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天使代行ラングドシャの「実在する偶像」としての魅力

 本稿は2021/3/1にデビューしたバーチャルYoutuber「天使代行ラングドシャ」の初配信を観てド肝抜かれた感情を書き表すために書いたものです。
 Vtuberやその周辺文化をメタ的な視点で考察した文章が多いため、苦手な方は読まない事をお勧めします。
 また、私の「Vtuberはこうあってほしい」的な好みについて語っている箇所がありますが、それらをVtuberの方に押し付けたりするつもりは一切ありません。

 天使代行ラングドシャについての詳しい説明やダイマは既にこちらのnoteで纏められているので、彼女について知りたい方は先にこちらの記事を読む事をお勧めする。

 というか直接彼女のYoutubeチャンネルに飛んで動画を視聴するのが一番手っ取り早い。どんな感じのキャラや声なのか、是非一度確認して貰いたい。

 ここではメタ的な視点を中心に、もう少し違う観点から彼女の魅力を自分用に書きだしてみたいと思う。


いつからか「二次絵付きニコ生主」へと概念が転換したVtuberという存在

 前提として、私は特にバーチャルYoutuberファンという訳ではない。
 キズナアイやバーチャルYoutuber四天王あたりがニコニコ動画などを通してネット上で話題になり始めたあたりからVtuber界隈を横目で流し見してきた人間で、既に活動を終了したゲーム部の1例を除いて特に誰かのファンであったこともない。最近友人の影響もありにじさんじの数人の配信をたまに見るようになった程度である。

 「かわいい、かっこいいデザインのキャラクターがキャッチーな話題やゲームをプレイしている様子を見れる」というオタクが喜ぶ要素満載のVtuberというコンテンツを、同じくオタクである私が当時からあまりのめり込めなかったのは、私の中でどこか

 「言うてVtuberって絵はかわいいけど、中身は人間が入ってるんだよな……」

 というメタ的な視点を持ってしまう事が拭いきれなかった事に最大の理由があるのだと思う。

 私はディズニーランドに行ったら「ミッキーやミニー、ドナルドがいる!」と楽しみたいタイプだし、「ミッキーの着ぐるみを被った人間がいる!」とは頭の中では分かっていつつも考えたくない派なのだ。わざわざ夢を見る事を楽しみにしているのに、現実の事なんて考えたくないじゃない。
 それと同じでVtuberも、例えば本人のTwitterで「〇〇でラーメン食べてきた!」みたいに現実の物や風景の画像をアップされると何だか萎えてしまうタイプなのだ。「え、バーチャル世界のキャラクターじゃなかったの……?」と。

 あたかもディズニーランドでショーが終わった後にキャラクターがいそいそと着ぐるみを脱ぎ始めて「どうも、ミッキー役を務めさせて頂いた〇〇です!」と中の人に自己紹介されてしまったような、現実を見せられてしまったような気分になってしまうのだ。アニメでもキャラと中の人(声優)は切り離して見たいというか……。(Vtuberの「中身の人間っぽさ」を楽しめる方々が多いのは承知の上で、そういった方々を否定する気は一切ない。単に自分がそういう楽しみ方ができないタイプというだけ)。
 委員長とか野良猫などはああいう現実とのリンク具合も含めてキャラクターとして成立しているので特に気にならないし面白いんだけど(公子お嬢はもう色々ぶっ飛びすぎててそれが面白い)、中途半端にバーチャルと現実を混ぜ込まれると「うーん」となってしまう事が多いのだ。

 初期(2016年~2017年あたり)のVtuberは、「自分は実在する人間ではなく、バーチャル世界のキャラクターである」という意識が今と比べてとても強かったように思う。今でもその雰囲気を大切にしているのはキズナアイあたりが有名だろうか(Vtuber界隈あんま詳しくないので的外れだったらごめんなさい)。
 現実の人間が映る既存のYoutuberと違い、オタクであれば幾年月も憧れただろう「リアルタイムで生きる画面の中の二次元キャラクターを直接観測できる」といった体験は確かに画期的で、そりゃあVtuber文化が日本で生まれまたここまで成長するのも、本質的にオタクが多い日本であればむべなるかなといったところだ。

