《オークの弓使い》について

2023年5月31日、EDH緑単界隈に衝撃が走った。

終わりの始まり

《オークの弓使い》公開。これを境にEDHは明確にその性質を変えた。クリーチャーを唱える時は常に《オークの弓使い》に怯える必要があり、クリーチャーを主体とするデッキは戦う術を失った。

緑単はある程度の幅はあれど、クリーチャーを主体とした戦略が主である。これまで「単色なりにどうすれば戦えるのか」を模索してきたデッキが唐突に最期の時を迎えたのだ。

本記事では緑単愛好家の視点から、EDHにおける《オークの弓使い》について考察したい。

cEDHにおける緑単と《オークの弓使い》

競技的な統率者戦(cEDH)において、緑単は独自の立ち位置を築いてきた。

クリーチャーを主体としていることによる打ち消し耐性を頼りに、cEDHで一般的な非クリーチャーを主体とした戦略とは軸をズラしつつ、質の高いクリーチャーで盤面に圧力をかける。これは緑単の縛りであり強みでもあった。

誰が言ったか「EDHの最弱色は白」。白は《イーオスのレインジャー長》《エスパーの歩哨》《ディープ・ノームの地形術師》《オグマの文書管理人》といった一線級のカードを手に入れた。《沈黙》や《堂々たる撤廃者》といったカードも現代のEDHにおいて強みを発揮できる。

一方の緑単は何を得たのか。強力ながらもあくまでも受け身のカードである《忍耐》、ほぼ緑単専用カードである《アロサウルス飼い》や《野生の魂、アシャヤ》。幅広く活躍するのは《耐え抜くもの、母聖樹》くらいだろうか。白と比べるとカードパワー・採用率に大きな差がある。

それでも自分を始めとした「緑単愛好家」たちが緑単を使い続けた理由の1つは、前述した理由による「対策されづらさ」があった。

これが《オークの弓使い》の登場で大きく様相を変える。

環境を定義する《織り手のティムナ》

cEDHを定義するカードは《むかつき》でも《タッサの信託者》でもなく《織り手のティムナ》である。異論のある人もいるだろうが、少なくとも自分はそう捉えてcEDHをプレイしている。

共闘というシステムの強固さ、ドロー条件の緩さ、近代MtGのカードパワーの上昇に伴うドローの重要性の向上。さまざまな要素がティムナの地位を確固たるものにしている。

他人のドローを条件に火力を飛ばす《オークの弓使い》はティムナ対策としてこれ以上ない。ETBの火力+オーク動員によるブロックでティムナを落とせることが確定しているうえに、その後のドローでも逐一誘発してライフにも盤面にも圧力をかけられる。

当然ティムナ側が使っても申し分ない。本体とオーク動員によって2体のアタッカーを確保できるうえに、誘発によるダメージで攻撃を通すための露払いまでこなす。あれ、ちょっと強すぎないか……?

ティムナ同士がやりあってくれるなら問題ない。元々緑単はそういった環境で戦うことを志向してきた。問題は「ティムナ同士のやり取りにまきこまれて緑単の盤面が壊滅する」ことである。

正直緑単は「生かしておいても卓のためにならない」。これは頻繁に言われることだし、緑単ユーザーとしても否定しづらいところである。他者への妨害という形で協調することはできず、ある程度ターンが経った段階で妨害不可能な勝ち筋を叩きつけるいわば「時限装置」として扱われることが多い。ティムナは生かしておけば他者への妨害を引き込むが、緑単が引き込むのは主に自らの勝ち筋である。それぞれのタフネスの差もあり、「緑単のマナクリーチャーを焼く」という行動には一定の合理性がある。

緑単は強力なドロー手段を有するデッキである。それゆえに自らのドローによって火力が飛んでくるのは理解できる。それは自分で対策すべきだ。ところが実際にはティムナ同士の戦いによって緑単のクリーチャーが焼かれるのである。

こうした事情によってティムナ環境における《オークの弓使い》の登場は、cEDHの緑単を壊滅させ得る。

カジュアルにおける《オークの弓使い》

筆者自身があまりカジュアルEDHの知見がないため、少なからず想像が混ざることをご容赦いただきたい。

《船殻破り》が禁止されたことは記憶に新しい。禁止当時のCommander Rules Committeeによる宣言を以下に引用する。

Its ostensible defensive use against extra card draw has been dwarfed by offensively combining it with mass-draw effects to easily strip players hands while accelerating the controller. That play pattern isn’t something we want prevalent in casual play (see the Leovold ban), and we have seen a lot of evidence that it is too tempting even there, as it combines with wheels and other popular casual staples.

https://mtgcommander.net/index.php/2021/07/12/july-2021-update/

ざっくりと要約すると「他の人のドローをとがめるフリしつつ、7ドローとかと合わせて他の人の手札空にするのに使ってるよね?それってカジュアルでやってほしくないんだよね」だろうか。競技的な場面よりもカジュアルでの扱われ方を重視した文面である。

当時のカジュアル卓で《船殻破り》が猛威をふるったのであれば、現代のカジュアル卓でも《オークの弓使い》が同じように暴れまわるのではなかろうか。ドローをとがめるという名目で、小粒なエルフが焼き払われる未来もあるかもしれない。

それが現実のものとなるかどうかは未知数だが、こうした前例を考えると馬鹿げた話とは言えないだろう。Commander Rules Committeeがカジュアルにおける立ち位置を材料に禁止改訂を行っているという説を信じるのであれば、《オークの弓使い》が禁止されることも十分に考えられるだろう。

というかカジュアルでも大暴れしてくれた方がとっとと禁止になってくれて嬉しい。

もっとも《船殻破り》ですら発売から禁止までに8カ月ほどかかっている。直近での禁止に期待するのはやや難しいかもしれない。

結論

だれかたすけて

サポートしていただけたら書籍の購入代かアルコールになります。