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独学12カ月の司法書士試験勉強方法(完全無料版)


本記事は、<2022/03/27>に公開した有料記事を、<2024/02/03>に、完全無料化して再公開したものです。すべての内容を無料で読めます。
そして、後日、この記事の「後日談と追補」編を有料記事として出します。 ツイにも多少書いているのですが、「後日談と追補」編には、司法書士試験に関係する自分の本音の考えと、今まで隠していた経験を記載したいと思います。
「後日談と追補」編もどうかよろしくお願いいたします。


まえがき

九条です。

初めての有料記事を投稿させていただきます。

内容はタイトル通りです。司法書士試験に独学1年で合格するにはどうすればいいかを考察します。

この記事を構想し始めたのは、令和3年度の司法書士試験の終結時です。

元々、この記事は10カ月で合格する勉強方法を書く予定でしたが、執筆が遅れてしまい令和4年度の試験の10カ月前までに書き終えることができませんでした。

私自身は、平成27年度の司法書士試験に12カ月かけて合格しているので、12カ月かけて合格する計画を立てた方がよりリアリティがあるかと思い、12カ月かけて合格する方法を記事にすることにしました。

実際には12カ月かけたものの、もっと効率よく勉強していれば10カ月でも合格できたのではないかと思いました。この記事は私の実体験を元にしていますが、「受験後だから言える、もっとこうしていればよかった。」を含む記事になっております。

更新履歴

誤字雑事の訂正や、微調整はここに取り上げません。

<2022/03/27>
完成・公開

<2022/06/09>
新章「司法書士試験に合格して一番良かったことは何か?」を追記。

<2022/10/31>
記事そのものの更新ではありませんが、コメント欄を公開。本記事への感想や、こんな章を追加してほしいなどの要望があればご記入ください。

<2022/10/31>
新章「(QandA)高校生が司法書士試験合格を目指しても良いですか?」を追記。

<2022/10/31>
既成の章『「出るトコ」について』で、コロ助さんについて言及。

<2023/08/14>
SNSプロモーション機能を導入。RTして応援してくれた方は750円で買えるようにした。

<2023/09/26>
新章『y軸の意味で難しい問題を網羅した教材』を追記、自作教材について言及。
既成の章『あとがき』で、自作教材について言及。
SNSプロモーション機能を調整。RTして応援してくれた方は0円で買えるようにした。(事実上、無料化した。)

<2024/02/03>
完全無料化した。

PC推奨

この記事の文字数は、8万5千文字近くあります。

はっきり言って note の記事としては、とてつもなくべらぼうに多いです

筆者もスマホで試しに読んだことがありますが、やたらとロードがもたつきました。できれば、PCで閲覧することをお勧めします。

価格と販売数量について

本記事は、1000円の有料記事ですが、「(仮)」とさせていただきます。

時期は未定ですが、2000円程度まで値上げを考えております。

※値上げの場合でももちろん、お買い上げいただいた読者様から追加の料金をいただくことはありません。

また10本の限定販売としましたが、「(仮)」とさせていただきます。様子を見たのち、増やす予定です。

市販書籍の受験本や合格体験記との違いは?

実は、司法書士試験については、受験本が数多く出回っており、それらの中にはかなり質の高い内容が含まれています。

そんな中でも、素人が合格体験記を有料で出すことには意味があると思っています。

私は、予備校に所属している講師ではない為、講座や講師を批判することができますし、中立的な立場で意見を述べることができます。それと、具体的な書籍名を挙げながら勉強方法を解説することができます。予備校の講師の書いた受験本には確かに質の高いものがあるのですが具体的な書籍名まで踏み込んで解説しているものは少ないです。

また、本記事には、予備校関係者にはととても発言できないような内容も含めたいと思います。

プロフィール

ブログの内容と被るのですが、簡単に私のプロフィールを説明させていただきます。

(参考記事)
https://kyouzai.design/profile/

私は次の通りの成績で平成27年度司法書士試験に合格しました。

・午前:33(99)
・午後:30(90)
・記述:47.5
・総合:236.5
全国順位:109位/21754人(出願者数)

勉強方法としてはほぼ独学ですが、直前になって伊藤塾さんの中上級者向け講座と模試を受講しました。

・(伊藤塾)直前パック(択一直前総整理講座(必出3300選の元となる講座)、「うかる!記述式」、模試2回がセットになったものです。)
・(伊藤塾)プレ模試1回
・(伊藤塾)口述模試

そのため、厳密には独学ではありません。

しかし、本当に必要だったのは模試だけだと思いました。模試以外の講座は、受講したものの合格の役には立たなかったと感じましたし、受講しなくても受講した場合と同じ点数で合格できたと見積もります。そのため私は、司法書士試験は模試さえあれば独学で合格できると考えています。

勉強に要した期間は12カ月なのですが、平成24年度にお試し受験をしました。そのため、厳密には一発合格でもありません。

詳しいことはブログの方に書いてありますが、民法のテキストすら読まずに平成24年度司法書士試験を受験しています。試験中は問題文を読む気にもなれず、ランダムにマークしながら、「早く制限時間来てくれ~!」と考えながら受験していました。もちろん、壊滅的な点数でした。何点だったのか記録も記憶もしていません。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2020/04/10/ss_otameshi/

その後、平成26年度の7月に会社を辞めて、専業受験生になり、1年かけて翌年の平成27年度に合格しました。お試し受験をしてから、会社を辞めるまでは、テキストを読む等の受験勉強は全くしていません。また合格した前の年である平成26年度はお試し受験をしていません、

※ちなみにですが、会社を辞めたのは受験のためだけではありません。人間関係が最悪で過労自殺した人もいるようなブラック企業だったので、いずれは辞めるつもりでした。

平成24年度司法書士試験のお試し受験から会社を辞めるまでは、インターネット上の、司法書士試験の合格体験記を読み漁っていました。前職はIT関係の仕事で、仕事中に仕事と関係ないサイトを閲覧しても怒られないような環境でしたので、仕事中に読み漁っていました。

実は、こういう情報収集が受験勉強と同じぐらい、かなり重要ではないかと思いました。人それぞれ勉強方法は違うものの、独学合格者、短期合格者にはある程度、共通点があると思ったのです。こうした情報収集があったからこそ、合格できた面があると思います。

これから司法書士試験を受験しようと考えている人には、合格者のブログ等の合格体験記を読み漁ることをお勧めします。予備校が出している合格体験記には予備校に不利なことは載せませんので、予備校の関与していないインターネット上のブログがお勧めです。

私の最終学歴は工学修士です。修士というと聞きなれない方もいるかもしれませんが、要は大学院卒です。なので、勉強自体は沢山してきました。司法書士試験以外にも難関資格試験に合格していますし、勉強や受験は得意中の得意という自信はありました。しかし、法律については全くの素人の状態で司法書士試験に挑みました。

少し脱線しましたが、プロフィールについては以上です。

前提

この記事の前提は専業受験です。最低でも、12カ月間、毎日8時間は勉強できることが前提です。実際には、この記事の通りに8時間勉強してもなお不合格になる方は出てくると思いますが、12カ月間、最低でも毎日8時間は勉強しないと、合格には届きません。

※司法書士試験合格に必要な勉強時間は3000時間と言われており、厳密にいうと12カ月間、毎日8時間では、僅かに足りません。

私は、1日に10時間程度勉強しました。できる人は8時間と言わず、10時間やってください。

また、この記事の前提は独学ですが、私の考えとして、択一は独学でも圧倒的な成績を出せるのですが、記述は独学だと不安を抱えてしまうというのがあります。受からないことはないのですが、市販の教材が合格に必要な情報を完全に網羅できていると思えません。完全に網羅できていない教材で勉強すれば運の要素が絡んでしまうことになります。そのため、記述だけは予備校教材を入手した方が良いのではないかと思います。(ここは、記事のタイトルに反していて申し訳ありません。「独学」を銘打っていながら、本記事では予備校の講座もお勧めしています。)

以上からこの記事は、専業受験と独学を想定していますが、兼業受験の方や予備校を利用されている方にとっても、体験談として参考になるような記事にしたいと思っています。

この記事が特に強く想定している読者は、初受験の方か択一が基準点に満たないか、点数が伸び悩んでいて逃げ切りに達しない方です。択一で逃げ切りを取っているものの、記述でわずか点数が足りずに記述の基準点を割っているという方や、総点が足りずに総点落ちしている方の場合は、自分で自分の状況がよく分析できているはずです。自分に足りないものが何であるかも分かっているはずで、そういう方の場合、私の記事のような他人の勉強方法に流されるよりは、自分の考えを信じた方が良いかもしれません。

初受験の方と、点数の伸び悩んでいる受験経験者を、一緒くたに扱うことに抵抗がある方もいるかもしれませんが、不合格になった方の1年かけた受験勉強は全くアドバンテージにならないと考えています。きちんとした勉強を1年間すれば、1年間かけて不合格になった方に簡単に追いつくことができます。

注意事項

この記事は、司法書士試験の勉強方法や心構え等を解説したものです。当然ながら、この記事だけを読んで司法書士試験に合格できるという性質のものではありません。受験のためにはテキストや過去問題集が必要ですが、それらは読者様が別途ご準備ください。

その他の注意事項として、ブログの「はじめに」に書かれている免責事項を、本記事にも準用させていただきたいと思います。

(参考記事)
https://kyouzai.design/hajimeni/

できるだけ、はじめにを読んでいただきたいのですが、要点としては次の通りです。

①私の記事の記載内容に従うことが読者様の合格を保証するものではありません。仮に本記事の記載内容を信頼した結果、読者様が不合格になり、または何らかの損害を受けた場合でも、管理人(筆者)は責任を負い兼ねます。本記事の内容は参考、または目安としてお考え下さい。

②私の記事にて紹介する各種商品、及び講座やサービスのレビューは、その効果、効能、及び品質を保証するものではありません。 商品のご購入、及びサービスのご利用は読者様の判断に依り自己責任でお願いいたします。

そもそもの話をしておくと、司法書士試験は、相対評価の試験です。

相対評価とはどういうことかと言えば、合格点が蓋を開けてみるまで分かりません。その代わり、合格率は予めはっきりしています。司法書士試験には、何点を取ったら合格という概念が無く、上位何パーセントが合格すると予め決められた試験です。そして司法書士試験の合格率は3%~4%です。

※最近は合格率が5%と上昇傾向にあります。

これはどういうことかというと、受験生全員が正しい勉強方法をして、全員が十分な勉強時間を費やして、全員が試験当日に全力を発揮できたとしても、97%~96%の人は不合格になることを意味しています。

そのため、仮に司法書士試験の全ての受験生が、私の記事の記載内容の通りに勉強したとしても、必ず不合格になる人は出てきます。

そういう試験だということは先にお断りしておきます。

免責事項については以上です。

私は数年前の合格者です。

実は、司法書士試験は、勉強をしていないと、一度勉強したことをどんどん忘れます。私は、試験に合格した後は、受験勉強をしていませんし、実務もしていません。忘れたことばかりです。そのため、私の今の実力では、お恥ずかしい話、択一基準点すら突破できないと思います。

そのため、過去問のこの問題が分からないので解説して欲しいとか、今年の出題予想とか、基準点予想を訊かれても全くお答えできません。このこともご了承ください。

それと、私が受験していた頃の試験と最近の試験では傾向が少し違っているようです。私が受験していた頃は基準点に6問程度上乗せすれば、逃げ切りに達していました。最近の試験ではもっとより多くの点数が要求されるようです。この記事は、私が受験していた頃の記憶を頼りに書かれており、一部陳腐化している情報があるかもしれないと言うこともお断りしておきます。

本記事に対する質問やクレームは、できるだけブログの「お問い合わせ」か Twitter のDMにお願いします。note のコメントについては返信をしておりません。

※ただし、現在、note のコメント欄を閉鎖して運用しております。→ note のコメント欄を公開しました。コメント欄の運用方針は今後様子を見ながら決めたいと思います。

最後に、本記事の内容について、かなりブログと被る部分が出てくると思います。

というか、章によっては、ブログに書きたいことを既に書き尽くしているため、その記事へのリンクのみの掲載という部分もあります。

※ほぼリンクのみで中身のない章については(リンクのみ)と先頭に付加しています。

その点についてはご了承いただきたいですが、本記事を有料記事としている以上、ブログと何らかの差別化を図る必要があると思われますので、次の点を意識しながら執筆したいと思います。

・ブログに記載していない話も記載します。
・ブログの記事はかなり雑多なものになっています。合格に絶対に必要だと思われる記事から、エッセイのような記事まで含まれています。そのため、読者様による取捨選択が必要です。私はどうしても話をしようとすると脱線しがちになります。本記事にも「脱線」はありますが、できる限り、合格に必要なことだけを書きます。

これと併せて、ブログの記事の一部を note の有料記事に引っ越すことも考えています。というのも、ブログの記事の中には、本記事に書くことよりも合格に必要な重要な情報が含まれている可能性があり、そのままでは、本記事を購入していただいた読者様にとっては不条理を感じる可能性があるためです。

本記事で取り扱わないこと①「実務」

私は司法書士登録をしたことが無く、実務経験がありません。

そのため、そもそも私は司法書士ではないので、合格後の話は扱いません

「司法書士は食えるのか?AIに仕事を取られないのか?」と言うことを気にする方もいるかと思いますが、それは本記事の射程外とします。本記事では、合格するにはどうすればいいかと言うことだけを取り扱います。

本記事で取り扱わないこと②「学説問題」

学説問題を取り扱いません。

司法書士試験に合格するためにはできるだけ学説問題を得意にした方が望ましいのですが、私自身が特に工夫を要せずとも得意であり、万人に再現性のある有効な解き方を提示できないためです。ただし、全く意見が無いわけでもなく、近いうちに追補するかもしれません。

ただひとつ言っておくと、学説問題には明らかな捨て問が存在しており、そういうものにかまけすぎないことが大切です。

例えば、「平12年午前問9」(取得時効)は完全にトラップです。一見すると簡単そうに見えて、数十分頭を使っても回答が出ません。もし、現場で見かけたら、スキップしてしまうべき問題です。にもかかわらず、この問題に貴重な時間を費やした方は多かったのではないかと思います。

これに対する対策としては、制限時間を細かく区切って、1問あたりに何分までしかかけない、それを過ぎたら次の問題を検討すると予め決めて、その通りに行動することです。

前置きは以上です。これからは本題について記載していきます。

(リンクのみ)司法書士試験とは?

文字通り、司法書士になるために必要な試験です。

受験資格が無いことが大きな特徴のひとつで、大卒以上でないと受験できないというような制約がありません。

小学生や中学生でも司法書士になれますか?という話題を見たことがあるのですが、受験することも試験を突破することも理論上は可能です。ただ、未成年者は登録することができないので、司法書士になることができません。合格した事実は生涯有効ですので、その場合は、大人になってから登録する必要があります。

司法書士試験は筆記試験と口述試験から構成されています。

口述試験は筆記試験を突破できる実力のある方なら、まず落ちることは無いと言われており、事実上、筆記試験で勝負が決まります。そこで、この記事では口述試験のことはほとんど扱いません。この記事で司法書士試験と言ったら、特に断りが無い限り、筆記試験のことだと考えてください。

司法書士試験の筆記試験の内容や、よく話題になる基準点とは何かについては、次のブログの記事で解説しているのでご一読ください。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2020/11/07/ss_shikentoha/

司法書士試験に合格して一番良かったことは何か?

本記事では合格後の実務については取り扱わないと宣言しました。

しかし、司法書士試験の受験を他人に勧める立場である以上、司法書士試験に合格して一番良かったことは何か?というテーマを扱うことは必要だと思ったので記事にします。

大半の人にとって、司法書士試験に合格するメリットは、司法書士になって実務ができることだと思います。しかし、私は実務をしておりません。本音を言えば司法書士実務に、それほど魅力を感じません。

現在、本業でやっているプログラマの仕事が自分にとって天職であり、これを辞めてまで他の仕事をやる気はありません。会社員でありながら司法書士登録をしている方もいらっしゃるので、もしかしたら副業として司法書士をする可能性はありますが、司法書士一本で食べていくことは今のところは考えていません。

※もし、副業で司法書士をやるなら、商業登記一本で行きたいですね。商業登記をしながら、お客さんにシステム開発の提案をして、その実装作業を私個人が請けるか、または私が働いている会社に紹介して、やはり実装作業は私がやるという働き方が考えられます。

では、それすらしない場合、司法書士試験に合格したことは意味が無いのでしょうか?

そうではありません。

端的に言ってしまうと、司法書士に合格して一番良かったことは、私の書く一般人の日記のようなブログは通常なら人に読んでもらえないところ、司法書士試験合格者のブログなら、日記のような記事でも読んでもらえるということがあります。(日記みたいな記事を書いても、芸能人ならともく、一般人の書いた記事なら全く需要が無いと言われますよね?)

そのメリットは、ちっぽけだと思った人もいるかもしれません。

しかし、そのような方は根本的に何かを履き違えています。

ブログを書くことのメリットを副業のアフィリエイトだと考えた場合は、確かにちっぽけな事だと思います。しかし、ブログを書くメリットは本来ならそうではありません。

ブログを書くことの本質は、自分の意見を「表現」することにあります。確かに、私はアフィリエイトをしていますが、それは副次的なものです。本質は「表現」ができることにあると思っています。

事実、ブログのアフィリエイト収益は大したことがありませんが、ブログをやっていて非常に楽しいと思っています。

実は、私は「正義の味方」に憧れています。

正義の味方と言うからには、何かしらの社会の不条理や悪に立ち向かわなければなりません。

そして、ブログや Twitter でも言及していますが、例えば現代社会においては、正社員(新卒採用と年功序列)は社会の不条理です。また、副業のプログラミングをプログラミングスクールのアフィリエイト収益目的で安易にお勧めする行為は、少なくとも私の良心に照らして言えば悪ということになります。副業のプログラミングは、非常にリスクの高い行為ですが、そうしたリスクに言及しない記事が検索エンジンの上位に表示されています。実際にそれを見て副業のプログラミングを目指す人がいます。

こうした社会の不条理や悪に立ち向かう上で、唯一にして最大の武器となるのは、自らの紡いだ文章に他なりません。つまり、自分の意見を「表現」し、社会の不条理や悪に対して、批判を加えることが、それらに立ち向かうために自分にできる唯一つの手段です。

こうした批判は、一般人が書いても読んでもらいにくいと思いますが、司法書士試験の合格者が書いたものであれば読んでもらえます。

私はとって、司法書士試験に合格したことの最大のメリットだと言えるのは、自らの「表現」を支援できることであり、司法書士試験に合格することは、私の「正義の味方になる」という自己実現のためには必要なものだったと言えます。

今のところ、こうした社会の不条理や悪に立ち向かうような行動はそれほど大規模には行っていません。しかし、教材を完成させて余裕が出てきたら、こうした活動にも本格的に取り組んでいきたいと思っています。

というわけで、司法書士試験に合格することのメリットは人それぞれです。登録して実務をすることだけではありません。実務をする自分のイメージが持てないという方でも司法書士試験に挑戦する価値は十分にあります。そこのところを念頭に置いて欲しいです。

答練とは?

答練という言葉を使いますが、よく出てくるわりに知らない方もいるので、簡単に解説します。

答練とは、科目別の模試のようなものです。科目別というところは本質ではなく、科目別でなくても良いのですが、要は本試験と同じ形式のオリジナル問題を解いて、採点をしてもらい順位が出るというものです。

基礎講座を申し込んだときに答練がセットで付いてくるものもあれば、答練を後で買い足す場合もあります。

答練については昔から賛否があるのですが、これについて管理人も明確な意見を持っています。詳しいことは本記事の後半に書きます。

(リンクのみ)択一と記述のどちらが重要か?

記述と聞くと身構えてしまう方が多いでしょう。ですが、司法書士試験では択一が圧倒的に重要で、8割方、択一で勝負が決まります。

これについては次の記事を参照してください。
(参考記事)
https://kyouzai.design/2021/05/28/ss_takuitsu_yuusen/

何故択一が重要なのかについて、次の理由を挙げています。

・記述は択一の延長であって、択一の対策が万全でなければ、記述の対策はできない。
・択一が苦手だと、択一を解くのに時間がかかってしまう。そうすると記述で得点できない。
・択一が苦手だと、記述を採点してもらえない恐れがある。
・記述の対策は難しくない。

択一で合格に必要な点を十分に取れて合格点を上回っても、記述で基準点を割る方がいるのは事実ですが、合格するよりも稀なケースです。

記事では触れていませんが、択一は210点満点なのに対して記述は70点満点という配点の違いも理由です。この配点を見るに択一の方が重要であることは明白です。

しかし、択一を記述よりも苦手としている人が多いのです。これは、択一を得意にできれば大きなアドバンテージになることを表しています。

択一と記述の最適な配分はどうなるか?

択一は基準点に達するまでは比較的対策が容易です。一方で、択一の失点を記述で補う程の高得点を叩き出すのは難しく、対策に時間がかかります。運に左右されやすいという性質もあります。

この点、択一は基準点から点数を積み上げることが比較的やり易く、対策方法も確立されており、運の要素が絡みにくいです。

択一で運が悪く基準点を割ったとおっしゃる方を見かけることがありますが、それは単純に勉強不足です。勉強方法が正しく、かつ十分な勉強時間を確保できていれば、基準点はもちろんのこと、逃げ切り点を取れないということは、まずないです。

択一は、実務的過ぎる論点やマイナーな論点の出題が少ないという特徴があります。厳密にいうとそういう出題もありはするのですが、失点しても問題の無い捨て問が多いです。

一方、記述は実務的過ぎる論点やマイナーな論点の出題が多く、なおかつそれに高配点が付けられる傾向があります。

以上を総合すると、次の戦略が望ましいと私は考えています。

①まずは択一を完璧にして確実に逃げ切り点を取れるようにします。②次に記述の基本的な論点を学習します。③時間が余るようなら、記述の実務的過ぎる論点やマイナーな論点に対策するため、中上級者向け講座や答練を取ります。

①と②までできていれば、択一が基準点を割ったり、総点落ちしたりすることはまず無いのですが、運悪く記述では実務的過ぎる論点やマイナーな論点が出題された場合に記述の基準点を割る可能性を少しでも下げるために③をやります。

もう少し具体的なことを言ってしまうなら、総合勉強時間の8割を択一に充てて、残り2割を記述に充てるぐらいが良いのではないかと思います。

※私は勉強時間を厳密に測っていたわけではないので目安値です。

y軸の意味で難しい問題とは何か?

ここでお話することは、非常に実践的な内容であり、もっと後の方に書いた方が理解し易いのかもしれませんが、「y軸の意味で難しい問題」の概念は司法書士試験を考察する上で、極めて重要な概念だと思います。そして、今後、y軸という言葉を頻繁に使うことになるので最初に説明することにしました。

最初にこれを読んでも意味が分からないという方もいるかもしれませんが、その場合は、サラっと読んで、後でまた読み返してみてください。

さて、突然ですが、司法書士試験の「択一」の勉強において、本試験よりも難しい問題を解く必要はあるでしょうか?

