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[WITH SEXY]――『私が愛したヴィジュアル系』

〈3026文字〉

今度は、地元インディーズバンドをということで、[WITH SEXY]を紹介します。
これは前の二バンドより、知っている人は、はるかに少ないはずです。
活動期間は長いながら、解散を迎える二年ほど前に、突如全国区に名乗りを上げ、最後はフィラメントが燃え尽きるように輝きを放ちながら消えてしまったバンドですから。

1996.07.07 Sg『UNTRUE』
1996.08.08 Sg『For Solitude』
1996.09.09 Sg『孤独の中で愛した君』
1996.10.10 Sg『少女の瞳で…』
1996.11.11 Sg『Dear…』
1997.11.11 Al『Couleurs』
2015.05.30 Al『Collection of LOVE INSANE』※過去のデモテープを収録

実は、私の地元福岡のバンドながら、この前に紹介した[ROUAGE]とも関係のあるバンドです。というのも、[ROUAGE]を脱退したメンバーがこのバンドに加入したことで、一躍脚光を浴びるようになったからです。
もちろん、それまでも地元では知名度のあるバンドでした。

私は専門用語を知らないので、ちゃんとしたことは何一つ言えませんが、このバンドは、哀愁漂うメロディと歌詞、それにそれを表現するvo.SYOさんの声音が素晴らしい。

メンバーチェンジこそしましたが、新体制でリリースした五ヶ月連続のシングルに関しては、すべて既存曲で、それらはほぼ、古参メンバーであるgt.鈴音さん作曲で、このコンビが最高ったらないです(ほら拙いでしょう)。
『全部いい曲、全部違って全部いい』のです(笑)。
それでも、このバンドを知らない方におすすめしたい一曲を挙げるなら
『For Solitude』です。

どうでもいい話ですが、当時はインディーズ商品を取り扱っている店が少なく、この五枚のシングルはすべて、親不孝通り沿いにあったエジソンという店で予約し購入したのを覚えています。
いかつい店構えのハードロックやメタルを基調としたような黒づくしの店でしたが、ヴィジュアル系のCDやVHS、他では見ない雑誌の『Switch』なんかも、店に入って右側や中央の平棚で取り扱ってくれていました。
左側が何だったかだけは、わからずじまいです(笑)。

一年後に発売されたフルアルバムも素晴らしい出来(インストなしで11曲入りは立派)ですが、やはり何度も練り上げて仕上げた、五ヶ月連続シングルの楽曲からすれば、あのアルバムは短期間で仕上げなければならない状況だったようで、磨き上げるという面では(それを私は遊び心的要素と解していますが)ほんの少し物足りない気がします(『December White Breath』はストレートに名曲です)。
真面目な人を悪く言ってはいけませんよね。そんな真面目なアルバムです。

歌詞は、やっぱりSYOさんの歌詞が好きですね。でも、どうか裏返しに受け取らないでくださいね。あくまで個人的な好みで、今回はメンバー全員が手掛けられた歌詞ももちろん素晴らしい。

最後にあと一つだけ言わせていただくとすれば、捨て曲なしの良い内容だけに、CDの装丁(裏ジャケットを付けるなど)に、もう少し力を入れてほしかったですね。せっかくのフルアルバムで、あの装丁はちょっともったいなかった気がします。ハンカチやポスターなどやたら多く特典を付けられていましたけど……。

ラストシングルとベストアルバムの発売も予定されていましたが、結局それらも出ずに解散してしまいました。

この場を借りて、あまり触れたくないですが、言わずにいられない体験談を――。
私はライブには行かない主義ですが、このバンドのライブには一度行ったことがあります。五ヶ月連続シングル後の、地元に錦を飾るという意味でのツアーラストワンマンで、昔ながらのVHSを配布するといったライブでした。
場所は、DRUM Be-1という博多駅そばの地下にあったライブハウスでした(今は移転しています)。
ライブ内容はともかく、あまりいい印象を持たなかったのは、VHSが完成せず配布されなかったことと、のちに発送するとのことで開演前に住所記載用の紙が配られたのですが、そのさい筆記具はもらえず、ペンを持たなかった私は、住所を記載し終えた後方の右手にある階段に陣取るカップルに、『ペンを貸してもらえませんか?』と尋ねたところ、『持ってない』と突っ返されたことに起因します。
終演後、鉛筆が配られ、記載することができました。が、それからいつまで経っても、届かない……。とあるヴィジュアル系専門店では、裏ルートで先にそれを三千円で売る始末。
『SEPIA』というビデオで、おぼろげながら、ライブ後のホテルでの一幕をハンディカムで撮ったようなものが収録されていた覚えがありますので、映像は見ているはずで、食指を伸ばしかけましたが、買うのを我慢した(きっと送られたはず)と信じたいですね。
当時はまだこのような無理が通用する時代でもあったのです。
話ついでにもう一つ、そのツアーラストワンマンで、配布されたフライヤー類の中に通信販売可能な商品として、当時入手困難だったデモテープ(『Eros』)の記載があったので、1500円+送料を所定の方法で送ったのですが、それもビデオ同様なしのつぶて……。
こちらは曲がりなりにもお金を払った商品だったので、事務所の本社のほうに連絡を取ってみるも、音沙汰なし。その後、偶然、その事務所に新潟支部があるのを発見し、申し訳なくも手紙で連絡を取ってみると、代金支払いの確認を求めることもなく、すぐに『Eros』を送ってくれたという経緯がありました。
間違っていたら申し訳ないですが、その新潟支部を受け持っておられたのが、[D'elsquel]の漾さんだったのではないかと思います。

解散ののち、vo.SYOさんは地元で['cause]というバンドを組みますが、それも楽曲は素晴らしかったと記憶しています(アダルトさを感じる楽曲だったように思います)。今は持っておりませんが、マツヤレディスかショッパーズのNOIZという店でアルバム『Six-nine [69]』を買いました。『replica(タイトルが違っていたらごめんなさい)』という真っ黒なケースに銀シールが貼られたシングルCDがあった気も。

惜しむらくは、録音環境の悪さでしょうか。音が小さくて聴きにくかった印象が残っています。
旧体制の[WITH SEXY]のデモテープでも音の悪い傾向はありました。
限定的でも『Collection of LOVE INSANE』のように、リマスタリングしていただけたものを、いつか再販してもらえると嬉しいですね。[WITH SEXY]だけ好きで、['cause]の存在をまったく知らなかったファンも、きっと喜ぶと思います。配布したプロモーションビデオもDVDでパッケージして。
私はそのうちの数本だけ見たことがありますが、港での演奏シーン後のオフショットで、モザイクのかかったその場に居合わせた酔っ払いのおじさんに、メンバーが絡まれていました(笑)。
でも、なにはともあれ、しっかり作ってあったように記憶しています。
確か『Vicious』という雑誌で、販売用に作っているといった記事があった気もしましたので。

今回は、やたら地元情報が跋扈ばっこして申し訳ありません(笑)

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