冬の日の雨の日に

冬の日の雨の日の朝に思い出す、
鈍く光る東の空に、輝く銀杏の葉がもう無いこと。
冷たく湿った風がコートを濡らす、その音だけがずっと、駅までの道にのたりのたりかな、と。

冬の日の雨の日に、中天を仰げば思い出す、
灰色の建物、それも、ごく小さな窓しかない、暖かで緩やかな場所で迎える死。
ひたりひたりと一つずつ、鱗を落として失う形、
憧れていたものの萌芽は辛くも枯れて。

冬の日の雨の日に、闇に紛れて足を進めても、
思い知る、
雨は身体をそっくりそのまま象って、
まるできのこのような暗い群像。
隠れることも弾け出ることもあたわず、
心の奥に調子は流れず、
川にすら辿り着かず、
ここは沼に吹きだまった過去の塵ぢり。

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