正しく理解する:アラブ人は悪くない
アラブ人イスラム教徒がイスラエルに反発する理由
イスラエルが白人の国だから。
イスラエルが周囲のアラブ人を蔑視しているから。
アラブ人の同胞のパレスチナ人を攻撃しているから。
結局は、この3つに集約されます。
最初の白人への嫌悪ですが、アラブ人だけではなくアフリカでもかなり浸透しています。そこには「偽善の人道主義」があり、米国でも保守層は「woke」という言葉で偽善的人道主義を批判しています。
wokeはもともとは黒人指導者が黒人たちに「目を覚ませ、黒人にも人権がある」と語りかける言葉でしたが、今では「白人を中心に偽善的人道主義者が人種差別撤廃やLGBT差別撤廃などを本心とは裏腹に見せかけだけで行動する意識高い系の人たち」のことでこれを侮辱する用語として定着しました。
例えば、オードリーヘップバーンやダイアナ妃がアフリカの黒人を救済し援助したときは内なる本心からの行為であり感動的でした。
その後は、どうでしょうか? 数年前にスイスの人権保護団体の金髪美人のおねえさんが黒人の子供たちに囲まれて写真を自撮りし、SNSに投稿している姿が別のSNSに投稿されて世界中から非難を浴びました。「どう?こんなに可哀想な黒人の子供たちに施しをしているなんて。私って素敵でしょ!」という感じなのです。これはひとつの例ですが、このような話がゴマンとあります。アフリカの中には「もう白人の支援はまっぴらだ」という人たちもいます。
もともと、カナンの地に真のセム語族ユダヤ人が入植するならば、アラブ人と同種なので構わないでしょう。しかし、来たのは「ユダヤ人を称する白人」でした。
確かに、相手の立場に立って考えてみて、日本がその状況に置かれたら嫌でしょうね。例えば、東京のど真ん中に独立国家のようなC国の無法地帯ができたら。もっと言えば、日本人の伝統と精神性を象徴する京都がC国によって武力侵略されて占領されたら。と考えれば、パレスチナ人を含むアラブ人たちの心情を理解することができます。
さらに、イスラエルがアラブ人を蔑視していることも大きな理由で、これは実際にイスラエルは不法な攻撃を過去繰り返して領土を拡張してきました。
衝撃的なのは、2015年の出来事だったと思いますが「イスラエル兵がスポーツの射撃のようにパレスチナ人の子供の頭を撃ち抜く姿でした。しかも、ひとりではありません。何人もです。」パレスチナ側はデモの抗議行動を平和的にしていただけです。「子供たちの母親が気が狂ったように泣き叫んでしました。」さらに信じられないのが、イスラエルの女性閣僚が(名前は忘れましたが、モデルのような美人でした)兵士に向けて演説で行った言葉が衝撃でした。「蛇だけではなく、蛇たちの母親も殺しなさい!」。
中東系のテレビか何かの映像をSNSで拡散したものでした。当然、世界中から非難が殺到しました。しかし、この映像は当然日本のマスメディアでも米国のメディアでも報道されることはありませんでした。イスラエルは「イスラエル人こそがパレスチナ人のテロ行為による被害者である」とシオニストが作ったイメージを主張し、米国メディアも同調します。ユダヤ系報道機関からしか情報ソースを得ていない日本メディアもこのイスラエルの嘘に同調することになるのです。イスラエルがこのように残虐な方法を採用するのは、パレスチナ人の抵抗意識を削ぐために意識的に行われてきたという説を唱える識者も少なくありません。
このような侵略行為を続けて拡大してきたイスラエルの領土が以下の図です。この図の最新は1999年でちょっと古いですが、現在のパレスチナの領土はわずか8%にまで減ってしまっています。1967年時点のパレスチナ領土が25%ですから、そこから比較すると17%分だけイスラエルが不法占拠したことになります。その中では米系メディアで報道されないだけで前述のようなイスラエルによる残虐な行為が繰り返されてきたのだろうと推測します。
パレスチナ人は野蛮なのでしょうか?
