今回のウイルスで名指しされた業界が生き残るために
新型コロナウイルス感染症COVID-19についての情報をお求めの方は、厚生労働省の情報ページか専門家の情報をフォローしてください。私は専門家を紹介する立場にはありませんが、例えば以下の方などが穏当かと思います。
・押谷 仁(東北大学)
・高山義浩(huffpost記事一覧)
・岸田直樹(@kiccy7777)
筆者は医療や行政法の専門家ではありません。単なる素人の感想なので医療情報としての信頼は置かないでください。
この記事に関しては、可能なら専門家の監修が入ったドキュメントに編集されることを望みます。感染症の専門家の方または行政が再利用する場合に限り、全ての著作権・著作隣接権を放棄します。
今回のウイルス騒動では、感染防止のため各種の自粛や、「不要不急のイベントを念のため中止する」呼びかけがされています。このため、エンタメ業界、飲食店などが苦境にあえいでいます。特に最近は名指しでリスクを指摘されることがあり、心苦しいことでしょう。しかし、これは相応の理由があり、生き残りのためには対応していく必要があります。この項では、その話をしていきます。
今回のウイルスの特徴
今回のウイルスの特徴として、専門家から「感染させる人数に大きなばらつきがある」「大量感染させる人と、再感染させない人に分かれる」ということが指摘されています。これはもともと(2002年の)SARSでスーパースプレッダーと呼ばれる大量感染させる人がいたことから指摘され始めたことで、今回も海外の研究者からその可能性が指摘されていました。
それを受け、国内の感染症対策の専門家は、大量感染が起きる事例と起きていない事例を仕分けしていきました。その結果、
・家族内感染
・院内感染の疑い例
・クルーズ船、屋形船、宴会
・スポーツクラブ、ジム
・ライブハウス
など、特定の業態において複数回の大量感染が発生していることが分かってきました。また厚生労働省はビュッフェスタイルの会食、雀荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テントなども複数感染が生じる例として挙げています。
一方、職場や満員電車やバスはどうなんだ、感染者がそこにいれば感染するのではないか――という疑問あるでしょう。実のところ、これらも、追いかけられる限りは追いかけて、大量感染しにくいという状況証拠がある状態です。
・職場の濃厚接触者も調査されているようですがせいぜい感染者1人が次の1人に移す程度が多く、現状は大量感染につながっていません。
・新幹線(ビジネスなら指定席)やバス旅行参加者のように交通機関での接触歴を追える例もありますが、現状は大量感染にはなっていません。
・インフルエンザ並みの感染力があるなら公共交通機関から爆発的に感染が広がり、出国してから外国で感染が分かる例や原因不明の肺炎患者がずっと多くなるはずですが(イタリアやイランはそうなっています)、現在はそうはなっていせん(CTの検査数なども特段増えていません)。
つまり、国内ではある特定のシチュエーションでだけ大量感染が発生している可能性が高いのです。そして大量感染させた人が職場でも大量感染させているかというと、そうでもありません。どうやら、「人」の特性ではなく、「場」の特性によって大量感染が生じるのではないか――というのが専門家の見方です。
言い方を変えると、バンドマンやジム、飲み屋、そして家庭や病院を狙い撃ちにしているとも言えるでしょう。これらの業態はマスコミや政府に狙われて悪者に仕立て上げられているのではなく、ウイルスに狙われているのです。狙われたほうとしてはたまったものではないですが、おそらくこれが今回のウイルスの性質です。仕事の場より楽しみや安らぎの場で感染しやすいらしいという、迷惑なウイルスでもあります。
娯楽業界がこのウイルスに勝つには
ウイルスに狙われてしまったバンドマンやジム、飲み屋さんは、大変です。しかし無策で営業を強行しても、自分たちやお客さんが罹患しやすくなるだけで、状況が良くなるわけではありません。「場」の中からリスクを高めている特性を取り除く、リスク低減策をとって生き残るしかないでしょう。
