見出し画像

こんなに違う東南アジア文化。ボスが「日本の常識を押し付けてしまって悪かった」と謝罪した理由とは

「体験だけ」が学びにつながるーー「多様性理解」は本当にこれに尽きると思います。
マレーシアのお隣タイのお話。

タイ在住10年超になる漫画家のおこめさんが描く、タイの日系企業の例が面白かった。以下はおこめさんのブログ。

出産ラッシュが続くある日系企業のストーリーです。
原作は漫画本「子どもと二人タイ暮らし。10年目」で読めます。

子どもと別れる日に残業を代わってもらうのは、アリかナシか?

田舎からバンコクにきて働いている夫婦は出稼ぎが多いのだそうです。

出稼ぎのため、離れて暮らしている子どもと別れる日に、残業を断ったタイ人男性スタッフ。

彼を、日本人上司が叱るシーンが出てきます。
代わりに残業を頼まれた方の女性スタッフも子持ちだからです(おこめさんが、その子を預かることにします。出産ラッシュの企業はこうなりますよね……)。

子供ができたからと言って残業できない早退したい、こんなのが頻繁では困ると。
「それで本来残業できない他のスタッフに残業させることをどう思うんだ?」と彼に聞くボス。
「遅れをカバーする他のスタッフのこともだ」と。

日本人なら「他人に迷惑かけるな」が理解できると思うんです。
けど、タイではこれ通じないです(多分マレーシアでも他の東南アジアでも同じかと思います)。

私は日本人なので、手に取るように求められている答えがわかった。
「他のスタッフに迷惑をかけて申し訳ない」が正解だ。
「やっぱり自分が残業します」まで言えばきっと花丸だろう。

ところが、タイ人スタッフには「迷惑をかける」という感覚がないようです。
家族と別れる日に、家族を優先させるのが「常識」だから。

答えはこんなふうになります。

子どもと2人日本脱出タイ暮らし。10年目 (はちみつコミックエッセイ)

けれどタイ人であるところの彼は「どう思う」…?と一瞬考えてから、「(技術的にも先輩である)彼女が残業をしてくれればその分早く終わる!」とちょっと自信満々に答えた。
もちろんというか、ボスの答えは「違う!」だった。
彼はポカンとして、何が何だかわからないという顔をした。

私は助け船のつもりで、彼の耳元で申し訳ないって思わないのかと聞いているんだよとコソコソ教えてみたのだけどやっぱりわからなくて、彼は残業を代わってくれた先輩を呼んで相談し始めたのだけれど、痺れを切らしたボスがもういい!と。
彼に対して「もういい!君は責任感がない!」と言い放ち、不機嫌に会話を終わらせてしまった。
 
彼も呼ばれた先輩も口を開けてポカーンとしていた。
本当に訳がわからないのだ、ということに気づくのに時間はかからなかった。

子どもと2人日本脱出タイ暮らし。10年目 (はちみつコミックエッセイ)

現地日系企業で働く中間管理職は「あるあるだな」ではないでしょうか。
現地の価値観と本社(日本)の価値観の間を取り持っている人は、けっこう苦労しています。

「迷惑をかける」が通じない社会がある

おこめさんはこのように上司に説明します。

多分ですけど、本当にわからないんだと思いますよ。
困っている人がいたら助ける、助け合うとか、そういうのが普通の人たちなので、これが迷惑だとかそんなことは考えもつかないんだと思います。
子供が遠くに行ってしまってさみしいと言う彼がかわいそうで、だから周りが助けるのが当たり前なんだと思いますよ。と告げた。

ここから先は

1,078字
この記事のみ ¥ 300

これまで数百件を超えるサポート、ありがとうございました。今は500円のマガジンの定期購読者が750人を超えました。お気持ちだけで嬉しいです。文章を読んで元気になっていただければ。