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醸造をベースとした、こだわりの調味料作り。海外進出も目指し、人材育成にも力を入れる。【フンドーキン醬油株式会社(後編)】

九州の醸造メーカーを中心に構成される「九州ビネガー会」。各社のものづくりへの思いを紹介するシリーズ『TSUNAGUレポート』の第3回。今回は大分県臼杵市のフンドーキン醬油。創業から161年、先端技術を取り入れながら数百年前の醤油・味噌の造り方にこだわり“九州トップブランド”を確立。近年では、ドレッシング、ぽん酢、青柚子こしょうなど人気商品を送り出しています。後半では、同社の本社工場長・伊東貞一さんに、調味料づくりにかける思いを伺いました。

主力商品の「カボスぽん酢」と「青柚子こしょう」

現在、フンドーキン醬油の本社工場は全63名(男性40、女性23名)、約140種の調味料を生産しています。月産は約60万本。先端技術を取り入れながら、長年の味噌・醤油の醸造物を扱った製法で培った、昔ながらの本物の味を追求していくのがフンドーキンのスタイルです。
 
製造している調味料は、大分が発信源の「カボスぽん酢」と「青柚子こしょう」が中心です。とにかく、いい原料を使っていきたい。素材の美味しさを生かすということが、本社工場でのモットーです。

「カボスぽん酢」は大分で元々、生のカボスを搾り醤油と混ぜて食べていたものを、家庭で手軽にそのまま使えるようにしたもの。臼杵は昔から新鮮なカボスの産地ですから。

柚子は、大分の日田の生産者さんと繋がりがあり、その年の木の状態を視察したり、管理者とのコミュニケーションは欠かせません。今年は豊作ではないが、例年より玉の大きさは大きいとか。細かくコミュニケーションしながら、品質を落とさず生産する。それは私が行っていることの一つです。こうした業を経て作られた「青柚子こしょう」は、今では九州で50%ぐらいのシェアを誇っています。


フンドーキンで味噌作りからキャリアをスタート

私がフンドーキン醬油に入社したのは、1981年。会社では醤油・味噌作りがメインで、当時も醤油は協業組合工場で生産が行われていました。私は味噌工場に配属され、袋詰め、梱包からのスタートでした。入社の年、会社は120周年を迎えた年にあたり、キャンペーンなどもあって大忙し。以降も工場はフル回転で、生産量もその頃1万トンを突破。九州では売上もNo.1になりました。

その後隣に専用の味噌工場ができたので、1983年頃からは酢の生産に携わりました。部署は変われど、今も一貫して思っているのは、味の良い、お客様に喜んでいただけるような商品を作りたいということ。今日作っても、明日作っても、味・香りとも安定して送り出す。それを追求したいんです。


「にら豚のたれ」「らっきょう酢」など“甘い調味料”が人気に

今注目いただいている商品が「にら豚のたれ」。リゅうきゅう、レモンステーキ、唐揚げなど、大分で愛されている地元グルメを見直そうという商品企画の動きの中に「にら豚」があったのです。
 
これはたっぷりのにら、キャベツ、豚バラ肉を炒め、甘辛い醤油ソースで仕上げた料理で、地元の中華料理店で話題になっていた一品。それを製品化したもので、先日全国放送のTVでも取り上げられ、一時的に生産が追いつかないほどの人気になりました。

また、「カボスぽん酢」「青柚子こしょう」と並ぶロングセラー商品が「らっきょう酢」。5~7月が旬のシーズン物ですが、九州、特に南部などではらっきょうを食べる文化が根強いんです。甘いお酢で、らっきょう以外にも南蛮酢など他の料理にも使えて便利なのが特徴です。
 
フンドーキン自体、醤油も味噌も「甘い」ものが売れているという傾向があって。「甘い=おいしい」というイメージで。「あまくておいしい醤油」などもヒット商品ですし、「ごま風味ぽん酢」は特に鹿児島をターゲットに、発売当時は爆発的に売れました。そこから火がついて、九州北部にも広がって。九州でははっきりした味が好まれる傾向があります。

2022年春から発売した「柚子こしょう薫る焼肉塩だれ」なども好調です。元々、焼肉のたれはありましたが今回、より風味豊かにリニューアル。常に味も良かったので、関東方面でも商談が進んでいます。また、この秋には鍋つゆの「キムチ味」を新発売しました。
 
ここ数年、フンドーキンの営業部隊が東京、大阪、名古屋で商談を頑張ってくれたおかげで、九州以外のエリアでの知名度、売上も上がってきています。これは当社がスポンサーをしていて、今盛り上っている日本女子ゴルフのトーナメント「フンドーキンレディース」などの影響もあるかもしれませんね。


今後、会社全体で海外販路の拡大を目指す

また、フンドーキン醬油は、海外展開にも力を入れていく予定です。2022年にマレーシアにも工場を設立。ハラール(イスラム教の戒律に沿った食品)認証をとり、現地での製造業販売も開始しました。
 
インバウンド向け商品の開発は、以前から行っていました。立命館アジア太平洋大学(APU)に在籍する、日本、韓国、インドネシア、スリランカなど6カ国の学生との共同開発したもので、その第1弾が「はちみつ醤油ハラール」。世界中の誰でも楽しめる甘口の醤油です。第2弾がドレッシング工場で作ったウェルサポシリーズの「フルーツドレッシング」です。
 
その他、これからも日本食が普及している東南アジアを中心に、新しい商品開発を行って、海外販路も広げていく予定です。


「6S」を徹底して、人材育成にも注力

工場では2022年から「6S」という制度を設けています。5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)の内の「清潔」を「洗浄・殺菌」に分けて実施しています。食品の会社は、殺菌、洗浄がとても大切。その検証を行ない、安全・安心に稼働させていくのが、いい商品を作る秘訣だと考えています。それも含めて従業員の教育を行わないと。

そして、従業員のみなさんの意見があれば聞くことが大切と思っています。 例えば、改善提案を出してもらえば、こういうやり方もあるのでは、というアドバイスしたり…。それが、逆に私にとっても勉強になるんです。

これからフンドーキン醬油が200周年を迎えるために、醸造で培ったものづくりの本質は変えずに、もっとお客様が笑顔になれる商品を作っていきたい。そして、今後海外展開も目指している中で、いい技術者も育てていければと考えています。
 
―後編 おわりー

(プロフィール)
伊東貞一 いとう ていいち
フンドーキン醬油株式会社 取締役 本社工場工場長。1962年生まれ。1981年フンドーキン醬油に入社。味噌工場で製造など学んだ後、1983年頃から酢の醸造・生産に従事。その後総務部・醤油工場・みそ工場を経て、本社工場工場長に就任。醸造技術の伝承・品質の向上に取り組んでいる。

●フンドーキン醬油㈱ホームページ
https://www.fundokin.co.jp/ フンドーキン 検索

●フンドーキン醬油株式会社 公式note
https://note.com/fundokinnews/

●公式インスタグラムhttps://www.instagram.com/fundokin_shoyu/