結論から言うと「ある」のですが、これは非常に難しい考察なのです。というのは難易度には2つの軸が有るからです。これは数学に出てくる x軸 y軸のようなものだと思えばいいです。

x軸の方向性では難しい問題を解く必要が無いが、y軸の方向性では難しい問題を解く必要がある。そういう結論が正解です。そこで、司法書士試験の択一式における x軸と y軸がどのようなものであるかを解説します。

・x軸 – 試験範囲から外れた問題

これは、y軸と比べて簡単に説明することができます。この方向性で難しい問題を解く必要は一切ありません。

要するに、些末過ぎる論点や実務的過ぎる論点のことです。

たとえば、民法の雇用契約を挙げることができます。これは過去問での出題実績が全くと言っていいほど存在しません。雇用契約という論点自体、全く記載していないテキストも有ります。

せいぜい雇用契約が「双務、有償、諾成」であることを知っていれば十分でしょう。

もし、x軸の方向性で本試験よりも難しい問題を解いている方がいるならば、直ちに止めてしまうべきだと思います。

もっとも、本試験で「あり得ない!」と感じるような奇問が出題される可能性はあります。その場合の「正解」といえるのは、思考を辞めてランダムにマークしてしまうことです。

私が受験した年も、奇問が1問出題されました。

奇問を見たときにランダムにマークする訓練をしておいた方が良いのは確かですが、それは模試を1回受けておけば十分です。

・y軸

この方向性で難しい問題を解くことは、「択一逃切」を狙うならば、絶対に必要です。

例えば、司法書士試験の本試験では次のような問題が出題されます。これは、y軸の意味で易しい問題の例です。

問1)民事訴訟法に関し、次のうち正しいものは幾つあるか?
ア)訴えの提起は書面(訴状)でしなければならないが、簡易裁判所においては口頭ですることができる。
イ)独立当事者参加の申出は書面でしなければならないが、簡易裁判所においては口頭ですることができる
ウ)管轄の合意、および飛躍上告の合意は必ず書面でしなければならない。
エ)控訴の取下げ、および上告の取下げは、いずれも期日においては口頭ですることができる。
オ)手形、小切手判決に対する異議の申立て、および少額訴訟判決に対する異議の申立ては書面ですることを要しない。

これは私が自作した問題ですが、要するに、択一の問題では肢が5つ提示され、その正誤(○×)を判定させる問題が出題されます。

では、y軸の意味で難しい問題とはどういう問題でしょうか?

端的に言うと次のような問題です。

(問2)民事訴訟法において書面ですべき訴訟行為のうち、簡易裁判所においては口頭でできるものをすべて述べなさい。
(答え)
①訴えの提起
②訴えの変更
③反訴
④中間確認の訴え
⑤支払い督促の申し立て
⑥手形、小切手訴訟の提起

(問3)民事訴訟法において書面ですべき訴訟行為のうち、期日においては口頭でできるものをすべて述べなさい。
(答え)
①訴えの取下げ
②控訴の取下げ
③手形、小切手判決に対する異議の取下げ
④少額訴訟判決に対する異議の取下げ

(問4)問2~3以外で、書面ですべき訴訟行為をすべて述べなさい。
(答え)
①控訴
②上告
③手形、小切手判決に対する異議の申立て
④少額訴訟判決に対する異議の申立て
⑤独立当事者参加の申出
⑥訴訟告知
⑦訴訟手続きの受継の申立て
⑧管轄の合意
⑨飛躍上告の合意
⑩当事者照会
⑪文書提出命令の申立て

(問5)問2~3の答えのうち、紛らわしいものとその理由を挙げなさい。
(答え)独立当事者参加の申出
理由:独立当事者参加の申出は書面ですることを要するが、補助参加の申出は書面ですることを要しない。簡易裁判所においても同じ。

本試験の問題とずいぶん形式が違いますが、問われている知識は共通のものです。

正誤(○×)を判定させる問題が、y軸の意味で簡単な問題、ある概念について口述したり、穴埋めをしたり、スラスラと列挙したりできるようにするのが y軸の意味で難しい問題です。

この問題を見て気分が悪くなった方もいるかもしれませんが、私は司法書士試験ではこのような問題を解くことが最も効率の良い勉強方法だと考えています。

司法書士試験本試験では、5択式の問題が出題されますが、だからと言って普段の学習で5択式の問題を解いていても学習は進みません。

つまり、司法書士試験では、本試験の問題形式と普段から解かなければならない問題の問題形式が根本的に違います。

実は、ここが司法書士試験の勉強方法の一番難しい所で、多くの人はここのところを間違えています。

余裕のある方は、次の参考記事もお読みください。

(参考記事)

https://kyouzai.design/2020/03/21/ss_yjiku1/

https://kyouzai.design/2020/03/23/ss_yjiku2/

https://kyouzai.design/2020/03/25/ss_yjiku3/

https://kyouzai.design/2020/03/27/ss_yjiku4/

y軸の意味で難しい問題を網羅した教材

私は、y軸の意味で難しい問題を網羅した教材を自作しようとしています。

(参考記事)

https://kyouzai.design/2020/03/29/ss_yjiku5/

https://kyouzai.design/help/

この体験版を公開しました!

こちらからお使いいただけますので、興味がある方はダウンロードしてみてください。

https://kyouzai.design/2023/09/20/alfa/

択一と記述のどちらが難しいか?(何故、択一が苦手な人が多いのか?)

司法書士試験では択一を記述よりも苦手としている人が多いです。

なぜ、択一が苦手になるのかと言えば、上で述べたような y軸の意味で難しい問題を解く必要があるにもかかわらず、できない、あるいはしない人が多いからです。

y軸の意味で難しい問題は、本試験の問題形式と大きく違いますので、まずその必要性に気付きにくいと言えます。

また気付いたとしても、そのような問題集が少ないですし、使い方に工夫が必要なのも難しいところです。更に言えば、このような y軸の意味で難しい問題を解くのは、大変な苦行になります。

必要性は理解できるが、苦行に耐えられないという人もいるかと思います。

一方で記述には、y軸の意味で難しい問題という概念がなく、オートマ記述式のような問題集や過去問、答練を解きまくることで実力が伸びます。言い方を替えるなら、本試験の問題形式と普段から解かなければならない問題の問題形式が一致しているということです。

多くの受験生は、普段は漫然と本試験の問題形式と同じ形式の問題をやっていると思います。その場合、択一が苦手になり易いのです。そして、再度になりますが、そのような勉強方法は間違いであり、短期で合格したければ、y軸の意味で難しい問題を解く必要があります。

私に言わせれば、記述よりも択一の方が圧倒的に対策し易いです。択一は y軸の意味で難しい問題を解くことさえできれば、確実に実力が伸びますし、確実に逃げ切りに必要な点も取れます。

既に述べた通り、記述は実務的過ぎる論点やマイナーな論点の出題が多く、なおかつそれに高配点が付けられる傾向があります。こればっかりは対策のしようがなく、実力のある人でも運頼みにならざるを得ません。

なので、私は択一が得意で記述が苦手ですが、他の多くの人は択一が苦手になりがちなのだろうと考察します。

司法書士試験はどう難しく
どれくらい難しいのか?
(正しく警戒しましょう。)

世間では、司法書士試験は極めて難易度の高い試験だとされています。これは間違いないですが、かなり誇張されて、見当違いになっている意見もあります。

難しいのは間違いないですが、難しさには「いろいろな方向性」があると言えます。ここのところを履き違えたままでは、努力の方向性を誤ってしまうので合格できません。

「敵を知り己を知れば百戦危うからず。」と言う言葉があります。まずは敵である司法書士試験について知ることが大切です。この言葉の通りに行けば己を知ることも必要ですが、司法書士試験は「己を知る」のが難しい試験でもあります。ですが、己を知る方法にコツがあり、これは記事の後の方で説明します。ここでは、司法書士試験を正しく知り、正しく警戒できるようになるための情報を書きます。

司法書士試験が本来以上に難しいと誇張する立場の人たちには、おそらく、ベテラン受験生のような「合格できない人たち」が多く含まれているのではないかと思います。自分が受からないのは試験が難しいからだという風に持って行き、不合格を正当化したいのかもしれません。

逆に、司法書士試験を簡単だと流布する人たちもいます。これは主に予備校の講師です。予備校としては受験生が増えた方が儲かるので、司法書士試験は努力すれば誰でも受かるという風に持って行き、受験生を増やしたいのかもしれません。

必要以上に難しいという認識があると勉強方法が迷走します。例えば、司法書士試験では、学問レベルの法学の知識や実務的過ぎる知識は必要が無いのですが、そういうものを勉強してしまう可能性があります。限られた時間の中で勉強するのですから、そういうものを勉強していると、本当に勉強すべきことを勉強する時間が無くなってしまいます。

逆に、実態を無視して簡単だという認識があると合格できません。これは舐めてかかってしまい、勉強の仕方が雑になりったり、サボっったりしてしまうということです。

では、司法書士試験はどう難しく、どれくらい難しいのでしょうか?

司法書士試験は極めて難しい試験だとされ、それは事実ではあるのですが、実は「簡単な面」があります。また、難しい面とも簡単な面とも言えない難易度に関する特徴も存在します。難しい面だけでなくこれらについて知っておくことも必要です。

「簡単な面」の方が短く説明できるので、先に簡単な面をお話します。

司法書士試験の簡単な面

①学問レベルの法学知識や実務的過ぎる知識が要求されない。
②その場で考えなければならないことが少ない。
③独学と予備校で大きな差が付かない。

「①学問レベルの法学知識や実務的過ぎる知識が要求されない。」というのは、学歴が必要でなく、かつ補助者として働いた経験も必要が無いことを表しています。司法書士試験に、学問レベルの法学知識や実務的過ぎる知識は出題されないからです。厳密にはごくまれに出題されますが、これらは捨て問であり、正解する必要がありません。より厳密に言うと、実務的な問題は沢山出題されますが、必要なことは全てテキストに書いてあります。

私は、司法書士試験以外にもいろいろな資格試験を受験しています。

その中には、実務的過ぎる知識が要求され、実務経験がある人の方が圧倒的に有利な試験も含まれています。未経験者だと1年かかるところ、実務経験者なら極端な話が無勉でも合格できるというような試験も実在します。

私は学問レベルの知識が必要とされる試験は受験したことがありませんが、少なくとも私は法学部卒ではありません。この事実と他の試験の体験から、「①学問レベルの法学知識や実務的過ぎる知識が要求されない。」というのは自信をもって言い切ることができます。

というか、司法書士試験で要求される専門知識の難易度は、小学校や中学校の義務教育のレベルです。昔、義務教育の勉強に付いて行けた人であれば、司法書士試験の試験範囲は余裕で理解できます。中学生や高校生でも合格は可能だと思います。

とにかく伝えたいこととしては、司法書士試験で学習する専門知識そのものは全く難しくないと言うことです。

「②その場で考えなければならないことが少ない。」というのは、ほとんどの問題は、知識さえあれば解けてしまい、例えばパズルを解くような問題は出題されないということです。これも、厳密に言えば、不動産登記法の登記記録問題でパズルを解くような難解な問題が出題されたことがあるのですが、捨て問だと思います。司法書士試験の午後はかなり制限時間が限られていますから、じっくり時間をかけてパズルを解くような問題は、そもそも飛ばしてしまっても構いませんし、むしろ飛ばす方が正解かもしれません。

既に言った通り、私は司法書士試験以外にもいろいろな資格試験を受験しています。その中には、その場で考えなければならない問題や、パズルを解くような問題が出題される試験もあります。

例えば、基本情報技術者がこのタイプの試験です。基本情報技術者のアルゴリズムと言語問題はまさにパズルだと言えます。その場で考えなければならない問題は、知識が無くても解けるので、事前の対策の必要性に乏しいですが、一方では、頭を使うので苦手な方も多いです。

他の試験の体験から、「②その場で考えなければならないことが少ない。」ということも、自信をもって言い切ることができます。

要は、司法書士試験は余り頭を使いません。作業的に覚えていれば十分な点を取れることが殆どです。

「記述はパズルじゃないの?」と、思った方もいるかもしれませんが、基本情報技術者のアルゴリズムや言語問題と比べて、司法書士試験の記述は遥かに頭を使いません。司法書士試験の記述はパズルのようでいて、パターンがあり、研ぎ澄まされた知識さえあれば、頭を使わなくても解ける問題が殆どだと思います。

最近の記述で多いのが、どのテキストにも載っていないような非常に実務的な論点が出題されて、それが合否の分水嶺となる場合です。しかし、それはパズルではありません。運の問題です。

「③独学と予備校で大きな差が付かない。」というのは、独学でも予備校を利用した場合でも合格の可能性や合格に必要な労力が大差ないことを表しています。司法書士試験は市販の教材が非常に充実しています。他の資格試験の経験から言ってもこれほど市販の教材が充実している試験はあまりありません。

例えば、私は中小企業診断士を受験しようかどうか迷ったことがあるのですが、教材(特に二次試験)が全くと言っていい程、市販されていないため、断念しました。

ですが、司法書士試験はそういう試験ではありません。

必要な教材の殆どは市販されていて、誰でも手に取ることができます。完成度も非常に高い教材です。実際に大規模な本屋さんの資格試験コーナーに行けば分かると思いますが、司法書士試験の教材は、何故だか分かりませんが、ものすごく充実しています。

ただし、記述だけは市販の教材では不安が残ります。市販の教材だけで合格できなくは無いのですが、運の要素が絡みますので、記述だけでも予備校を利用した方が望ましいのではないかと思います。

次は、司法書士試験の難しい面をお話します。

司法書士試験の難しい面

①最低でも3000時間は勉強時間が必要である。
②とにかく覚えることが多く、苦行になる。
③覚えることを忘れるので、苦行になる。
④合格できなければ、またやり直しになる。
⑤試験が年に1回しか開催されない。
⑥以上の性質から、メンタル的な強さが要求される。
⑦勉強方法を間違いやすい。

「①最低でも3000時間は勉強時間が必要である。」は、なかなか常識を逸した勉強時間です。先ほど引き合いに出した基本情報技術者も、難関資格試験ではありますが、実務経験の無い素人でも、数百時間あれば十分に合格できます。

3000時間を1年で消化するならば、最低でも1日8時間は勉強する必要があります。これほどの勉強時間を要する資格試験はあまりありません。

「②とにかく覚えることが多く、苦行になる。」というのはこの資格試験の本質に迫るお話です。例えば、次の数値が何であるか分かるでしょうか?

3.14159265358979323846264338327950288419716939

これは、π(円周率)の近似値です。私が小学生の頃に、趣味で覚えたものをそのまま大人になっても記憶していて、何も見ずにソラで書き出したものです。試しに、時間がある人にはこれを覚えてみて欲しいのですが、大変な苦行になります。

実は司法書士試験では、これとは比較にならない程の量の知識を覚える必要があります。本屋さんに言って確認すれば分かるのですが、司法書士試験は基本書(テキスト)だけでも、電話帳を凌駕する厚さになります。これに加えて過去問や、人によってはサブテキストもやらなければなりません。

※ただし、幸いにも、司法書士試験では、πの近似値と違って、無味乾燥な数値を一字一句覚える必要はありません。

これは頭を使わないのである意味、楽ですが、単純作業的になってしまい、人によっては大変な苦行となります。私は、こうした記憶の作業が苦行にならないのですが、むしろ学歴が高く学校で専門的な勉強をしている人ほど、頭を使わないこの作業が苦行に感じるかもしれません。

ブログには書いていませんが、RPG(ロールプレイングゲーム)のレベル上げ作業をするのが苦行にならないという人には司法書士試験は向いているかもしれません。RPG(ロールプレイングゲーム)は、作品によっては、苦行となるような周回作業を要するものがあります。司法書士試験も、それとよく似ていると思います。

たまに、好きなことに対する集中力が私の取り柄です、とおっしゃる方がいます。私も、好きなことに対する集中力が取り柄だったのですが、司法書士試験をやっていると、この認識を改めざるを得なくなりました。というのは、司法書士試験の勉強は、好きでやっていても苦行になるからです。

「③覚えることを忘れるので、苦行になる。」というのは、受験勉強を始めるまでは分からない感覚です。上記のように、ものすごい苦行をこなして覚えたことでも、数日後には忘れてしまい、過去問を解いたら基本的なミスをすることがあります。

これに対する根本的な解決策は、何度も繰り返し覚え直すことです。覚え直しをすることで知識が定着し、忘れなくなっていきます。しかし、覚え直しは新しい知識を覚える以上に苦行となります。忘れていることを実感する度に、「これで本当に試験に合格できるのか?自分は馬鹿なんじゃないか?」と不安になるものです。そうすると勉強する気力も奪われていきます。

しかも、何度も繰り返し覚え直しをする間にも、タスクは積みあがっていきます。復習しながら新しいことを勉強しなければならないのです。例えば、民法の学習が終わっても、会社法を勉強している頃には「忘却」が始まっています。これに対する解決策としては、会社法を勉強しながら、民法の復習も進めなければなりません。

こうした苦行感に対する対策としては、どの受験生も同じことをやって合格しているということを知ることです。予備校を利用している場合は、周りの人もやはり自分と同じ境遇に置かれていて、忘れるのは当たり前のことだと言うことを実感することができると思います。予備校を利用していない独学の場合は、合格者の合格体験談を自分なりに探して読んでみることをお勧めします。これは合格者であったとしても誰もが通る道です。そう考えれば苦行感がいくらか緩和されます。だからこそ、勉強すること以上に合格体験記を読み漁ることが大事だと述べました。

「④合格できなければ、またやり直しになる。」というのは、③とも関係してきます。この試験では、勉強したことを忘れてしまうという性質があると述べました。

この性質があるせいで、1年真面目に勉強して不合格になってしまった場合は、せっかく学んだ知識が2年目ではアドバンテージになりません。

「1年間勉強して落ちたけど、合格点に近い点数を取れたんだから、学習が進んでいるんだ。」と、考える人がいるようですが、この考えは危険です。1年で合格できる人がいる以上、勉強をサボってしまえば簡単に追い抜かれてしまいます。

「⑤試験が年に1回しか開催されない。」というのは皆さんもご存じだと思いますが、国家試験で年に1回しか開催されないというのは少ないです。引き合いに出した基本情報技術者は年に2回開催されます。司法書士試験は、一度落ちると1年待たないと再受験ができません。勉強がやり直しになると言いましたが、それが半年ではなく1年なのは、心理的には非常に負担になります。

「⑥以上の性質から、メンタル的な強さが要求される。」というのは、実際に受験生という当事者にならないと分からない感覚です。

司法書士試験には、専業受験と兼業受験の方がいますが、どちらについても言えることで、莫大な時間的投資が必要です。3000時間といえば、時給千円で働いたとしても、300万円です。金銭的な話以上に、時間そのものも重要で、趣味の時間等も我慢して勉強しなければなりません。要は、懲役1年食らうようなものです。合格できなければこの懲役の時間が伸びることになります。

専業受験と兼業受験のどちらであっても、失敗すれば懲役1年という場に置かれれば非常に強い不安に置かれます。常に胃が痛い感じです。私もそうでした。これが専業受験だと更に別の不安が加わります。日本社会では経歴に受験生やニートといったブランクを作ると再就職が不利になります。これはかなり不条理に感じるのですが、今の社会はそういうものです。そのため、専業受験の場合は、合格できずに挫折した場合は、次の就職が見つからなくて路頭に迷うのではないか?という不安もあります。

この不安は、本試験の真っ最中にも襲ってきます。よくあるのが緊張して手が震えて鉛筆やボールペンを握れないというものです。私は全く緊張しませんでしたが、ここで実力を出し切れない可能性がある人もいると言うことは頭の片隅にでも置いておいた方が良いと思います。

また、これは受験後の話なのですが、司法書士試験の合格発表は、試験の3カ月後に行われます。3カ月もの間、合格しているかどうかわからない状況に置かれるのは、筆舌に尽くし難い不安を感じます。

「⑦の勉強方法を間違いやすい。」というのは特に択一で問題になります。択一は本試験では5択式ですが、普段の学習で5択式の問題を解いても択一の実力は付きません。これを勘違いして、ひたすら5択式の問題を解いてしまうと合格できません。独学だと勉強方法を間違いやすいのですが、では、予備校だと勉強方法を間違わないかと言えば、そうとも思えないトラップがあります。このトラップや勉強方法の誤りについては本記事の後半で解説します。

難しい面とも簡単な面とも言えない特徴

もう一度まとめます。

①学問レベルの法学知識や実務的過ぎる知識が要求されない。
②その場で考えなければならないことが少ない。
③独学と予備校で大きな差が付かない。
④最低でも3000時間は勉強時間が必要である。
⑤とにかく覚えることが多く、苦行になる。
⑥覚えることを忘れるので、苦行になる。
⑦合格できなければ、またやり直しになる。
⑧試験が年に1回しか開催されない。
⑨以上の性質から、メンタル的な強さが要求される。
⑩勉強方法を間違いやすい。

特に太字の部分に着目していただきたいのですが、ここから派生することとして、頭が良い人だろうと悪い人だろうと、初学者だろうと学習経験者だろうと、誰が勉強しても平等に3000時間かかると言えます。言い方を替えると、特別な才能も学歴も要求されないということです。

以上から、今まで勉強を真面目にやってこなかった人や、金銭的な事情で、できなかった人でも合格の可能性は十分にあるという特徴があります。

逆に、今まで積み上げてきたものがある人ほど、変なプライドを持ってしまい、それが勉強をサボってしまう要因になり得るということもあるかもしれません。

それから、司法書士試験は相対評価の試験です。

これは不条理さが入りにくいという受験生にとってはありがたい要素になります。

絶対評価の試験の場合、問題が異様に難しい年に受験してしまうと、きちんと対策していても不条理に落ちてしまうことがあります。その点、司法書士試験は運の要素はあるとは言え、勉強したことが、そのまま試験結果に反映されやすい試験です。

司法書士試験に受かるには、
どのくらいの「頭」が必要なのか?

