3日で完走した「愛の不時着」について乙女ゲームライターが衝動のままに語る

2児を育てつつ、約10年間乙女ゲーム界隈の雑誌やウェブでライターをしている晴と申します。noteに何も投稿せずにぼんやり過ぎていた日々を打ち破るのは、書きたい! という衝動とロスを埋めたい焦燥感でした。

「全裸監督」目当てに加入したNETFLIXで、人気沸騰の韓流ドラマ「愛の不時着」を視聴。そもそも私が「愛の不時着」を知ったきっかけは、コロナ禍のなか2歳と5歳男児'sのギャーギャーに疲弊しすぎたあまり、Twitterで「#これをみたフォロワーさんは今行きたいところを5個上げる」というタグを使って少しでも楽しい妄想をしようと試みたことだった。そこに趣味が良く、尖ったセンスを持ったオタクな先輩が参加してくれて(!)ビーチリゾートや伊豆の洒落乙なオーベルジュ……といった素敵ラインナップを挙げてくださった。世の中には私の知らないステキな場所や美味しい食べ物があるんやなあ……と視線を落とした先に……

38度線(愛の不時着)

ん? 朝鮮半島?? なぜ? 愛の……不時着……? 演歌? と軽率にググったところ韓流ドラマだということを知る。もともとイ・ジュンギさんの大ファンで大昔にファンミにも参加していた私が好きなドラマは「一枝梅」や「麗-花萌ゆる8人の皇子たち-」。基本時代モノが多く、現代が舞台の作品になると「美男ですね」まで遡ってしまうほど、ご無沙汰だった。(乙女ゲームオタクとしては、石田彰さんが吹き替えしているイ・ジュンギはぜひ世界遺産に認定するべきだと思っているのですがそれはまた別のお話)

前置きがめちゃめちゃ長くなりました。お待たせしました。お待たせしすぎたかもしれません。以下、顔を合わせた人に「愛の不時着」を布教したいけどステイホームで頭が麻痺し言葉を上手く整理できる自信がない記録用に本作のオススメポイントを挙げていきます。(たぶんすごい長くなると思う)決定的なネタバレは避けますが、少し内容に触れてしまうところが出てしまうかもしれません。


「愛の不時着」のザックリしたあらすじ

ヒロインのユン・セリは韓国財閥令嬢にして、ファッションブランドを手がけるやり手の美人実業家。ある日、スポーツ用品のテストのためにパラグライダーに乗った彼女は突然の竜巻のせいで遭難。目覚めるとそこは、韓国と北朝鮮の軍事境界線を越えた非武装地帯だった。意図せず北朝鮮に不時着したセリの前に現れたのは、朝鮮人民軍の将校リ・ジョンヒョク。色々あって←セリはジョンヒョクの自宅に身を寄せることになり――。

OPからドローン空撮、映像がまず美しい

色鮮やかな森林に囲まれた前哨地から始まる映像、まず驚いたのがそのなかを渡り鳥が悠々と羽ばたくシーン。(この鳥もじつはジョンヒョクを象徴しているんだよな、と書くと期待感が高まりません?)のっけからドローンで空撮? 最近の韓流はスケール感がすごい! と秒で引き込まれる。言い方は悪いけれど北朝鮮が舞台と聞いて、暗い絵を想像していた予想をまず裏切るのが素朴だけど温かみがある社宅村の描写。電力が乏しくしょっちゅう停電するものの、そのなかで灯る電灯のあかりが幻想的ですらある。極めつけはジョンヒョクが社宅村にある自宅で料理をするシーン。製麺機で作った麺を丁寧に茹で、唐辛子? トマト?をあしらった彩りバッチリなククス(うどん)を作るのだが、あまりのイケメン力と朝日が差し込む絶妙なライティングに「ここは江南のイケメンキッチン?」と錯覚してしまう。ほかにもセリのセレブ過ぎる自宅など、見どころがたっぷりあるけど文字量が自重できなくなってしまうので次へ。

良い子に収まらないヒロインと顔天才の中隊長

乙女ゲームをプレイする人なら共感してもらえると思うのだが、ヒロインが好きになれるかどうかってかなり重要なポイントだと思う。本作のヒロインであるセリは美貌・金・実力を全部持ったチート過ぎる女子だ。物語の冒頭では、自身のブランドの認知度を上げるために、ゴシップを利用する計算高い姿を見せている。ちなみに出会ったばかりのジョンヒョクにも「顔は私のタイプ」と言い切ってしまう強気な性格。私は正直、気が強すぎる女性があまり得意ではなく、仲が良い友人もどちらかというとおとなしめの美人が多い。ので、最初はセリのこともあまり好感が持てなかった。でも、そりゃそうだよな、いきなり北朝鮮に来て弱い女子だったら第1話でくじけてハイ、終了だもんなと思って観ていくと最終的に大好きになっていました。(もちろん、話が進んでいくにつれてセリの複雑な生い立ちが明らかになったり、社宅村の主婦たちとの交流から見えてくる彼女の純粋さや優しさが伝わってきたことも大きな要素)

