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ニュージーランドは思春期の死亡率が先進国最悪の国だった……という話

思春期の自殺率が話題になっていたので、世界の統計を見てみたりしていた(完全に世間話の感覚で)。世界の15-19歳の自殺について1984~2002の単年度データをまとめたWasserman, Cheng, & Jiang (2005)、およびOECD加盟国の10-19歳の自殺について1994~2012の複数年データをまとめたRoh, Jung, & Hong (2018)では、日本の思春期の自殺率は集計対象国のほぼ平均に位置し、英仏伊西などの国は日本より良く、米豪加などの国は日本より悪い。また、隣接した国どうしでも大きく異なることがあり、オランダは良好でベルギーは悪く、北欧でもデンマークやスウェーデンは良いがノルウェーやフィンランドは悪いなどばらつきがあり、なかなか興味深いところである。

さて、その中でも目を引いたのはニュージーランドの突出した悪さで、日本の2~3倍に達する。これはツイッターで書いた時も多くの方から「意外」「理由が分からない」というレスを頂いた。

私もなぜNZが?と思っていたので、もう少し調べてみたのだが、そもそもNZはWHO集計の思春期の総死亡率自体も頭一つ抜けて悪く、日本や西欧の平均的な国の2倍に達する(ただし、多くの国で交通事故が思春期死亡の最多原因を占めるので、自動車依存指数という側面もあるのだが)。

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このことは、ニュージーランド国内の報道を見ても問題視されているようであった。2019年のある記事では、先進国19か国の比較において、思春期の総死亡率、自殺率が19か国中最悪で、喘息死亡率、交通事故死亡率、肥満率、未成年の妊娠についても比較対象国中最悪クラスであると訴えていた。

その記事中でも、やはり「こんなにいい環境なのに……」というイメージとの乖離が書かれていた。この点は国外から見たときの感想に近い。

"We've got this idea that New Zealand is this wonderful, clean, green, beautiful nation that is a wonderful place to raise children, so this paints a different picture."
"So it doesn't shake my belief that New Zealand is a good place to grow up. But in terms of rare events or severe outcomes, we're not doing particularly well in those areas as you can see from general mortality, years of life lost, and smoking and obesity."

なお、なぜこうなっているかは当のニュージーランド国内でもよくわかっておらず、様々な仮説が立てられている(記事内では「読み書き計算を優先して自由な遊びを減らしたからでは」等)という段階のようである。そもそも原因が分かっていたら問題は解決しているはずなので、まあ当然ではあるだが。



出典

Wasserman D, Cheng Q, Jiang GX. Global suicide rates among young people aged 15-19. World Psychiatry. 2005;4(2):114-120.

Roh BR, Jung EH, Hong HJ. A Comparative Study of Suicide Rates among 10-19-Year-Olds in 29 OECD Countries. Psychiatry Investig. 2018;15(4):376-383. doi:10.30773/pi.2017.08.02

NZ has highest death rate for teenagers in developed world. NZ Herald, Publish DateTue, 26 Feb 2019



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