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家事労働は飲食店労働者の労働量の20~35%程度(自家消費を抜くとその半分)

「逃げ恥」のスペシャルに絡んで「女性の主婦の食事作りはunpaidなのに、男性の料理はpaidである」という話がまたされていた。これは、20世紀のフェミニズムにおいてよく議論されていた話である。ただ、これに関してはかなり直球の答えがある。

飲食店の労働量

飲食店業界は過当競争気味で長時間労働で有名であり、個人経営でもチェーンでも仕込み、料理、皿洗い、掃除など全部含めると10~12時間労働になることはザラにある。その上かなりの肉体労働で、10人分や100人分といった大鍋を扱うこともザラにあり、筋力もいるし腱鞘炎になる人も多い。それで人並みの所得である。

主婦の場合はどうだろうか。平成23年社会生活基本調査では、主婦の1日の平均家事時間は179分、うち51%が料理である。オイシックス、カルビー、カジタクの3社の共同調査では、主婦の1日の平均家事時間は175分でそのうち料理が61%に当たる。家族全員分を3食(概ね12食を想像すればよい)作って1時間半と言ったところで、1人平均で50~100人の顧客を回す(客単価と人件費率からこの程度ないと営業できないことは簡単に計算できるだろう)飲食店の10~20%程度ということになり、労働時間が飲食店の1~2割であることと整合性が取れていると言えるだろう。これに料理以外の家事時間を差し戻すと、主婦の家事労働量は飲食店労働者の労働量の20~35%程度である、と言える。

家事労働の金銭的計算

家事――そのうち料理がなぜunpaidなのかと言えば、paidされるほどの労働量ではないからで、女性が料理のpaid workをしていないのは長時間かつ体力のいる労働なので参入する人が少ないからだ、と言うあたりではないだろうか(育児だけは別で、特に3歳までは保育士の配置基準を見ても間違いなく1人前の労働量である)。

「主婦の労働をパートに充てたら?」という計算をすると、(年4か月分のボーナスが入るという"調整"込みで)育児込みで年収367万円、育児を抜くと200万円程度に落ち着く。さらに、このうち半分(夫婦2人のうち1人分、および子供の扶養義務の半分)は税務上の自家消費としてみなせるので、まじめに金銭的計算をすればさらにその半分になる。市場的にも、家事代行サービスでも単身者向けサービスで週1~2で来てくれればよいなら交通費・間接経費込みで月5万円程度で済んでしまう。

また、これも良く上げられる問題として、シンガポールの外国人メイドが主婦+ベビーシッターの仕事を月6~10万で引き受けていることや、欧州で異文化交流制度(オペア)を利用して外国人女性に非常に安く家事をやらせる例を考えると、働く女性自身がunpaid workをあまり評価していないというのも事実ではある。

資格を取ろう!子育てによるキャリア中断とその後のキャリア

paid/unpaid workはかなりの所職業的労働者との比較が出来てしまうため、これにこだわるよりは、主たる家計支持者が男性だけでなく女性であるべきだとか、各ライフステージにおける働き方、スキル維持などの話をしたほうが実際的ではないかと思う。子育て中にケアワークが必須である一方で、キャリア中断のペナルティは相応に重いからである。私も「主夫」という存在をプロモートする立場であるからその点は気にしており、個人的にはキャリア中断に強い資格取得を勧めている(女性大黒柱論では、士業や電気・機械・建設などの国家資格を持つ配偶者を勧めているし、主婦希望の女性にもそのような資格を検討するよう勧めている)。

なお、社会生活基本調査の内訳を詳しく見ていくと、主婦の1日のスケジュールを見ると、共働き家庭や子育て中の主婦では家事時間は1日2~3時間といったところだが、なぜか子育てが終わってから家事時間が倍増し、1日に3時間ほどかけて料理をし、掃除洗濯にそれぞれ1日1時間をかけるようになる。子育てが終わると時間を持て余して家事時間が増えつづけ、それでも1日6時間もするとやり尽くす、というあたりが実際の所ではないかと思う。

そういった状態に備え、あらかじめ資格を取っておいて復帰の準備を進める、というのがよいのではなかろうか。


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