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「Sparkle X」の「ラプソディ」を語りたい

5/29にリリースされた、THE YELLOW MONKEYの10枚目のアルバム「SparkleX」があまり良すぎて。(イエモン初心者にもおすすめの一枚です)
その中でも9曲目の「ラプソディ」
笑えて、泣けたので
あくまでも個人的な視点と妄想から、語りたい。語りたいのです。

「ラプソディ」は軽快なロックサウンドで、ポップなメロディ
童謡「クラリネット壊しちゃった」をモチーフに子供の視点を感じる言葉遊び「オパオパ」という楽しげでキャッチーなフレーズ、とにかくカワカワなんだけど、そこはイエモンさん、どこかしら性的なにおいがプンプンなナンバー。
聴いていくうちに
「あっ!キャワ童謡オマージュかと思ったらエロだ!これは!」
というスケベメタファーソングに早替わり(エローい!)。
「ラムレーズンを軽く噛むのさ」と言えば噛んでるものはラムレーズンに似た何かであるし、「はっけよい」って歌われても相撲してるとは思いません。イエモン節健在である。
でもここから、「ラプソディ」はある種いつものイエモン節のエロティックな言葉の二重構造を逆手にとって、順序良く三つ目のテーマを表面化させていく。これは結構珍しいケースかも。

“オパ オパ オパ オー
挟んでみてもダメダメ
唾垂らしてもダメダメ
オパ オパ オパ オパ”

童謡の「クラリネット壊しちゃった」「パオパオパオパー」
先程の「スケベメタファー」のフィルターを通して聴くと「オパオパ」はそりゃあもうおっぱい一直線。

”挟んでみてもダメダメ
唾垂らしてもダメダメ”

何を何で挟むんだ…?
垂れた…?唾が…?どこに…?
と卑猥な行為まっしぐらな心持ち。
こうなると「クラリネットとは…?」と、ある意味「イエモンを聞いてるなー!」としみじみ満足感がある。

でもここからラストのサビ(オパオパ)の前に突然、前置きなしに、こんな歌詞が挟まれる。

“喉にいるのは仏様とママが言ったの”
“男の子にしかいないんだよ あぐらかいてる”

吉井和哉というロックシンガーの現在までを共にした察しのいいファンなら歌の序盤で気付くかもしれないけど、
歌の展開上、リスナーは終盤で初めてクラリネットとは楽器であり、吉井さんにとってそれは「声」であり
「自分の喉が壊れてしまって声が出なくなちゃった歌」
というテーマ性を悟る。
童謡をモチーフにしたエロソング、に見せかけた「シンガー吉井和哉の喉の話」。おちゃらけスケベモードだったのに、ハッと、グッとさせられる。

それを踏まえてもう一度「ラプソディ」を聴くと色んな発見がある。

“挟んでみてもダメダメ
唾垂らしてもダメダメ”

鳴らない(勃たない、唆られないのような)クラリネットを性欲や性器に例えだったかのフレーズが、「喉頭がんという大病を患った喉の治療やリハビリの過程で行ったあれやこれや」に聞こてくる。
どんな治療やリハビリかは少しわからないけど、医療器具を使ったハードな治療だったり、時には嗚咽も伴うような検査があったかもしれない。
それでもロックシンガーとして一番の苦しみは、命よりも大切なその喉が、声が、快方に向かっているか自分では不明瞭なことだ。
声が出ることがその証明なのだけど、その声がでない、途方も無い日々。
(以前ブログに載せた、治療により患部が炎症した、目を背けたくなる首の写真などを思い出してました。)

その日々の中で吉井さんは、自らの喉に宿ってる「黙ってあぐらをかいて動かない仏様」に懇願するように、復活の日の奇跡を信じて続けていたのかなんて、勝手に考えしまう。

さらに大サビでは、今までポップに明るく安定していたコードから一瞬外れて

“あれこれ乗り越え 残るのはなんでしょう”

というフレーズが歌われる。
ずっと子供の視点のようだった歌詞から、ふっと外れて現れる、吉井和哉本人の人生の言葉がコードを変えて効果的に浮き出す。

「ラプソディ」は
もちろん童謡のオマージュとしてノリノリで楽しんでもよし。
童謡をモチーフにしたスケベ一直線の歌と聞いてもよし(みしてみして)。
スケベ歌の皮を被った「治療とリハビリとひたすら鳴ると信じるロックスターの歌」と捉えてもよしなロックナンバーだったのだ。

とにかくその苦悩と葛藤の日々をイエモン節のユニークさで明るく軽快にかっ飛ばしている「ラプソディ」に、笑って、泣けてしまうんです。


思えば吉井さんの歌声の魅力のひとつってば、やっぱり肉体性を感じるところだと思うから
クラリネットでもエロティックでも鳴らないというテーマは一貫しているような気がする。

「もう一回もう一回もう一回」と試行錯誤して声をだして、その度に枯れたり、全く出なくなったり
僕になんて想像できない絶望を味わったかもしれない。
今までの培ったもの背負ったもの全部取っ払われるような恐怖に怯えたりしたのかもしれない。

それでも「オパオパオパ」と繰り返し繰り返しチャレンジして、ある日「オパオパキャマラド」とクラリネットは鳴り始めていく。

“これはラプソディ!僕のラプソディ!”

パキャマラドって
「歩むのだ、仲間よ」
という意味なんだそうです。

復活の日にぴったりだ。

とにかくありがとう。
本当にありがとう。

これからも沢山お世話になります。

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