 一方、その恋のお相手となるジョンヒョク。第5中隊を率いる将校で、こちらもルックスは抜群、それに加えてじつは家柄も超エリート。不時着してすぐ、セリは彼をなんとか懐柔して穏便に韓国へ帰ろうとするが、そんなことには一切なびかないストイックなTHE軍人。……と思いきや、うっかり地雷を踏んで動けなくなるツッコミどころも。強気なワガママお嬢様のペースに巻き込まれる、堅物エリート軍人。これ嫌いなオタクいる? 私は大好きだ。話数が進んでいくと、イケメン過ぎるジョンヒョクに対して「顔天才」という字幕が飛び出すのですが、いやいやその単語を考えた人が天才じゃん。積極的に使っていこうと思ったのでした。そうそう、このジョンヒョク! 北朝鮮のなかでも上流階級の出身で、物語の核にもなる特技があります。イケメンぷらす、〇〇〇で〇〇〇留学って。どこまで盛るの? そういうところだぞ、韓流! 大好き。ご注目下さい。

伏線が素晴らしく、その文化圏ならではの表現も良き

韓流といえば伏線。といっても過言ではないと思うのだが、本作も各話に散りばめられている。韓流に慣れてくると「おや?」とフラグに勘づいてしまうこともあるけれど、それを踏まえたうえで萌えるからより楽しい。個人的にいちばんニヤニヤしたのが、どうにか手を尽くしてセリを韓国へ返そうとするなか、それが上層部にバレてしまう!? という危機にジョンヒョクが取った手段。彼の中隊には4人の部下がいて(彼らもすごく魅力的なのですが、それはまた後半にて)、そのなかの1人・ジュモクは大の韓流ドラマファン。南町(北朝鮮で韓国を差す暗喩)の事情に精通していて、セリとジョンヒョクのコミュニケーションの仲立ちになってくれる存在。このエピソードには、彼がジョンヒョクに教えたあることが深く関わっているのですが、正直来ると思ってはいたが、本当に来た時はヒャーっと久しぶりにときめいた。ときめきが枯渇した自粛生活に光が差した。

伏線とともに注目したいのが、韓流ドラマならではな文化や歴史のバックグラウンドを感じさせるエピソード。あるシーンでセリとジョンヒョクがお互いの一族のルーツについて語り合うのだが、セリは「海州ユン氏」ジョンヒョクは「全州リ氏」。〇〇州というのは自分たちの始祖の出身地を指すそうで、この場合セリの祖先は北朝鮮にルーツを持つ海州ユン氏。一方ジョンヒョクは李氏朝鮮の開祖といわれる全州李氏(かなり高貴な生まれということ、萌える)ということだ。38度線で分断されたふたり、そのルーツは今の立場とは真逆だったということが、なんともままならない。

もうひと組のカップル、ソ・ダンとク・スンジュン

セリとジョンヒョクの恋とは別に、並行して描かれるのがジョンヒョクの婚約者であるソ・ダンとセリと同じく韓国から北朝鮮へとやって来たク・スンジュンの交流。正直今回の記事のなかで最も書きたい2つ(矛盾)のうちの1つです。というか、ここまで書いてきてまだそれにたどり着いていない事実が怖い。書きたいことが多すぎて止まりません。

ソ・ダンはジョンヒョクと同じく上流階級出身のお嬢様で、超クールビューティ。親が決めた婚約者で、何年かぶりに再会したジョンヒョクの隣にいるセリの姿に「マジぶちころす」オーラを氷の美貌で漂わせる恋敵。一方、ク・スンジュンは切れ者の詐欺師で、ある事情から北朝鮮に潜伏中。韓国時代には財産狙いでセリとの婚約にこぎつけるも、バッサリと振られた過去を持つ。このスンジュンも私はたまらなく好き、というか分かる人には分かってもらえると思うのですが私が愛してやまない『アラビアンズ・ロスト』臭がすごい。登場してすぐの小悪党感やちょっと情けないところ、そのくせ頭が切れるところにはロベルト・クロムウェルみを感じてやまない。ちなみに何を言ってるのかちょっと分からないという方に向けて補足すると、『アラビアンズ・ロスト』は攻略対象キャラクターが全員悪人というテーマのアラビアンな世界観を舞台にした乙女ゲームです。恋した相手が悪党、なのに純愛。その相手が身分の高いお嬢様という点にロマンを感じてしまうわけで……。セリとジョンヒョク、メインのカップルの影にある幸薄いふたりの行く末もぜひ見守って欲しい……。

