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【PMP×野球】#2:スコープ・マネジメント
「プロジェクトマネジメント」×「野球」
世の中には様々な”やるべき事”が溢れている。そのやるべき事を然るべき準備や手順(プロセス)で進めていく手法に”プロジェクトマネジメント”という概念がある。
あらゆる仕事に転用できるベースとなる概念・考え方だが、なんせとっつきにくくて分かりにくい。参考書を読んでもイメージもつきにくいし、頭に入ってこない。
そこでこのプロジェクトマネジメントを自分の大好きな”野球”というフィルターを通し、野球とのアナロジーを見い出しながら”プロジェクトマネジメント”を分解していく。野球というスポーツも、各自がそれぞれの準備や役割を正しく行う事で”試合に勝つ”というプロジェクトを遂行していると捉え置き換えれば少しは頭に入りやすいし、知識として定着するはずである。
苦手な食べ物を好きな食べ物と一緒に食べるように…
難解な用語を身近なものに置き換えることで覚えるように…
#2.プロジェクト・スコープ・マネジメント
<計画プロセス群>
2.1:スコープ・マネジメントの計画
2.2:要求事項の収集
2.3:スコープの定義
2.4:WBSの作成
<監視・コントロールプロセス群>
2.5:スコープの妥当性確認
2.6:スコープのコントロール
プロジェクトは有期性を持つ独自の個性を持ったユニークな存在。
それゆえにやりたいことや叶えたいことを無制限に実行することはできない。だからこそ、その叶えたいことがらには”範囲を決める事”が大切。
その範囲を決めるのがプロジェクトマネジメントのスコープマネジメント領域の各プロセスである。
野球の試合という”有機性”をもつ存在において、勝利を掴むというプロジェクトを成功させるには、試合中において自分たちのチームがすべきこと、してはいけないこと、そしてそれらの事柄の程度(スコープ)を決めておく必要がある。その決まりごとをコントロールするのは野球でいえば、扇の要であり、グラウンド内での監督と呼ばれる「キャッチャー」であるし、この役割こそスコープマネジメントそのものである。
2.1:スコープ・マネジメントの計画
このプロセスはプロジェクトやプロダクトがどのように定義されて、妥当性が確認されて、その内容をコントロールしていくのかを文書化した「スコープマネジメント計画書」を作成するプロセス。
ちゃんと文書化しておく事でプロジェクト実行中にスコープクリープを発生するリスクを軽減できる。プロジェクトマネジメント計画書の骨子となる各種プロセス計画書の中で唯一2つのマネジメント計画書をアウトプットする。
試合中の選手起用(特に投手の継投タイミングなど)を監督・コーチらと事前に話し合いをして”各投手ごとの許容範囲(スコープ)”をすり合わせしておくことが必要であり、お互いの要求事項も事前に把握しておくことが大切である。
<2.1:スコープ・マネジメントの計画(主なアウトプット)>
◎スコープ・マネジメント計画書
プロジェクトスコープをどのように定義し、作成し、監視し、コントロールし、妥当性を確認するか、その方法がここにまとめられる。
◎要求事項マネジメント計画書
要求事項の分析、文書化、マネジメントの方法を記述。
2.2:要求事項の収集
要求事項とはスポンサー、顧客、そのほかステークホルダーのニーズと期待を数量化し、文書化しておくことが大切。要求事項はWBSの基礎になる。
コスト、スケジュール、品質計画の策定及び調達は全て要求事項に基づいていることも重要なポイント。
プロ野球ともなれば数ヶ月にわたる長いシーズンを戦うことになる。すると捕手には”長期的な角度・視点”で見て、投手及びチーム全体を整えていく能力が必要だ。そこには主にケアすべき投手陣の育成(若手育成のために要求すること)もあれば、チーム全体の指揮をとる監督・コーチらマネジメントらの要求事項、さらには外側の球団オーナーの期待値など様々な”要求事項”が存在することになる。
キャッチャーは、それらの要求事項を整理整頓し、目の前にある”勝利を掴む”というプロジェクトを成功させるという重要な役割を担っている。
<2.2:要求事項の収集(主なアウトプット)>
◎要求事項文書
要求事項がプロジェクトのビジネス・ニーズをどうのように満たすのか?