※ブログと内容は被ります。

これは、司法書士試験に今から挑戦しようとしている人、また既に挑戦している人には非常に気になるテーマだと思います。

司法書士試験は努力さえできれば、誰でも受かる、と宣伝する方がいます。そういう方には、予備校の講師が多いのでしょうが、先も述べた通り、予備校の講師は受験生を増やして儲けたいのです。

「努力さえできれば、誰でも受かる。」よりは「最低でもこのくらいできれば受かる。」の方が信用できると思ったので、私の考えを説明させていただきます。

なお、私は、予備校の関係者ではありません。ブログには予備校のアフィリエイト広告を掲載していますので、少々説得力に欠けるかもしれませんが、これは有料記事ですから、記事を買っていただいた方の参考になることを、最優先して書くべきだと考えています。

「どのくらい頭が良ければ司法書士試験に受かるか?」これは私の学業成績を示すことで説明に代えさせて頂きたいと思います。

私の義務教育(中学)の学業成績は、学年で上位3分の1~上位4分の1に入るぐらいの成績でした。

ちなみに、高校に至っては進学校ですらありませんし、偏差値等気にしたこともない程、学業への取り組みは不真面目でした。

これでも私は圧倒的な成績で司法書士試験に合格しています。なので、成績を気にせず、司法書士試験に受かるだけなら、義務教育の学業成績で平均点レベルがあれば、合格する素養は十分にあるのではないかと思います。義務教育の成績で、学年トップになる必要は全くありません。

※私は部活をしていて、それほど勉強にがっつりと時間を割いていたのではありません。また、高校受験の直前まで塾には行っていませんでした。

どの科目が得意なのかも重要です。

私は、社会と理科が極めて得意で、これらの科目が全体の平均点を押し上げている状況にありました。これら2つの科目は、誰にも負けず、学年トップでした。私は科目によって得点にかなりばらつきがあり、特に英語が苦手で、一桁を取ったこともあります。

司法書士試験は「とにかく覚えることが多い」と申し上げましたが、中学の理科と社会も暗記科目の性質が強いです。

よって、理科と社会が得意だった人には司法書士試験は向いている可能性がありますし、逆に苦手だった人には難しく感じるかもしれません。

もちろん、暗記のためには記憶力が必要です。

そこで問題になるのは、記憶力が必要だとして、どのくらいの記憶力が要求されるかと言うことです。

これも私の記憶力を示すことで説明に代えさせて頂きたいと思います。

私は、日本国憲法の前文を2週間程度で、学校に行きながらその片手間で、完全暗記して、何も見ずに言えるようにしたことがあります。

一字一句、間違いなく言えるようにしました。

司法書士試験では条文を一字一句、間違いなく言えるようにしなければならない場面は稀です。肢を見たときそれが〇か×かを判定できれば十分な場合もあります。しかしながら、この課題は記憶力を測る上で参考になると思います。

このレベルの記憶力があるなら、司法書士試験に必要な記憶力の要件は満たしているのではないかと思います。

司法書士試験は1年で合格できる。しかし…

司法書士試験は1年で合格できる試験です。

しかし、実際には受験が長期化してしまい、10年以上かかる方もいます

それで受かればまだいいのですが、挫折する人もいます。

この原因は3つに分けることができます。

①絶対的な勉強時間の不足
②勉強方法の誤り
③勉強方法が甘い

「①絶対的な勉強時間の不足」について説明します。既に述べた通り、司法書士試験に合格するには最低でも3000時間は必要です。3000時間を1年で消化しようと思えば、最低1日8時間は勉強する必要があります。Twitter のアンケート投票を見ていると、実際に8時間以上勉強している人は少数派です。

よって、合格できない人の大半の人が①に該当し絶対的な勉強時間が足りていないのではないかと思います。例えば1日1時間勉強しても1年で365時間にしかなりませんから、10年近くかかることになります。というか、こんな勉強の仕方では10年かかっても受かりません。というのは、法律の勉強には法改正の問題が付いて回るからです。法改正があると今までの勉強が無駄になってしまいます。そして、既に述べた通りですが司法書士試験は「忘却」との戦いです。「忘却」に立ち向かうには、忘れる速さを上回る速さで知識を仕入れる必要がありますが、1日1時間では、忘れる速さに勝てないのではないかと思います。

「②勉強方法の誤り」について説明します。司法書士試験は勉強方法を間違えたままでは、いくら勉強しても合格できません。具体的には、次のような勉強方法は間違いだと考えます。

・要点をまとめたノートを作る。
・過去問の正誤だけ覚える。
・答練を受けまくる。
・条文を毎回引く。
・復習をしない。

※これらの勉強方法が何故ダメなのかについては後で解説します。

逆に、これをやらないと受からないという勉強方法もあります。これは、本記事やブログで解説している y軸の意味で難しい問題を解くことです。

「③勉強方法が甘い」これが一番厄介です。勉強方法が大枠では正しいものの、勉強方法を妥協してしまう人がいます。例えば、に講師が「ここは、難しい割に出題可能性が低いので、余裕が無ければ飛ばしても良い。」という指示を出すことがあります。また、予備校によっては論点にA,B,Cでランク付けをしていることもあるでしょう。

こういう指示を真に受けて勉強方法を妥協してしまうと、絶対に受からないわけではないのですが、運の要素が絡むことになります。たまたま妥協してしまった分野が出題されなければ良いですが、出題されれば大きく失点することになります。

実は、合格してもおかしくないレベルに達している受験生はかなりたくさんいます。ですが、確率が絡みます。例えば、上で説明した予備校の指示を真に受けると、合格できる可能性は五分五分(50%)ぐらいになってしまうかもしれません。

これを「合格レベルにある方」と言います。合格レベルにある方は全体の10%ぐらいいると私は考えていますが、そこから実際に合格するのが非常に難しいとも言われています。

五分五分の人なら2回受験すれば受かるだろうと考えがちですが、そうではありません。

高校数学の確率の話を思い出して欲しいのですが、「1回の受験で合格できる確率が50%の人」が2回の受験で合格できる確率は75%しかありません。
計算式は次の通りです。

1-(1-0.5)×(1-0.5)=0.75

五分五分で受かるだろうと思っている人がいたとして、その自己分析が適切であっても、2回の受験で受かる確率は、75%しかありません。

これに対する対策としては、一切妥協せずに、テキストに書いてあることは全部覚えるという方針で勉強することです。

そうすると、どんな問題が来ても大丈夫になって、運の要素を排除することができます。そして、そういう勉強をすれば、圧倒的な成績を取れるようになり、ただ受かるだけでなく上位合格できます。

そして、この上位合格は、市販の教材だけを使った独学でも一応可能です。一応としたのは、記述に不安があり、運が悪いと記述で基準点を割る可能性があるからです。択一は、市販の教材だけを使った独学でも運要素を排除し尽くすことができるというのが私の意見です。

兼業受験で勉強に費やせる時間が限られている場合は、多少運の要素が絡むとしても妥協せざるを得ないこともあるかもしれません。しかし、専業受験の場合で妥協するのは、私に言わせれば甘えだとしか思えません。

この記事が想定しているのは専業受験です。専業受験の方はここのところをよく踏まえた上で、妥協しない勉強を心がけていただきたいと思います。

司法書士試験は運の要素が絡む?

これは、「司法書士試験の難しい面」の章で解説すべき内容だったのかもしれませんが、長いので独立した章にしました。

司法書士試験には運の要素があると言われています。私は、これには、半分同意しますが、半分否定します。

これは、択一と記述で事情が異なるのです。

どちらも既に述べていますが、択一の場合は、市販の教材だけを使った独学でも、圧倒的な成績を取り、運の要素を排除し尽くして合格することが可能です。

しかし、記述の場合は、予備校の教材を利用していても運の要素を排除しきれないと私は思います。

※とは言うものの、市販の教材と予備校の教材の両方をやり込んでいれば、95%以上の確率で合格できるだろうという自信を持てる段階には至ります。

具体的な事例としては、平成25年度の商業登記法の問題があります。

平成25年度の商業登記法にはゼロ減資の問題が出題されました。受験生時代に匿名掲示板で調べたことがあるのですが、ゼロ減資の論点を消極だと判断して答案を書いた人は商業登記記述の点数が一桁になったという情報があります。

ゼロ減資の論点は、ほとんどの予備校が想定しておらず、受験生の多くは、その場の勘と度胸を頼りに解かなければならなかったと言われています。

このように、記述は、予備校を利用していたとしても、突拍子もない問題が出題され、なおかつそれに高配点が付けられることがあります。

そのため、私は記述だけは運の要素が絡むという考え方をしています。

ただし、この論点を掲載している書籍がありました。それは、オートマシステムの記述式です。

オートマシステムの記述式は、どちらかと言えば独学者に愛用されていますから、予備校を利用している方よりもむしろ独学者の方が有利になったのではないかと思います。

これに対する対策としては、予備校の記述対策講座を受講しておくことと、逆に予備校を既に受講している方は、オートマシステムの記述式のような、市販の書籍にも目を通しておくことです。

市販の書籍に書いてあることは、独学者でも知っている情報であり、それがそのまま出題された場合は、かなりマイナーな論点であっても落とせないと言えます。

参考にすべき合格体験記

※ブログと内容は被ります。

受験勉強以上に合格体験記を読んでおくことが重要だと述べました。そして予備校の関係者が書いたものではない中立的なブログを参考にするのが望ましいです。ここでは特にお勧めの合格体験記を紹介させていただきます。

他にもお勧めはありますが、本記事では厳選することにしました。次の2つのブログは、面倒臭がらずに全記事に目を通した方が良いです。

(参考サイト)
司法書士試験の勉強法プラス

@40さんという方のブログです。

このブログは、現在、私のブログと相互リンクになっているのですが、受験生時代に大変参考にさせていただいていたブログです。このブログが無ければ私は司法書士試験に合格できなかったかもしれません。

このブログの筆者は、LECさんの実践力PowerUp講座を利用して、圧倒的な成績で合格されています。

無料記事であり、今も無料なのですが、仮に1万円の有料記事だとしても読む価値があると思います。

(参考サイト)
独学5ヶ月の司法書士試験

独学5ヵ月で合格したのではなく、不合格になった方の記事です。この方は最終的に合格しているのですが、かなり勉強方法が迷走しています。

やった方が良い勉強方法を知ることも大事なのですが、この方のブログからはやってはいけない勉強方法を知ることができます。

独学と予備校のどちらがお勧めか?

本記事のテーマに反することを扱います。

このテーマについては次の記事で述べていますので、まずはこれを読んでください。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2020/03/31/ss_dokugakuvsyobikou/

司法書士試験に合格するためには、あまり独学をお勧めしません。この最大の理由は、参考記事の方では述べていないのですが、記述に不安があるからです。

この記事に次のような部分があります。

本章では参考記事の方で述べていない、「予備校を使う次点のメリット」を解説します。

司法書士試験を受験していると家族が敵になることがあります。家で勉強していると遊んでいると思われ、受験生から取ってみると情け容赦のないやる気を挫かれるようなことを言われるのです。

遊んでいると思われると、不条理に用事を頼まれることがあります。

資格試験は仕事と同じですから、不条理に仕事を頼むという行為は、職場に出社した人に対して、「用事があるから、ちょっと帰ってこい!」と言われ、帰ったら雑用を頼まれるというのとまったく同じです。

不条理すぎます。

酷かったのでは、私はこんなことを言われました。

・「仕事しないなら出て行け!」
・「お前が受かるわけないだろ!受かったら奇跡!」

「仕事しないなら出て行け!」は本当にひどいと思いました。というのも、予め家族には受験勉強をすると伝えてありましたし、家庭の生計に協力するのに必要なお金も家族に支払っていましたし、家族に何の迷惑もかけていなかったからです。

そして、既に仕事を辞めていますから、そこで出て行けと言われても、出ていきたいのはやまやまですが、賃貸審査に通りません。

もっと言えば、私の場合は、受験勉強をするにあたって「家を出ていく。」と伝えたのですが、それを家族が引き留めてきました。

「引き留めていておいて、出て行け!」は無いだろう、とさすがに切れて暴れました。

暴力に訴えたので、これは褒められたことではないでしょうが、それ以降、家族は干渉してこなくなりました。

家族に言われたのが「ニートがいると近所の人に対して世間体が悪い。」ということでした。しかし、むしろ近所の人に私が受験をしていることを知られてからは、近所の人の方が、私に応援の言葉をくれるというほどでした。

家族は本当に信用できないものだと思いましたし、このことから家族を大事にすべきという道徳を強く疑うことになりました。

よく、合格体験記に、「家族の支えがあったからこそここまで来ました。」というのがありますが、この台詞を見ていると強い苛立ちを感じます。家族の干渉に悩んでいる方は、合格したときには、こんなテンプレ通りの台詞を言う必要性は全くありません。

話が逸れました。

そこで思ったのが、こうなってしまった原因のひとつに、私が独学だったのがあったのではないかと言うことです。(私が予備校の講座を取ったのは、年が明けてからです。家族の干渉が酷かったのは年が明ける前です。)

ある人から受けたアドバイスに、「周囲の人の理解を得たければお金を投資するか、労働力を投資するかだ。」というのがあります。この場合は、お金を投資する方が遥かに簡単です。そうです。予備校にお金を注ぎ込んで投資をすればよいのです。

労働力の投資は、毎日8時間勉強し、それを継続し、模試で良い点を叩き出してはじめて有効なので、受験勉強をかなり進めてから効果が出始めます。学習初期では有効ではありません。

(勉強を継続し、年明けに私が予備校の講座を取ったころには、家族もいくらか私に協力的になりました。)

このように、周囲の人の理解を得るために、予備校を利用するという手もあります。

※ただし、逆に「どうせ受からないのに、大金かけやがって!」ともっと酷いことを言われる可能性もあります。

専業受験か兼業受験か?

本記事は専業受験を想定していますが、兼業受験で司法書士試験に挑戦している方もいるでしょう。

専業受験と兼業受験のどちらがお勧めかと言えば、圧倒的に専業受験です。というか、私自身が兼業受験では合格できる気がしません。

この理由のひとつとしては、司法書士試験は「忘却」との戦いであると言うことを挙げることができます。

既に述べた通り司法書士試験では勉強したことをバンバン忘れていきます。忘れることは仕方のない現象なのですが、「忘却」を上回る速さで勉強することが必要です。

兼業受験の場合、1日当たりに取れる時間がかなり限られてきます。例えば、4時間程度でしょうか。

忘れる速さが「1日当たり2時間分」だと仮定します。そうすると専業受験で8時間勉強すれば、有効な勉強時間は6時間です。これが、兼業受験だとすると、有効な勉強時間は2時間しかありません。

忘れる速さが「1日当たり2時間分」という仮定が正しいのかという問題はありますが、兼業受験の場合、専業受験の2倍ではなく、3倍の勉強時間が必要です。つまり、3年かかることになります。

以上から、専業受験の場合は、合格までにかかる絶対的な勉強時間を大幅に短縮することができます。

ただし、人それぞれ向き不向きがあるとは思います。

専業受験の場合は、特に仕事を辞めているなら、強烈に心理的に追い込まれてしまいます。受からなかったらどうしよう…?受からなかったら、死ぬか生活保護になるかもしれない…。ということです。私も非常に強い不安を感じていましたが、一方では、それが勉強に打ち込む原動力になった面があります。

兼業受験の場合、本業の収入あるのでいくらかお気軽に受験することができます。ただ、会社に行くだけで固定で収入が得られる状況にあると、人間、楽な方に流れてしまうもので、勉強に身が入らなくなる可能性もあります。私がこのタイプで、兼業受験は無理だと思いました。

要は、専業受験の場合、背水の陣のメリットとデメリットの双方を持つことになるのです。

不安に耐えられる人、むしろそれを勉強に打ち込む原動力にできる人、とにかく短期間で合格したい人、の全ての要件を満たす人には専業受験をお勧めします。

基礎だけで良いのか?

司法書士試験の対策として、基礎ができていればよいので、基礎を徹底的にやり込もうという主張があります。

この考え方は危険です。

最初に、「基礎」が何を意味するのかという問題があります。

例えば、義務教育の勉強で使うノートのようなもの(Aランク知識)と過去問既出の知識を基礎だと考える方がいると思います。

義務教育の勉強では板書が重視されます。テキストの中で、重要な点を教師が黒板に書き、それを生徒がノートに写します。そして、義務教育のテストではテキストよりもむしろ教師が黒板に書いた内容から出題されます。そのため、黒板から書き写したノートが最も有用な教材となります。

また、義務教育の勉強では、板書の他に過去問が重要です。板書と過去問の知識だけでも、一般的な公立の進学校には合格できてしまうでしょう。

しかし、司法書士試験ではこのような勉強方法は無効です。それは、講師が黒板に書いてそれを書き写せるレベルの知識(テキストの要点のみ)では、合格点を取れないからです。また、ブログでも繰り返し述べていることですが、過去問の知識だけでは司法書士試験の合格点には及ばないことが、定量的なデータによって明らかにされています。毎年、松本雅典先生が、今回の本試験は過去問だけで何点取れたかを公表されていますが、択一基準点にも及びません。

では、合格に何が必要かと言えば、テキストに書かれている知識です。過去問に出題されていないテキストの内容が合格には必要なのです。このような知識を「未出の知識」と言います。

基礎だけで良いというのが、板書できるようなテキストの要点と、過去問を示しているのであれば、基礎だけでは合格できません。

ここは、基礎の定義の問題で、例えば基礎というのがテキストの内容全てを覚えること、であれば、基礎だけで合格できます。

(リンクのみ)お勧めしない予備校、講座、講師

このテーマについては次の記事で述べています。これを読んでください。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2021/05/30/ss_hisuishou/

お勧めの予備校、講座、講師

これは、本記事のテーマに反するかもしれませんが、取り扱わせていただきます。

まず、先に言っておくと、私は予備校をほとんど利用していないため、このお話はエアプ発言であり、単なるたわごとになっている可能性があります。
それを踏まえた上でご覧ください。

お勧め1位は松本雅典先生の講座です。

お断りしておくと、私は松本雅典先生の関係者でも、辰巳さんの関係者でもありません。ブログではアフィリエイトをしていますが、辰巳さんとは提携しておらず、私が松本雅典先生を推しても営利性は一切ありません。

エアプ発言と言いましたが、私は松本雅典先生の「5ヵ月合格法」の書籍は読んでいますし、松本雅典先生のブログの記事もたまに読んでいます。それで、松本雅典先生の受験の考え方には同意し共感が持てると思いました。

ブログでもこの記事でも、松本雅典先生について、私は批判もしています。しかし、批判をしていない点につては、非常に同意し共感が持てるとも思っています。(同意も共感も持てないが、反対でもないと言うこともたくさんあります。)

例えば、次の点には同意し共感が持てます。

・テキストでアウトプットする。
・答練や模試から知識を拾わないといけないテキストは欠陥商品である。
・毎年、テキストだけで何問獲れるかを公開してテキスト中心の学習を推奨する。
・1000のあやふやな知識でも、10の正確な知識でもダメである。講師が100と言ったら100しかありえない。

特に、「・テキストでアウトプットする。」は私の y軸問題に非常に近い考え方です。松本雅典先生以外にこの主張をしている方は、私の知る限りでは存在しません。(@40さんの「書き出しと完全暗記」がこれに近い考え方ではあり、これは非常に参考になります。)そして、私は、この方法論が無ければ、合格できないとも考えています。

以上から、松本雅典先生の講座を第1位に挙げさせていただきました。

ただ、個人的な問題ですが、松本雅典先生の講義は少々聞き取り辛く感じました。ここは好みが分かれるところかもしれません。

お勧めの講座第2位は、「スタディング/STUDying/通勤講座」です。

スタディングの講座に、要点暗記ツールというものが付属しています。はっきり言ってこれが講座の本体だと言っても過言ではありません。

要点暗記ツールとは、司法書士試験の要点を穴埋め形式で学習できるようにしたものです。

例えばこんな感じです。

「権利の行使及び義務の履行は、■■■■■■■に行わなければならない。」

ここで、■■■■■■■をクリックすると

「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」

と、原文が浮かび上がるようになっています。

※この問は私が自作したものです。実際のスタディングの要点暗記ツールにこの問は存在しません。

これは、私がいうところの y軸の意味で難しい問題に非常に近いものです。

私は、既に述べた通り司法書士試験に合格するにはこのような y軸の意味で難しい問題を解くことが不可欠だと考えています。このような問題を、多数網羅しているのは素晴らしいことだと思います。

また、要点暗記ツールは記述にも対応しており、おそらくこれを使っている限り、雛形集を個別に用意する必要はありません。

市販の教材で勉強している場合は、y軸の意味で難しい問題を自作する必要があるのですが、これはその必要が無く、作業的に問題解くだけでも実力が付くと思います。

お勧めの講座第3位は、山村拓也先生の記述式答案構成力養成答練です。

これは基礎講座ではなく中上級者向け講座になります。

度々、繰り返し述べていることですが、司法書士試験の記述の対策は市販の教材のみでは網羅しきれない面があるので、予備校の講座を受講した方が良いです。

この講座は答練と名前に付いていますが、答練形式ではなく、成績の通知も順位発表もありません。ですが、それらは模試で十分ですので、自己採点でも問題無いと思います。

実は、予備校の講座を利用しても記述の論点を100%は網羅しきれないのですが、この講座は的中が多いことでよく知られています。例えば、平成26年度は組織変更が的中しました。(これは講師による正式な情報です。)こちらの情報はソースが匿名掲示板なので信頼性に欠けますが、平成26年度は信託も的中したそうです。

これでもまだ、山を張るようなやり方にはなってしまいますが、市販の書籍に無い所を埋めてくれると思います。

直前期に、あまりにボリュームの多い講座を取ってしまうと1年目では受験までにこなしきれないリスクがありますが、この講座はコンパクトになっており、年が明けてから、もしも多少余裕ができたという人が追加でやるには打ってつけです。

5カ月合格は可能か?

これはよく質問をお受けするテーマです。

おそらく松本雅典先生のことを指しているのだと思います。

私は松本雅典先生の「5ヵ月合格法」の書籍は既読です。その印象として、5ヵ月合格は可能だと思いました。

というのは、松本雅典先生は1日に17時間勉強したそうです。そうすると2550時間になります。これでは3000時間に足りないのですが、実は私が述べた3000時間は、運の要素を排除して圧倒的な成績で合格するのに必要な勉強時間です。運の要素が絡んでも良いならば、もう少し切り詰めることができます。松本雅典先生は成績通知書を公開されていたと思います。失礼な言い方かもしれませんが、かなりギリギリの成績だったと記憶しています。強運もあって受かったのだろうと推測します。

もうひとつ考えられるのは、司法書士試験の「忘れることとの戦い」という性質です。仮に1日に2時間の勉強が「忘却」によって無効になるのだとすれば、17時間勉強すれば有効な勉強時間は15時間です。仮定が正しいのだとすると、1日に10時間勉強する人の、倍近い速さで進めることができるのです。

以上から、私は、5ヵ月合格は可能だと思いますが、これを万人に再現できるかと言われたら、無理です。という回答になります。1日17時間というのが現実的ではありません。私はどんなに集中してやっても1日12時間が限界でした。

専業受験になる前にやるべきこと

ここからは、実戦的な内容に入ります。

本記事は専業受験を想定しています。そこで、専業受験生になる前にやるべきことがあります。

それは、1日8時間の勉強を本当に継続できるか試してみることです。連休がある人は試しに8時間ぶっ通しで勉強してみましょう。無い人は、有給を使ってでも作りましょう。

そして、これを1年間継続できるかを考えてみてください。これができないと思うなら、専業受験は無理です。

ここで重要な事として、問題集を一切使わずにテキストだけで勉強すると言うことがあります。司法書士試験の勉強の大半は、問題演習ではなく、テキストを使った勉強です。テキストに1日8時間集中して向き合うことができないなら司法書士試験は無理です。

それでもあきらめきれない人は、兼業受験にするとか、過去問中心の学習にするとか、そういう方法を考えなければなりません。兼業受験はともかくとして、過去問中心の学習というのはかなり不利になります。

目標を決める

受験を決意したら、目標を決めましょう。

ここで稀にですが、信じられないような目標を設定する方がいます。

・基準点を突破すること。

もし、司法書士試験が合格しなくても基準点を突破した人には、副司法書士として一部の業務をやらせてもらえるという制度であれば、この目標はあり得ない訳ではありません。ですが、司法書士にそういう制度はありません。合格するかしないか、0か1です。

こういう目標を掲げてしまった人は、失礼ですが、心のどこかで受かる気がありません。

そのような半端な決意では絶対に受からないので、はっきり言って挑戦しないことをお勧めします。

では、どういう目標を設定すれば良いのでしょうか?

この正解は、圧倒的な成績で上位合格することです。

上位合格とは200位以内ぐらいとさせていただきます。

受かれば何点でも構わない。という方がいます。それは絶対に間違いとまでは言えないのですが、司法書士試験はギリギリで合格しようとすると、運の要素が絡んでしまいます。運の要素を排除して確実に合格したければ、上位合格を狙う必要があります。そして、運が絡むということは、試行回数を増やす必要があることを示します。これでは、一発合格できずに、受験が長期化してしまい、合格までに要する総合勉強時間も増えてしまいます。

ただし、兼業受験の場合は、どうしてもギリギリになってしまうので、受かれば何点でも構わないという目標になるのもやむを得ない場合があります

では、私はどのような目標を設定していたでしょうか?