独立かつ中立なシンクタンクPASSIA (The Palestinian Academic Society for the Study of International Affairs)が「反ユダヤ主義」について定義していますのでそこから引用します。
アラブ人のイスラム教徒は同じ聖書の民として異教徒のキリスト教でもユダヤ教でも結婚を許しており、それを理由に禁じることもない。イスラエルが世界の支援を取り付けるために口にする「反ユダヤ主義」という口実はイスラエルが作り出した口実にしか過ぎないことを言っています。
このようにアラブ人はもともと寛容な民族なのです。
それではテロ組織と呼ばれるハマスとは何なのでしょうか?
ハマスの正式名称はHarakat Al-Muqawamat Al-Islamiyya (The Islamic Resistance Movement)で「イスラム抵抗運動」の頭文字です。1987年にガザ地区で設立されました。
ハマスのイデオロギーとは?戦闘的、イスラム/パレスチナ民族主義者。 歴史的なパレスチナを、非イスラム教徒には決して引き渡すことができないイスラム信託の土地であると考えています(Militant, Islamic/Palestinian Nationalist; considers historic Palestine as Islamic trust land that can never be surrendered to non-Muslims)。
ハマスのビジョンとは。委任統治下のパレスチナ全土に対するシャリーア法に基づくパレスチナ国家の樹立(Establishment of a Palestinian state based on Sharia law over all of Mandatory Palestine.)。
ということです。確かに戦闘的ではありますが、他国を侵略する訳ではなく、祖国防衛のための抵抗運動(レジスタンス)であることを再認識する必要があります。ナチス・ドイツの侵略に対して、フランスやイタリアの国民が戦闘に参加して繰り広げた第二次世界大戦時の武装パルチザンのレジスタンス活動と何ら事情は変わりません。これにはオランダや東欧諸国の国民も参加しました。欧州ではナチス・ドイツが悪者で、なぜ中東ではイスラエルが正義になるのでしょうか?明らかにおかしいことが分かると思います。
ちなみにパレスチナ自治政府はPLOアラファト議長が起こした抵抗運動ですが、当時はやはりテロ扱いをされていました。FATAHといい正式名称はHarakat At-Tahrir Al-Watani Al-Filastini (The Palestinian National Liberation Movementパレスチナ人民解放運動)です。イデオロギーは中道世俗派のパレスチナ民族主義者で、ビジョンは「1967年の国境内にパレスチナの民主的・世俗的・多宗教国家を設立し東エルサレムを首都とする二国家解決策」とアラブ人特有の寛容性が発揮されています。
イランが支援することがそれほど危険か?
これはよく分かりません。アラブ人の同胞を支援することが危険なのでしょうか?米国はイランがテロ国家だからと言います。テロリズムの定義は難解で国ごとに微妙に違います。国連の定義も各国の違いに配慮して採択しているので明確さがありません。私の感覚ではイスラエルも十分テロ国家と言える気がします。昔のイランは古代ペルシアで、バビロン捕囚で捕まえたユダヤ人を解放してエルサレム神殿の再建を援助したほどです。
アラブ諸国は10月18日のOIC(イスラム協力機構)コミュケで1967年以降のイスラエルによる不法占拠を終わらせると宣言しています。これはアラブ人の総意と考えて間違いありません。
米国はイスラエルという国を失うことを最大の脅威としています。しかし、個人的には中東全域がアラブ人たちの地域になっても世界平和上は影響なんかないのでは?とも思います。
しかし、言えることは「これだけ寛容なアラブ人を怒らせたイスラエルと米国の罪は重い」ということです。
私は米国そのものを嫌いなわけではありません。しかし、この一連の情勢の中で「いよいよ米国の本格的な衰退が始まった」という感じをぬぐえないのです。中東シリーズはここで区切りをつけて「正しく理解する」シリーズは次は米国を見てみたいと思います。
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