もうすこし前向きな話をすれば、SARSでスーパースプレッダーの存在が確認された後、「スーパースプレッダーの出現を事前に予測できれば広がった病気を効果的に止められる可能性がある」ということが指摘されました。それはあくまで「理論上そうだ」という話にすぎませんでしたが、今回「場」の特性がスーパースプレッダーを作っている可能性が示されたことで、皆さんの努力次第では、スーパースプレッダーを止めることで一度広がってしまったウイルスを退治するという世界初の快挙になる可能性があります。これはあくまで可能性にすぎませんが、営業続行の努力のおまけとして世界初の勲章が付いてくるならうれしいものでしょう。それに、この対策が成功すれば、感染が広がりつつある他国への助けにもなるでしょう。「私たちが世界を救う」と思えばもっと前向きになれるのではないでしょうか。
また、スタイルの変化は当面1か月などというものではありません。外国でも流行が避けられないことを考えると、1~2年、または恒久的な変化を想定したほうがいでしょう。またこれらの努力は、全員で協力して行うことで高まります。業界団体または経産省による衛生基準の策定、順守視察などが必要でしょう。
対策の具体例
国内で大量感染が発生しているところの共通点を抜き出すと
・換気が悪く空気が滞留しがち
・喋る、叫ぶなどで飛沫(唾)が飛びやすい
・飲食(ドリンクを飲むことを含む)を伴う
・皆で同じものを触る(同じ皿をつつく、モッシュ等含む)
などの共通の特性が見られます。換気をよく行い、飛沫感染、接触感染を対策することが重要になるでしょう。参考例になりますが、シンガポールの病室の1例では、患者が触るもの、患者の飛沫が飛ぶところ(机や床)、トイレ、ドアノブでウイルスが検出されたほか、空気からは未検出であるものの換気扇からは検出されており、飛沫と接触が主たる感染ルートであり、換気、飛沫の拡散の防止、表面の消毒、手洗いが有効であろうことが示唆されています。これは国内の専門家が見出した共通点と同じです。
共通
・極力換気を良くする
・風邪気味の人の退店要求、キャンセル優遇
・一度に大量に客を入れるのではなく、少数ずつ高回転にすることを考慮
・Suicaなど非接触決済手段の導入(現金、クレジットカード不可)
・ドアは時間を決めて開放しっぱなしにするか、ドアマンを立てる。
・ドアノブなど多人数が共通して触るものの高頻度の消毒
・床の定期消毒(洗剤による洗浄も可)
・トイレの消毒、特に便座使用時は個別包装のアルコールタオルの提供
・使い捨て出来るものは可能な限り使い捨てに切り替えて物の共有を避ける
・やむを得ない場合手袋も考慮。
ライブハウス、プロスポーツ、各種公演
・極力換気を良くする
・換気時間(休憩時間)の確保
・歓声は極力控え、手拍子や足踏みで盛り上げる
・手洗い場、消毒液の提供
・チケットの電子化(手もぎの回避、客のセルフ手もぎも可)
・フード・ドリンク提供の停止、無理なら飛沫・接触対策を施す
(素手で掴む必要のない工場パック品を提供など)
(ドリンクは小容量ですぐ飲み切れる瓶・缶か、ペットボトル)
・[※マスクの着用は現在困難。関連記事を参照。むしろしゃべらせないほうに力を入れる必要]
バンド、講演
・屋外での公演(例:日比谷野音)
・オンラインでの配信
ハコ
・少人数利用への場所の提供による営業(配信スタジオなどへの業態転換)
スポーツジム、クラブ
・極力換気を良くする
・共有器具をなるべく使わせない、使ったら逐一消毒
・タオル等を貸し借りしない。1人1道具を順守する。
・使い捨て手袋の提供
・回し飲み絶対NG。1人1ボトル、水筒は使うごとに洗剤で洗う
・手と顔を石鹸等で洗ってからの飲料摂取の推奨(可能なら強制)
飲食店、ホテル
・極力換気を良くする
・個別配膳への変更
・鍋や大皿シェアの停止、禁止
・ビュッフェの停止
・テーブルを離す、パーティションを導入する
・こまめな消毒
・飛沫を飛ばさないマナーの開発、注意喚起
デリ
・客にトングを取らせず、手洗いした従業員が対応する
(手袋の使い方は注意を要する)
・客へのトング提供をやむなく続ける場合は、1人1つ消毒済みのものを提供
・商品を個別包装する