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西尾潤著「マルチの子」で考えさせられたことVol.2 N.T君の詭弁

会社の実態はなかったね

谷川岳作戦を決行した彼の精神状態は如何なるものだったのか。彼が脳内で眺め続けるK.T」に関する説明は全くなされず、“単なるプレイヤー”と濁された。

触れたくないタブーなのか、それとも知らないだけなのか。後に行政処分を受けた際の消費者庁の文書では、K.T個人に対する行政処分となっているよう。
L(会社名、イニシャル)ことK.T」と書かれていて、会社の実態はまるで無く、マルチのピラミッドの頂点はK.Tであると言うのが消費者庁の公式見解である。

傍から見れば高級マンションでも、いざ近寄ってエントランスをくぐればメッキに覆われた欠陥だらけの陳腐な構造物だったみたいな展開だ。N.Tの心情はそんな落差を味わったはず
資本主義社会の重要ツールである「お金」を次々に「投資」した結果、お金は消えながらも「夢」だけが増幅するという人間にとって最悪な状況に陥っていたのだ

そうすると、お金集めに奔走することになる。鉄道会社も辞め、“L”一本に身を捧げると谷川岳作戦の一年後に彼は話したが、後戻りが出来なくなった事が話の節々から感じられた。

嘘のロジックは必ず暴かれる
アムウェイのような実際に商品が存在する形態とは違い、「50万のEA作戦ツール」という無形商材極めて高リスク、ある意味でハイリターンの世界に挑む彼を応援する気には到底なれなかったが、彼を持ち上げる世界は決して小さくないと感じた。

あるYoutuberの動画を見て

あの六本木の会場にN.Tはいた

「マルチ撲滅」を全面に掲げて突撃を敢行する、あるYoutuberの動画を見てびっくりした。六本木のディスコ?のような会場で、“L”の祝賀会のようなものが行われている模様が投稿された。
その前、N.Tのマルチ色濃いめのInstagramのストーリーズで、「六本木」と題された映像が流れていたのを見ていた
Youtubeで流れたのはあくまで外の模様だが、ブランド「BALENCIAGA」の偽物を身にまとった人物が登場したり、N.Tと歳がそう変わらないであろう若者がタムロしている荒景が映し出され、再生数も相当回っていた。

“J”の崩壊で“L”も道連れに

K.Tに対する行政処分が下される前の動画だが、その動画を巡ってトラブルがあったようで、現在は視聴できなくなっている。
L”についてはFXに詳しい人々が注意喚起を呼びかけていたが、マルチ界では比較的新参者の立場であったせいか知名度が低かった事と規模もそこまで大きくなかった。

しかし、一昨年に22歳の女性が別の投資系マルチによる被害で亡くなられたことが報道され、事態は急展開したように思う。
そのマルチの名はイニシャル“J”で、シンガポールの男が創業者で「日本法人」の頭がT.Aという男。
高配当が獲られるという謳い文句で出資を集めるが、現実は配当の原資は入会者の出資金で、所謂自転車操業状態で「ポンジスキーム」と呼ばれる。
勿論会員は勧誘活動に勤しむ訳だが、その中で彼らは「勧誘のインセンティブ」に目が向いているが、実質上配当の原資をくれるカモを探している自覚があるのは何割いたのか

鍋やシャンプーといった現物商品がウリのアムウェイとは対をなし、無形商材の「物無しマルチ」に対する注意喚起の声が次第に大きくなっていった。

“J”のT.Aは2021年に逮捕。それより前には事実上の破綻状態に陥っていたと言われるが、T.Aの逮捕で完全に崩壊したと言える。
そして2023年夏、“Lを名乗るK.T”が活動停止の行政処分を受け、こちらも崩壊。

N.Tの現況

彼とは現在、連絡が取れなくなっている。
InstagramとX(旧Twitter)は相互フォローのままだが、こちらからのパスに返答はない。
金商法や特商法に関する質問でしどろもどろだった彼は、「もうやめよう。○○(私の名前)と話しても何もいいことはない。」と語り、その段階でかなり心が揺れていたのが分かる。同時に、実質私との最後の連絡となった

物無しマルチは心まで無くしていく
その恐ろしさが周知されつつも、未だに根絶されていかない。その課題に挑んでいくのは相当茨の道だと思った。

           N.T君編、一旦完結




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