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日本強化書:弱気の垢を落とそう!(1)

社長「で?その計画でホントに売上は増えるのか?」
社員「新たな挑戦なので芽が出るには数年の余裕をください。」
社長「そんな余裕が我が社にあるわけないだろう。」
社員「売り方や売り先も新しくするので初年度からは厳しいと思います。」
社長「それでは結果が出なければ進退を賭してもらおうか。」
社員「それは・・・」

この社員はペナルティを受けるようなことをしたのではありません。新製品を従来品の1.5倍の価格で売る提案をしただけです。細部にも一層こだわって質感を高め、機能もデザインも一新しました。

社長は90年代から30年間もこの会社を維持して守り抜いてきました。「良いものを安く売ることこそ、お客さまが当社の製品を選んでくれる唯一の道」だと信じてきました。付加価値を高めて利益を確保するにはコストカットしかない。従業員にも節約を徹底し、新規採用には外国人労働者を増やそうと考えていました。しかし、若手社員から利益率の高い新製品をつくりたいという提案があり、やらせてみることにしました。材質や生産工程を見直し、原価は従来品より5%安くできる見込みが立ちました。

こんな話し多そうですよね。何も中小企業じゃなくても大企業でもよくある姿です。

出典)厚生労働省令和4年版白書

価格競争に巻き込まれていると感じている企業の割合は日本が80%で中国を抜いて1位です。Every Day Low Price (EDLP)を謳うディスカウントストアは1960年代にドイツのALDIや米国のウォルマートが始め人気を博しました。日本では中内功が率いるダイエーが開始、イトーヨーカ堂やOKストアなども参入しました。バブル崩壊後のデフレ経済下では100円ショップも台頭しました。「良いものを、より安く」は美徳のようにもてはやされましたが、一方で食品偽装や誇大広告などの問題も生じ「利益なき繁忙」も社会問題となりました。それは食品などの生活必需品だけではなく耐久消費財などにも伝播していきました。こうして、8割の企業が低価格競争に巻き込まれる経済構造となってしまった訳です。

しかし上の図を見ると、発祥である米国はわずか36%で、ドイツでも60%です。この違いは何でしょうか?
つまり価格以外の競争力があることに他なりません。消費者が価格以外に反応して購買行動を起こす要因は、信頼感・ブランド力・自己満足・第一印象などいろいろあります。実際に「大根は10円でも安いものを買うのに、平気で800円のスイーツを食べてしまう」なんてことも良くあります。10円でも安いスイーツを選んで買うなんてことはしません。不思議ですね。
このように消費者は価格だけをみて買うわけではありません。しかし、前述の社長さんのように「例え、利益なき繁忙であっても、良い商品をより安く売るのだ」とまるで唯一神への信仰心のように信じている訳です。

この実態が「日本経済の未来をダメにする弱気の垢」なのです。
これは付加価値労働生産性を著しく引き下げます。そして増税メガネ首相のような移民政策論者が出てくるのです。
次回はそこを見ていきます。


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