怖い話はあるもんで

10年ほど前の出来事である。
友人と車で田舎町を走っていた。
月の出てない初夏の頃、時間は23時くらいだったかと思う。
昼間さんざん車で走っていて、ふたりとも少し疲れていた。特にあてのないドライブなので、流石にちょっとどこかに停めて休憩しようか?という話をしていた。
もう真夜中に近いし、外灯が極端に少ない田舎道、そこでなんとなく余興で怖い話を二人で披露し合ったりしていた。
どれも大した話ではなかったのだが、真っ暗なこの田舎道ではなかなかの怖さだった。

少し空気もひんやりしてきたし、気味も悪くなってきたのでどちらともなく「もうこんな話止めよう」と言うことになった。

田舎というか山道だったのだが、民家もほとんどなく、人里へはまだかかりそうだった。

そして、深い渓谷にかかる橋を越えて、トンネルに入る瞬間、それは見えた。

人影だ。

僕は息を呑んだ。そしてどうせ見間違いだろう、そのはずだと冗談めかして「びっくりしたわ。おばけかと思ったら、」

「うん」

「おばけやったわ」

「あかんやん」

「いま、トンネルの前、人おったよな」

「みてへん…確かか?」

「はっきり見た」 

ここで、二人はトンネルを抜けて随分走っていたが、確かめない訳にはいかなくなった。気味が悪いし。戻って何もなければ良し、もしおばけがいたら…その時はその時、という話しになった。
狭い道だがなんとかUターンして、車はさっきのトンネルを抜けて問題の場所へ…

また見た。白い服を着た髪の長い女の人に見える。

思わず僕は声を上げ、友達は何故か加速した。怖かったんだろう。

随分走って友達は車を停めたが、僕が忘れよう、違う道で帰ろうと提案したが「あの道戻らないと家帰られへん」と友達は情けないように答えた。 

そして、しかたなく次は見ないようにと願いながらまた来た道を戻る。

僕はその場所が近づいてきて、そこを見ないように目を瞑った。

そして車は中々の急ブレーキで止まった。

結果だけ先に申し上げると、おばけは存在しなかった。その白い服の女の人は確かに存在していたのだ。

友達は恐る恐るその人に話しかけて、彼女が心の病気を患ってることを知った。僕らでは彼女と会話がうまくいきそうになかったので、取り合えず警察に連絡。数分後にパトカーが到着、発見の状況とか身分を明かして簡単なやり取りをして、僕らはお役御免となった。あとは警官に任そうと。

彼女はそれが家出だったのか、散歩してて道に迷ったのか、詳しいことは連絡なかったのでそんなところだろうが、事故に会わなくて本当に良かったと思う。本当に車も通らないし、あの渓谷はとても深かったし。

さて、それから数日後、その時のことを友達と「あれ怖かったこわかったよなー」て話していたが、

友達は少し迷って「俺、言わんかったけど、初めにみかけたん、男やってん。丸坊主の中学生くらいの」と言い出した。

後で聞かされるのが一番怖いってお話です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?