一生分かり合えないと思ってた父は、唯の一人の人間だった

 2020年5月に書いた下書きを今更投稿(書きかけ)

私には、少々険悪な関係の父親がいる。本当に嫌いだった。いや、現在進行形かも。

 私の父はとにかく怖くて理不尽で、被害妄想が激しい人だと思う。自分が強い。


怒ったときは癇癪をおこしたかのように激しく家の外にまで響渡る声で怒鳴る。怒る内容も自分の視点でしかものを見れていないような、相手の立場を一切考えていないんじゃないかと思うように怒る。とても理不尽だ。

 そして、ただ怖いだけならまだしも被害妄想が激しい。少しでも言葉に表す感謝をしなければ、「俺のことをバカにしている」母が弟に構っていると、「俺には何もしてくれない」「俺を避けている」などと言ってくる。1mmでも反論すると「お金を稼いでいる父親に対してなんという態度だ」父に言われるがままで何も言えなかった。暴力だってあった。DVと言えるほど日常茶飯事ではなかったではなかったけど、とにかく怖かった。

 私は父の怒る声がだんだんとトラウマになっていった。母を見下す発言の数々、弟が何もしていないと浴びせる怒号、私が何か少しでも間違ったことを言ったらまた怒られるんじゃないか、なぐられるんじゃないか。

 今でも父に言われた言葉を覚えている。「お前は心のないモンスターだ」「失望した」「頭がいいからって俺に勝ったと思ってるのか、人を馬鹿にするな」自分を否定されたような気がした。まだ心も成熟していないし、とても弱かった私はずっと、無意識にその言葉たちに囚われていた。

 次第に私の人生は父に何も言われないような、怒られないような人になることが目標になっていた。父よりもいい学歴につけば、もう何も言われないで済むのではないか、と思った。自分の意思ではなかった。

 そんなこんなで私は最低限しか父親と話さず、挨拶もせず、極力避ける生活を中学生の頃から始めてしまった。家で二人きりになるのが嫌で、母や兄弟が家にいないときは私も外にいるようになった。大学生になってからより加速して、疲れ切っているのに家に帰りたくなくて休めない、心も体も疲弊しきって、せっかく入った大学の勉強もほとんど聞かず単位を沢山落とし、暴走した行動を取ってしまっていたことも多々ある。今思うと後悔してもしきれない。


父は弱いだけだった。心が弱いから、強く見せようと、強くなろうとして今になったのだ。弱かったのに、誰にも弱さを見せられず拗らせてしまったのだ。

 確かに今までも、おそらく父はとても厳しく甘えられずに生きてきたんだろうなとか、きっと子供の頃にちゃんと子供として扱ってもらえなかったから今でも怒るポイントが子供っぽいんだろうな、とかなんとなく気づくことはあった。

 でも私には怖さ、恐れから父を理解することを避けていた。父を敵だと決めつけることで、相手のせいにすることである意味、安心していたのだと思う。私は酷い父親のもとで育ったから、多少精神的に弱いところがあっても仕方ない。考え方が歪んでいても仕方がない。辛いと弱音を吐いても、悪口ばかり言っても仕方がない。全部仕方がない。

私も父を決めつけ、父の弱さを想像することができなかった。言葉の奥を知ろうともしなかった。

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