これは全国1位合格です。

実は、最初からこの目標を設定していたわけではありません。受験勉強を始めた当初は1年目の自分に圧倒的な成績を取れるはずがない、受かるとしてもギリギリになるだろうと弱気になっていました。

しかし、模試を受けたあたりから考えが変わりました。

私の模試の成績は、失念した部分もありますが、次のようなものでした。

・伊藤塾さんのプレ模試 30/30(記述の採点無し。順位発表無し。)
・伊藤塾さんの模試第1回 33/33(全国順位5位/約1500人、判定:S)
・伊藤塾さんの模試第2回 33/30(全国順位22位/約1500人、判定:S)

この結果を見て考えが変わりました。

模試でこれだけ出せるなら、同じペースで頑張れば、本試験はもっと成績が伸びるだろうとも考えました。全国1位も夢ではないと思ったのです。

そう思ってからは、全国1位合格を目標にするようにしました。

実は、直前期になってモチベーションが下がっていたのですが、全国1位で合格という新たな目標を設定してからモチベーションが上がりました。

もうこのアカウントは破棄してしまったのですが、Twitter ではこんなことを宣言しました。

これは趣味の領域と言えるかもし得ませんが、もし、全国1位合格を目標にすることでモチベーションが上がるという人なら、迷いなく全国1位合格を狙いましょう。

ただ、これは万人向けではありません。現実的には200位以内の上位合格狙いでも、運の要素はほぼ排除し尽くすことができると思います。

筆者は何故リアリスティックを受講しないか

既に述べましたが、松本雅典先生の受験思想には、かなり共感できる部分があります。

しかし、自分がもう一度受験生をやるとした場合に、松本雅典先生の講座を取りたいかと言われたらそうは思えません。

理由はいくつかあるのですが、この記事ではブログでは取り扱わなかった点を説明させていただきます。

松本雅典先生の講座は、できるだけ沢山の受講生を合格させるためのものだと言えます。事実、このやり方であれば、沢山の受講生を合格させることができると思いますし、これは正しいことだと思います。

しかし、松本雅典先生のブログや、書籍、動画を、よく見ているのですが、全国1位で合格してください、という指示をしていません。

※もしかしたら、私の見落としで、そういう指示をしている箇所はあるかもしれません。もしそうであれば大変申し訳ございません。

既に述べたように、私は1年目の受験で司法書士試験に全国1位で合格するという目標を設定しました。

私にとっては、「沢山の受講生を合格させることができる」講座であったとしても、全国1位をコンセプトとしない講座は自分に合いません。

実は、講師と言う立場上、全国1位で合格してください、という指示を出しにくいのかもしれません。というのは、司法書士試験は相対評価ですから、受講生の誰かが全国1位を取れば、他の受講生は全国1位を取れません。(受講生の全員が満点を取れば別ですが…。)これが、家庭教師であれば、全国1位を取ってください、という指示を出し易いかもしれません。

ただ、大半の受験生にとって、全国1位合格は趣味の領域ですし、松本雅典先生の講座は大半の受験生には受講する価値のあるものだと思います。

(リンクのみ)筆者が使用した教材

筆者が使用した教材は、次の記事で述べています。中には調達したけど殆ど使わなかった教材や、役に立たないと思った教材も含まれていますので、ご注意ください。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2020/03/06/ss_kyouzailist/

(教材調達)メインテキスト

目標を決めたら、次は教材を入手しましょう。

お勧めなのはオートマシステムの第1巻「民法Ⅰ」を買ってみることです。

オートマシステムの第1巻「民法Ⅰ」は、お試しとして読んでみるのにお勧めであって、メインで使っていくテキストは別のものでも構いません。

これほど分りやすいテキストは他に無いと思います。これを、あまり覚えると言うことを意識せずに読んで、楽しいと思えるならば、合格できる可能性はあります。逆に、これがとてつもなく難しいと感じるようだったり、読むだけでも苦行になるようなら、本当に司法書士試験に挑戦するのかどうかを考え直した方が良いです。

ここで、教材の買い方の問題があります。教材はドサッとまとめて買いたくなる方も多いかもしれません。しかし、これはお勧めしません。理由は3つです。

・挫折した時の損失が大きい。
・改版された場合に損失になる。
・実は不要な教材かもしれない。

「・挫折した時の損失が大きい。」というのは、言うまでも無いことですが、オートマシステムを全巻買って1巻目で挫折したら損をします。

「・改版された場合に損失になる。」というのは、司法書士試験の教材は、年に1回程度は改版されます。法改正に対応したり、新しい出題傾向に対応したりするためです。買った教材が直ぐに改版されて買い直す羽目になると損をします。

「・実は不要な教材かもしれない。」というのは、例えばですが、5択式の網羅的な過去問題集のことを指しています。合格ゾーン過去問を全巻買ったけど、オートマ過去問のような薄い本の方が使いやすいとなって、やっぱりオートマ過去問を買い直すかもしれません。そしたら損をします。

教材はインクリメンタルに(一歩ずつ)購入するのが望ましいのです。

※ただし、まとめ買いすることで安くなるようなサービスもあるかもしれません。

オートマシステムの第1巻「民法Ⅰ」を読み終えた後の、教材の買い方について説明します。

まず、メインテキストを絞る必要があります。現在、メインテキストとして普及しているのは次の2種類です。

・オートマシステム
・リアリスティック

Twitter でアンケートを取ったことがありますが、これ以外のメインテキストはあまり普及していませんし、私も使用したことがありません。

絶対にやってはいけないことがあります。それはメインテキストを同じ科目で複数種類使うことです。例えば、リアリスティックとオートマシステムの両方を同時に使うのはやめてください。ただし、「同じ科目で」を満たさない場合は、そういう選択肢もあり得ます。どういうことかというと、民法はリアリスティックを不動産登記法はオートマシステムをと言うことであれば問題ありません。

確かにオートマシステムとリアリスティックのどちら片方にしか記載されていない知識がいくらかあるかもしれませんが、それでも複数使うのはやめてください。

何故それがいけないのかは、私自身はそういうことをしていないので説明が難しいのですが、テキストを複数種類使うと、情報の一元化の手間が発生し、とにかく効率が悪くなると思われるからです。

喩え話をするならこう言うことです。

円卓の騎士のアーサー王の使う剣はエクスカリバーと決まっています。司法書士試験は伝説級の魔物です。テキストは伝説の宝具です。そして、伝説の魔物を打ち倒すには伝説の宝具を極限まで使いこなす必要があります。

私はオートマシステムを使用しており、リアリスティックは使用したことがありません。そのため、オートマシステムを使った勉強方法を想定しますが、リアリスティックにも触れます。

リアリスティックの最大のメリットは、毎年、著者自身がこのテキストで、何問獲れるかを公開していることです。毎年、択一逃げ切りに届くことが示されていて、このテキストを完璧にやり込めば、択一は合格に必要な点を取ることができます。

いくら勉強しても、テキストが必要な情報を網羅していないのならば、合格できません。リアリスティックを使用している場合はその怖さが無いと言うことです。

他のテキストでは、このような情報は公開されていません。そのようなテキストでは、いくら勉強しても合格できない可能性があります。その場合、他の情報源で補う必要があります。

ですが、そのメリットを見ても、リアリスティックよりオートマの方がお勧めできる面があります。オートマには次のようなメリットがあります。

・とにかく説明が分かりやすい。
・過去問を引用している。

「・とにかく説明が分かりやすい。」というのは、リアリスティックと比較はできませんが、ブログ記事にも書いています。

「・過去問を引用している。」というのはブログ記事には書いていません。特に理由があったわけではなく、単なる書き忘れです。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2020/02/16/automa1/

「・過去問を引用している。」とはどういうことかと言えば、説明があった後に、章ごとに過去問が配置されていると言うことです。ただし、引用されているのは一部の過去問だけで、合格ゾーン過去問のような網羅性はありません。

実は、この「・過去問を引用している。」ことが、オートマシステムを使う最大のメリットです。

司法書士試験では、まずテキストを読みますが、テキストを読んだ後、すぐに読んだ箇所に対応する過去問を解くことが学習上非常に有効です。そして、解いた箇所はすぐにテキストで復習します。

その際、テキスト全体を読んでから過去問に挑みたくなる方もいるかもしれませんが、章ごとにこの手順を繰り返した方が良いです。

このように、テキストを読み、その後は過去問の該当箇所を探し、またテキストに戻ってというふうに、テキストと過去問を行ったり来たりする作業を繰り返す必要があります。

オートマシステムを使用している場合は、「・過去問を引用している。」というメリットがあるため、ここでテキストと過去問を行ったり来たりせずに、普通に先頭から読み進めるだけでも実力が付きます。

このメリットが圧倒的であるため、多くの方にはオートマシステムの方が向いていると思います。

既に述べた通り、オートマシステムは情報網羅性の点でリアリスティックのような「保証」がありませんが、それは他の教材から知識を拾えば良いということになります。「保証」が無いからと言って合格できないわけではありません。

(教材調達)サブテキスト

メインテキストを調達したら、次はサブテキストです。

ここでいうサブテキストとは次の4つの教材のことです。

・必出3300選
・ケータイ司法書士
・直前チェック
・スタディングの要点暗記ツール

最後に挙げた「スタディングの要点暗記ツール」は、予備校教材ですので、本記事のコンセプトからは外れますが、他の3つの教材と性質が似ていますので、取り上げさせていただきました。

サブテキストには賛否があります。

そもそも要らないのではないかと言う意見があります。

サブテキストが要らないという意見の根拠は、テキストが必要な情報を全て網羅しているのであれば、他の教材から知識を拾う必要はなく、むしろ複数の教材を使えば、後で説明する情報の一元化の手間が発生するだけだというものです。

私は、少なくとも独学の場合なら、サブテキストは必要だと考えています。ですが、メインテキストに何を使用しているかという他の要素にも影響されます。

サブテキストを使う目的は次の通り。

①司法書士試験は図表を使った学習が有効です。サブテキストは知識が図表に整理されています。オートマシステムは図表が少ないですが、図表の少なさを補うために使います。

メインテキストにない知識を拾うのに使います。本来、メインテキストは網羅性が高い教材のはずですが、必出3300に記載されているのに、オートマシステムに記載のない情報が散見されました。メインテキストにはない情報をサブテキストから拾うことで得点に繋げられます。

③サブテキストは無駄な説明が省かれています。メインテキストは覚えやすくするために背後にある考え方等の雑多な情報が記載されています。これは勉強しておく必要はあるのですが、そう何回も読む必要はありません。学習が進んでくると、メインテキストに記載されている雑多な情報が邪魔に感じることがあります。この場合、サブテキストをメインの教材に使うことで読み込みを加速させることができます。

サブテキストは改造したり使い方を工夫したりすることで、y軸の意味で難しい問題集として使うことができます。メインテキストも、使い方の工夫次第ではそういう使い方はできますし、予備校や講師によっては、そういう指導をしているところもありますが、独学ではかなり難易度が高いように思います。

⑤司法書士試験では、妥協なく全分野を暗記することが理想ではあるものの、この分野は、ソラで言えるようになる必要があるとか、この分野は肢を見たとき、正誤が言えればそれで良いのかとか、分野によって、要求される知識の精度が違います。これを見極めるツールが過去問です。しかしこれを実際に分析するならば、テキストと過去問を行ったり来たりする必要があります。サブテキストには過去問を引用しているものもあり、その手間を省くことができます。

⑥この目的でサブテキストを使うことは推奨されないのですが、絶対に落としてはいけない問題を知ることができます。サブテキストは予備校の講師が絶対に落としてはいけないと思う論点を抽出しています。そもそも私の考えでは、司法書士試験に要点という概念はなく、全部を暗記するべきだと思うのですが、勉強に費やせる時間がなく、運が絡んでも良いので山を張る必要がある場合は、サブテキストだけでも完璧にしておけば、少なくとも絶対に落としてはいけない論点を完璧にすることができます。

②の目的が特に重要です。司法書士試験では使用しているテキストが、十分な情報を網羅していなければ、いくら勉強しても合格できません。

オートマシステムの場合は、リアリスティックのように、これだけで合格に必要な範囲を全て網羅しているという保証がありません。私の感覚としてもオートマシステム本編だけでは足りないと考えており、他の場所から知識を拾う必要があると思います。そのため、メインテキストがオートマシステム本編のみである場合(オートマプレミアや、出るトコを、使わない場合)は、サブテキストが必要だと考えています。

一方、リアリスティックを使う場合は、このテキストだけで試験合格に必要な範囲を全て網羅しているという保証があるのですから、サブテキストを使う必要性はかなり落ちます。(リアリスティックの著者は、サブテキストを必要ないと考えているようです。)

ただ、それでも、①、③〜⑥の目的は残ります。

次に重要なのは④の目的です。

サブテキストは、製品によっては、y軸の意味で難しい問題を直接網羅している教材があります。

ケータイ司法書士、直前チェック、スタディングの要点暗記ツールが、このタイプの教材です。このような教材を使用すれば、漫然と解いているだけであっても司法書士試験で重要な y軸の意味で難しい問題を解くことができるので、実力がつくと思います。

以上を踏まえた上で、どのサブテキストがおすすめかを見ていきます。

必出3300選は、左ページに過去問、右ページにまとめ表を掲載した教材です。この教材は。y軸の意味で難しい問題を直接網羅した教材ではありませんが、チェックテープを貼る等の改造を施すことで、y軸の意味で難しい問題集として使うことができます。また上で述べた目的⑤にも適しており、左ページに重要な過去問を載せていますから、これを解いてよく考えながら右ページの図表を見ることで、どこを覚えれば良いか?が掴みやすくなっています。この教材は、改造を施す必要があるという煩わしさがあるものの、私もこの教材をサブテキストに使用していたことから、非常にお勧めできる教材です。改造を施す必要があるのはデメリットばかりではありません。自ら過去問を分析する過程を経ることが実力に結びつくと思います。この記事は、必出3300選を使用することをある程度想定した上で書きます。

ケータイ司法書士は、必出3300選と違い、左ページに図表を、右ページに過去問を掲載しています。この教材は直接的に、y軸の意味で難しい問題を網羅した教材です。赤下敷きが付属しており、これをページに被せることで、文章の一部をマスクすることができます。マスクした部分を何も見ずに言えるようにする、ということをすれば、y軸の意味で難しい問題として使えます。この教材は、必出3300選と違い、読者が改造を施す必要がありません。そのため、非常に使い勝手の良い教材だと思われます。思われますという言い方をしているのは、実際には私はこの教材を使用していないからです。特に欠点もなさそうで、過去問の引用もありますし、非常にバランスの良い教材だと思います。独学で特にこだわりがないのであれば、この教材をサブテキストとして使う優先度は高いと思います。

直前チェックは、y軸の意味で難しい問題を網羅した教材ですが、赤下敷きは付属していません。問題のすぐ下にマスクされていない状態で答えが書かれているため、使いこなす上では、紙で答えの部分を隠すなどといった工夫が必要になります。例えば、直前チェックの民法は「権利能力の意味を言え。」という問題で始まっていたと思いますが、答えの部分(権利能力の説明の部分)を栞のような紙で隠しながら、答の部分を何も見なくても言えるようにする、というのが基本的な使い方です。この教材の難点として、あまりにも難しいことがあると思います。「意味を言える」レベルにならなくても合格は可能だと私は考えています。

例えば、直前チェックの問題が、次のような問題であればバランスが良いのではないかと思います。

Q「法律上の権利・義務の主体となることができるという資格のことを何というか?」
A「権利能力」

なので、私は直前チェックが必要以上に難しすぎると思ってしまいます。難しすぎると解く気力がなくなっていき、ただ読むだけになってしまうリスクがあります。ただし、この方向性で難しいことをやるのは、勉強方法としては間違っていません。ここまで難しい問題を出されても、モチベーションを維持できるのであれば、かなり有用な教材です。というか、y軸の意味で難しい問題という視点で言えば、かなり極まった教材であり、使いこなしさえできれば、最強の教材ではないかと思います。なので、ケータイ司法書士に比べるとそれほどお勧めはできませんが、好み次第ではこの教材を採用するのも全然ありだと思います。

スタディングの要点暗記ツールは予備校教材であるため、記事のコンセプトに反しますが、取り上げさせていただきます。この教材はケータイ司法書士と非常によく似た教材で、ケータイ司法書士の電子版に近いです。ただし、ケータイ司法書士が右ページで過去問を引用しているのに対して、要点暗記ツールは過去問を引用していないことから、過去問演習は追加で必要になります。スタディングの講座であれば、オリジナル問題や過去問を使った学習が可能なコンテンツもありますので、そちらも併用すれば良いと思います。

さて、この教材の利点はほぼケータイ司法書士と同じです。特に工夫せずとも、漫然と解いているだけで、y軸の意味で難しい問題に触れることができることから、実力が付くと思います。講義をこなした上で、この教材を漫然とやって、合格ゾーン(過去問題集)かオートマ過去問を2~3週するだけでも、基準点には到達するのではないかと思います。

もちろん、基準点に到達しただけでは合格できず、そこから積み上げが必要ですが、積み上げをする上での基礎を作ることができる教材だと思います。

非常に有用な教材ですので、スタディングを受講している場合は、最も力を入れてやるべき教材です。学習時間の半分近くを要点暗記ツールに割り当てても良いぐらいだと思います。

以上を参考に、サブテキストを選んでみてください。最終的には実物を手に取って、好みで選んでも良いと思います。

最後に、メインテキストと同じことが言えますが、サブテキストを複数種類使うのもやめてください。

(教材調達)択一の過去問題集

サブテキストの次は、過去問題集を手に入れましょう。

過去問題集は、メインテキストとサブテキストとの組み合わせ次第では優先度が落ちます。

例えば、私がお勧めした通り、オートマシステムと、必出3300選を使うことにしたのであれば、どちらも過去問を多く引用している教材ですから、これらの教材の学習が一通り終わってから、これらには載っていない知識を拾う目的で使用すると良いです。あまりに時間がないのであれば、過去問題集をサボってしまうのも選択肢になります。

リアリスティックを使い、かつサブテキストを使わない場合は、過去問に触れる機会がないため、絶対に過去問題集が必要です。

過去問題集を買う場合、合格ゾーンに代表される5択式の過去問題集を買うか、オートマ過去問に代表される肢別過去問題集を買うかという問題があります。

これには一長一短ありますが、基本的には5択式の過去問題集の方がお勧めです。

5択式の過去問題集の問題点として、回答の記号をそのまま覚えてしまう恐れがあります。例えば、問題文を読み始めたときに、すぐに、正解肢がアイで1が正解だ、等と想起してしまい、問題を検討しなくなってしまうということです。肢別過去問題集の場合は、こういう失敗をすることがないという利点がありますが、これは使い方が悪いだけです。普段過去問を解くときは、全部の問題が個数問題だと思って、全肢検討するという解き方を実践していれば問題になることはありません。

もっと本質的な肢別過去問題集の利点として、年度を跨いで同じ肢がカットされているということがあります。

司法書士試験では、全く同じ肢が、年度を跨いで繰り返し出題されることがあります。5択式の問題集の場合は、本試験の問題を未加工のままそのまま収録しているのですから、全体を通して解くと、同じ肢を繰り返し解くことになります、この効率が悪いということがよく指摘されます。肢別過去問題集の場合は、重複した肢は収録していないため、効率よく過去問を回すことができます。

しかし、これらを考慮してもなお、5択式の過去問題集をお勧めします。

まず、同じ肢を繰り返し解くことになるという問題は、教材の使い方の工夫次第では回避できます。同じ肢を見つけたら、印を付けておいて(あるいは他の肢に印をつけて)、2周目以降は解かないようにすればいいです。

そして、肢別過去問題集の場合は、作成者の受験センスによって省かれてしまう肢があります。作成者の受験センスに絶対に間違いがないのであれば、省いたもので勉強しても良いのですが、私としては、これでは心配だと感じました。5択式の過去問題集を解けば、過去問を自分なりに分析した上で、取捨選択することができます。

次に、肢別過去問題集の問題点で、学説問題や登記記録問題が省かれやすいということがあります。オートマ過去問の場合は、学説問題や登記記録問題も掲載しているのですが、それでも省かれている問もあります。学説問題や登記記録問題に慣れたいならば、5択式の問題を解いた方が望ましいと思います。

当然の話ですが、肢別過去問題集よりも5択式の問題集の方が収録している問題数は多いです。時間的な余裕がないのであれば、肢別で妥協することも、やむを得ないことがありますが、肢別過去問題集で割愛されている肢が試験に出た場合は失点することになります。私は、かなりマイナーな肢でも、ここ30年ぐらいに過去問に1回でも出たことは落とせない問題だと考えており、それならば、5択式の過去問題集の方が望ましいと思います。

さて、5択式の過去問題集の方が肢別過去問題集よりおすすめだとは言いましたが、私は全科目で5択式を使用していたわけではありません。以下、私が使用していた過去問題集を科目別に挙げます。

・民法:5択式(合格ゾーン)
・不動産登記法:5択式(合格ゾーン)
・商法・会社法・商業登記法:肢別(オートマ過去問)
・民事訴訟法・民事執行法・民事保全法:5択式(合格ゾーン)
・供託法・司法書士法:肢別(オートマ過去問)
・憲法・刑法:5択式(パーフェクト過去問題集)

この使い分けには、特に理由があったわけではありません。ですが、これで合格できているので、過去問題集の教材選びの正解例として見ていただければと思います。ただ、今考えると、商法・会社法・商業登記法を肢別で済ませたのは、危険だったとも思います。余裕があるなら、これらの科目については、5択式の過去問を解いておく方が望ましいのではないかと思います。

オートマシステムと必須3300選を使用しているなら、憲法・刑法については過去問題集自体が不要かもしれません。私は、オートマシステムと必出3300選を十分に勉強した後、刑法・憲法の過去問題集を説いたのですが、問題集に記載されている全肢を迷わずに正誤判断して、初回で全問題を解くことができました。刑法・憲法は、オートマシステムと必須3300選だけで、過去問既出の問題はほぼ全てカバーできているということです。

過去問題集を買うとしてどれがお勧めかという問題があります。これは肢別を使うのであれば、オートマ過去問がお勧めです。私が実際に使用して、良い教材だと思ったからです。オートマ過去問の特徴で、非常に解説があっさりしていて、短いということがあります。過去問題集の中には非常に解説が長いものがあるのですが、長すぎる解説は要らないと思います。

5択式の過去問題集の場合、おすすめは合格ゾーンです。パーフェクト過去問題集という過去問題集もありますが、個人的には合格ゾーンの方がページが厚い分、めくりやすく、気に入っていました。

(教材調達)記述の問題集形式の雛型

まず、記述の教材は、雛型もテキストも過去問も、勉強を始めて直ぐには買う必要はありません。記述の勉強は、択一の勉強が十分に進んでから始めるべきだと思います。具体的には、民法と不動産登記法の択一の勉強が完璧にできてから、不動産登記法の記述の勉強を始めるのが望ましいです。また、商法・会社法・商業登記法の択一の勉強が完璧にできてから、商業登記法の記述の勉強を始めるのが望ましいです。

さて、問題集形式の雛型とは何でしょうか?これは読むだけのテキスト形式の雛型と対比した言葉です。

前者(問題集形式の雛型)には次のような書籍があります。

・ケータイ司法書士 記述雛形集
・うかる! 司法書士 解法パターンで学ぶ書式80

後者(読むだけのテキスト形式の雛型)には次のような書籍があります。

・雛形コレクション
・オートマ雛形集

個人的には、問題集形式の雛型は、記述の学習に突入したら早い段階で入手した方が良いと思います。詳しいことは、ブログの記事でも触れていますが、いきなりオートマ記述式を解くと、白紙解答または壊滅的な回答を書くことになります。そうするとモチベーションが下がってしまいます。そこで、最初は基本的な問題集を解いて、事例問題に少しずつでも慣れていった方が、良いというのが個人的な考えです。

しかしながら、必ずしもこの手順は必要無いという意見もあります。

いきなりオートマ記述式から入っても身に付けられるという人がいてもおかしくありません。そういう場合は、この問題集形式の雛型は必須とまでは言えません。

(教材調達)記述のメインテキスト

完全初心者の場合、私もそうでしたが、記述と聞いて身構えてしまう人が多いのです。

ですが、司法書士試験の記述は択一の延長であり、やることはやっぱり暗記です。記述の出題にはある程度パターンがあり、それを網羅した書籍があります。記述の対策はパターンを網羅した書籍に掲載されている問題を何回も解いて、パターンを頭に焼き付けていくことです。

但、択一ではテキストの読み込みが暗記をする上で有効であったのに対して、記述では実際に手を動かして問題を解くべきという違いはあります。
さて、このパターンを網羅した書籍ですが、これはオートマ記述式一択だと言っても過言ではありません。

これは唯一無二の教材であり、これよりも良い本を私は知りません。

殆どの独学合格者がこの書籍を推奨しており、中には予備校利用者でもこの教材を追加でやった方が良いと主張する方もいる程です。よってこの書籍は記述の勉強に着手したら必ず購入することになります。

オートマ記述式のレビューについては次の記事も参照してください。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2021/05/21/automakj/

(教材調達)記述の過去問題集

過去問題集は、オートマ記述式を完璧にした人が解くべき教材です。絶対にやるべき教材ではあるのですが、これも学習を始めて直ぐに買う必要はありません。

それを前提とした上でのお話です。

お勧めはパーフェクト過去問題集です。

この教材は合格ゾーンに比べて、収録問題数が多いという特徴があります。択一に合格ゾーンを使用している人でも、記述はパーフェクト過去問題集を使用したほうがよいかもしれません。

(教材調達)六法

六法は賛否のある教材です。合格者の間でも要らないという人がいますし、要るという人もいます。

六法を要らないという人の共通見解として、合格に必要な情報は、全てテキストで網羅されているから、六法を読む必要はないというものがあります。私もこれには半分賛成しますが反対意見も持っています。六法は個人的には必須とまでは言えないが、あった方がいいと思う教材です。

