CPAの予算をどう決めるか?

スタートアップは顧客がいません。
そのため、広告によって新規顧客の獲得活動をしないといけません。
この新規顧客の獲得にかかる広告費をCPAといいます。

では、CPAの予算をどのように決めたらいいでしょうか?
例えば、法人向けのSAASサービスであれば、1件30万円くらいかけて獲得してることが多いようです。
逆に、一般消費者向けの衣類などの低単価品であれば、CPA予算は低いはずです。

このCPAにいくらまで、かけてもいいのか?
という論点は、広告運用を開始する前に決めておくべき重要なポイントです。
一般的に広告の評価は、CPA○○円という形で表現しますが、
上限値CPAを設定しておくことで、上限値の○○%の広告費で獲得できている。といった形で表現ができます。
これによって、最後の一線のどのくらい手前で獲得できているか?
という観点から広告効果を評価できるようになります。

では、上限値CPAはどのように設定するのが正しいのでしょうか?
これは、商品や経営状態などによって異なると思いますが、
私は、リピートする可能性がある商品の場合は、得られる純利益の50%が、妥当と考えています。
例えば、200円で粗利益80円、その後その商品を提供するためのコストが20円かかって、100円の利益が手元に残る商品があったとします。
この場合は、CPAの上限値は50円となります。

なぜ、CPAの上限値は100円ではないのか?
上限値を100円に設定した方が、より多くの顧客を獲得できるのでは?
と思うかもしれませんが、
仮にCPA100に設定した場合、2つの点で問題が発生します。

1,バッファーがなくなりリスクへの対応ができなくなる
100円の広告費を使ってしまうと、利益は0円になります。そのため、内部留保ができない状態です。何らかの不測の事態が発生した時点でキャッシュがショートするリスクがあります。
従って、CPA上限値100円は危険性が高く採用すべきではありません。

2,そもそも成長しない
スタートアップには資金がありません。そのため、貯まった利益を再投資して次の成長サイクルへ繋げていくのが理想です。
仮に、外部の資金を使えない前提で考えると、100円の利益すべてを使って100円で新規顧客を獲得しても、全く利益は増えないことになります。
1回販売するために要した広告費は、すべて次の販売を獲得するために消えてなくなる。ということです。リピートが見込める商品でなければ、売り上げは右肩上がりになりません。

このような理由から、上限CPAは、低ければ低いほどよい。
そして、低ければ低いほど、直観に反する結果ですが、「成長します」。

この点、具体的に数字で考えてみます。
純利益の50%をCPA上限値として計算してみます。
純利益が100円の場合、CPA上限値は50円です。
この100円を全額広告投資すると、2件の注文を獲得できます。
そして、この2件の注文から、200円の利益が発生します。
次の投資サイクルでは200円の広告費を投資することで、4件の注文を獲得できます。
この要領で、12回転させると102400円になります。
ちなみに、上限値が33%の場合は、12回転後は5904900円になります。
(市場規模が無限かつ、供給も無限。という前提にはなりますが、、)

では、次に考慮するのは、
上限値CPAは顧客の生涯価値(LTV)をベースに計算するべきか?
という点です。
リピートが見込める商品の場合、LTVが大きくなります。
そのため、LTV全体から得られる利益をもとに、CPAも計算するべきか検討する必要があります。

この点、私は初回注文の利益をベースに計算すべきと考えています。
理由は、2つあります。

1,リピート注文から得られる利益は獲得まで時間がかかる
当たり前の話ですが、リピートから得られる利益は、リピート注文が発生した後に獲得できます。そのため、利益を獲得するまで時間がかかります。
しかし、広告費は初回注文時点で発生します。
この広告費を、リピート注文から得られる将来の利益を見越して、先払いするわけです。
そのため、なんらかの資金ファイナンスが必要になります。
リピートするだろう顧客数をベースに資金を供給してくれる人は、VCか高利貸しくらいなので、資金調達という新たに厄介な課題を産むことになります。
このように、LTVから得られる利益をベースにCPAを計算すると、不確定要素を増やすことになるため、避けたいわけです。
ここから、初回注文のみに着目して、ここから広告費を回収するモデルが理想と言えます。
(*サプリなどLTVを意識せざるを得ない商材もありますが、特有のリスクがあることは認識しないといけません。)

2,そもそもリピートするとは限らない
リピートを期待されている商品でも、予定通りリピートするとは限りません。仮に、予定通りリピートしなかった場合、事業システムは破綻します。
また、スタートアップは、顧客数が少なく「平均的なリピート率」が統計学的に算出できるだけのデータの数が不足している場合があります。
この点からも、リピートを前提にCPAを計算することが、現実的にできない。という問題があります。

以上のことから
単価が高く粗利益が大きい商品を販売すべきで、
単価が安くてリピート前提の商品はやるべきではない。
という方針が見えてきます。

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