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胸鎖乳突筋の解剖と機能を徹底解説! 〜学生・新人理学療法士、作業療法士のためのスキルアップガイド〜

こんにちは。理学療法士の内川です。今回は、首の運動や姿勢において重要な役割を果たす胸鎖乳突筋についてお話しします。

皆さんは胸鎖乳突筋のことをどのくらいご存じでしょうか。

頭と頸部を支える大きな筋肉の一つとして、ひねる、うなずく等の動作に主動作筋として働きます。また、呼吸補助筋としても働き、呼吸機能とのかかわりが深くあります。

私自身、以前は胸鎖乳突筋の重要性をさほど理解しておらず、呼吸器疾患患者様以外ではあまり着目していませんでした。しかし、頸部のアライメントや様々な疾患との繋がりを学ぶ中で、その重要性を再認識するようになりました。

胸鎖乳突筋が過緊張を起こすと、頸部の運動や呼吸の障害が出るだけでなく、頸部の前方突出なども生じます。さらに、これらの症状が相互に悪影響を及ぼし、悪循環に陥ることもあります。最近では、多くの患者様で胸鎖乳突筋の状態を評価するようになりました。

この記事では、皆さんと一緒に胸鎖乳突筋の重要性について学び、評価やアプローチ方法を具体的に解説していきます。

目次

  1. 胸鎖乳突筋の解剖と作用

  2. 胸鎖乳突筋の評価方法

  3. 胸鎖乳突筋に対するリハビリテーション

  4. 胸鎖乳突筋の機能不全と身体への影響

  5. 臨床ちょこっとメモ

  6. まとめ

  7. 参考文献

1. 胸鎖乳突筋の解剖と作用

起始と停止

起始:胸骨柄の上部と鎖骨の内側1/3

停止:側頭骨の乳様突起と後頭骨の上項線

神経支配

  • 副神経(第11脳神経)

  • 頚神経叢のC2およびC3

作用

  • 頭部を同側に側屈し、反対側に回旋させる

  • 両側が同時に働くと、頭部を前屈させる

  • 呼吸補助筋としても働き、胸郭を引き上げる

2. 胸鎖乳突筋の評価方法

触診

患者様が仰向けに寝た状態で、首を反対側に回旋させることで胸鎖乳突筋が浮き上がります。この状態で、指で筋肉の硬さや痛みの有無を確認します。

可動域テスト(ROM-T)

頭部回旋の可動域を測定します。

  • 基本軸:両側の肩峰を結ぶ線への垂直線

  • 移動軸:鼻梁と後頭結節を結ぶ線

  • 参考可動域:60°

  • 注意:腰掛け座位で行い、両肩甲帯が動かないように注意する

筋力テスト(MMT)

段階5.4の手順:

  1. 背臥位になる

  2. 左右どちらかで、最大回旋位を保持

  3. 左右の回旋位を保ったまま頭を持ち上げる

  4. 耳の上で抵抗をかける

判断基準:

  • 5:最大抵抗に対して正中位を保持できる

  • 4:中等度抵抗に対して正中位を保持できる

段階3の手順

  1. 背臥位になる

  2. 左右どちらかで、最大回旋位を保持

  3. 左右の回旋位を保ったまま頭を持ち上げる

判断基準:

  • 3:全可動域を動かせる

段階2.1.0の手順

  1. 背臥位になる

  2. 胸鎖乳突筋を触知しておく

  3. 正中位から左右へ向けて動かす

判断基準:

  • 2:可動域の一部を動かせる

  • 1:胸鎖乳突筋に筋収縮がある(動きはない)

  • 0:筋収縮がない

3. 胸鎖乳突筋に対するリハビリテーション

リラクゼーション方法

  1. 胸鎖乳突筋を摘むようにし、優しく揺らす

  2. 両手を胸骨(頸切痕)に押し当てて、胸骨を引き下げるようにしながら深呼吸を行う

4. 胸鎖乳突筋の機能不全と身体への影響

  • 長時間のデスクワークやスマートフォンの使用による不良姿勢(頭部前方位)によって胸鎖乳突筋の過緊張が引き起こされます。

  • 胸鎖乳突筋の過緊張が生じると、首や肩の姿勢が崩れやすくなり、頭痛、首の痛み、肩こりの原因となります。

  • 胸骨、鎖骨に付着をもつため、胸鎖乳突筋の過緊張が生じると胸郭の動きも低下してしまい、呼吸機能の低下にもつながります。

5. 臨床ちょこっとメモ

  • 胸鎖乳突筋は、頭部と首の動きに直接関与しているため、日常生活での姿勢や動作パターンの改善もリハビリテーションの一環として重要です。

  • 同一姿勢や長時間のデスクワークやスマートフォンの使用を避け、定期的に首のストレッチやエクササイズを取り入れることが予防につながります。

  • 肋骨の動きが狭小し、呼吸主動作筋である横隔膜の機能低下が起きることも、胸鎖乳突筋を代償的に働かせる要因になります。

6. まとめ

  1. 胸鎖乳突筋は頭部と頸部を支える重要な筋肉で、胸骨柄上部と鎖骨内側から側頭骨乳様突起と後頭骨上項線に付着します。主な作用は頭部の側屈、反対側への回旋、両側同時収縮での前屈です。また、呼吸補助筋としても機能し、胸郭の引き上げに関与します。

  2. 評価には触診、可動域テスト、筋力テストが用いられます。リハビリテーションでは、筋のリラクゼーション技法や姿勢改善、ストレッチングが重要です。特に、長時間の不良姿勢を避け、定期的に首のエクササイズを行うことが予防と治療に効果的です。

  3. 胸鎖乳突筋の過緊張は、不良姿勢(頭部前方位)や長時間のデスクワーク、スマートフォン使用などが原因となり、頭痛、首の痛み、肩こり、呼吸機能の低下を引き起こす可能性があります。また、胸郭の動きにも影響を与えるため、呼吸機能との関連も重要です。適切な評価とアプローチは、姿勢改善や痛みの軽減、呼吸機能の向上に貢献します。

今回記載したものは、あくまでも筋単体のことです。実際の治療においては、胸鎖乳突筋の周囲にいくつもの筋肉が存在しており、深さも考慮しなければなりません。周囲に何があるかイメージできていますか?不安な方は、ぜひ一緒に勉強しませんか?

【解剖が苦手な方限定】 実践!! 身体で学ぶ解剖学(筋肉編)

7. 参考文献

  • 基礎運動学第6版補訂

  • 脊柱理学療法マネジメント

  • 筋骨格系のキネシオロジー

  • 肩関節痛・頸部痛のリハビリテーション

  • 新徒手筋力検査法 原著第10版

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