ただ、少なくとも学習序盤では要らないので、必要に応じて買い足すのが良いと思います。

六法を買うとしてどの六法を買えばいいかという問題があります。

司法書士試験用の六法としてよくお勧めされる、登記六法という書籍があります。この教材の特徴は司法書士試験独特の試験科目である不動産登記法と商業登記法について、かなり細かい知識が掲載されていることです。しかし、私はあまりお勧めしません。というのは、不動産登記法や商業登記法は登記事項証明書を見ながら勉強する方が、効率が良いのですが、登記六法には登記事項証明書の引用がほぼ無いからです。オートマシステムは登記事項証明書を引用しているので、六法を読むよりも、テキストを読んだ方が効率よく学習できます。

それではおすすめの六法は何かといえば、判例六法を強くお勧めします。Professional と付いていない方で十分です。

この教材には不動産登記法や商業登記法の細かい知識は載せられていませんが、登記六法よりも安価でコンパクトになっています。そして、何よりこのメリットが大きいのですが、条文と判例が色分けされて載せられているのでわかりやすいというメリットがあります。

ちなみに、ポケット六法はお勧めしません。

司法書士試験では民法だけは判例も読んでおいた方が良い場合があるのですが、ポケット六法には判例は記載されていないからです。

とりあえず買わなくて良い教材

少なくとも序盤では買う必要がないと思われる教材についても言及します。これは次に挙げる5つの教材です。

・答練
・年度別過去問題集
・記述の解き方の本
・記述の読むだけの雛形集
・ハイレベル問題集

答練については、少なくとも択一の答練は不要であると、私は前の章で言い切っています。記述の答練は有用かもしれませんが、それでも序盤で答練は取らない方が良いです。

仮に、試験直前になって、テキストと過去問が完璧になっていなくて、でも答練を受講する申し込みをしてしまったという状況になった場合、真っ先に切り捨てるべき教材は答練です。答練を解いている時間で、テキストや過去問をやった方が間違いなく成績は伸びます。

予備校の講座の中には、答練が付いてくる講座がありますが、そういう講座を取ってしまった場合、直前期になって、やっぱり答練をやる必要がないとなったとき、捨てるという決断をしにくくなる可能性があります。これは、講座をとってしまった以上、やらないともったいないという心理が働くためです。

そして、この記事のコンセプトは独学1年合格です。1年の期間だと、答練をやって成績が伸びると言う状況になることは少ないと思います。テキストと過去問が完璧にならずに、答練よりもそっちに時間をかけた方が良いと言うことです。

万が一、勉強のペースが想定よりも早く、答練を受けたくなった場合、答練だけ後で追加購入すれば良いです。こうすると受講料は高くなってしまうのですが、場合によっては捨てる可能性のある教材に最初から投資するよりは、後で必要になってから買い足す方が、確率論上は安上がりになる可能性が高いです。

年度別過去問題集については、私は購入したものの全く使いませんでしたが、年度別過去問題集の必要性を主張する人が挙げる理由は次のようなものです。

・本試験の時間配分の練習をする。
・本試験の出題傾向を自分なりに分析する。

「・本試験の時間配分の練習をする。」という主張がありますが、過去問では練習になりません。と言うのは時間配分の練習を考える頃には、過去問の知識が極まっているはずです、過去問を見たときに全部が既出の肢となっています。本試験と同様の配分で、未出の肢と既出の足を混ぜ合わせた問題を解かなければ練習にはなりません。特に記述はこの傾向が顕著で、一度解いた問題は、速く解くことができるようになります。

この目的で問題演習をするのであれば、模試を利用した方がいいです。模試であれば、未出の論点と既出の論点がバランスよく混ぜ合わさった問題を解くことができます。

「・本試験の出題傾向を自分なりに分析する。」という主張がありますが、この目的で年度別過去問を使うには、網羅している問題数が少なすぎます。最低でも10年分は見ないと出題傾向は見えてこないと思うのですが、年度別過去問題集が網羅しているのはここ直近の4年分程度です。

そして、年度別過去問は買わなくとも、法務省からダウンロードできます。

何よりこれが重要なのですが、最初から山を張るような学習をしてはいけません。山を張りたいがために「分析する。」と言うことをするのだろうと思いますが、山を張ると運の要素が絡んでしまいます。そして、そしてそれは受験の長期化につながってしまいます。

記述の解き方の本とは具体的には次のような本です。

・司法書士 リアリスティック不動産登記法/商業登記法 記述式(松本雅典 先生)
・うかる! 司法書士 記述式 答案構成力 不動産登記/商業登記 実戦力養成編(山村拓也先生)
・超速解司法書士試験記述式(小玉真義先生)

これらの書籍は答案構成用紙の使い方や、問題文を読む順番といった、記述の解き方を解説した本です。

私個人は、確立された記述の解き方を使わずに、我流独特かつ場当たり的な方法で解いて合格しているため、このような方法論はあまり強くはお勧めしません。

必ずしもこのような方法論が役に立たないと主張するつもりはありませんが、これらは過去問をやる過程で必要だと感じたらやればいいと思います。

記述の読むだけの雛形集は、記述の実力が極まっている人が、未出の知識を拾う上では有用です。

記述では、実務的過ぎる論点やマイナーな論点に高配点が付けられる傾向がありますから、こうした論点に対策するには、網羅的に雛形を記載した書籍で勉強することが有効です。

この目的で使うのであれば、雛形コレクションがお勧めです。例えば、平成26年度の不動産登記法記述では、信託登記の問題が出題され、しかもそれに高配点が付けられていた可能性があると考えていますが、雛形コレクションは信託登記のマイナーな雛形まできっちり網羅していました。

※ただし、筆者は雛形コレクションを利用していません。

しかしながら、これは記述の実力が極まっている人がやるべき学習で、なおかつ択一逃げ切りを取れる人に限ってやるべきです。択一で確実に逃げ切り点を取る自信がないのでなければ、雛形コレクションを読むよりは、択一で逃げ切り点を取るための対策をした方が良いのではないかと思います。

オートマ雛形集も個人的には不要だと思う教材です。

というのは、オートマシステム本編に雛形は記載されており、オートマ雛形集の情報はそれとかなり重複しているからです。マイナーな雛形の記載も殆どありません。

雛形だけに絞ってテキストを読みたい場合は、オートマシステム本編に付箋を貼っておけばオートマ雛形集の代用として使えると思います。

次の記事もお読みください。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2020/04/09/ss_hinagata/

※ただし、筆者はオートマ雛形集を利用していないので、自分で言っておいて、あまり信用できない発言かもしれません。合格者の中にはオートマ雛形集を利用していて、この書籍を絶賛されている方もいます。

ハイレベル問題集は、TACさんのオリジナル問題集です。本試験よりやや難しいレベルの問題を収録しています。もう少し詳しく言うなら、TACさんが昨年の答練で出題した問題を厳選して収録しています。

私個人は、不動産登記法の記述のハイレベル問題集を使いました。

商業登記記述についてはハイレベル問題集を利用していません。というのは、当時の本試験は組織再編から出題される可能性が高いと私は見積もっていたのですが、ハイレベル問題集には、組織再編からの問題が記載されていなかったからです。

この問題集を推す方もいますが、個人的には、あまりお勧めしません。TACさんが制作した教材ということもあり、オートマをやっていれば解ける問題が多いからです。(ハイレベル問題集も、オートマも、同じTACさんの製品であり、オートマを参照しながら作っていると思われます。)この問題集をやっても新たな発見は、ほとんどありませんでした。

択一のハイレベル問題集については、択一の知識が定着しているかどうかを確認するために使うことができますが、それでも最初に買う教材ではありません。

勉強計画を立てる

司法書士試験では、全体の勉強計画を立てておくことが極めて重要です。

と言うのは、ある程度タイムボックスで勉強せざるを得ないことがあるからです。

例えば、司法書士試験の試験範囲を単純に10分割したとします。

・民法
・不動産登記法
・会社法・商法
・商業登記法
・民事訴訟法・民事執行法・民事保全法
・供託法・司法書士法
・刑法・憲法
・不動産登記法記述
・商業登記法記述

※商法・会社法と商業登記法は並行して勉強した方が効率よく勉強できるのですが、ここでは10分割して考察しやすくするために、2つの科目に分けています。

ここで、全科目に1ヶ月ずつ時間をかけるとしたとします。(10分割したので10ヶ月後計画と言うことになります。)1ヶ月で民法が完璧になれば、何の問題もなく次に進めますが、おそらく完璧になりません。ですが、この計画を立てたのであれば、1ヶ月経過したら、先に進まなければなりません。ここで時間をかけすぎると、試験までに、全科目を終わらせることができないので、絶対に合格できません。

なお、この計画はちょっと現実的ではありません。科目ごとに、重みづけが違っており、民法を1ヶ月で終わらせるのは無理があります。この計画で行くのなら、民法が不完全なまま先に進むことになってしまいます。そうすると、民法の理解が無いと理解できない科目もあるため、それらの科目が理解できないと言うことになると思います。

司法書士試験は科目ごとに重みづけがあります。この科目はページ数の割には時間を割かなければならないが、この科目はそれほど力を入れて勉強しなくてもよいというのがあります。

では、重み付けを考慮した現実的な受験計画はどうなるでしょうか?

これは私も記録を付けていたわけではないので、フィーリングを含むものとなっています。また、自分はこれほど綿密な計画を立てていたわけではなく、受験後にこうしておけばよかったと言う、意見を含む計画となっております。

重み付けを考慮した現実的な受験計画を提示します。

・民法2カ月
・不動産登記法2カ月
・商法・会社法・商業登記法2カ月
・記述2カ月
・民事訴訟法・民事執行法・民事保全法1カ月
・その他のマイナー科目1.5カ月
・バッファ1.5カ月

注意点を説明します。まず、民法が2カ月となっていますが、これは2カ月しか民法を勉強しないと言う意味ではありません。民法を勉強した後、他の科目に入ってからも、民法の復習は継続する必要があります。同様に、不動産登記法2カ月と言うのは、不動産登記法だけを2カ月やると言う意味でありません。民法の復習を並行しながらの2カ月です。民事三法と、マイナー科目に合計2.5カ月は長すぎるのではないかと言う意見もあるかもしれませんが、これも民法、不動産登記法、商法・会社法・商業登記法を並行しながらの学習時間なので、決して長すぎることはありません。

バッファは、何か不足の事態が起きた時のために残しておく期間です。例えば、不動産登記法の学習に予定よりも時間がかかったという場合、このバッファを使って対処します。1.5カ月というのは心許ない期間ですですが、1年合格を狙うならば、そう長いバッファは取れません。

日々の勉強を効率よく進められれば、バッファが増えることもあるでしょうし、バッファを休憩に使うという手もあります。バッファが増えた場合は、予備校教材を追加するなど手を広げることもできます。私はやめておいた方がいいと思いますが、もしやりたい人がいるなら答練を取る選択肢も出てきます。

ちなみに、私の受験計画は次のようなものでした。

・年内に択一の全科目を終わらせる。
・年内に記述に着手する。
・年が明けてからはバッファとする。

この計画で進めて、少し遅れが発生しました。商法・会社法・商業登記法の学習に時間がかかったのです。遅れが発生したとはいえ、1月中旬ごろには択一の勉強が一通り終わりました。しかし、民法と、不動産登記法の学習がかなり雑になってしまいました。これは大きなリスクになると思ったので、年が明けてからの大きな勉強方針として、民法と不動産登記法を徹底してやり込むようにしました。

このように、できるだけ速く済ませてバッファを多く取るという計画もありますが、個人的にはお勧めしません。速く済ませようとすると、私のように何らかの苦手科目が出てきます。そうすると、結局バッファを使って学習しなければならなくなるのですが、それぐらいならバッファを減らして、民法と不動産登記法にもきちんと勉強時間を割り当てる、という学習にした方が、見積もりを立てやすくなると思います。

計画を立てたのはいいが、2ヵ月経過したけど民法が完璧になったと思えないという事態になる可能性もあります、その場合は、不動産登記法の学習に進むしかありません。それでも案外何とかなると思います。この計画は民法の学習以降、民法に全く触れないのではなく、民法を復習しながら後の科目の学習を進めることを想定しているからです。それに、いざとなれば心許ないとはいえ、バッファもあります。

択一の勉強を終えてから記述の勉強をする

記述の勉強は、主要四科目の択一の勉強が終わるまでは、開始してはいけません。最低でも民法と不動産登記法を終えてから不動産登記法記述を勉強し、最低でも商法・会社法を終えてから商業登記法記述式を勉強するのが良いと思います。

民法と不動産登記法の択一を学習した後に不動産登記法記述を学習し、その後に商法・会社法・商業登記法の択一の勉強を学習するというやり方でも構いません。

しかし、不動産登記法の記述と、商法・会社法・商業登記法の択一を、同時に学習するのはお勧めしません。

これは、おそらくメンタルをへし折られるからです。民法と不動産登記法はテキストを読むだけでも、少なくとも分かった気にはなれる科目ですが、商法・会社法・商業登記法は、民法と不動産登記法とは勉強方法が違います。最初のうちはここで途方に暮れることになるかもしれません。不動産登記法記述も同様に、最初は途方に暮れる可能性の高い科目です。商法・会社法・商業登記法で勉強法が迷走している中、不動産登記法記述をやると、さらに追い討ちをかけられて、メンタルがへし折れる恐れがあります。

ベロシティを測る

ベロシティとは、例えば、自分が1日に何ページテキストを読み進められるか、過去問だったら、何ページ進められるかという速さのことです。

※ベロシティはプロジェクトマネージメントで使われる用語です。

実は、私はベロシティを計測していなかったのですが、読者様には計測することをお勧めします。

ベロシティを計測するには、ストップウォッチを使って勉強し、例えば100ページ読み進めるのに何時間かかったか?あるいは1時間に何ページ読めたかを調べます。

というのは、司法書士試験は、試験直前になったらテキストの全内容を一通り全部見直してから挑みたくなるからです。ベロシティを測っておけば、本試験の何日前からそのタスクに取り掛かればいいかが見えてきます。

他にベロシティを測るメリットとして、自分の目標が期日までに達成できるかどうかを見積もれるということがあります。例えば民法であればテキストは、復習も含めて20周はしておきたいところですが、果たしてそれが実現可能かどうかを見積もることができます。

次の章で説明しますが、ベロシティを測っておくことは休憩時間を設定する目安にもなります。

ぶっ通しで勉強するか、休憩を取るか?

司法書士試験の勉強をするのに、1日中1年中ぶっ通しで勉強するか、それとも休憩をとった方がいいのか、というのがたまに議論になります。

私は1日中1年中ぶっ通しで勉強しました。1日中、やれる限界までやって休憩は取りませんでしたし、1年中休日もありません。というか、勉強しないと不安が襲ってくるので、不安を打ち消すために勉強していました。

これに対して反対意見があります。

ぶっ通しでやると継続できないから休憩を挟んだ方が良いというものです

これも正しく、そういう人がいてもおかしくないと思いますし、それで合格している人も知っています。

この休憩の挟み方ですが、計画やノルマを緻密に立てておくことが必要になります。例えば、1日に民法のテキストをここからここまでやる、と決めたのであれば、それが終わったら休憩するということです。1カ月でテキストを何周すると決めたのであれば、自分へのご褒美として、達成できたら1日休憩するということです。

こういう学習をするには、自分の速さから無理のない見積もりを出す必要があるので、ベロシティを測るということが重要になってきます。ベロシティを測ることで、無理のない実現可能な計画やノルマを立てることができるのです。

逆に、こういうことが面倒だというなら、1日中1年中ぶっ通しでやると決めてしまった方がいいです。

民法択一の勉強をする

さて、勉強計画を立てたら実際に択一の勉強を始めましょう。

勉強方法の基本的な考え方は、試験範囲を分野ごとに細かく分けて捉えるということです。

例えば、民法であれば次のように分割することができます。

・総則
・物権
・担保物権
・債権総論
・債権各論
・親族
・相続

そこで、まずは、総則を完璧にしてください。

実際に完璧にするのは難しいですし、何をもって完璧とするかは判断が難しいです。別の科目をやってからもう一度やったら新しい発見があったということもあるかもしれません。

勉強の仕方としては、まずテキストで総則の部分を読みます。そしてすぐに、サブテキストを読みます。ここはサブテキストによってやり方が違うのですが、こんな感じになると思います。

・必出3300選の場合
左ページの問題を解いた後、右ページの表を覚える。

・ケータイ司法書士の場合
左ページを赤下敷きでマスクし、マスクされた部分を全部言えるようにした後、右ページの問題を解く。

・直前チェックの場合
回答部分を栞などで隠し、答えを言えるようにする。

・要点暗記ツールの場合
要点暗記ツールの赤でマスクされた部分を全部言えるようにする。その後、スマート問題集を解く。

ここで、覚えて何も見ずに言えるようにするという作業がどうしてもできない(苦行に感じる。)という場合は、一旦保留にして、テキストの民法総則をまた読んでください。それでもう一回、覚えることを試みてください。

必出3300選を使っている場合は工夫が必要です。(他の教材の場合は、漫然と解いていても実力が付きます。)必出3000選の左ページの問題をやることで見えてくることがあります。この分野は過去問の肢の正誤を判別できるようになれば十分だとか、右ページを覚えておく必要があるといったことです。ページによっては、何も見なくても右ページの図表を全て書き出す必要があると感じるところもあるかもしれません。そういう場合は迷わずやってください。

3300選でページの一部を覚えればいいという場合は、チェックテープをかけて色下敷きで隠して、何も見ずに言えるようにしてください。ここで、チェックテープは必ず消せるものを使いましょう。後になってここは覚える必要がなかったと気付く可能性もありますし、一度覚えたところは、下敷きで隠すまでもなく、読むだけで知識を維持できるようになることがあるからです。そういうところは、後でチェックテープを除去すれば良いです。

テキストを読む→
サブテキストを覚える→
テキストを読む→
サブテキストを覚える。

という作業を螺旋のように繰り返します。

5周もすれば、オートマシステムやサブテキストが引用している過去問は、間違わなくなるはずです。

この手順を民法全体について行った後、初めて過去問を解きます。既に述べた通り、5択式の過去問題集がお勧めです。

過去問を解いた後、該当するテキストの箇所を復習する勉強方法が推奨されますが、全く不要です。このやり方は無駄に時間がかかり過ぎます。螺旋のように同じことを繰り返し学習するので、次にテキストを読んだときには、「ここは過去問に出ていたな。」ということはすぐに思い出せます。

この章の最初の方で、完璧にできたら次に進むということを言いましたが、完璧の基準としては、過去問題集(合格ゾーンやオートマ過去問)を解いたときの手応えで判断します。完璧にできている場合は、過去問の該当箇所を解いたとき、それがテキストとサブテキストの知識で解ける問題なのか瞬時に判断できるようになります。それが分からないという場合は勉強不足で、螺旋のような学習を引き続き繰り返す必要があります。

ここで、テキストとサブテキストでは解けない肢があった場合は、印を付けておきます。また、テキストとサブテキストで解けるにも関わらず間違えた肢や迷ってしまった肢には、別の色で印をつけておきます。ここから先は、過去問題集も螺旋に加えます。

つまり、

テキストの総則を読む→
サブテキストの総則を読む→
過去問の総則を解く。

の繰り返しとなるわけです。

ただし、過去問を解く場合は、印のついたところだけを解くようにしてください。全部解くのは時間の無駄です。また、印がついたところでも、繰り返し正解できている場合は、省くことも検討してください。

注意事項として、オートマシステムを使用している場合は、総論よりも前に序章というべき内容が書かれています。

この場合は、次の手順にしてください。

テキストの序章を読む→
テキストの総則を読む→
サブテキストの総則を覚える→
テキストの序章を読む→
テキストの総則を読む→
サブテキストの総則を覚える。

サブテキストの暗記が進み、覚えたら、チェックテープを引いた個所(あるいは赤下敷きでマスクした箇所)を言えるようにするという作業を毎回しなくても良くなります。この作業を何回かやっていると記憶が定着しますので、そう思えたら、毎回言わなくても見直すだけで記憶を維持できるようになります。

この方法を当初の予定である2カ月繰り返しても完璧にならないかもしれません。その場合は、諦めて不動産登記法に進むしかありません。他の分野を学習した後に再度学習したらわかるようになる可能性もありますし、今後も民法の復習は続きますから、安心してください。復習の過程でわかるようになる場合もあります。

逆に2カ月未満で完璧に達したという場合は、残りの期間はバッファに回して、不動産登記法に進むと良いです。

間に合わない場合は、もし、オートマを使用しているのだとしたら、最初に妥協すべきは過去問題集です。何故なら、テキストやサブテキストには過去問が引用されているので、過去問題集は必須とまでは言えないからです。

優先順位は次の通りです。

1位.テキスト、同率1位.サブテキスト
2位.過去問

(リンクのみ)
必出3300選の使い方-y軸問題の自作方法

必出3300選を、具体的にどのように改造すれば良いかについては、次の記事で考察しています。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2020/10/27/ss_ultimate/

ブログの記事の中でも特に重要な記事です。

実は、この記事は note の有料記事に移したかったのですが、note は、書式機能が貧弱で、移せないことが分かったため、とりあえず、そのままにしておきます。

(サブテキストを使用していない場合)

以上のお話は、サブテキストを使用している場合のお話です。サブテキストを使用していない場合(リアリスティックテキストを採用した場合)は、次の手順になると思います。

リアリスティックテキストの総則を読む→
過去問題集の総則を解く→
リアリスティックテキストの総則を読む→
過去問題集を解く。

ここでも、過去問を解いた後、該当するテキストの箇所を復習する必要はありません。螺旋のように繰り返すのですから、すぐに2回目の学習がやってきます。次にテキストを読んだときに、ここは過去問に出ていたなということはすぐに思い出すことができます。

サブテキストを使用していない場合の優先順位は次の通りです。

1位.テキスト、同率1位.過去問

それから、サブテキストを使わない場合は、テキストの使い方に工夫が必要です。これについては、リアリスティックテキストの著者である松本雅典先生が動画や本で「テキストでアウトプットする。」という手法を提案されているので、それを参考にすると良いと思います。

具体的には、民法であれば事例が提示される箇所があります。例えば「AはBに不動産を売却したが、その登記をする前に、AはCに不動産を売却した。不動産は誰のものか?」というような設例があると思いますが、この設例を見たとき、結論部分もそれに至る理屈も説明できるようにします。

このほか、見出しを見て、内容を言えるようにするとか、テキストを栞で隠しながら読んで、結論部分や理由を言えるようにするとか、松本雅典先生は、そういう勉強方法も提示されています。

これは、オートマシステムで勉強する場合も有効な方法なので、「テキストでアウトプットする。」という考え方については、知っておいた方がいいと思います。

(リンクのみ)合格ゾーンの使い方

合格ゾーンについてはそもそも必要なのかという議論があります。オートマシステムが過去問を引用しているため、オートマを使用している場合は重要度が下がります。私はテキストとサブテキストを終えた人が追加でやる教材と位置付けており、時間が無いのであれば妥協しても構わないと思います。中には過去問をほとんど解かないで合格したという合格者の方もいます。

合格ゾーンについての私の意見と使い方については次の記事を参照してください。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2021/10/30/ss_zone/

何故、螺旋のような学習が有効なのか?