 それが、1~2年ほど前あたりからVtuberのトレンドというか、文化的変換として「中の人の存在を忌避として扱わなくなってきた」ことが挙げられると感じる。Vtuberが雑談配信で特に何の逡巡も無く「この間〇〇県に遊びに行ってきた」「オフコラボは〇〇駅で待ち合わせた」と、自分が我々人間と同じ現実世界に存在していることを隠さない方向へと変化してきたのだ。
 重ねて言うが、これが悪い事であるとは決して思わない。「Vtuberなのにリアルの話をしている」というギャップが面白いと感じる人も多いだろうし、アニメの声優ファンのように「中の人文化」が本質的に好きである方はこっちの方がむしろ今までの感覚にしっくりくるかもしれない。

 ただ私は「Vtuberは現実には存在しない、バーチャル世界のキャラクター」だという楽しみ方をしたかったし、現実との融合が当たり前となった昨今のVtuber界隈において私のような人間は、周りのみんながスーツを着て社会に出ていく中一人だけピーターパンの存在を信じ続ける頭アリスチャンな時代遅れ人間であるかのような「時代についていけてない感」を味わっているところがあるのは否定しきれない。故に現在のVtuberブームともどこか一歩引いた付き合いをしている。
 ただ、こういった流れはそういった現実との融合が求められるVtuber界隈において、これからもどんどんスタンダードなものになっていくのだろう。これも時代の変化だろうと、最近は少しづつ受け入れられる領分が増えてきているようにも感じる。


卓越したスキルが魅せる、ストーリーとして完成された「Vtuberが送るコンテンツ」

 と、ここまで来てやたら話が長かったが、「天使代行ラングドシャ」という新人Vtuberがいる。
 知ったきっかけはVRChatの友達がRTしていたのを見たことで、なんか最近デビューしたVtuberの人らしい。ちょうど1分で分かる自己紹介動画があったので、まぁ1分ならと思い試しに見てみることにした。


 ああ、こういうタイプか。と思った。

 ロールプレイ型というか、現実の人間の会話のテンポではなく、アニメのキャラクターのソロボイスドラマを演じるような。まぁVtuberの最初の自己紹介動画ってある程度みんなこんな感じだよな。でもやたら演技力高いな。普通にプロ級じゃん。少なくとも絶対素人じゃないな……。最近は新人Vtuberの人もレベル高いんだなぁ。まぁでも初配信でどんだけ設定のロールプレイしても、結局後になると普通の人間ぽさが出てきてしまうのがVtuberの常なんだよなぁ。とか何とか思いながら見たことを覚えている。
 
 私は寝る前にベッドの中でスマホを最低30分弄ってしまい翌朝起きられなくなるという非健康的な習慣があるため(来月から社会人なのにどうする気だろう)、何となく初配信動画も流れで見てみようと思った。まぁ1時間全部見るのは遅くなりすぎるし、最初の十数分だけ見てみよう。


 1時間全部見ちゃった…………

 いやこれは凄い。詳しく内容を述べるとネタバレになってしまうので詳細は書かないが、Vtuberに興味がない人でも、例えばTRPGやクトゥルフの雰囲気が好きな人は楽しめると思う。
 「歌って描ける」の名は伊達ではなく、本人のキャラクターデザインはもちろん冒頭の漫画形式のイラストまで本人作とのことだし、場面切り替えのローディングや効果音、各種エフェクトの作りやクオリティも熟練の動画投稿者レベルに洗練されている。これが大手事務所のサポートで付与されたものというならともかく、彼女は個人勢という事だから凄い。

 また本人の演技力や歌唱力もプロと見まごうほどに非常に高くあるため、これが(あえて意地の悪い言い方をすると)「二次絵を被ったニコ生主」ではなく「天使代行ラングドシャ」のコンテンツなのだと否応なく疑う暇なく引き込まれてしまう。その要因が徹底的に作り込まれた作中の世界観・雰囲気と、そのバックボーンに説得力を持たせて成立させるだけの卓越した(メタな話をすると)声優力・演技力・画力に起因している。
 喋り方についても、キャラクターとしての演技に特化した部分はもちろん、少しくだけた現実っぽい喋り方もどちらも違和感がなく、その混在の過程において世界観を壊さない。単純に声優としての能力が非常に高い。
 いち動画コンテンツ単体としても非常にクオリティが高いため、1時間かかるが是非見てみてほしい。

 また、後半の展開など私はてっきり事前に録画した映像を流しているのかと思ったけど、コメント欄をリアルタイムで拾いながらアドリブで台詞を作ってストーリーの流れを持っていったり、二人のキャラクターの完璧な演じ分けをしていたりと、端的に言ってこの天使代行、各種スキルがとんでもなく高いが故に、Vtuberとしての前にまずクリエイターとしてリスペクトを送ってしまうのである。
 特に動画のラストでこれからの未来を期待させる曲調の彼女のテーマソングが流れるのは、それまでの展開もあいまってカタルシスは抜群。さながら最近のアニメの1話でラストにOPが流れる演出を見たときのような読後の清涼感すら感じる。ってか歌まで上手いってどんだけできる事多いのだろう。


