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「市民が作る新しい公教育」とはなんだ? 市民立小中一貫校に行ってきました

マレーシアの教育について話すと、「選択肢があって良いですね」と言われます。でもこれ、政府が選択肢を用意したわけじゃなく、親が自分達で「ないなら作る」と行動した結果だったりします。

この動きが日本でも出てきました。

Voicyで臨床心理士・スクールカウンセラーのよこちかよこさんに、不登校の現状について伺った際に、紹介してもらったオルタナティブスクール愛知県の「市民立小中一貫校安城おおきな木」を見てきました。


ここは「教育機会確保法に沿った小中学生のためのスクール」。愛知県安城市にある、無料のオルタナティブ・スクールです。

目指すのは「市民が作る新しい公教育」。基本的には公立学校と同様、無料で子どもたちが通える場所になっています。

場所は名鉄の新安城駅から徒歩で13、4分ほど。トヨタ自動車の社宅や民間の分譲マンションと、畑が共存する一角。築40年ほどの古い一軒家を使っています。スクールからは畑が見えます!

週4日、学習者中心で自ら学ぶ

現在、在籍している子は16人。毎日来る必要はなく(ここがポイントだそうです)子どもは。週4日、10:00~15:00です。

毎日のスケジュールはこんな感じです。

朝の会(クラス会議)(10:15)
アドラー心理学をベースとしたコミュニケーショントレーニングです。楽しかったこと、うれしかったことなどを輪になって話すところから朝は始まります。話したい子だけが話します。話なくない場合は「パス」と今の気持ちを伝えてもらっています。お昼のメニュー決めもします。
学習タイム(10:30~11:15)
45分間子ども自身で自分のやりたいことを自分で決めて取り組む時間です。
読書やすきなこと、やりたいこと、子どもたちが興味関心のあることに取り組むます。
振り返り(11:15)
学習タイムの内容を各自振り返って文章に書く時間です。自分で自分がやったころを振り返ることをとても大切にしています。
買い出し、昼食づくり、昼食タイム、片付け(11:30頃から)
各自決めた料理メニューにそって子どもたちが食材を決めて各自予算(1人300円)内で買い物。調理も子どもたちで行います。
自由選択の時間(~14:45)
各自思い思い、好きなこと、興味関心のあることをして過ごします。
振り返り(15:00)
1日の振り返りをして下校です。

さらに年間行事として、遠足、プール(夏季)、お泊り会(青少年の家)、ハロウィンパーティー、スケート(冬季)、クリスマス会、修学旅行(小6.中3)があります。

裏の用水路でザリガニ釣りをしている子どもたち

運営は、代表の遠藤昌代さんを中心に、保護者の方が一緒になってやっています。

代表の遠藤さんは教員免許は持っていないそうです。元々、従来の教育のあり方に疑問を持ち、自分の子どもにはもっと自由な教育を受けさせたいと考え、自分の子を、別の市のオルタナティブ・スクールに行かせていました。

地元にも従来の小中学校以外の新たな選択肢としての学び場を作ろうと思い、2020年4月から友人と2人でオルタナティブスクールおおきな木として週1日から開校。開校当時は公共施設を使っていたそうです。

その後、空き家だった実家をクラウドファンディングでお金を集めて改装。設立4年目となる2023年4月より校名も変更し、再スタートしました。

スクールカウンセラーのよこちかよこさんによると、最近では、こうした草の根的なスクールが愛知県にもでき始めており、それぞれ、有料だったり、無料だったり、草の根的だったり、企業がバックアップしていたりと個性があります。これらを網羅するために、よこちさんは「machiすく」を開始。一人ひとりの子供に合った学びを「選べる」ように紹介を始めています。

行ってみての感想

伺ったのが昼食時でした。子供たちが献立を決めて買い物に行き、食事を作っていました。私がみたのはごく短時間ではありましたが、異年齢同士で協力して作っていて、予算内で食事を作ることが、学びの一環になっているのだと思いました。

教育哲学で言うと、遠藤さんのスクールは学習者を主体とする「構成主義的」な学校です。もしかしたら、日本の昔の「寺小屋」こんな感じだったのかも。

そして、食事作りや稲作(稲がありました)のような、体験学習が重視されています。さらに中でも最も自由を尊重する「サドベリースクール」に近いかなと思いました。日本の多くの学校は「行動主義的(みんな同じ学びが基本)」なので、学校のスタイルが相当違うのですね。

よこちさんは、2男2女の親でもあります。長年学校の「不登校支援」に携わる中で、支援現場が親子や子どもの問題だと思われていることに疑問を持ったそうです。自身の子どもの不登校も経験し、‘学校’外で学び育つ場や、実際にそこに通う子どもの存在がもっと社会に知られてほしいと思いmachiすくの活動を始めました。

今、日本で一番大きな高校は、通信制のN高校になったんですよね。これも時代の流れだと思います。

「子どもが教育を選べる」ようになってきたのかもしれない、と思いました。

それではまた。


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