本記事ではテキストとサブテキストを螺旋のように繰り返す学習をお勧めしています。

この学習方法が有効な理由は、インプットとアウトプットを交互に繰り返すことができることと、その間隔が短いことの相乗効果にあります。

まず、インプットとアウトプットという言葉の定義をしなければなりませんが、インプットはテキストの読み込み、アウトプットは過去問や答練などの本試験と同じ形式の問題演習という定義があります。この定義だとサブテキストは必出3300選の左側のページはアウトプットに当たるものの、右側のページやその他の書籍はインプットに当たります。

ここでは、その定義ではなくアウトプットは知識を頭から取り出すことだと定義した方が、話が分かり易くなります。

この定義だとテキストはインプットに当たり、サブテキストはアウトプットに当たります。必出3300選の右ページはインプットに見えるかもしれませんが、チェックテープを貼る等して改造し、何も見ずに言えるようにするという使い方を想定しているのでアウトプットです。

テキストで読んだ個所はすぐに何らかの形でアウトプットをするべきです。これは知識が定着しているかを確認する意味と、問題を解くことで思い出す作業をすることになるので、知識が定着しやすくなるためです。

アウトプットした場合(特に過去問をアウトプットに使っている場合)は、解きっぱなしはよくありません。過去問で間違えたなら、もう1度テキストに戻って復習すべきですし、何なら正解できた肢でもテキストに戻って復習することで新たな発見があります。

何故、テキストに戻って復習するかと言えば、本試験で問題を解くときは、この問題は過去問にあったから○だとか×だとかそういう判断の仕方はしないからです。テキストのこの部分に載っていたから○だとか×だとか、テキストを想起しながら判断します。それができるようになるためには、過去問を解きっぱなしにせずに、テキストで復習することが有効です。

螺旋のように繰り返す学習をしない場合は、ここで、テキストに戻って該当箇所を探して…という手間が発生するのですが、螺旋のように繰り返す学習をする場合は、次のサイクルで、すぐに該当箇所を見直すことになるので、過去問をとりあえず解きっぱなしにしておいても良いのです。これができるのが非常に楽なのです。

また、他に、インプットとアウトプットをするときは、どちらか片方に集中したくなるというのがあります。テキストを読むときは、大枠や背後にある理屈を押さえるために読みますが、その途中で、例えば「法定追認事由を6個上げろ。」というようなy軸問題を自分に課してしまうと、人によっては集中力が削がれてしまいます。テキストを読むときは読むことに集中したいと思うのです。

この y軸問題を解くという作業(アウトプット)を、テキストで学習した後に、大枠や背後にある理屈の知識が抜けないうちに、後でまとめてできるのが大きなメリットです。

過去問と同様に、y軸問題を解いた後は、テキストに戻って復習することが有効です。y軸問題を解くというのは、最初のうちは根性で暗記することに頼りがちになりますが、テキストをよく見ると、覚える作業を助けてくれるような大枠や背後にある理屈が解説されていることがあるのです。

y軸問題を解いた後に、そのようなテキストの説明に戻ることで、テキストとサブテキストを関連付けて覚えることができるようになり、記憶の定着が良くなり、新たな発見もあります。

ここでやはり、螺旋のように繰り返す学習をする場合は、次のサイクルですぐに該当箇所を見直すことになるので、テキストとサブテキストを行ったり来たりする手間がありません。

己を知る

さて、私は最初の方で「己を知り、敵を知れば、百戦危うからず。」という孫氏の兵法書の言葉を引用しました。「敵を知る」ことについては既に説明済みです。ここでは「己を知る」ことについて説明します。

司法書士試験で不安なのが、過去問を完璧にしても、本試験では未出の肢が出題されるということがあります。テキストにしてもサブテキストにしても過去問を参照して作られているのですから、それらを完璧にすれば、当然、過去問は解けるようになります。不安になるのは過去問未出の肢が正解できるかどうかです。

これに対しては模試を受けて自分の勉強方法の方向性が間違っていないかを確認するという方法が有効なのですが、多くの予備校は年内に模試をやっていません。そして、年が明けてからでは遅すぎます。(もし、年内に模試を受けられるなら受けた方が良いです。)

そこで、いかにして己を知り、後の勉強計画に反映させるかという事が問題になります。

これについては、最新の本試験問題を模試の代わりにするという方法があります。最新の本試験問題は、試験が終わった1ヶ月後ぐらいにダウンロードできるようになりますが、それをダウンロードして、模試の代わりに使いましょう。この方法はお試し受験してしまった人には使えないのですが、そうでない人にはお手軽に「己を知る」事ができます。

多くのテキストは過去問を参照した上で作られています。これは、過去問を解くだけでは、未出の肢への対応力を測れないことを意味します。しかし、最新の本試験問題を参照して作られたテキストは、タイムスリップでもできない限り、存在しません。

なので、自分の実力を測る材料として使う事ができます。

例えば、民法まで学習を終えたなら、民法の最新の本試験問題を解いてみましょう。それで8割以上取れるのであれば、今までの勉強方法が正しかったことになり、一応の安心を持つ事ができます。逆に、8割に満たない場合は、何故解けなかったかを分析する必要があります。

テキストとサブテキストと過去問だけで解けるはずの知識を、落としたのであれば、勉強方法が雑だったからということになります。復習をする際は、一度勉強したからと侮らずに、見落としている知識がないか、もっと緻密にテキストを読み込んでいく必要があるでしょう。

私は、この方法で勉強していたところ、オートマシステムと必出3300選だけで解けるはずの知識を、たくさん落としてしまい、勉強方法が雑だったことを思い知らされました。私は、過去問題集をやっていませんでしたので、過去問題集をやることで、自分の知識の欠落を炙り出し、そこを重点的にテキストで復習する必要があると思いました。

私の主観的な印象ですが、オートマシステムと、必須3300選と、過去問があれば、試験範囲はほぼほぼカバーできると思います。それでは得点できない問題は、捨て問である事がほとんどだと思います。これをどうしても捨て問だと思えない場合は、手を広げる必要があるかもしれません。

択一で手を広げる場合は、条文を読む事がおすすめです。全試験範囲を一通り終えた後、バッファに使える期間を使って条文を読みましょう。

お試し受験をしてしまい、最新の本試験問題を模試の代わりに使えない場合は、教材を買い足す方法があります。次の教材は、未出の肢を掲載している問題集ですので、この目的で使うには有効かもしれません。

有効「かもしれない」という言い方をしたのは、私は、これらの教材を使わなかったからです。

・(TAC)ハイレベル問題集
・出るトコ

これらの教材を使う場合は、肢を次のように分類していくことが重要です。

①テキストやサブテキストや過去問で見た肢、あるいはそれらの知識を応用すれば解ける肢。
②それ以外の完全な未出の肢。

①で間違えた肢がある場合は、勉強方法が雑だったことになります。逆に、このような肢がない場合は安心できます。

②の完全な未出の肢は正解できる必要はありません。メインテキストとサブテキストで必要な知識は網羅できていると思われますので、未出の肢にあまりかまけすぎないようにすることも大事です。

仮に、①で間違えた肢があっても、本試験の傾向から明らかに逸脱したようないやらしい問題はあまり気にする必要はありません。特に、出るトコは、非常にいやらしいひっかけ問題が多いです。

本試験でも確かにいやらしいひっかけ問題は出題されるのですが、あまりかまけすぎると本当にやるべきことに割く時間が無くなります。この判断は難しいのですが、あまりに難解だと感じた問題を完璧にするのであれば、バッファの時間を使いましょう。他のタスクを全て終えた後にやるべきです。

「出るトコ」について

ここまでお読みいただいた方には分かると思いますが、私は出るトコをみっちりやり込むための教材というよりは、これまで学習したことがどの程度身に付いているかを測るための教材と位置付けています。そのため、出るトコを間違えたとしてもあまり念入りに復習する必要はないと考えます。それだと心配になるという方がいるかもしれませんが、私は、テキストとサブテキストと過去問で必要な知識は網羅されていると考えています。

しかし、「この使い方は勿体ない、出るトコをせっかくやるなら完璧に全部正解できるようになった方が良い。」と考える合格者の方もいるかもしれません。というのは、サブテキストを使わずに出るトコを使って合格された方がいらっしゃるからです。

私自身はサブテキストを使って、出るトコを使わなかったので、出るトコをそれほど強くお勧めしていないですし、何なら無くても良い教材だと考えていますが、出るトコを強くお勧めする合格者の方もいて、私も同意できる面があります。

参考までに、そういう合格者の方の動画を紹介します。

この動画を作成されたのはコロ助さんという方です。私とはSNSで個人的に少しだけ交流のある方ですが、この動画の他にも参考になる動画やブログの記事が多数あるため、時間に余裕がある人は読んでみてください。

(参考動画)
https://www.youtube.com/watch?v=GdK7XmCMR-I

不動産登記法択一の勉強をする

民法の学習が終了したら、不動産登記法の学習を始めましょう。

ここで重要なのが不動産登記法の学習と並行して、民法の復習を行う必要があることです。

カーソル(栞)が2つになるイメージです。片方の栞は、新しいことを勉強するための栞、もう片方は復習のための栞です。

例えば、不動産登記法を100ページ読み進めたなら、民法も100ページ読み進める、そんな感じです。

ここで、新しいことの勉強と、復習の配分をどうすればいいのかと言う問題があります。私は正確に計測していなかったのですが、新しいこと3:復習1ぐらいの割合で時間をかけていたと思います。

不動産登記法も勉強の大枠は民法と同じです。試験範囲を細かく区切った上で次の手順を繰り返します。

テキストを読む→
サブテキストを覚える→
テキストを読む→
サブテキストを覚える。

という作業を螺旋のように繰り返します。

民法と同じく、オートマシステムを使用している場合は、注意が必要です。オートマは最初に総論の一部を説明し、その後に各論を説明し、最後に総論の残りの部分を説明しています。

この場合は、最初の総論の部分を、まず先に何度か読みます。次に、各論を、分野ごとに螺旋のようにテキストとサブテキストを繰り返します。最初の総論の部分を忘れた場合や、知識にあやふやな部分がある場合は、各論の繰り返しの途中で総論の読み込みも混ぜてください。

ここからは、民法と違うところを説明します。

不動産登記法を取っつきにくいと感じる受験生の方は多いです。そこで不動産登記法を学習する上でのコツのようなものを少し解説します。

実は私としては、不動産登記法は取っつき易く感じた科目でした。

※一方では、「取っつき易く」ても「易しい」わけではありません。
私は取っつき易いと感じただけで、民法の次に怖れていました。この怖れを克服するには、テキスト、サブテキスト、および過去問を何度でも繰り返し、知識を定着させる以外にはありません。

不動産登記法は、オートマが非常に秀逸にできています。不動産登記法が分かりにくいという場合は、他の科目で違うテキストを使っている場合でも、不動産登記法だけはオートマシステムを使うことをお勧めします。

必出3300選を利用している場合でも、オートマシステムの重要性が高いので、不動産登記法に限っては配分を変えた方が良いかもしれません。

テキストを読む→
テキストを読む→
サブテキストを覚える。

というように、テキストを読む配分を増やすということです。ここは明確にこうすべきという物がなく、各自調整してみてください。

不動産登記法には次のような特徴があります。

①登記事項証明書を見ながら、視覚的に理解する科目である。
②民法(物権、担保物権)の応用である。
③理詰めの科目であり、暗記するのではなく、理屈を組み立てることで結論が出易い。
ただし、それでも、総論には暗記しなければならないところがある。

「①登記事項証明書を見ながら、視覚的に理解する科目である。」

不動産登記法は、テキストに記載されている模擬的な登記事項証明書を見ながら、視覚的に理解していく科目です。文字よりも図が大事です。

何が主登記で何が付記登記かと言う論点がありますが、私は、文字情報を覚えるのではなく、テキストに描かれている模擬登記事項証明書を絵柄として記憶し、問題を解くときはそれを想起することで回答するのです。

このように、問題を見たとき絵柄をイメージできるかどうかが重要です。図が苦手な人もいますが、図を何度も見るなどして、文字ではなく図で覚えてください。

文字情報として記憶しなければならない部分もありますが、その前提として図を覚えておくと記憶が捗ります。

「②民法(物権、担保物権)の応用である。」

民法の理解が甘いと理解しにくくなります。特に、各論は物権や担保物権の応用です。各論が分からないという場合、民法の理解が十分であるかを振り返ってみる必要があると思います。

「③理詰めの科目」

暗記に頼り過ぎた学習はダメです。民法を出発点として、どのように理屈が組み立てられているのかを理解することが必要です。一見、覚えることが多そうに見えて、理屈さえわかっておけば、そこから結論はおのずと出てくる場合も多いのです。

だから、暗記要素が少ない科目です。理屈が分かっていれば、未出の肢を見かけた場合でも、正誤判断が可能です。

オートマの不動産登記法は、とにかく理詰めで書かれていて、非常に良い本だと思います。

実は、不動産登記法の各論は司法書士試験の科目の中で最も理詰めの要素が強い科目です。ここを乗り越えれば、後は暗記が中心になります。

「総論には暗記しなければならないところがある。」

もしも、オートマの後半部分にある総論「だけ」が分かりにくいのであれば、テキストの読み込みではなく、暗記中心の学習に変えてみることをお勧めします。総論は暗記が必要な部分です。具体的には、テキストを読んだ後、何も見ずに、自分の心の中で、講師になったつもりで講義をするような学習が有効です。

それから、オートマシステムには「定理」が記載されています。これらは超重要事項なので、優先して覚えましょう。例えば「抹消登記は常に主登記」等です。

商法・会社法・商業登記法択一の勉強をする

不動産登記法の学習が終了したら商法・会社法・商業登記法の学習を始めましょう。

これらの科目の学習方法には2つの流派があります。

まず実体法である商法と会社法を完璧にしてから、手続法である商業登記法の学習に取り掛かる方法と、両方を同時に学習する方法です。

オートマは後者の方針に基づいて書かれており、「会社法・商業登記法Ⅰ、会社法・商業登記法Ⅱ」の分冊になっています。

一方では、「商法・会社法」「商業登記法」の分冊になっているシリーズのテキストも存在します。

私は、前者のテキスト(オートマシステム)で勉強したので、これが正しいと思いますが、一概に何が正解とは言えないテーマです。

オートマ過去問も含めてほとんどの過去問題集は、「商法・会社法」「商業登記法」の分冊になっていますので、後者のやり方の場合、テキストで勉強した箇所の過去問を直ぐに解くという勉強方法がし易くなります。

ただし、何度も言うように、オートマは過去問を多数引用しています。オートマを利用している場合は、そもそもテキストで勉強した箇所の過去問をすぐに解くという作業をする必要が無いかもしれません。

この記事では、前者(会社法と商業登記法を同時に進める流派の場合)を、想定して説明します。

勉強を始めたらすぐにわかるのですが、会社法は非常に取っつきにくい科目です。私は、正直な話、この科目の学習を始めてすぐに、詰んだんじゃないか?と思ったほどです。

ですが、一方では、暗記が通用しやすい科目であり、司法書士試験の科目の中では簡単な部類に入ります。

不動産登記法までは、分野で細分化して、テキストと必出3300を交互に勉強するというやり方が有効でした。しかし、会社法の場合は、オートマと必出3300選の解説順序が異なるので、この方法が使いにくくなります。仮にこれができたとしても、会社法はとにかく取っつきにくいのです。

オートマと必出3300選の解説順序が異なることへの対策として、とりあえず必出3300選は放置しておいて、テキストの理解が進んでからやるという方法があります。例えば、オートマシステムであれば、テキストは機関設計から始まりますが、この部分を何度も繰り返し読み込んで理解が進んでから、次の章(オートマシステムの場合は、設立だったと思います。)へ進むという方法があります。

民法と不動産登記法は、

テキストの総則を読む→
サブテキストの総則を覚える→
テキストの総則を読む→
サブテキストの総則を覚える。

を繰り返して学習しましたが、これを崩しても構いません。

例えば…

テキストの機関設計を読む→
テキストの機関設計を読む→
テキストの機関設計を読む→
テキストの設立を読む→
テキストの設立を読む→
テキストの設立を読む。

になるということです。

実際には各分野を3回ずつでは足りず、もっとたくさん読まなければならないかもしれません。

とりあえず必出3300選は後回しにして、必出3300選を解けるだけの知識が付いた頃に解いてみましょう。

ブレイクスルーとは何か?

※ブレイクスルーは受験用語です。LECさんの有名なテキストのネーミングの由来だと思います。

民法と不動産登記法は、勉強したらしただけ実力が付くのを実感できる科目です。しかし、会社法は、最初のうちは勉強してもしても、勉強したことの3割も身についていないと感じさせられます。民法と不動産登記法は全体を理解してから、細かいことを暗記するという方向で良かったのですが、会社法はいきなり細かいことを暗記しなければなりません。

いきなり細かいことを暗記しようとしても、最初のうちは過去問も解けないので、何をどのくらいまで暗記すればいいかも分かりません。

だから、勉強を始めると次の悪循環に陥っていることに気付くはずです。

理解できない→
暗記するポイントを絞れない→
覚えられない→
理解できない→
暗記するポイントを絞れない→
覚えられない。

そこで、私がお勧めなのは、目に付いたものは、重要かどうかなんて考えずに、片っ端から暗記するという勉強の方向性です。ここは試験に出るだろうか?ここはどのくらいまで覚えればいいだろうか?等と考える時間で暗記してしまいます。それでも、この悪循環が気になってしまうと思います。

しかしながら、この悪循環には必ず終わりがやってきます。

最初のうちは、全く理解できないと感じるはずです。でも、読むたびに実感がないだけで実力は付いています。覚えることを意識しながら何度も読んでいるうちに、ある瞬間から、突然、急激に理解が進んだと実感できる瞬間がやってきます。(こういう瞬間を受験用語でブレイクスルーと言います。)

ゲームで喩えてみましょう。

民法と不動産登記法の学習はこんな感じです。

主人公のレベルが1攻撃力が10あるとします。これで雑魚を攻撃します。10ダメージを与えられます。頑張って雑魚を狩り、Lv.2に上がり攻撃力が20まで伸びたとします。与えられるダメージも20まで伸びます。

こういう仕組みであれば、人はやりがいとモチベーションを感じます。これが勉強であれば、面白い!これからも頑張ろう!という気持ちになると思います。

これと対照的なのが次の科目です。

・会社法
・商業登記法
・マイナー科目の大半
・記述式(不動産登記法、商業登記法両方)

これらの科目は、テキストを読んでも(記述であれば書こうとも)、実力が伸びている実感、あるいは勉強が進んでいる実感を持てず、最初は苦手意識を感じやすいのです。(というか、苦行に感じます。)

ゲームで喩えましょう。

主人公のレベルが1攻撃力が10あるとします。これで雑魚を攻撃します。10ダメージを与えられます。頑張って雑魚を狩り、Lv.2に上がり攻撃力が20まで伸びたとします。与えられるダメージは11 までしか伸びません。(民法や不動産登記法では、与えられるダメージは 20 まで伸びました。)

こういう仕組みの下では、人はやりがいとモチベーションを喪失しがちになります。これが勉強であれば、苦行だ!こんなのやってられるか!という気持ちになると思います。

ここで、ブレイクスルーという概念が問題になってくるのです。

これらの科目は、ある日突然、急激に実力が伸びる瞬間が来ます。この瞬間がブレイクスルーです。ここさえ超えてしまえば、勉強時間と実力が比例して伸びていく実感を得ることができます。

ゲームで例えましょう。

先ほどの状況から、さらにさらに雑魚を狩って、Lv.3に上がり、攻撃力が30まで伸びたとします。そうすると与えられるダメージは30まで飛躍的に伸びます。Lv.4に上がり、攻撃力が40まで伸びたとします。そうすると与えられるダメージは40まで伸びます。

ここへ来て、人はようやく、やりがいとモチベーションを感じます。勉強であれば面白い!これからも頑張ろう!という気持ちが民法以上に強くなると思います。

やればできるんだ!努力は報われるんだ!という気持ちになるでしょう。

会社法、および商業登記法を勉強していて、つまらないと感じる方、または挫折しそうになっている方は、それでもなお努力を続けてください。ブレイクスルーは必ずやってきます。

会社法・商業登記法の具体的な勉強方法

さて、片っ端から暗記すると言っても具体的にどうすればよいでしょうか?

この章では、その具体的な方法を説明します。ここで説明する方法は、会社法・商業登記法に限らず、この後に控えている民事三法やマイナー科目でも通用する方法です。ここで、暗記のコツをつかんでおけば、後の学習が非常に楽になります。

暗記科目の勉強方法は、次の4つに分けることができます。

①テキストの内容を講師になったつもりで、自分の心の中で講義する。
②必出3300選の右ページを暗記する。
④論点を書き出し、詳細を言えるようにする。
③条文を読む。

人それぞれ、このやり方が覚えやすいというのが違うと思いますし、分野によっても覚えやすい方法が違うため、ここで示す方法を組み合わせるのが良いと思います。

「①テキストの内容を講師になったつもりで、自分の心の中で講義する。」は、会社法を勉強する上での基本です。

例えば、募集株式の発行の論点ではこの学習方法が極めて有効です。

テキストの募集株式の発行の部分を読んだら、それを何も見なくても心の中で言えるようにします。1回読んだだけでは言えるようにならないので、2回、3回と読んで、その度に、「テキストの内容を講師になったつもりで、自分の心の中で講義する。」ことを試行して、思い出す努力をします。

こういうときの決議機関は何か?(決議の重さは普通決議か特別決議か?)といったポイントさえ押さえられていれば、一言一句テキストに載っていることを言えなくても構いません。

実際には、ここまで知識の精度を高める必要はない分野もあるのでしょうが、ここまでやれば、「理解できない→暗記するポイントを絞れない→覚えられない→理解できない→暗記するポイントを絞れない→覚えられない。」の悪循環を断ち切り、理解するための足掛かりをつかむことができます。

「②必出3300選の右ページを暗記する。」は、チェックテープを使った方法です。この方法を使う場合は、何処にチェックテープを引くべきかを見極めるため、ある程度理解が進んでいることが前提であり、学習開始序盤は使いにくい方法です。ただ、左ページの過去問を細かく見ていけば、何処にチェックテープを張ればいいか見当が付く場合もあります。

チェックテープは色下敷きをかけると黒になり、マスクとして機能します。つまり、y軸の意味で難しい問題を自作することになります。

ページによっては、もはやどこにチェックテープを引いて良いか分からないぐらい覚えるべきことが多いところもあるかもしれません。

例えば、民事訴訟法の移送のような論点がそうです。こういう論点の場合は、チェックテープを使わずに、必出3300選の図表を全部暗記して、紙に書き出せるようにします。

当然ですが、ケータイ司法書士を使っている場合は、最初からマスクされた状態で売られていますので、チェックテープを掛ける必要はありません。私は使用していませんが、この手間が無い分、非常に効率よく学習できる教材ではないかと思います。

「④論点を書き出し、詳細を言えるようにする。」は、私は実行しなかった勉強法ですが、この方法も非常に有用ではないかと思います。

これは、@40さんが実践していた方法です。詳しいことはリンク先の記事をお読みください。

(参考サイト)
https://sihoushosi-exam.com/basic-study

この方法も、根底にある考え方は、y軸問題やテキストでアウトプットすると言うことと本質的には同じだというのが私の解釈です。

「③条文を読む。」ことは、会社法の学習では特に設立の論点で有効です。
私は、オートマシステムの設立の章を何度読んでも理解できませんでした。「①テキストの内容を講師になったつもりで心の中で講義する。」の方法を実行しようにも、全く頭に入ってこないのです。

それで手を出したのが条文です。

私の場合は、設立の章は条文を読むことで急激に理解が進みました。

テキストの設立を読む→
条文の設立を読む→
テキストの設立を読む→
条文の設立を読む。

この手順を螺旋のように繰り返しました。3回繰り返したところで、設立の理解が急激に進んだのを覚えています。

条文を読む際は、条文の内容を何も見なくても説明できるレベルにまでする必要はありません。また、この目的で条文を読む場合は、学習序盤で3回程度読めば十分で、次の分野に進んでからの復習にまで取り入れる必要はないと思います。

設立の他に、新株予約権、社債、商法が条文を読んでおくべき分野ではないかと思いました。これらの分野は、テキストと必出3300選だけでも理解できるのですが、頻出分野でしかも、未出の条文が非常に多いという特徴があります。他の分野が完璧になってあと3点伸ばしたいという場合に、条文を読んでおくと有効かもしれません。

このように、会社法では条文を読むことが有効な分野があります。注意事項として、組織再編の章だけは、条文を読むとかえって分かりにくくなるので、テキスト中心で勉強することをお勧めします。

条文を読む場合は、会社法を学習する段階では、六法に書き込みをしたり印を付けたり、と言うことはする必要がありません。学習が極まって、民法で条文を読むようになると、六法に印を付けながら読むと言うことが有効なのですが、これについては後の章で解説します。

会社法の勉強方法は以上ですが、復習について注意事項があります。会社法の勉強が全部終わって、民事訴訟法に入ってから会社法の復習を取り入れるという方法を考えた方もいるかもしれませんが、もっと早い段階で復習をすべきです。例えば機関設計が終わって、設立に入ったら、機関設計を復習しながら設立の勉強をします。

