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カロリー?何それ、美味しいの?【オールカテゴリー部門応募作】

30を越えた頃から健康診断数値がやけに気になる。特に脂質代謝。コレステロールや中性脂肪。

「若いうちはね、正常値なのよ。変化が出るのは30以降。」

新卒入社した時、前に座っていた美魔女社員が、そう言ってたな。10年以上経った今、その言葉を私は噛みしめている。食べたい物を手にとっても、まず目がいくのは裏面。成分表示。カロリーは?糖質・脂質は?添加物は……?チェックしているうちに食欲は削がれ、たとえ口にしたところで一口目に感じるのは美味さうまさより罪悪感である。

・カニ味噌
・いくら
・サックサクポテト
・背油ラーメン
・とろ~りチーズカツ……

こってり濃厚でギルティなほど、より旨みを感じ私達を誘惑する。その背徳感がスパイスとなって、さらに虜に。彼氏がいるのに誘惑してくる、まさに小悪魔的存在だ。心の奥にある欲望を認識しつつも、意識してそれらから目を逸らす日々。

食べたいんだけどな~。だって食べたら、その瞬間から後悔がやってくるんだもの。私の好きなソレらが、特保(特定保健用食品)だったら良いのに……きっと私めちゃ健康になってるよ??

そんなことばかり考えてる私に、変化は突然訪れる。その日、デパートの北海道展のお土産として、評判高いシュークリームをもらったのだ。飛んで跳ねて喜びたいほど嬉しいのに、感情にモヤがかかった。

“いつから、こんなに食べることを素直に喜べなくなってしまったのだろう。”


一人自問自答している私は、近くから注がれるアツい視線に気付く。

2歳の娘だ。


まだ幼いからと、我が家では娘にそれまで極力甘い洋菓子を与えずにきた。しかし、有名店のシュークリームなんて、なかなか食べる機会はない。2歳の誕生日も過ぎたし、良い機会だと思った。そう思わせるほど、真っ直ぐな眼差しでシュークリームを見つめていたのである。


一口あげてみよう。



最初は恐る恐るシュークリームに顔を近づけた娘だったが、いきなり“これでもか”と、口を大きく広げ、パクっとかじりついたのである。そして、次の瞬間には感情を爆発させていた。まさに食べる喜びを全身で表現していたのだ。



その時の娘の表情に、私は頭をハンマーで思いっきり殴られたような衝撃を受ける。





どれどれ?コレは初めてだわ。


こんな美味しい物があるって何で今まで言わなかったの~!!


私は大事なことを忘れていたんじゃないか……。

健康に気を付けた食事はもちろん大切。カロリー過多も、油っこいものも、甘いものも摂りすぎは禁物だ。とはいえ、全てを永遠に我慢して緑黄色野菜や青魚だけ食べる生活は私には無理。考えが甘いと言われるかもしれないが、時には楽しみがあって良いじゃないか。要はバランスなのだ。


皮を一口あげたら、あまりにも良い表情をしたので、真ん中まで私が食べて、クリーム部分も一口あげることにした。渡してみたら想像以上のかぶりつき。

何コレ?うっまー!!

食べ物は人を幸せにする。そして、幸せそうに食べる姿もまた、家族を幸せにするのだ。


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