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西尾潤著「マルチの子」で考えさせられたこと Vol.1 私の実体験から


徳間文庫・950円+税

友人N.T君へ

“谷川岳で星が見たい”で水上の奥地へ…

マルチって、やってる本人に誇りはないと思う。だけど一方で、本気になって取り組んでいるのも表情やトークで感じるのだ。

もうあれから2年が経過する。
友人のN.T君から勧められた50万円の「EA作成ツール」。専門学校から大手私鉄会社へ入った彼だったが、日本の歪んだ賃金構造が将来を不安にさせたのかもしれない

彼らが展開する“構想”は、同じツールで稼ぐ人達で1つの経済圏を作っていくというもの。ただ、彼らは泰明期を言い訳にして「人脈を増やす」といい、同年代に次々と勧誘しているようだ。

そんなにオススメなら50万貸してよ
そんなに儲かるなら親兄弟にも紹介してるの?
もう一度ゆっくり考えてみるよ
私が本音で訪ねたり発言した事は、後で調べるとほぼテンプレらしい。
50万なんてパッと出せるほど裕福じゃないから、どう用立てるのか尋ねれば、「借金しなよ」。因みに、高品質の謳い文句を話す彼らは絶対に貸さない
そして、心に湧き上がる商材への不信感を引っ込めながら「もうちょっと考える」と言えば、「今決心出来ないなら同じ。引き延ばす人ほどやらないから」と言う。

今思うと話せば話すほど商材から心が離れていくが、当時の自分は彼の言うことを若干信じてみたい気持ちがあった。
彼は一度目のZoomの後、こう言った。
谷川岳で星が見たい”

彼の見たかった“星”

車を運転して谷川連峰の麓、JR上越線の土合駅へ向けて走り始めた。
関越道の前橋ICがある場所は高崎市との境界付近。その近くのローソンで、彼本人の勧誘のウォーミングアップ、一度目とは違う「アドバイザー」とZoomを行った。

一度目で興味があるみたいな事を言ってしまったせいなのか、「次のミーティングは何時にする?」なんて感じで次の予定がトントン拍子で決まっていく。
恐らく彼は夢に浸かりきっていたはず。
何故なら、勧誘すればするほどランクが上がっていき、最初の「一人勧誘して5万円」から「固定給+下の成績に応じた手当のマネジメント、そして、雲の上の「アドバイザー」…。
マルチ商法の典型ピラミッド構造」だ。

ランク未獲得者は勿論のこと、ピラミッドの頂上から見下ろせば皆、末端。ランク名に酔いしれながら、利用されている立場をごまかして活動する。

そう言えば、彼のinstagramのフォロワーにトップのK.Tがいた。マルチ商法の仕組み上、末端は絶対に頂上に行けない。だからこそK.Tのことが“成功者”と輝いて見え、企業の搾取構造より悪質な形態へと自然に足を向ける。

“努力して認めてもらえれば、K.Tさんのようになれる…”
彼の視線は谷川岳の星では無く、マルチの星にあったのだ。

              Vol.2へつづく




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