磁石による速度測定
ホール素子という半導体部品を使うと磁力を検出する事ができます。磁力の大きさに合わせて電圧が変化するアナログ素子になります。
他に,ホールICというものもあります。ホールICは,内部にホール素子と比較器があって,ディジタル出力される素子になります。S極検知型,N極検知型,両極検知型があります。
この素子と磁石を使うと回転数を検出する事ができる様になります。例えば電動機の回転軸に磁石を1つ取り付けて,ホールICは車両側に固定しておくと,磁石が通過した時だけ信号が変化するので,その信号をマイコン等で読み取れば単位時間当たりの回転数を計る事ができます。
さて,以上の方法により回転数は求められますが本当に必要なのは走行速度です。回転数と速度の関係を求めやすいのは,直径がわかっている(測定できる)車輪です。KATOの一般車の車輪直径はΦ5.6になります。すると円周は約17.6mmとなります。ここから速度を換算すると,1回転で約10km/hとなります。磁石1個では検出単位が荒くなりますね。
電動機の軸は車輪より回転数が多いです。動力台車にはウォームギアという減速歯車が使われているからですね。
電動機の回転数を低くしながら牽引力(トルク)を出すのが難しいのか,滑らかに走らせるのが難しいのか,理由は知りませんが,車輪の回転より電動機の回転の方が速いのは確かです。大体50倍ぐらいでしょうか。回転が速い方が速度を細かく検知する事ができるので,電動機の回転数を測定する方が都合が良さそうです。
実測
磁石を電動機の回転軸に貼り付けて,ホールICで検出できるかやってみました。磁石は磁力の強いネオジム磁石を使いました。ホールICは数年前に日本橋のシリコンハウスで買っていたU18 (UNISONIC TECHNOLOGIES)を使いました。
ひとまずの実験ですので,ネオジム磁石の固定はテープで行いました。そしてホールICを近づけて波形が取れるか確認しました。このホールICは極の変化で出力が変化するので,ネオジム磁石は180度の位置に極性を変えて合計2個配置しました。
この波形は,KATOのハイパーDXでダイヤルを4の位置にした時のものです。ホールICが電動機の回転に追従できるか心配でしたが,意外と反応が良くきれいな方形波を取得する事ができました。1回転で約10.7msです。1秒間当たりで約93回転,1分間当たりにすると約5607回転となります。結構な回転数ですね。これを利用すれば正確な速度を算出できそうです。
課題
今回の実験で問題点も見えてきました。
まず,ネオジム磁石は磁力が強すぎるという事です。動力ユニットのシャーシはダイキャストでできていますので磁石がくっつくのです。起動直後は磁力に引きずられて滑らかな回転ができていませんでした。おそらく走行には影響は出ないでしょうが,電動機の負担にはなりそうです。
また,上の写真の様な取り付け方をすると組立ができません。つまり,電動機の周辺には余分な空間がほとんどないのです。一方,最近のKATOのフライホイール搭載動力ユニットは,フライホイールの周辺に空きがあります。磁石を取り付ける場所と別の磁石を考える必要がありますね。
他には,電動機の回転数を測定すると,車輪の空転を検知できない事になります。複数の動力車を協調運転する際に問題となるかもしれません。まだまだ課題はいっぱい出てきそうですね。もう少し検討を続けてみます。
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