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あの日一緒にガチャを回した見知らぬお兄さん、今もジオウがすきですか?

"「うつ病」は心の弱さは関係なくウイルスのせいかもしれない"、なんてニュースに少し救われた、そんな時期に連ねたブログを編集し再掲したものです。投稿で時差はあるけれど、出来事自体は7月ごろだったかな。

無数にガチャ台を見ると、いまだに思い出す話をひとつ。

僕は今日もまだ、仮面ライダーに触れてるよ。


2020.10.03


去年の夏、大学生最後の夏のはなし。
自分にとってはきらきらの青春のはなし。


大好きな『仮面ライダージオウ』は、夏映画である『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』の公開を控えていた。2018年9月より番組が始まり本編も佳境、シリーズにとっては最終回に並んで作品の集大成と位置付けられる大事な映画だ。

その宣伝も兼ねて六本木のテレビ朝日では毎日のようにイベントが開催されていた。『テレビ朝日・六本木ヒルズ SUMMER STATION』、通称『テレ朝夏祭り』とか『サマステ』と呼ばれているイベント。

なつかしい


ジャニーズを応援している方ならわかるかもしれない。その年のサマステのテーマソングは『おいで、Sunshine!』。ジャニーズJr.グループのHiHi Jetと美 少年が担当した曲で、夏を感じると頭の中でこの曲のサビがスッとよぎるのだ。

さて、ニチアサ組のイベント内容としては、最初にヒーローショーがあり、その後に番組レギュラーキャストらが日替わりで登壇し、トークをするというものだった。


僕は作品を見るにあたり、例えばドラマであるのならば、どのような意図を持ってあのシーンを演じたのかだとか、俳優さんはどのように噛み砕いて解釈したのか、みたいな話がとても大好きだ。脚本と演者と監督、それぞれこだわりがあるからこその均衡が魅力的で、インタビュー記事やメイキング映像を見て、作品の世界がどんどん広がって解像度が高まっていくあの感覚がたまらない。

このトークイベントでも、最終回が近いなかで貴重な裏話をたくさん聞くことができた。同時期に放送されていた『騎士竜戦隊 リュウソウジャー』のエンディングダンスをジオウのメインキャストが踊ったりと、とにかく最高の夏だったのだ。

危ない、サマステのレポをし始めたらキリがない、この記事の主題はこれではない。




当時は公務員試験やそれに伴う勉強等でなかなかバイトに入れない金欠大学4年生だったから、所謂ヲタ活にかかる金銭問題は深刻だった。
しかし、以前の記事で触れた通り、仮面ライダーシリーズは始まったと同時に終わりへのカウントダウンも始まる。絶対は後悔しまいと使える手段は使った。

地方住みのため選択肢は新幹線かバス。時間に余裕がありお金がない学生が選ぶ道はひとつだ。深夜遅くにバスセンターに向かい深夜バスに乗車する。
他人のいびきやカーテンの隙間からチラチラと刺さる高速道路の光、仕切りカーテンのカチャカチャ音、バスで寝れた試しはいまだ一度もない。
まだ閑散とした早朝に東京駅前か新宿バスタに着けば、大抵マック等で時間を過ごし、妥当な時間にイベント会場へ向かう。イベント自体はものの1時間弱程度。時間と体力に余裕がある日はテレ朝ショップやロケ地を巡って、またバスで帰る。
そんな日々を繰り返していた。

テレ朝、大学、テレ朝、就活からのテレ朝。
あの頃のバイトは『ジオウ』のために働いていたと言っても過言じゃない。

フットワークが軽いとよく言われるが、きっとこの経験が大きいのだと思う(のちにジオウファイナルイベント3週連続3都市12公演(うち台風で4公演中止)全通を経験する)。



そんななか、『ジオウ』のカプセルラバーマスコットが発売された。このラバマスは第二弾、番組終盤に発売ということもあり、番組の主要キャラはしっかりと押さえた拍手喝采の完璧なラインナップである。

まだ発売されたばかりの当時は、東京でも東京駅地下キャラクターストリート内の「TOKYO GASHAPON STREET」でしか見つけることができなかった。
いまではガチャ台が大量に並ぶ姿はあちこちで見られるようになったが、当時は最新のガチャ台がずらっと並ぶ姿が圧巻だった。