(リンクのみ)記述の勉強をする

主要4科目の学習が終わったら、記述の勉強をしましょう。

記述の勉強については、次のブログ記事にかなり具体的にまとめましたので、記事を読んでください。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2021/06/01/ss_kijutsu_benkyou/

記述の勉強をする(補足)

上記の記事に補足があります。記事の中で、私は次の教材を必須ではないと切って捨てています。

・伊藤塾 うかる! 司法書士 記述式 答案構成力 不動産登記/商業登記 実戦力養成編

ですが、この教材は非常に有用な面もあります。というのは、「解き方」についてはあまり参考にならないと思ったのですが、質の高いオリジナル問題を収録しており、問題集としては有用なのです。

例えば、平成25年度の不動産登記法記述式に登記原因証明情報の中身を書かせる問題が出題されました。これは、補助者経験者に明らかに有利であり、奇問の扱いを受けたのですが、配点が高かったという噂があります。実は、この本は登記原因証明情報の中身を書かせる問題を収録しており、的中しているのです。

この他にも、私が受験していた頃は、組織再編からの出題の可能性が高いと言われていた時代ですが、その時代に、市販書籍で組織再編を掲載している問題集は、この本だけだったと思います。オートマ記述式には、合併の決議に瑕疵があり、合併ができないというイヤラシイ引っ掛け問題が収録されていますが、この本にはちゃんと合併ができるパターンが収録されています。

平成27年度は株式交換から出題されていますが、この本で合併の勉強をしていたことは間違いなく役に立ったと思います。

この本の難点を挙げるなら、本試験以上のボリュームになっているので、解くときは時間を測らない方が良いと言うことです。

これを抜きにすれば、オリジナル問題の不足しがちな独学者には大変有用な教材であり、「解き方」はあまり参考にならないとしても、問題集としては解いておくべきだと思いました。

民事訴訟法を勉強する

記述の勉強と並行して民事訴訟法の勉強をしましょう。

民事訴訟法もオートマシステムと必出3300選で解説順序が異なるのですが、会社法の時ほど問題にはなりません。

というのは、民事訴訟法はページ数が会社法に比べるとかなり少なく、

民事訴訟法のテキスト全体を読む→
サブテキストの民事訴訟法の部分を覚える→
民事訴訟法のテキスト全体を読む→
サブテキストの民事訴訟法の部分を覚える。

というような手順で学習できるので、そもそも分野ごとに細分化して螺旋のように繰り返すと言うことをしなくて良いからです。

民事訴訟法の大部分は暗記科目です。会社法の時と同じように、片っ端から暗記すると言うことが有効です。会社法が苦行に感じた方もいるかもしれませんが、会社法の勉強を終えて得意科目にできた方には、今までと同じことの繰り返しであり、難しいことはありません。

会社法以上に覚えにくい部分が出てくる分野(まさに冒頭で挙げた書面ですべき訴訟行為等)がありますが、根性で覚えましょう。

民事訴訟法の大部分は暗記科目なのですが、一方では、暗記が通用しにくい非常に理屈っぽい部分もあります。(例えば、弁論主義の第○テーゼ等)

多くの場合、オートマシステムを何度か通読すれば自然と理解できると思いますが、難しいと感じた方にはお勧めの教材があります。

・伊藤塾 うかる! 司法書士 主要5科目で学ぶ入門テキスト

この本は、オートマを読む以前の方を想定した本で、「司法書士試験に興味あるけど、いったいどんな試験なのかな?」という方のための本です。この本の特徴として民事訴訟法の解説が詳しいことがあります。特に民事訴訟法の理屈っぽい部分を詳しく解説してあります。私は、オートマを何度か通読すれば自然と理解できたのですが、最初にこの伊藤塾さんの本を読んでいたので、民事訴訟法の基礎が理解できていたからかもしれません。

司法書士試験の中で、民事訴訟法はどこまで対策するか?が一番難しい科目です。一般的には民事訴訟法はマイナー科目とされますが、伊藤塾さんは「主要5科目」という言い方をして、民事訴訟法を主要科目に含める視点をお持ちのようです。確かに、マイナー科目としては出題数も多く、5問出題されますし、非常に難しい問題が出題される年もあります。

そこで、テキストとサブテキストと過去問だけで本当に大丈夫なのだろうか?と手を広げたくなります。具体的には条文を読みたくなります。

ただ、私の意見を言えば、民事訴訟法は、やはりマイナー科目の域を出ないので、手を広げて時間をかけすぎるべきではないと思います。

何故、そのような考えを持つに至ったかというと、民事訴訟法を5問とも間違えながら、他の問題を全問正解させて午後30で合格した方を知っているからです。平成25年度の合格者ですが、この年は民事訴訟法がやたら難しく、この年以降、民事訴訟法にもっと力を入れて学習すべきではないか、という意見を主張する方もいました。しかし、私は、全滅させても合格できるなら、やっぱり手を広げて時間をかけ過ぎないようにするのが正しいと思いました。

とは言え、テキストとサブテキストと過去問はやはり完璧にしておくべきだと思います。

民事執行法を勉強する

民事執行法は、最もイヤな科目です。

試験範囲が非常に広い割に出題数が1問しかなく、コスパが悪いと言うことがあります。更に、非常に難しい問題が出題され、いくら勉強していても全く点が取れない場合もあります。

そこで、この科目だけは捨て科目にする余地があるというのが私の個人的な考えです。民事執行法が分からないと、他の科目を理解する上で悪影響が出るという主張もありますが、個人的にはそれほど細かい知識はなくても、他の科目を理解する上では支障はないと思っています。

具体的には、テキストを何度か通読して手続きの大枠と背後にある考え方を理解しつつ、サブテキスト(必出3300選)を完全暗記すれば十分だと考えており、テキストの細かい知識を深追いしない方が良いと思います。

民事執行法は、民事訴訟法以上に根性で暗記する要素の強い科目です。必出3300選を理屈抜きに覚えましょう。

実は、民事執行法は、簡単な問題と非常に難しい問題が毎年交互に出題されるという噂があります。例えば、平成26年度は難しく平成27年度は簡単だったのです。

そこで、読者様が受験する年度で簡単な問題が出題されると予想されるなら、最低限(必出3300選の完全暗記)だけをやって挑み、難しい問題が出題されると予想されるなら、対策をせずに挑むというのもアリかもしれません。

とは言え、これは責任の持てない発言です。時間のある人はテキストを完全暗記すべきだと思います。

民事保全法を勉強する

民事保全法はサービス問題です。

試験範囲が広くない割に、必ず1問出題され、毎年簡単な問題なので、必ず取りに行くべきです。

対策は、基本的には民事執行法と同じで、テキストを何度か通読して手続きの大枠と背後にある考え方を理解しつつ、サブテキスト(必出3300選)を完全暗記すれば十分です。

これで過去問30年分全部正解できるようになると思いますし、本試験にも対応できると思います。

講師によっては、条文が少ないので条文を読んだ方が良いと指導する場合もありますが、その必要性も無いと個人的には思います。

その他のマイナー科目を勉強する

供託法、司法書士法、憲法、刑法についてザックリと解説します。

供託法は不動産登記法とよく似た科目です。暗記の総論と、理詰めの各論といった感じでできています。ただ、不動産登記法よりは供託法の方が暗記の占める割合が大きいです。

対策としては不動産登記法と同じで良いのですが、試験範囲が広くない分、螺旋のような学習をし易いので、不動産登記法よりは楽です。

それと、供託法は過去問を焼き直した問題の出題が多いので、対策は過去問を重視した方が良いと指導している講師もいるようです。

司法書士法は会社法と似たような科目です。暗記が大部分を占めています。

対策としては、会社法と同じで良いです。

ただし、司法書士法の方が試験範囲が狭いので、その分、楽ではあります。

そして、会社法が全試験範囲からまんべんなく出題される可能性があるのに対し、司法書士法は出題範囲が偏っています。例えば、司法書士の欠格事由や業務を行いえない事件といった問題は出題可能性が非常に高いです。

全部暗記しておくに越したことはないのですが、時間が無ければ多少妥協し、テキストを何度か通読しつつ、サブテキスト(必出3300選)を完全暗記するという方針で学習すると良いと思います。サブテキストに無くてテキストにある細かい知識がありますが、それは、司法書士試験の試験範囲を一通り終えて、時間が余ったら暗記するという方針でも良いと思います。(試験範囲の一部を捨ててしまうという意味では、民事執行法と似ている面もあります。)

刑法は、民法と似た科目です。○○(構成要件、法律要件)の条件を満たすと△△(刑罰、法律効果)という効果が発生する作りになっています。大枠を理解した後に、細かいことを暗記するイメージで挑めばよいです。

そして、民法よりも刑法の方が、更に理詰めの要素が強いです。そのため、学習方法も民法と似ており、テキストを読むことと、サブテキストを覚えることを螺旋のように繰り返す学習方法が有効です。

私はオートマシステムと必出3300選で学習しましたが、この2つの教材をやっておけば、パーフェクト過去問題集の問題は全ての肢を正誤判断して、全問正解できました。過去問題集を解く必要もないと思います。

憲法は3問しかなく問われる知識もそれほど深くは無いのですが、具体的に勉強のコツをあげるのが難しく、やや対策し辛い科目です。

合格者の共通見解として、判例の結論だけでなく、そこに至るまでの理屈の流れまで含めて覚える必要があるというのがあります。

私は、テキストを読むことと、サブテキストを覚えることを、螺旋のように繰り返す学習方法を行い、統治機構だけは条文を読みましたが、人によってはそれだけでは不安が残ったり、理解できなかったりするかもしれません。

対処法としては、合格者でも憲法だけは、オートマ以外のテキストも買って合格したという体験談が多くあるので、そういうものを調べて、自分に合いそうなテキストを追加購入してみるという方法があります。

憲法の過去問もオートマシステムと必出3300選で全部正解できるようになるため、過去問を解く必要はないと思います。

手を広げる方法

本記事の計画の場合、学習終盤になって択一も記述も、全てのタスクをこなしきって余裕が出てくるかもしれません。その状況でも復習は必要なので、タスクはあるのですが、本当に余裕がある場合は、より合格の確率を高めるため手を広げた方が良いかもしれません。

一応、手を広げるのは一般には受験対策上は良くないことだとされますが、本当に余裕があるのであれば、より確実な合格を期すため、手を広げる選択肢も無しではありません。

手を広げる場合、一番のお勧めは記述の答練や中上級者向け講座を取得することです。繰り返し述べていますが、記述は市販の教材のみでは不安が残ります。択一でどんなにいい点を取れても、記述が基準点を割って落ちることはよくあるのです。また、記述は択一と違って、y軸の意味で難しい問題という概念が無く、本試験と同一形式の問題演習をすればするほど実力が伸びます。よって、私は学習終盤で余裕が出てきたとき、一番有効なのは記述の未出の論点に対策することだと考えています。

次に、お勧めなのは民法の条文を読むことです。また、会社法の学習に条文を取り入れていないのであれば、この段階で条文を読むと良いと思います。これは択一でより確実に逃げ切り点を取りたい場合に有効です。条文を読んでおくことで、あと3点を伸ばせる可能性があります。ただし、あくまでも条文は、択一の知識が極まっている人が補完的に使うべき教材であり、時間が足りないのであればやらない方が良いと思います。

条文の読み方

条文を読むことが、受験対策上有効な科目は次の通りです。

・民法
・会社法・商法(組織再編を除く。)
・憲法(統治機構)

また、民法は条文だけではなく、判例も読んでおくことをお勧めします。人によっては民事訴訟法も読みたくなるかもしれませんが、個人的な意見を言えば民事訴訟法はマイナー科目であり、条文の多さに比べて出題数が少なく、コスパが良くないので、そこまで力を入れる必要はありません。

もう少し具体的に言うなれば、特に条文を読んでおきたい分野というのがあります。例えば、民法の場合、組合、更改、相隣関係は、出題実績がある割に記載していないテキストもあります。

会社法の新株予約権、社債、商法は、頻出分野かつ未出の条文が多い分野なので条文を読んでおく価値があります。

択一の知識が極まっている人が条文を読んだ場合、この条文は、他の手持ちの教材に記載されている知識なのかそうでないのかと言うことを瞬時に判断できます。(瞬時に判断できないという場合、勉強不足なので、条文に手を広げるのはやめた方が良いです。)

重点的に読むべきなのは、他の手持ちの教材に記載されていない知識です。
そこで、最初に読むときは次のように条文に印をつけておきましょう。

・他の手持ちの教材に記載されている条文や判例→蛍光ペン(黄色)で、斜めの線。

・他の手持ちの教材に記載されていない条文や判例だが、試験には絶対に出ないと思うもの。→黒のペンで大きく×。

・他の手持ちの教材に記載されていない条文や判例かつ、試験に出る可能性があると思ったもの。→赤のペンで○

・よく分からないもの→紫のペンで?

2回目以降は赤の○が付いたところだけを重点的に読みましょう。1回目はかなり時間がかかりますが、民法なら、2回目以降は1日もあれば1周できるはずです。

(リンクのみ)模試を受ける

予備校を一切使わずに受かるという制限プレイでもしていない限りは、模試は必ず受けてください。

模試を受ける大きな目的として、自信を付けることと未出の論点に対策するためというのがあります。

詳しくは次の記事で考察しているので読んでください。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2020/04/06/ss_moshi/

何処の予備校の模試を受ければ良いのかと言うことについて議論になることがありますが、私はこれについても意見を持っています。次の記事で考察しているので読んでください。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2021/05/30/ss_moshidoko/

以上の内容は、試験直前期を想定してのものですが、模試を速い段階で受けられるなら受けた方が良いです。予備校によっては、直前期の模試とは別にプレ模試を実施していますので、受けましょう。年内に模試を実施しているのであれば尚良いと思います。これは、自分の勉強方法に間違いがないかを確認し、必要であれば修正するためです。

ただし、模試を受けすぎるのも良くないと考えます。早期に実施される模試1回、プレ模試1回、直前期の模試2回の3~4回ぐらいがちょうど良いと思います。

本試験の最適な時間配分

ここからは勉強方法というより、本試験の解き方や立ち回りの話をします。

司法書士試験の制限時間はかなりきついです。私も本試験で午前はギリギリになりましたし、午後は時間切れを起こしました。

司法書士試験の制限時間は次のようになっています。

午前:2時間(択一35問)
午後:3時間(択一35問、記述2問)

午前の方ですが、午前で時間切れを起こすことは殆どありません。ただ、私は結構ギリギリになりました。私が受験した時の午前は非常に問題が簡単で基準点30問に及んだのですが、それでも解くのに時間はかかります。民法では事例に条文や判例を当てはめるという作業がどうしても必要ですが、そこは時間のかかる部分です。問題が簡単だとしても時間はかかります。

これが大事なのですが、制限時間を問題数で割ってみると、1問当たり何秒までしかかけられないというのが見えてきます。その自分で設定した各問の制限時間に達したら、次の問題に進むと言うことも必要です。というのは、解くのに非常に時間のかかる問題が出題された場合、そこに時間をかけすぎて、たった3点のために、時間切れを起こす恐れがあるためです。その対策として、時間のかかりすぎる問題は捨てる勇気も必要です。

午後でよく勘違いされがちな点として、午前の択一の制限時間が2時間なのだから、午後も2時間かけて良いのだろうというのがあるのですが、これは間違いです。というのは、午後の記述には1問あたり、1時間をかけないととても解けないからです。午後の択一に2時間もかけていたら、記述を解く時間が無くなります。最近は記述のボリュームが増えており、記述に1時間ではなくもう少し時間が欲しいこともあります。

従って、午後の最適な時間配分は次のようになります。

択一:50分
不動産登記法記述:65分
商業登記法記述 :65分

午後では、如何に択一を速く解くかが受験戦略上重要となります。

よく、記述が苦手だという人に時間配分を聞いてみると、極端なケースですがこうなっている人がいます。

択一:120分
不動産登記法記述:60分
商業登記法記述 :0分(時間切れ0点)

もちろん、これでは択一の成績がいかに良くとも、記述で基準点を割るので合格できません。この場合、記述よりもむしろ択一が苦手で時間がかかり過ぎていることが敗因です。

記述が苦手だと感じている人は、実は択一が苦手で、時間がかかり過ぎていないか、一度考察してみる必要があると思います。

択一式の特徴

司法書士試験の択一の問題には次の形式があります。

・組み合わせ
・単純正誤
・個数

組み合わせとは、ア~オの肢が提示され、次のうち、誤っているもの(あるいは正しいもの)の組み合わせはどれか?と聞いて来る問題です。

ア ~
イ ~
ウ ~
エ ~
オ ~
1 アエ 2アオ 3イウ 4イオ 5ウエ

単純正誤とは、ア~オの肢が提示され、次のうち、誤っているもの(あるいは正しいもの)どれか?と聞いて来る問題です。

1 ~
2 ~
3 ~
4 ~
5 ~

個数とは、ア~オの肢が提示され、次のうち、誤っているもの(あるいは正しいもの)の個数はいくつあるか?と聞いて来る問題です。

ア ~
イ ~
ウ ~
エ ~
オ ~
1 1個 2 2個 3 3個 4 4個 5 5個

このうち簡単な問題はどれで、難しいのはどれでしょうか?

ア~オまでの肢の正誤判断の難易度にもよりますが、肢の難易度が全て同じだとすると、組み合わせ問題が最も簡単で、個数問題が最も難しいです。

組み合わせ問題の場合は、ア~オまでの肢の正誤を全部読むまでもなく、例えば、正しい肢を聞いて来る問題であれば、正しい肢を2つ、あるいは間違っている肢を3つ特定すれば正解できます。というか、実際には、正しい肢を1つ、間違っている肢を1つ特定すれば解ける問題もあります。もっと言えば、正しい肢を2つ聞いているのに、正しいと思った肢が3つあるとすると、出題ミスが無いと仮定するなら、正誤判断をどれかひとつ誤ったことが判明するので、見直すことができ、ケアレスミスをしにくいです。(IT用語でいえば、ベリファイチェックが可能ということになります。)

個数問題の場合は、全肢の正誤判断が正確にできてようやく正解にたどり着けます。

当然ですが、ひとつの問あたりに正しい肢を2つ、あるいは間違っている肢を3つ特定すれば正解できた組み合わせ問題よりも、個数問題の方が難しいです。

個数問題の怖さ

司法書士試験では個数問題は非常に厄介な問題です。というのは、正解できるかどうかに受験生の実力が正しく反映されず、運否天賦になることがあるからです。

例えばア~オの肢のうち、アだけが難しく、イ~オが簡単という場合、受験生の実力と正答率は比例します。全く実力の無い受験生なら、アはもちろんのことイ~オでも判断を誤ります。中途半端な実力を持った受験生はイ~オは判断できるものの、アだけを判断できずに正解にたどり着けません。真に実力がある、ア~オを全部正誤判断できた人が正解にたどり着けます。

ですが、ア~オの肢のうち、アとイだけが難しく、ウ~オが簡単だとしたらどうでしょうか?真に実力のある受験生がア~オまで全部正誤判断して正解にたどり着けることには変わりませんが、中途半端な実力を持っていると、アとイのどちらかだけ正誤判断できて、もう片方の正誤判断を誤るかもしれません。そうすると不正解ですが、厄介なのは、更に実力が低い人の場合、アとイの両方の正誤判断を同時に誤ると、個数問題では○あるいは×の個数を聞いているのですから、まぐれで正解にたどり着いてしまうことがあるのです。

そのため、個数問題が極端に多い年度の場合(平成26年度が極端に個数問題が多いです。)、得点に実力が正しく反映されず、中途半端な実力を持っている人が、より実力の低い人に負けるということが起きたのではないかと思います。言い方を変えると、中途半端な実力を持っている人は点数が下振れしやすいということです。

こういう理不尽さに負けないようにするためには、ア~オを確実に正誤判断できるだけの圧倒的な実力を付けておくこと以外にはないと思います。

それもあって、私はギリギリの合格ではなく、圧倒的な点数での合格を強くお勧めしていますが、これが司法書士試験の難しさだとも思うのです。

幸いにも、最近の司法書士試験では個数問題が少なく、組み合わせ問題が多い傾向があります。これは、勉強したことが、運の影響を受けずに、正しく結果に反映されやすいということであり、良いことですが、一方で最適解となる受験戦略が昔とは変わってきます。

個数問題が多かった時代は、100%確実に合格したいなら運の影響に負けないように圧倒的な実力を付けようという方針。つまりA~Cといったランク付けにはあまり意味がなく、Cランクであろうと何であろうとテキストに書いてあることは全部覚えなければならない、という勉強が要求されていました。

しかし、今では、Cランクを知らないと得点が大きく下振れすると言うことが起きにくく、運の影響が少ないのですから、AランクやBランクを優先し、Cランクを後回しにするという勉強方針が有効になってきているのではないかと思います。

午後択一の解き方

午後択一はいかに解く時間を短縮するかが重要になってきます。

そのため、組み合わせ問題で肢をア~オ全部検討してはいけません。答を出すのに必要な肢を検討したら、その問いはマークして次に進んでしまうべきです。

例えば、こんな感じです。

次のうち、正しいものの組み合わせはどれか?
ア ~
イ ~
ウ ~
エ ~
オ ~
1 アエ 2アオ 3イウ 4イオ 5ウエ

ここでもし、アを読んで正しいと思ったら、1、または2まで正解を絞り込めます。そこで、次に1を見てエの肢を見に行きます。エが正しいと思ったら正解は1で確定です。エの肢が誤りだと思ったら、正解は2で確定です。

このように、2肢の検討で答えが出てしまうこともあるので、余計な肢(イ、ウ、オ)は問題を読むことすらしてはいけません。

単純正誤問題も同様です。

.次のうち、正しいものはどれか?
1 ~
2 ~
3 ~
4 ~
5 ~

ここで上から順番に読んでいき、3が正しいのだとしたら、残りの4、5は読む必要がありません。もっと極端な話で、1が正しいのだとしたら2~5は読む必要が無いので、肢1つの検討だけで済みます。

肢5が正しい場合は、上から順番に読むなら、5肢読む必要がありますが、確率論で言えば、2~3肢の検討で正解にたどり着けます。

例外的に、個数問題は前肢検討が必要ですが、最近の司法書士試験では個数問題は少なく、ほとんどが組み合わせ問題です。そのため、このような解き方をしていれば、正解を出すために検討すべき肢の数を、5肢から、2または3肢まで、減らすことができるのです。読む肢の数が少なければ、それはそのまま回答にかかる時間の短縮に繋がります。

※厳密にはマークする時間も必要なので、2、3肢まで減らせるといっても、回答時間は半分にはなりません。

これにプラスして、好みの問題もあると思いますが、ア~オの肢のうち、短いものから読んでいく方が、回答までにかかる時間を少なく出来る確率が高まります。

このようにして、記述に充てる時間を増やしてください。

人によっては、全肢検討したくなるかもしれません。というのは、全肢検討すれば先に述べたベリファイチェックが可能になり、ケアレスミスを少なくできるからです。ですが、私はそれでも全肢検討すべきでないと思います。

というのは、この解法は午後を想定してのものです。(午前は、時間切れにはなりにくいです。)

午後の択一の基準点は低くなる傾向があり、実力のある人なら1問や2問のケアレスミスで基準点を割ることは少ないのです。それよりも記述に取れる時間を減らしてしまうことが大きなリスクになります。

なので、よっぽど文章を読む速さに自信があって、全肢検討をしても記述に十分な時間を取れるという自信がある人以外は全肢検討をしないべきです。

ここで注意事項があります。それは普段の学習で過去問を解くときはこんな解き方はしてはいけないということです。普段の学習では全問個数問題だと思って全肢検討しましょう。

(リンクのみ)記述の解き方

記述の解き方については次の記事で解説していますのでご参照ください

(参考記事)
https://kyouzai.design/2021/06/05/ss_kijutsu_kaihou1/

せっかくなら、私が受験したときのリアルな本試験の問題用紙を提示して、問題用紙にどのような書き込みをしたのかについて公開した方が価値のある記事になったのですが、記事にある通り、残念ながら平成27年度の司法書士試験の問題用紙を紛失しております。これについては、もし発掘できた場合は、本有料記事かブログの方で追補したいと思います。

次の記事も参考にしてください。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2020/03/27/ss_h26_hutou/

現代の司法書士試験の記述では、書いたもん勝ちのようなところがあると思います。知らない雛型でもとにかく書くと言うことを心掛けた方が良いと思います。

(リンクのみ)筆者は試験前日と当日に
何をしたか?