ハイレベルな要求から始まり、情報が増えるにつれて”段階的詳細化”。
要求事項文書の構成要素には以下のものが含まれる。
ービジネス要求事項(ビジネス上の課題や好機やPJ採用理由など)
ーステークホルダー要求事項(ステークホルダーのニーズ)
ーソリューション要求事項(成果物に対する機能や特徴)
ー機能要求事項(プロダクトの振る舞い)
ー移管及び準備状況への要求事項(現在と比べあるべき姿への必要事項)
ープロジェクト要求事項(処置、プロセスなどその他条件事項)
ー品質要求事項(妥当性確認に必要な条件や基準を記載)
◎要求事項トレーサビリティ・マトリクス
要求事項の発生元と要求事項を満足させる成果物の結びつきを示したマトリクス図。「本当にその要求がビジネス的に価値があるのか?」を追跡し、確実に実現させることを手助けする。
2.3:スコープの定義
プロジェクト及びプロダクトに関する詳細な記述書を作成するプロセス。要求事項を成果物に反映させていくことは重要ではあるが、特定された要求事項をスコープの定義プロセスでふるいにかけて、詳細なプロジェクトスコープを記述してゆくことがプロジェクト成功の鍵になる。
捕手は”チームの頭脳”である。故に捕手は要求事項を整理するだけでなく、それらの要求事項を”試合に勝つためにはどうすれば良いか?”というフィルタにかけて試合でやるべきスコープに具体的に落とし込んでいく。
Ex.)各打者とどう勝負するのか?(またはしないのか)
投手に何を投げさせるのか?(または投げさせないようにするのか)
<2.3:スコープの定義(主なアウトプット)>
◎プロジェクト・スコープ記述書
プロジェクトの成果物とその成果物を作成するのに必要な作業範囲を詳細に記述するドキュメントを指す。プロジェクトにおける要求事項や追加作業において”境界線をはっきり”させる。特にスコープから除外される事柄も明記することが重要。記載される項目は「プロダクト・スコープ記述書」「成果物」「受入基準」「プロジェクトからの除外事項」など。
2.4:WBSの作成
プロジェクトを円滑に進めるためには「何をするのか?」を詳細に棚卸しをしてそれらを適切に管理していく必要がある。
そこで重要なのがWBS(Work Breakdown Structure)である。プロジェクトの作業をワークパッケージと呼ばれる単位まで小さく要素分解して扱いやすくして管理する。
司令塔でもある捕手は投手のみならずその試合の流れに応じて守備陣形やサインプレーの起点ともなる。そのためにもゲームプランに応じた”やるべきこと”を細かい単位まで詳細化(野手に対しても勝利につながるための必要なプレーを細かく分けておく)して、頭にインプットしておく必要がある。
<2.4:WBSの作成(主なアウトプット)>
◎スコープ・ベースライン(スコープ記述書/WBS/WBS辞書)
スコープ記述書とWBS、WBS辞書の3つをまとめて「スコープ・ベースライン」と呼ぶ。プロジェクトで生成する成果物が要求事項通り作り込まれているのか否かを判断する基準となる。
ローリング・ウェーブ計画法
現時点では上位レベルのWBSにとどめておき、成果物が明確になってきた段階で詳細なWBSを作成していく(段階的にWBSを詳細化していく)
ワーク・パッケージ
階層化された構造の最下位レベルのWBS要素のこと。
スケジュール、コスト見積り、監視、コントロールの対象となる。
2.5:スコープの妥当性確認
完成した成果物を”正式”に受け入れるプロセス。ここで作成された成果物が顧客やスポンサーにとって満足のいくような形で完成したことを確認する。
捕手は”投手の完成度”を最終的に判断する番人でもある。そう考えると、この「スコープの妥当性確認」プロセスがより捕手らしく見えてくるはずだ。
投手は、通常まずは投手コーチなどによってその”品質がコントロール(制球力やフォーム再現の正確性)”される。その後、捕手はその”投手の完成度(球速/球質、投球術、立ち居振る舞い、駆け引き、メンタルなど)”を網羅しているか最終チェックし、戦える投手か否か?を判断する。
投手は、捕手にとって最終的に試合で相手を制し、勝利というプロジェクトを成功に導くためのパートナーである。それゆえチームとして育成した投手が”最終的に戦えるか?”は捕手が決める、というイメージでこの「スコープの妥当性確認」プロセスを捉えると頭に残りやすい。
”スコープの妥当性確認”と”品質コントロール”の違い
☆スコープの妥当性確認
→ 成果物の受入が主要な関心ごと
☆品質のコントロール
→ 成果物に規定されている”品質要求事項”を満たしているかどうかが主要な関心ごと
<2.5:スコープの妥当性確認(主なアウトプット)>
◎受入済み成果物
受入基準を満たした納品成果物を認めるプロセス。【品質コントロール】では正確性を確認するが【スコープの妥当性確認】では完全性を確認し、正式に受け入れを行う。
2.6:スコープのコントロール
プロジェクト・スコープとプロダクト・スコープの状況を監視し、スコープ・ベースラインへの変更をマネジメントするプロセス。
【スコープ・クリープとは?】
スケジュール、コスト、及び資源を調整することなくプロダクトまたはプロジェクトのスコープを変更すること。つまりは「気づいたらスコープが広がっていた!」とか「知らないうちにコストが嵩んでしまってた・・・」という現象。
<2.6:スコープのコントロール(主なアウトプット)>
◎作業パフォーマンス情報
スコープ・ベースラインと比較して、プロジェクト・スコープがどのように進んでいるのかについて相関関係や背後関係の情報など。
◎変更要求
スコープのパフォーマンス分析結果によっては、「是正処置」「予防措置」「欠陥修正」などの要求が発生される。変更要求は統合マネジメント知識エリアの”統合変更要求プロセス”で検討・処理される。
”スコープマネジメント的”プレイヤー
スコープマネジメントというプロセスで非常に重要なのは”何をどこまで準備するのか?”また”様々な状況・要求に対してどういう手段や策を講じるのか?”という見通す力が非常に重要である。
その”見定める力”に加えて”準備力”を兼ね備えた存在をプレーヤーに置き換えるならば、現役選手では無いが古田敦也(元東京ヤクルトスワローズ)、谷繁元信(元中日ドラゴンズ)あたりを思い浮かべる。
二人とも扇の要としてそれぞれのチームで黄金時代を築きあげたレジェンドキャッチャーである。勝利を掴むということに対してのやるべき”スコープの設定力”は歴代捕手の中でも稀有な存在であると思う。
古田敦也(元東京ヤクルトスワローズ)
谷繁元信(元中日ドラゴンズ)
次回は「#3:スケジュール・マネジメント」
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