東京駅に行ったら仮面ライダーストア(当時はまだOPEN前)、テレ朝ショップ、そしてTOKYO GASHAPON STREETだ。

キャラクターは箱推しなので狙いはもちろん全て、コンプリートを目指す。最低各1で贔屓はつかうように被らせたいところだ。


イベントを終えて、ロケ地をめぐり、帰りのバスを待つために向かった先の東京駅は試練の場へと化していた。

子供とその親が7割方を占めるなか、大量の100円玉を持って参戦する大学生。
側から見れば異常だ。


次々と100円を放り込み、3枚入れて回す。回す。回す。回す。新台ということもあり、すぐに被りがでてコンプリートの先行きなど全く見えず、用意した100円玉もすぐに終わりが見えてくる。
1回に3枚も使うのだから、財布に入る量なんてたかが知れてる。ガチャ台を横から覗いて見れば、あら、なんてカラフルなの。
まだまだ序の口だ。

ところがどっこい、1000円札の両替機が近くにある。さすがわかってるぜバンダイ先輩。気持ち行くままに痛快に回せってことだ。両替すればこっちのターン。

そんなこんなでカプセルを所定のゴミ箱に入れて、内容物を確認して取り出しカバンにしまう。両替して、いざガチャ台のもとへ向かおう。


すると、そこでなんとライバルが登場。

予想外の出来事に緊張が走る。


スーツ姿をした同年代の男性。
とても爽やか。

でも、めっちゃガチャ回してるじゃん。
どんどん100円入れるじゃん。
財布パンパンじゃん。
容赦ないじゃん。


当該ガチャ台は1台のみ。
固唾を飲み後ろで見守るしかない。たまに漏れ出て聞こえる「うわっ」の声に興味そそられる。手元をこっそり覗けば、見覚えのある紫が3つ。ヴィランのスウォルツだ。

色々胸中察した(もちろんスウォルツも好きだけど3つは流石にいらない)。


少し時間が経てばお兄さんも持ち玉が尽きたのだろう、両替台のもとへ向かう。

これは合法的なバトンタッチの合図だ。

同じように100円玉を投下してガチャンガチャンガチャンと回す。ギンガファイナリー、ソウゴ、ツクちゃん、ウール。
このために俺は働いていたのだ、と努力がどんどんカタチになっていく。
この上ない幸せだ。

でも揃わない。
全14種類。
ダブりがあまりにも多かった。被ってもうれしい推しのゲイツはなかなか出ない。
そして両替した100円はまたもや尽きて、お札たちが100円玉に変えてくれと、沼へ誘う。

こうして僕とお兄さんのデッドヒートガチャ祭がはじまった。

回す!回す!両替!バトンタッチ!見守る!交代!回す!回す!回す!回す!回す!


他人に思えなくなり、気がつけば声をかけてしまっていた。

「何狙いなんですか?」
「ウォズがほしいんですけど、なかなか出なくって」
「お、ウォズ推しなんですね、いいですね。ウォズ系いくつかありますけど、なにかこの中に交換したいのあります?」
「ほんとですか?うぉっ、変身前もあるじゃないですか、え、いいんですか?ちなみになにかこの中でほしいのあります?」
「ゲイツ剛烈とグラジオがまだでてないんで是非……!」

そんなこんなで最初はライバルだと思っていたお兄さんとは交換平和友好条約を結び、一気にお互いの目的制覇への道が近づく。

そしてお兄さんとのガチャの回し合いは続いたのだった。

もう数えきれないほどの銀円を投じた頃、無事に14種が全て揃った。そして同時に帰りのバスの時間も迫っていた。結果使った金額は深夜バスの往復分に匹敵した。大丈夫、そのための新幹線を捨ててのバスだ。


最後にカプセルを捨てて帰ろうとゴミ箱へ向かい、ガチャ台を見ると、あのお兄さんは既にいなくなっていた。


どこか不思議な思いを抱えながらいつもの眠れぬバスで夜を過ごす。
名も知らないお兄さんとの不思議な交流劇。楽しかった。それはとても。

もう少し、話したかったな。


あのときのお兄さん。
今でも元気にしてますか?
ウォズのラバストは無事に全てゲットできましたか?

今も『ジオウ』が好きですか?
今も『ジオウ』を愛していますか?
ウォズ大好きですか?

僕は今も変わらず、いや、日々より一層大好きだし、愛しています。新しいグッズが出るたび、未だに喜んでますよ。


この国、この世界のどこかで、あの見知らぬお兄さんがいまも『ジオウ』を心に過ごしていたら素敵だなあだとか。
どこかでまたすれ違っていたら面白いなと思う今日でした。

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