貧しさ(窮地)から生まれる、創造性について。
行き場のない、絶望と葛藤。
それは人生において誰もが一度は経験する感情だと思います。
生まれながらに貧困家庭で育ち、学校もろくに通えず、選べる道など存在しない。そんな環境から生まれたHIP HOPのカルチャーに触れたのは、渡米した1988年のことでした。
Rapper達の放つどこか悲哀に満ちたブルースに打ちのめされ、時には抗争にまで発展する路地裏のブレイクダンサー達の生き方にネイバーフッド(地元)という感覚を発見し、「塗り替える」精神性をアートで表現したグラフィティアートにアメリカを感じ、そして、古着屋になった20代の僕は、ターンテーブルのみで過去のビートをサンプリングしながら魔法のように音楽を創り出していくDJ達の文化にどっぷりとはまっていくわけです。
8 Mile
2002年に公開された、デトロイト出身のエミネムが主演する自伝映画『8 Mile』は、そんな80年代〜90年代のHIP HOP文化に染まった僕らにとっては、まさに伝説的なムービーとなって、エミネムは一気に世界規模のスターダムへと駆け上がります。
と、こういうストーリーです。
この映画の主題歌『8 Mile』の曲の一説にこんなリリックがあります。
そして伝説のイントロのセリフ
貧困と記憶、そして挑戦
自分ではどうにもできない幼年期の貧困と記憶は、やがて青年となった全ての者に「必ず人生に1回は大きなチャンスが来る」という事実を信じる希望を奪ってしまうことがあります。
もしくは、成功の定義(理想とする姿)が高い人は、次々に新たな挑戦を繰り返す”チャレンジ中毒”とも言えるような状態にあり、どれだけやっても自己肯定感を得られないという精神的な貧しさから永遠に抜け出せずにいるものです。
自暴自棄になって道を外してしまった方々もたくさん見てきました。一方で、苦しみを内なる燃料として燃やし、”成り上がって”いったエミネムのようなスターや芸術家を見るにつけ、果たして、貧しさというギリギリの状態から生まれるのは、なりふり構わない破壊的な自己主義か、もしくは爆発的な創造性か。そしてその二者択一をするのは、やはり最後には自分自身しかいないということです。
R&R Hall of Fameの舞台で、殿堂入りを果たした50歳になったエミネム。エミネムをステージに紹介したのは、彼の恩人とも言える存在Dr.Rre、そしてこれまでの30年間を振り返り、こう話しました。
ステージパフォーマンスを終えたエミネムは、歴々のラッパーの名前を読み上げた後に「高校中退の俺にとってはヒップホップが学校で、そして彼らが俺の先生だった」と。数々の逆境、闘争、葛藤を突き抜けて、世界No.1のラッパーという地位を築きあげてたどり着いたLove&Unityの境地に、強烈なヒップホップの精神を感じて胸が震えました。
さて、コロナによって困難を極めたこの3年間。さんざん打ちのめされた音楽業界、観光産業、飲食、そして苦しんだ全ての者達にとって、ようやく夜明けの時を迎えました。
チャンスは常に心を押しつぶすような不安や恐怖と共にやってくるもの。
「それでも君はやるのか?」という問いに対して、自分自身を突き動かすものはあるか。本物の創造性とは、貧困(逆境)の中からこそ生まれるものなのです。
HIP HOPな精神性を宿し、僕自身も何歳になっても枯れないハングリーな老狼でありたいと思います。
全ての挑戦者に勇気を!
If you had one shot , or one opportunity.
To seize everything you ever wanted in one moment.
Would you capture it, or just let it slip.
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