようです。


 LP編でトレーナーからにちかの成長を寂しく思うのかと問われたシャニPは「寂しいと思うこと自体おこがましいと思ってるのかもしれない」と独白します。これはどういう感情でしょうか。
 自分の育てたアイドルが成長して自らの手を離れれば寂しく感じることもあるでしょうが、シャニPには自分がにちかを育てたという自負はないのだと思われます。もちろん彼はにちかの力になりたいと思っていますが、同時に充分に力になれてないという思いもあります。

Landing Point編第2話「みえて、きたって」より


 空港でまさに飛び立つ時を待っているにちかの姿を見て、シャニPは彼女の力になりたいという思いを改めて感じていたのかもしれません。

True End「のこりもの、でも」



 にちかの考えたポップをバイト先の先輩は「実力が出てない」とバッサリ切り捨てます。ポップを作るのが得意なにちかが自分のソロ曲のポップを作れないのは意味深いですが、端的に言えば自己評価が低いということなのでしょう。「フェアリー・ガール」はシーズの楽曲とは異なりにちか本来の人間性により近い内容となっているため、自己評価の低さから彼女は自分を魅力的に紹介するポップが作れません。自分の実力、自分の魅力に自信がないからこそ彼女はかつて八雲なみの靴を履いたのであり、自己評価の低さは現在の自分を追い込み走り続ける姿にも繋がっています。


 にちかの焦燥感に駆られて走り続ける姿勢について、トレーナーもこんなことを続けていたら壊れてしまうと警告します。にちかはレッスン室に入ってきたシャニPを見て、またがむしゃらな自分を止めに来たのだと思います。しかしシャニPはもうにちかを止めたりしません。シャニPはにちかを否定するのではなく、彼女を見守る決意を繰り返し伝えます。


 にちかはその言葉を受け止め、差し入れも受け取ります。全部は食べきれないと言ってシャニPに差し入れの残り物をあげるかたちでコミュが終わります。
 シャニPの想いが一方向のものではなく、にちかからも想いが返ってくる双方向のものであると分かります。この描写はにちかがシャニPに差し入れをして彼を仕事に送り出すLP編のラストとも重なりますね。

Landing Point編エンディング「その、せなかに」より

 
 【ふラiとぅTHE】で描かれた内容はLP編のリフレインが多いですが、同時にパンやスムージーの差し入れなど個人コミュからの連続性もあります。LP編での成長や二人の変化を個人コミュとして整理して落とし込んだ内容とも言えそうです。
 LP編および本コミュでの大きな変化と言えば「シャニPがにちかを止めなくなった」ことが挙げられます。WING編から度々彼女の練習を止めようとするシャニPが描かれましたが、現在の彼はにちかの走りを止めようとはしません。彼女は自らの足で走り始めており、シャニPはにちかの走りを見守ろうとします。
 LP編冒頭で、にちかはシャニPの用意した靴を未だ履いていないことが示されました。現在も彼女がその靴を履いているかどうかは明言されていません。しかし、自らの足で走るにちかを傷つかないように見守るシャニPという構図は、既に靴を履いている状態だとも言えそうです。シャニPの用意した靴はにちかが足を痛めないためのものであり、彼女はその思いやりを既に受け入れ始めているからです。
 にちかが靴を履き替えるという描写は二人の信頼関係の確立という一つのゴールであり、その直接のシーンは今後しかるべきタイミングで描かれるのかも知れません。しかし既ににちかはシャニPに守られながら自らの足で走り始めており、二人の信頼関係は大きく進展していることが分かります。
 もちろんにちかの問題がすべて解決したわけではありません。彼女は自己評価の低さが根底にあり、周りからみていつか壊れてしまいそうな無理な走りを続けています。しかしそんなにちかのそばにはシャニPがいて常に見守っています。そうであるならば、今回のイラストに象徴されるように、にちかが高く飛び立つ日はきっと目前なのでしょう。

おわりに



 最後にカードタイトルの【ふラiとぅTHE】について考えてみたいと思います。いつもの如くにちか語(?)表記になっているので分かりやすく【fly to the】と表記します。theの先に入るワードが消えていますが、そこには何が入るのでしょうか。
 まず真っ先に思いつくのが「sky」でしょう。イラストは空港でまさに飛び立つ前のにちかのシーンです。また「fly to the sky」は美琴のソロ曲である「Look up to the sky」とも対応している感じがあります。美琴のソロ曲では過去をも肯定し空を見上げて(夢に向かって)進んでいく前向きな決意が示されていました。にちかも妖精の羽で空に向かって飛んでいくのでしょうか。同じ「sky」を(暗示的に)重ねることでシーズの二人が同じ空を見ている、目標を共にしていることを示す狙いもあるかもしれません。

 しかし私は【fly to the】の後に入るワードの候補はもう一つあるのではないかと思っています。それは「moon」です。このコミュのどこにも月なんて出てこないじゃないかと思われるかもしれませんが、にちかにとって月は空以上のキーワードだと考えます。
 八雲なみの「そうだよ」では「今夜わたしをつれていく靴」「月までだって行けるわ」と歌われます。

W.I.N.G.編エンディング「そうだよ」より


 靴が私を月まで連れて行ってくれるということで、これはまさに「fly me to the moon」です。八雲なみの「そうだよ」は受動的で靴に支配された彼女の悲しいアイドル人生を暗喩しています。しかしにちかは「fly me to the moon」ではなく「fly to the moon」なのです。受け身ではなく、自らの足で彼女は月に飛び立ちます。このように【fly to the】は八雲なみの「fly me to the」と対比することでにちかが自らの靴で飛翔する様を表しているのかもしれません。

 コミュに出てこない月まで引っ張りだすのは少々強引な解釈にも見えますが、にちかのソロ曲コミュの表題【fly to the】の中に美琴のソロ曲、八雲なみのソロ曲(彼女はそもそもソロアイドルですが)の要素まで詰め込まれているのであれば、これ以上ない秀逸なタイトルだと思います。
 このタイトルの通りにちかが美琴と同じ「空」に、かつて憧れた「月」に、自分の靴で飛んでいけることを願っています。

ライブイベント「我儘なまま」より
「フェアリー・ガール」イメージイラスト

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