これについては次の記事を参照してください。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2021/07/02/ss_chokuzen/

筆者の本試験の感想

さて、本試験当日の心境について語っておきます。

何故だか全く緊張しませんでした。やるだけのことはすべてやり切ったので、合格できなかったら運命だ、ぐらいに達観していました。それに、私は専業受験になる際に、3回までは専業受験で挑戦しようと考えていました。1年目で100%合格できると自信を持てるレベルには至れませんでしたが、仮に不合格になった場合でも2年目は確実に合格するという自信を持てる計画を立ててあったのです。なので、どうせだめならまた1年後に受ければいいや、ぐらいに思っていました。この計画については次の記事を参考にしてください。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2020/11/05/r2_ss_maboroshi/

試験当日は、試験会場にズラズラと入って行く人の列を見て、怖気付いてしまう人もいるそうですが、私は怖気付くどころか、この中で自分が1位なるんだな…と、これだけ勉強したんだからそうなるのが必然だと思いました。

ただ、少々誤算がありました。ブログの方にも書いたのですが、記述で書く手が震えてしまったのです。これは緊張というよりは、記述に差し掛かった際に、もはや勝利を確信していて、「あと2時間、あと2時間で、この1年の努力が全て報われる!」と、高揚し、酒も薬も無しで、酩酊してしまったからです。

記述を書く速さに2割のデバフが付いている感じです。

ただ、模試では記述も含めて圧倒的な高得点を取っていたため、自分の実力が仮に8割しか発揮できないとしても合格には何の問題もないことを頭では理解できていました。

震える手に、不安というよりは、苛立ちを感じました。

だから、受かるんだから震えても大丈夫と自分に言い聞かせながら、震える手で、強引に記述を書き殴りました。その結果、時間切れにはなったのですが、私が受験した時の記述は非常にボリュームが大きく、実力のある受験生でも時間切れを起こした可能性が高いと思い、大して気にすることは有りませんでした。

試験が終わってから会場を退出した際に、LECさんが試験会場の前で午前の模範解答を配っていました。それですぐに答え合わせをしたのですが、33という圧倒的な成績で、これはやっぱり勝ったなと思いました。

自宅に帰ってから、インターネットで午後択一と記述の回答を探し出して、改めて答え合わせをしたのですが、択一は30という成績、記述も7割は書けています。なので、やっぱり勝ったなと思いました。

私はお酒が好きなのですが、受験生の頃は我慢して飲んでおらず、試験当日は、久しぶりにお酒を飲んで心地よく泥酔しました。

筆記試験受験後のお話

試験の翌日に出題ミスがあったことが発覚しました。

この件です。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2020/10/29/ss_h27_shoutou/

記事に書いてある通り、非常に気分が悪くなり、この気分の悪さは合格発表の当日まで続きました。

また、参考記事に書いていませんが、私は超基本的な論点である、取締役の利益相反取引の論点を間違えていることが分かりました。この所為で、登記が消極になるわけではありませんが、添付書面を1つ書き漏らしたのです。これも非常に気分が悪くなりました。

合格発表の前に択一基準点発表というイベントがあります。ここで緊張する人もいるらしいですが、管理人は択一基準点なら上回っているという絶対の自信がありましたし、もっと言えば、受験前からその自信があったので、全く緊張などすることなく、法務省のHPを淡々と確認しました。

ただ、記述については出題ミスがあったのもあり、合格発表が近づくにつれ、気が狂いそうになりました。

しかし、合格発表の3日ぐらい前からは、何か達観したような気分になり、合格発表当日も緊張も何もなく、法務省のHPを淡々と確認しました。自分の受験番号が確かにありましたが、不思議なことに何とも感じませんでした。出題ミスで苦しみ尽くした後だったからかもしれません。

よくある感想として、嬉しいとか、ほっとしたというのがありますが、そういうことはなく、あれだけ努力したんだから当然の成果が出ただけ、という気分が占めていました。言うなれば達成感でしょうか。

いつもと違うことを試験当日にすることは、お勧めしない。

実は、私は、本試験で少しだけ失敗だったと思うことがありました。

私は、午後は全肢検討しないというやり方で解いていたのですが、本試験ではあえてこれを崩すという計画を立てていました。

というのは、私が受験した頃の午後択一は民事訴訟法がやたら難しくなるであろうと予想を立てていた予備校があり、私もそう思っていたのです。そこで、民事訴訟法だけは全肢検討しようと考えました。

実際に、試験はこの方法で解いたのですが、非常に簡単な問題ばかりで全肢検討は全くする必要が無かったと思います。むしろ、記述が時間切れになってしまいました。

合格できたから良いものの、記述で、「募集株式の発行を積極で書く。」というミスをやらかしてしまいました。これは、全肢検討をせずに記述にもっと余裕を持って臨んで、注意深く問題文を読めていれば避けられたかもしれません。

以上から、本試験で普段と違うことをするのは、仮に計画を立てた上であってもあまりお勧めしないというのが私の意見です。

(リンクのみ)口述試験対策

口述試験対策についてはこの記事を読んでください。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2021/01/22/kinkyou_koujutsu/

受からない勉強方法

勉強方法は人それぞれあり、万人にとってこれが絶対の正解というのはないと思いますが、絶対に受からない、万人がやってはいけない勉強方法というのはあると思います。本章ではこれについて解説します。

受からない勉強方法とは、例えば次のような勉強方法です。

・要点をまとめたノートを作る。
・過去問の肢の正誤だけ覚える。
・答練を受けまくる。
・条文を毎回引く。
・復習をしない。

「・要点をまとめたノートを作る。」というのは、既に触れましたが、司法書士試験は要点のみでは合格できず、結局はテキストの細かい知識まで覚えなければならないからです。要点という概念が無いとも言えます。ノートを読んで勉強すると言うことは全く無効で、であれば、ノートを作るのは時間の無駄でしかありません。

要点のまとめノートではなく、記述の間違えたところをまとめたノートを作る方もいます。そして、試験の直前期に見直して本試験で間違わないようにするというものです。これについては賛否がありますが、管理人は個人的にはあまりお勧めしない勉強方法です。というのは、私は、試験の当日に見直したところを見事に間違えたからです。

私は、商業登記法記述に苦手意識があり、オートマ記述式の、登記できない事項の部分だけを試験当日に読んだのですが、試験当日に「募集株式の発行が消極になる。」という論点を見事に間違えてしまい、積極で回答してしまいました。(オートマに記載のある論点であるにもかかわらず、です。)

このことから、いくら間違いノートを作っても間違える時はやっぱり間違えると思いました。ならば、ノートを作る時間であと1問でも多く記述問題を解いた方が、実力が付くと思います。

「・過去問の肢の正誤だけ覚える。」「・答練を受けまくる。」というのは、どちらも同じ「まずさ」が根底にあり、冒頭で説明したy軸の意味で難しい問題のテーマを見て頂ければ分かります。

書面ですべき訴訟行為という論点がありますが、書面ですべき訴訟行為以外の訴訟行為は無限に近くあり、過去問や答練の肢の正誤だけ暗記するというやり方だと、その無限の知識を覚えなければならないことになります。これは、「書面ですべき訴訟行為」だけを、すべて口述できるようにしておけば対策することができます。

有限個数しかないものをすべて覚えてしまうのです。「・過去問の正誤だけ覚える。」「・答練を受けまくる。」という勉強方法は、このような本来やるべき勉強を疎かにし、勉強が本来の進捗以上に進んでいると誤信することになるため危険です。

もっと極端な勉強方法で、過去問の肢ではなく問のレベルで正解の番号を覚えてしまう(アイが正しいので1が正解!等)という勉強方法をする人がいますが、これは言うまでもなく全く無効な勉強方法です。

「・条文を毎回引く」というのは明らかに六法の使い方を間違えています。必要な条文は殆どがテキストで引用されていて、それをわざわざ読むたびに六法を当たるという行為は非常に非効率です。

既に説明した通り、六法は都度引くものではなく、先頭から順番に読み込むという使い方をするためにあります。

過去問既出の条文と未出の条文を分析し、「特に試験に出そうな未出の条文を重点的に覚える。」という山を張るような学習方法もありますが、それにしても、条文を都度引く必要はありません。

前の章で書きましたが、条文は、学習が十分に進んだ状態で読めば、未出と既出を簡単に見分けることができるので、その段階で未出と既出で色分けしながら読むと言うことをすれば効率よく学習できます。

「・復習をしない。」について、私は、復習(というより、テキストとサブテキストまたは過去問を螺旋のように繰り返す学習)をお勧めしています。この勉強方法は当たり前のことのように思えるかもしれませんが、予備校の合格体験談や匿名掲示板の投稿を見ていると、案外できていない人も多いのではないかと思います。

できない人というのは、テキスト全体をまず通読して、人によっては通読を何度か繰り返してから過去問に着手するというのです。これは、全く無効な勉強方法で、1回の通読に時間がかかりすぎるので、2回目に読むときまたは過去問を解くときには、1回目に読んだことを全部忘れてしまいます。

これを繰り返しても、「覚える→忘れる。」の繰り返しになるだけで、全く勉強は進みません。全体を通読するのではなく、分野ごとに、1回読んだら、読んだところの過去問を解いて、またテキストに戻ると言うことをすれば、避けることができます。

法律は大枠を知ってから細かいことを覚えた方が良いという面があり、全体を通読するという学習方法は間違いとまでは言えないのですが、それにしても通読は1回にして、1回通読したら細かいことを繰り返して暗記するようにすべきです。

このような無効な勉強方法をしてしまう理由としては、多くの資格試験では、まずテキストを通読(インプット)してから過去問(アウトプット)に着手することが定石になっているため、それをそのまま司法書士試験に当てはめてしまうからです。

テキストを通読することは、実は直前期になるほど必要なことです。試験の直前には1度テキスト全部に目を通した方が良いと思います。しかし、それをするためには知識が極まっていて高速でテキストを読む必要があり、そのためには細部の暗記ができていないと無理です。

有効なノートの作り方

私は、ノートを作ることを基本的にはお勧めしていないのですが、ノートを有効活用して合格された方もいます。

参考までに、その合格者のブログを紹介します。

(参考サイト)
https://ameblo.jp/gameblog-kari/entry-12703604050.html

ノートはノートでも、要点をまとめたノートを作るわけではありません。

この合格者の方は、テキストで勉強したことを、何も見ずに、自分の言葉でノートに書き出すことをしたそうです。

私は、自分の心の中で、講師になったつもりで講義をするという勉強方法を推奨していますが、これはそれを更に押し進めて、紙に書き出すようにした方法です。

本の著者になったつもりでノートを書くと言ってもいいかもしれません。

また、紙のノートではなくブログに書きます。

私は、この勉強方法を初めて知ったとき、全く考えたこともない方法だったので感動しました。

こんな勉強方法もあるのか!

となりました。

非常に手間がかかりそうな方法なため、これを実行する決断がなかなかできないかもしれませんが、ブログの記事を読むと、非常に練られた勉強方法だと言うことが分かります。この合格者の方は、実際に短期合格されていて、勉強方法の正解例のひとつかと思います。

以上、ノートの作り方次第では有効な場合もあるというお話でした。

(リンクのみ)情報の一元化と検索先の一元化

またしても、松本雅典先生の批判のようになってしまいますが、私は、松本雅典先生が必要だと主張する、検索先の一元化という概念がどうしても理解できません。正確には理解できるのですが、そんな大した名前を付けるような方法論なのかと疑問に思います。

もっと言えば、松本雅典先生は情報の一元化と検索先の一元化とを排他的な概念と位置付けているように見えますが、私には、これも理解できません。情報の一元化は、検索先の一元化と個別独立に成立し、かつ情報の一元化も必要だと考えるのです。これについては次の記事で考察しています。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2020/10/31/ss_ichigenka/

情報の一元化の具体的な方法については、次の記事で考察しています。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2020/10/31/ss_ichigenka/

インプットとアウトプットどちらが重要か

インプットとアウトプットのどちらが重要か?と言うことがたまに話題になります。この結論は、インプットとアウトプットをどう定義するのかによります。

一般的な定義では、インプットとはテキストを使った読み込み学習、アウトプットとは過去問や答練を使った問題演習と言われています。(定義①)

この定義の下では択一に関してはインプットの方が圧倒的に重要です。

合格者(特に上位合格者)の多くは、いわゆる過去問やり込み派ではなく、テキスト読み込み派です。

(参考記事)
https://kyouzai.design/2020/04/15/ss_textvskakomon/

※記述については、実際に問題を解くアウトプットが非常に有効です。

理想を言えば択一の学習時間は9割をテキストの読み込みに充てるべきですし、テキストの情報網羅性が高くなく、過去問で補う必要があるとしても7割程度はテキストに割り当てるべきだと思います。

冒頭の、y軸の問題の話題を読んでいただいた方には分かると思いますが、司法書士試験では本試験で出題される問題が5択形式というだけであって、5択形式の問題を解いていれば実力が付くようにはなっていないからです。実力を付けるにはテキストを使った学習が必要になります。

それは、私がやっていたように、y軸の意味で難しい問題をサブテキストとチェックテープを使用して自作するという方法もありますが、他にもいくつかあります。

松本雅典先生がおっしゃっているテキストでアウトプットするというやり方や、@40さんがおっしゃっている論点の書き出しと完全暗記がそうです。
いずれにしても、テキストをメインの教材とすべきです。

一方で、インプットとアウトプットについて一般的とは言えない定義をしている講師の方もいます。インプットとは知識を仕入れること、アウトプットとは知識を思い出すことだというのです。(定義②)アウトプットが過去問に限定されず、テキストの読み込みも、やり方次第ではアウトプットになります。

この定義の下では、アウトプットの方が重要です。私のy軸の意味で難しい問題を自作にしても、松本雅典先生のテキストでアウトプットにしても、@40さんの論点の書き出しと完全暗記にしても、思い出すことを重要視した学習方法です。

時系列でみてみます。

どちらの定義の場合でも、学習初期はまずテキストを読むしかないのでインプットになります。(過去問をいきなり解いて肢の正誤だけを覚える学習では、背景にある考え方が理解できないので応用が効きませんし、記憶に定着しません。)

これが終わったら、問題演習とテキストを使った学習を、並行させることになります。(螺旋のように繰り返す学習のことです。)定義①の場合はこれはアウトプットが学習に入ってくることになります。定義②の場合は、この段階というのはどちらかというと過去問を分析して何を暗記すれば良いのかを調査する段階ですので、アウトプットというよりインプットになります。

この次は、y軸の意味で難しい問題を解いたり、テキストでアウトプットしたり、論点の書き出しと完全暗記をしたりとか、そういう段階になります。これは、定義①の下ではテキストの読み込みに当たるのでインプットになりますが、定義②の下では思い出すことを中心にした学習なのでアウトプットだと言えます。

試験直前期になるとこの配分がまた変わります。

思い出すという過程を経ても、暫く学習しなければ、覚えたことを忘れてしまいます。そのため復習するのですが、一度思い出す作業をしておくと、思い出す作業を毎回しなくても、テキストを読むだけで記憶を維持できるようになります。

思い出すというのは時間がかかる作業ですし、直前期が近づけば、思い出すという作業をして記憶を定着させるよりもテキストを読んで一度覚えたことを忘れないようにするというインプット中心の学習に切り替えた方が効率的です。これは定義①でも定義②でも直前期はインプット中心の学習になるということです。

以上から、インプットとアウトプットのどちらが重要かは学習進捗によって変わり、単純にインプットをしてからアウトプットをするというのは間違いです。

にもかかわらず、予備校の講座にはインプット講座が先にあり、その後にアウトプット講座があるものが未だに存在しているようです。定義①であろうと定義②であろうと、直前期はインプットが重要なのですから、この基本的な受験戦略に逆行した講座の構成だと言わざるを得ません。

このような講座が存在する理由は、他の資格試験の勉強方法をそのまま司法書士試験にも当てはめた結果だと思います。他の資格試験では、学習初期はインプット、直前期はアウトプットという学習の仕方が確立されているのかもしれませんが、司法書士試験ではこのやり方は通用しません。

司法試験の問題も解いた方が良いか?

民法だけは司法試験の問題を解いた方が良いと主張される方が稀にいます。

この主張をする人のほとんどが合格者ではないのですが、仮に合格者にそう主張する人がいたとしても、私は、民法の司法試験の問題を解く必要は全くないと思います。

まず、気持ちの問題として、司法試験の問題を解くような人は、はじめから負ける想定で司法書士試験に挑んでいる可能性があります。不合格になったときの言い訳をはじめから想定してしまっています。「司法書士試験は司法試験の問題を解いても受からないぐらい難しいんだ、だから不合格になるのは仕方ない!」という論調です。こんなことでは、絶対に合格できません。

そして、気持ちの問題を抜きにしても私は司法試験の過去問を解くことはお勧めしません。というのは、司法書士試験の民法の択一は司法試験の民法の短答よりも難易度が高く、司法試験の問題を解いても、全く練習にならないからです。出題傾向も異なっており、例えば、司法書士試験では組合の問題は滅多に出ませんが(滅多に出ないからと言って捨てて良いとは考えていません。)、司法試験では直近で出題されています。出題傾向の異なる教材で勉強すれば、当然勉強方法が迷走します。

それに、問題演習に逃げてしまうと言うことがマズいです。司法書士試験では、y軸の意味で難しい問題を解くという学習が重要なのですが、サボってしまう可能性があります。問題を解くという学習は楽ではある反面、非常に効率が悪いのです。これは答練についても言えることです。

択一答練有害論-予備校講師には書けない話

私は、独学をコンセプトとした記事を書いています。なので、予備校を不要だと考えていると思われた方もいるかもしれません。しかし、私は、予備校は必須ではないが有益な場合もあるという考え方をしています。

まず、記述は独学の場合だと不利になると言うことは散々申し上げていますし、独学だと勉強方法が迷走しやすいという問題があります。予備校であれば勉強方法についても指導してもらえると思われます。もっとも、この記事のようなインターネット上の合格体験談を参考にすれば予備校無しでも勉強方法を身に付けることはできますが、自分で調査する手間がかかります。

しかし、では、今から司法書士試験を受験する人に、手放しで予備校を使えばいいと助言することはしにくいとも思っています。

というのも、かなり過激な発言ですが、予備校の教材にもトラップがあると思うのです。そのトラップを踏むと勉強方法が迷走してしまいます。

トラップとは具体的には択一の答練です。冒頭にご紹介した y軸問題のお話で、司法書士試験の択一では、y軸の意味で難しい問題を解いて、最終的にはテキストを完全暗記すべきだと述べました。何度も言いますが、本試験で解く問題の形式は5択ですが、普段の勉強で5択の問題を解いていてもダメです。ところが択一の答練というのは、5択式の問題です。

厳密にはこれもアウトプットする機会にはなるので全く実力が付かないことは無いのですが、非常に効率の悪い勉強方法です。

全く無効な勉強方法であれば、答練というものは存在しなくなっているはずですが、効率が悪いとは言え多少は実力が付いてしまうところが、かえってタチが悪いと言えるかもしれません。答練を使ったからこそ合格できた、という方が中には出てきます。そういう方は答練が必要だと主張する合格体験記を書くのですが、初学者がそういう情報を見ると、答練を受けなきゃダメなのかと、と心配になってしまいます。

それで予備校の講座を取ると、本来合格に必要無い教材まで勉強させられてしまうのです。

もっとも予備校の講座によっては、テキストが合格に必要な情報を網羅していなくて答練で補う形になっている場合もあるかと思いますが、それならば、最初から網羅したテキストで勉強すればよい話です。

ただし、答練を使って圧倒的な成績で合格した方もいます。そのことから、答練を全否定はできませんが、その方は、本試験で圧倒的な成績を取った上で、答練の必要性を主張されています。

そういうこともあるので、私は答練を、既に合格レベルにある人があと3点点を伸ばすのには有効だと思います。ですが、択一が苦手な人が答練を受ければ択一が得になるかと言われたら、ないと思います。

(QandA)高校生が司法書士試験合格を目指しても良いですか?

非常に良くある質問です。

まず、高校生ということは、大抵の場合、未成年者だと思います。司法書士試験には受験資格が無く未成年者でも受験できますし合格もできます。ただし、司法書士になるには、登録する必要があり、未成年者は登録ができないようになっています。その場合でも、合格した事実は生涯有効なので、大人になってから登録すれば良いです。

また、高校生の学力で合格できるかというお話なら、余裕で可能です。

さて、高校生が司法書士試験を受験することには賛否があります。それは、学業が犠牲になるからです。高校時代にしかできない貴重な体験をする機会を逃してしまうという問題もあります。

しかし、司法書士は受験でも就職後の実務でも学歴がほぼ要求されないと言われている資格です。批判を承知で言えば、であるとするなら、学業に支障が出ても問題ないかもしれません。

個人的なお勧めは、司法書士の資格を何が何でも早い段階で欲しいというお気持ちがあるなら、高校は普通に卒業して大学に行かずに専業受験生をしながら司法書士試験の勉強をすることです。

大学に行くかどうかは、司法書士試験の結果が出てからでも遅くないと思います。不幸にも司法書士試験に挫折した場合は、就職先の幅を広げるために大学を利用できます。また、合格してから大学に進学するのもそれはそれで面白いです。「出会い」の沢山ある大学生活で、司法書士資格を持っていれば異性にもモテるかもしれません。みんなが就職活動に焦っている中、司法書士資格があれば就職は簡単に見つかるので、就職活動という馬鹿げた労力を学業に充てる等、有意義に過ごすこともできるかもしれません。

そして、これが何よりも大きいのですが、大学を卒業してニートし、ニートしながら専業受験生をやるよりは、大学に行く前に専業受験生になった方がリスクが少ないと思います。

私個人の意見としては、これはかなり不条理に感じることですが、大学卒業後に経歴にブランクを作ると、その後の就職が不利になります。特に、職歴が無い場合はなおさらです。対して、大学入学前の経歴のブランクは浪人と同じで、事情を説明すれば前向きな評価になる可能性があります。

事実、私の知り合いには、司法書士ではありませんが、就職後に大学や大学院に進学して、より良い就職先に転職できたという成功体験談をお持ちの方もいます。

というわけで、これは非常に賛否のある案件なのですが、私個人の意見は、大学に行く前に専業受験生になって司法書士を目指すのが最適解ではないかと思います。

あとがき

このような記事を公開できてうれしく思います。

記事をお買い上げいただいた方、ここまでお読みいただいた方には、感謝を申し上げます。

ありがとうございます!

本記事が受験生の合格のお役に立てれば幸いです。

本来であれば、あとがきには謝辞が入るのが通例です。しかし、本記事は私が完全に一人で書きましたし、出版社も通していません。記事本編でも述べましたが、家族は敵でしたので、感謝すべき家族もおりませんので、一般的な謝辞がありません。

ただ、@40さんには強く感謝をしております。この方のブログが無ければ、私は合格できていなかったかもしれません。感謝を申し上げます。

ありがとうございます!

そして、@40さんは実務をされているようですので、今後の益々の活躍をお祈り申し上げます。

さて、私の受験指導プロジェクトの本来の目的はスマホで動作する教材の開発にあります。有料記事を書いたのは通過点に過ぎません。教材の方はいつリリースできるか確約はでき兼ねますので、やや無責任にはなってしまいますが、応援していただければ幸いです。

既に公言しておりますが、私の今後の予定としましては、弁護士を目指し、予備試験を受験します。この一大プロジェクトの方も応援いただければ幸いに存じます。

何故、弁護士を目指すのか、理由は色々とありますが、これもいつか記事にできればと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、受験生の皆様、ご武運を!

<2023/09/26 追記>

自作教材の体験版を公開しました!

こちらからお使いいただけますので、興味がある方はダウンロードしてみてください。

https://kyouzai.design/2023/09/20/alfa/

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