1――『懐かしき産声』
〈6500文字〉
「今日来てもらったのはほかでもない。わが社で、とある問題が出来してね。いや、相すまぬ。定例でもないのに、職長たちを集めて何事かと思われているものもいるようだ。伝えるべきものには伝えてあるのだが、ともかくここからは、進行役を篠栗君に任せるとしたい」
事務棟の二階にある会議室には、社長のほかに十名の主任役が席に着いていた。今朝九時、各部署に打診する形で伝えられ、正午前に招集された会議である。この場には『何用か?』と困惑しているものが、確かに半数ほどいた。遅く