 しかし初配信でコメント欄依存のアドリブを使う構成にするって、本人内心は心臓バクバクだったんじゃないだろうか……。


「架空(ゆめ)」は「現実」に これは彼女が本物の天使になるまでの物語だ(なっても続く)

 この点もネタバレになるのだが、彼女は元々本物の天使ではない。その実体は普通の人間が、本物の天使になろうとするストーリーなのだ。
 
 ホロライブやにじさんじなど人気の大手事務所からデビューすれば、最初の動画を出す前にTwitterのフォロワーやYoutubeのチャンネル登録者数が5万人や10万人を超えるなど「約束された成功」が掴める昨今、何の後ろ盾も持たない個人勢が成り上がっていくことは、この飽和したVtuberブームの時代においてはそう簡単な道のりではないのだろう。
 しかし彼女は単にVtuberとしてでなく、いちクリエイターとして卓越したスキルと、それによって説得力という裏付けを得た強固で固有な世界観を持つ。現実との融合が半ば当たり前となった今どきのVtuber界隈においてむしろ珍しい、物語の中に生きるバーチャルなキャラクターなのだ。

 また、彼女は自分のスキルに自信を持っているのだろう。とりあえずの目標は登録者10万人、夢は世界征服と、上昇志向が非常に強い。彼女のクリエイターとしてのスキルの高さを見ていると、それが虚勢やホラで言っている訳ではなく、大マジに夢を見据えているのだろうという真剣みが伝わってくる。強い説得力付きで。
 これは天使代行たる彼女が本物の天使になるまでのシンデレラストーリーを、TRPG仕込みのアドリブ入り視聴者参加型コンテンツとして、一緒に体感できる物語でもあるのだ。そら売れてほしいわなぁ。地下アイドル推す人ってこういう感情なのかな。
 最古参とまでは言えずとも活動初期に彼女を知れた事は十分に「運がいい」ように思う。できれば初配信リアタイしたかったァ~。

 メタ的な話をするとここまで手の込んだコンテンツ的な動画、個人で製作するにはあまりにも製作コストが重いと思う。動画製作を外部に委託でもしない限りそう何度も拝めるものではないかもしれないが、できればまたこういった初配信のような動画を見たい、というより体験したいと思う。きっとそのたびに彼女の世界観はより強固になっていくのだろう。

 上記の初配信動画を観た後に、真の自己紹介動画が出てくるのだが……

 え~~~~激エモ

 最初の自己紹介動画では何となく演技臭くてそんなにいい印象じゃなかったのに、あの経緯を知ってると普通に応援したい天使代行になっちまうぜェ~~
 マキマさん助けて 俺この娘好きになっちまう(デンジ)


普通に趣味が合う

 ショタ好き~~~~~~俺もショタに耳元で囁かれたり耳攻めされるASMR音声を聞きながら背筋ゾクゾクさせてる自分を年上お姉さんと思い込んでいる一般視聴者ムーブを繰り返すくらいにはショタ好き~~~~~お姉さんになって生意気だったり真面目さが残るようなショタから攻められたいし逆に年上の魅力で手玉に取りてぇ~~~~雑食主義~~~世界は平和

 TRPG やりてぇ~~~~~クトゥルフのルールブック買ったけどブ厚すぎて3章までしか読めてねぇ~~~~~こんどVRChatでやろーっとォ~~~~

 ホラー俺も苦手だなァ~~~でもホラーが苦手でビビるムーブかます相手の反応見るのはスゲェーー好きっスよォ~承太郎さんよォーーッ(ガチで苦手っぽかったのでこちらからホラー振ったりはしません)

 龍が如くの配信で貰い泣きしてるとこ見てこっちも貰い泣きしちゃったんですけどォ~~~最近どんどん涙もろくなってんですけど~~~~多分彼女が収益化通ったり10万人行った時は経緯を知ってるが故に普通に泣いちゃうんだろうな。


 これからも彼女を見続けたいと思います。
 天使代行ラングドシャの紹介文みたいな感じの雑記でした。なんか問題あったら消すので連絡ください。


※この記事は特に収益化等はしていません。

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