谷村新司さん、八代亜紀さん、鳥山明さん…

 去年あたりから、あまりに同年代の有名人の訃報が続いていて、そのたびにしばらく落ち込んでしまう。
 坂本龍一さん、伊集院静さん、谷村新司さん、もんたさん、KANさん、八代亜紀さん、鳥山明さん、TARAKOさん…。
 同じ時代を生きてきたというだけで、胸がふさがるのだ。この年代の方達は、日本が貧しい敗戦国からあっという間に立ち直って、世界に影響を与える経済大国にのし上がった激動の時代の生き証人である。
 日本は、私が幼少の頃から十二、三才までの数年間、凄まじい変貌を遂げた。高校生になったあたりからは、さほど大きな変化はない。携帯電話やパソコンがなかったとか、冷凍食品が普及していなかったとか、自家用車を持っている人が少なかったとか、女子高校生がお化粧してなかったとか、まあそんなものくらいだ。ファッションだってたいした違いはない。
 だけど、リアル「三丁目の夕日」を体現してきた私たち世代は、しっかりと覚えているのだ。子供の頃、家に電話がなかったこと、エアコンやパソコンなんて存在しなかったこと、日本全体が貧しくて着るものも食べるものの質素だったこと、御用聞きの人が(サザエさんに出てくる三平さん)いつも勝手口に来て注文をとっていたこと、テレビが普及していなかったので、テレビを買った家に、近所の人たちが集まっていたこと、給食のミルクがまずかったこと、鉄腕アトムのアニメにみんな夢中だったこと、冬になるとアカギレができて痛痒かったこと、ボットントイレ、お豆腐屋さんのラッパの音や紙芝居のおじさんが叩く拍子木の音……。短い間だけど、今とは全く違う風景が目の中に残っている。
 六十才くらいになったあたりから、同年代というだけで親しみを感じるようになった。だから、同年代の有名人の訃報は、本当にショックなのだ。
 二十代前半で大失恋をした頃、毎晩谷村新司さんの深夜のラジオにどれほど慰められたことだろう。八代亜紀さんが、全日本歌謡選手権を勝ち抜いてグランドチャンピオンになられた瞬間のこともはっきりと覚えている。寂しい。しみじみと寂しいのだ。
 黒柳徹子さんが赤塚不二夫さんとおしゃべりしていた時に「うんと長生きしたい」とおっしゃったら「でもそんなに長生きしたら、親しい人みんないなくなっちゃってるんだよ」と言われてわんわん泣いたというようなことを書いていらしたっけ…。
 桜の季節は、なんだか特に寂しい。
 ああ、いかんいかん!!
 来週は私よりずっと年下のお友達に会ってランチすることになっているんだった。うんと長生きしても年若いお友達がいるから寂しくなんかない!
幾つになっても一緒に遊んでもらえるように頑張る!

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