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密教、空海(2)

ざくっというと、科学技術において18世紀はニュートン力学の時代で、19世紀は電磁気学の時代、20世紀は相対性理論の時代でした。
おそらく21世紀は遺伝子工学と量子力学の時代となりますが、そのうち量子力学の本格的な到来は今世紀後半であり、2050年代までは遺伝子工学が時代の主流となるものと思われます。
今世紀前半、つまりまさしく今の時代において「遺伝子工学」を考えるうえで絶対に無視してはいけないのが「生物進化(という生命現象)およびその根底にある生命原理についての知見」になります。

前回の記事「密教、空海(1)」の末尾で私はこのように↓予告していますが、このトピックがまさしくそれに該当します。

次回は「阿頼耶識」という「生命現象そのもの」と、それを支える「生命原理」と密教教義の関わり、および南方熊楠やユクスキュルの「環世界」といった内容で書いていく予定にしています。

人類は遺伝子の謎を解き明かし、ついに自らの手で「新しい生命体」を作り出すことまで可能となりました。
さらには生命現象の宿命でもあった死さえ克服できる可能性も視野に入ってきています。
この意味において、今まさに人類(のごく一部ですが)は「神にも等しい創造主の地位」を手に入れつつあることになります。
その一方で人類はまだあまりにも野蛮な「猿のままの部分」が多く残っているため、そのような存在が「神にも等しい創造主としての能力」を手にしてしまった場合、その能力が逆に「神にも等しい破壊力」となって世界に破滅をもたらしかねないのですが、それを防ぐのに必要となるのが「生物進化(という生命現象)およびその根底にある生命原理についての知見」なんです。

以前NHKで『ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”』↓という番組が放送されていましたが、これなどまさに「ヒトはどれほど野蛮で危険な猿であるか」を見事に解き明かしたものでした。

華厳経や真言密教にも造詣の深かった南方熊楠はナチュラルトラスト運動や粘菌の研究で有名ですが、この「粘菌」という最もシンプルな単細胞生物がじつに奇妙で不思議な振舞い(生命活動)をすることがわかってきました(※末尾の【おまけ】「最新の粘菌の研究あれこれ」参照)。

つまり「生命原理」は粘菌という最もシンプルで原始的な単細胞生物にも働いていて複雑で多彩な「生命現象」を引き起こし、そしてそれはダーウィンが示した生命樹のように↓、およそ36億年前といわれる地球上での生命の発生からわれわれヒトに至るまで一貫して途切れることなく脈々と続いてきたのだという「生物進化(すなわち生命現象)およびその根底にあって生命現象をもたらしている生命原理についての知見」を抜きにして(つまり猿程度のままで)人類が「神にも等しい創造主としての能力」を発揮してしまえば、とんでもない破壊を「地球環境という生命現象の場」にもたらすことになるのは間違いない…ということです。

で、21世紀前半という「遺伝子工学の時代」にあっても相変わらずヒトは野蛮な猿のままなので、もうそろそろとんでもなくヤバいゾーンに突入してるよね、この調子だと21世紀後半の量子力学時代はやってこないかもね…という危機感はけっこう多くの野蛮な猿よりはちょっとマシな人々が共有している危機感です(たぶん)。

で、この「生物進化(という生命現象)およびその根底にある生命原理」というのを仏教用語に言い換えるとそれが「阿頼耶識」になります。
そしてこれを空海の言葉でいうと↓

生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く、
死に死に死に死んで死の終りに冥し

『秘蔵法鑰』

となります。

36億年の彼方より万世一系の生命現象は、阿頼耶識という生命原理の暴流に盲目的に突き動かされて様々な形で延々と展開されてきたが(これが生物進化ということ)、いよいよヒトはその生命原理を解き明かし生命現象を意のままに操ることができる力を身につけるまでになった、盲目の猿のままで… はてさてこれからどうなるどうする人類!!」

といったところでしょうか。

(※阿頼耶識と生命現象については過去にたとえばこれ↓なんかでも言及しています)

【おまけ】

最新の粘菌研究あれこれ↓


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