なぜイタリアであれほど新型ウイルスが蔓延しているのか

新型コロナウイルス感染症COVID-19についての情報をお求めの方は、厚生労働省の情報ページか専門家の情報をフォローしてください。私は専門家を紹介する立場にはありませんが、例えば以下の方などが穏当かと思います。
・押谷 仁(東北大学
・高山義浩(huffpost記事一覧
・岸田直樹(@kiccy7777
筆者は医療や行政法の専門家ではありません。単なる素人の感想なので医療情報としての信頼は置かないでください。本文でも伝聞調で「ようだ」が多用されていますが、それだけ信頼性がないということです。基本的に自分が納得するためだけに書いたものであり、他者を納得させるために書いたものではありません。


イタリアや欧州ではあれほど爆発的に感染者数が増えているのはなぜか?それに比べて日本はなぜ感染者が増えていないのか?イタリアは封鎖までして、日本はノーガードなのに……日本が検査していないからではないのか?という声がある。

これに対する私の推測は、イタリアでは「患者1号」が発見されたときにはすでに日本の4倍以上流行しており、周辺国にもどんどん漏れていたが、欧州各国は全然検査しておらず気が付いていなかった。蔓延している状況を後から検査で追認しているので急に感染者が増えているように見える、というものである。この説明を少し行う。


2月中旬には日本よりずっと流行していたらしい

日本で感染者の伸びが低いように見えるのは、日本が検査していないからだという説がある。日本の検査体制が信用できないならば、外国に日本人を検査してもらえば疑義は解決するだろう。そこで、日本からの出国後に感染が確認された数を見てみよう。

イタリアでの「患者1号」の発見後の期間、2月下旬の日本からの帰国者・出国者の感染者は1週間で台湾1名タイ一家3名日本人1名であり、その後ハンガリーで疑い例を検査したが全員陰性であった。この時点で日本は初期流行中と見なされていたので、比較的厳格な検査体制が敷かれていたはずである。

一方、イタリアでの患者確認後各国はイタリアからの帰国者・出国者に検査を行うようになり、その後の約1週間のイタリアからの帰国者・出国者の感染確認状況をwikipediaの項目で確認すると、80~100名程度の感染例があり、欧州、中南米、北アフリカを中心に20か国超の初感染確認者がイタリアからの帰国者だったことが確認できる。また、Wikipedia記載例の中で特に出国日がわかっているものを出国日別に並べると以下のようになる。

イタリア出国後に感染が確認された例(出国日順)
2/8 台湾
2/15頃 スイス(25検査、ミラノ滞在)
2/17 アルジェリア(25検査)
2/20【患者1号確認】
2/21【+16人 コドーニョ封鎖】台湾(28検査)
2/22 ルーマニア(26検査) メキシコ(28検査)
2/23 フィンランド(26検査) イスラエル(27検査) 露(27検査)

患者1号が発見され、即座にその周辺の街を封鎖したとして、それ以前に出国した帰国者から患者がボロボロ見つかるなんてことがあり得るだろうか?答えはノーだろう。患者1号の発見時点ですでに流行していたと考えるのが妥当である。2/8のイタリア旅行台湾帰国者はおそらくイタリアでもらってきたのだろうし、スイスの1号患者は2/15あたりにミラノを訪れて帰国しているので、イタリアは2月頭の時点で旅行者が貰って帰るほどには蔓延していて、2/15の時点でミラノ含めロンバルディア全体に広がっていた、ということと推定される。

同期間の両国からの出国者の数で補正しても、2月中旬時点でイタリアは日本の4倍ほど流行していたと推定できる。これは現地イタリアでも同じように考えられているようだ。

「患者ゼロ号が感染したのはかなり前であり、突き止めるのは困難だ」
――マリノ・ファッチーニ博士率いるミラノの専門家チーム

"sia partita da qualcuno che si è infettato in Germania verosimilmente intorno al 24, 25 o 26 di gennaio e che poi è venuto in quella zona dove ha seminato l’infezione"(おそらく1月の24日、25日、または26日頃にドイツで感染し、その後、[イタリアの]流行地域に来た人から始まりました)"del tutto inconsapevolmente o perché completamente asintomatico o perché ha scambiato i sintomi di Covid-19 per quelli di una normale influenza"(無症候であったか、またはCOVID19による症状を普通のインフルエンザによるものと取り違えた)
――ミラノ大学の感染症専門医マッシモ・ガリ日経の間接報道

Es gibt Projektionen, die schätzen, dass dieses Virus wahrscheinlich schon seit Mitte Januar in Itali-en im Umlauf war.(感染がはじまったのは、かなり前、1月の段階ではもう拡散していただろう、と思われます)
――ベルリンウイルス研究所 ウイルス学教授、クリスティアン・ドロステン氏 (翻訳note

イタリアは患者1号の周辺の街を素早く封鎖した。しかし流行はとうに封鎖範囲を超えており、出国者からどんどん見つかるような状況で、効果の期待できない封鎖策を打っていたのだろうと思われる。また、周辺国もイタリアで患者1号が見つかってからイタリアからの帰国者・出国者を検査してボロボロ見つかったということは、とうにイタリアから侵入していた可能性が高い。

一方で、日本はその他さまざまな指標から、実際に流行していない可能性が高い。


なぜノーガードの日本で感染が広がっていないのか?

感染者数が急激に伸びている諸外国については、水際対策を重視しすぎ、国内の感染がノーマークだったという傾向が見られる。イタリアは患者1号をめぐる状況を見る限り、イタリアおよびイタリアからの旅行客をスルーしていた欧州周辺国はマークする相手を中国人旅行客に絞ってしまい水際対策ができていなかったし、全くノーガードに等しい状況であったと考えられる。

韓国も警戒していたもののそれに近く、国内の新興宗教で流行していたことに気が付いたときにはすでにだいぶ感染者数が増えており、それを追認する状況にあった。

これらの国々では急に感染者が増えているように見えるが、実際には感染の曲線はもっとなだらかで、検査で追認している状況が急峻な曲線を描いているように見えるだけと筆者は推定する。


翻って日本だが、なぜ感染が広がっていないか、確たる答えはない。霊感になるが、

■ 水際対策が緩いゆえに初期から市中どこにでもいる可能性を想定した流行期に近い対策をとっていた
■ クルーズ船のニュースで市民の警戒感が高まり、同時に無症状感染者が割単位で存在するという疫学的データがとられ、水際対策の有効性の低さが認識された
■ その結果2/15には大臣が公式に流行を認め、流行期対策に移行した
■ 高山医師が接触感染ルートで拡散しやすいという仮説を立てていたが、そうならば自衛のために1月ころから手洗いを強調していたことに効果があった
■ 比較的感染しやすい状況、スーパースプレッディングイベントの条件が比較的早期に特定され、自粛が広がった(が、その分経済へのダメージは受けている)

このあたりの複合ではないかと思われる。端的に、このウイルスは水際防御があまり効かない割に個人防御はよくきくタイプだったのではないか、日本は水際がグダグダで個人防御をお願いしていたのが偶然幸いしたのではないか、という推測である。


今後の対策

このウイルスに対する対策は、

■ 手洗いなどの個人防御を徹底する
■ クラスタを発生させやすい状況を回避する
■ マスク供給が増えてきたら「もしも自分がかかっていても広げないために」する

あたりで感染の伸びを抑制できるだろうと考えられる。


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