魅力的な脇役たち。ピョ・チス推し。ギャグパートはダンのお母さん

ジョンヒョク率いる第5中隊には4人の兵士がいて、セリが北朝鮮に不時着した時に目撃した彼らはその後もバッチリ活躍。なかでも個人的に気になる存在なのが、ピョ・チス。ピ・チョス なのかチョ・ピスなのか、書いている今でも混乱してしまう彼。登場してすぐの雑魚キャラ感がすごくて、まさかこんなに愛着が持てる人物になろうとは……。口を開けばセリに対して「お前を埋めるための穴を掘ってやる!」という粗野な軍人。演じている役者・ヤン・ギョンウォンさんは1981年生まれということで、私と同じ年であるジョンヒョク役のヒョンビンさん含め同世代の役者というところもポイントが高し……! (ちなみに関係ないけどイ・ジュンギさんも1982年生まれ、推せる)ピョ・チスの話に戻ると、まず細面の塩顔が好みということもあるけれど、最初反発して塩対応だった男が不本意ながらデレ始める姿に萌えるという様式美に惹かれた。本作はラブあり、笑いあり、アクションありのバランス感も魅力で、物語の後半にはピョ・チスが悪者をたたきのめすアクションが登場するのですが、その鮮やかな身のこなしにときめいてしまった。おいおい、全然雑魚キャラじゃないやん……。となる。しっかりいいところを持って行く男、ピョ・チス。隊長以外で旦那にしたい男ナンバーワン、それがピョ・チス。(もう間違えないかな)

どうしても舞台が舞台なだけに、シリアス過ぎるシーンや怖い敵役が出てくる本作。そんななか、ほっと癒しの時間を与えてくれるのがジョンヒョクが暮らす社宅村の主婦たち。そしてソ・ダンの母の存在。とくにダンのお母さんが登場すると、明確に「笑いの時間ですよ」となる演出がツボだった。そして、そんなお笑い要員(失礼すぎる)な脇役たちは話数が進むにつれてどんどん泣かせにかかってくるのが油断できない。

これだけは伝えたい、各話のラスト3分が本番な件

気がつけばダラダラと長文になってしまいました。でも、ここでやっと一番伝えたいことが書けます。懺悔すると、私はかなりせっかちで、本作を観ている時も「はい、この話はここで終わり」とばかりに画面が止まる演出が入るやいなや、さっさと「次のエピソードへ」ボタンを押していた。正直10話目くらいまで。もうグーパンで殴りたい、昨日までの自分を。大声で言いたい。「愛の不時着は、毎話後半3分が肝ですよ!!!!!!!」乙女ゲームでいうところのサイドストーリー、彼目線の秘話、後日談。これがラスト3分にぶっこまれている。最後の3分を飛ばして観ていた頃は、次の話に進んだとき「あれ? ココとココに空白の時間があるな」と微妙な違和感があった。けど、ストーリーを追う上ではまったく問題がなかったので無視していた……ら! 突然10話目でラスト3分のおいしさに気づく。なにこれ! ふたりにはこんな過去が!? えっ、あのとき中隊長はこんなことを!? 飛ばしてしまったエピソードを回収するために、2週目、3週目の視聴が始まる。これか、無限ループは。と納得した(いや、それ自分の過失)

ロス、ユンセリピアスが欲しくて仕方ないという結び

というわけで、早くもロスがすごいわけです。しかも3日で駆け抜けた初視聴。正直家族に申し訳なさすぎるのですが、子どもがいない日中だけでは足りず、寝不足になる夜中ではつらく、正直子どもたちを尻目に日中堂々とリビングで観続けてしまった訳で……。感動の最終話、背後には餃子のお代わりを欲しがる息子たちの叫び声。下の子にあげると、上の子も欲しがって収集がつかなくなる阿鼻叫喚。余韻を感じることなく迎えた最終話、でも見届けることができた充足感。今私の胸にある気持ちは「ユンセリピアスが欲しい。とくに中隊長に出会った時に着けていた羽根型の“ナイスピアス”」だ。主にセリ、そしてダン(もっと言うとお母さんや意地悪な義姉も)がスワロフスキーのピアスやネックレスをつけていて、それがすごく素敵なんです。とくに前述したジルコニアがついたシルバーの羽根型ピアスや、セリとジョンヒョクが並んで雪を眺めた時につけていた雪の結晶型のピアス……。ペネロペクルスの名を冠したMoonsunのピアス&ネックレスのセット。軽率にスワロフスキーのサイトを覗いてみると、まさかのセール中で30~40パーセントOFFという奇跡。これは……買ってしまうのも時間の問題かもしれない。ロスといえば、作中に出てきたフライドチキン「BBQオリーブチキン」や「サブウェイ」も食べたくなる。

もう「愛の不時着」を知らなかった自分には戻れない。そう確信しながら、まだまだ書きたいことが出てきそうなので、また投稿するかもしれません。

あーーー、みんな観てほしい。そして一緒に語ってほしい。いちばん近くて最も遠い場所に生まれたふたりの、愛の不時着。その終着点はどこなのか。


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