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いじめのないクラスの作り方②

いじめっ子はさびしんぼう

 いじめっ子は「心が不健康な子」です。だからその表面的な事象だけを見て、恫喝によって言うことを聞かせても内面は変わりません。先生の見ていないところで余計にエスカレートするだけです。その子が本当に欲しているのは「愛されている実感」です。だからそういう子の行動に対して頭ごなしに叱りつけるのではなく、その子の背景を想像し、寄り添うことが大切です。

 例えば全然勉強が分からないことがストレスになっている生徒もいます。学校の先生になるような人は、子どものころから学校の勉強で「全然わからなくて辛い」なんて経験していないので、「何でやらないの?サボってるだけだろ?」と考えがちです。
 この理由も子どもによって千差万別ですが、わからないけど「わからない」と言うのはプライドが許さないから尖がった態度をとっている子もいます。そんな子に「何でやらないんダー!」と怒鳴りつけるのはキングオブ逆効果。だってプライド高いんだから。
 私は、「全然わかんないこと言ってる人の話を50分座って聞いてるなんてつらいよね」という気持ちで、「でも君のことは気にかけてるんだよ」というメッセージだけは送り続けます。実は私もムカついています。聖人君子じゃないですから。
 でも「ムカつくから見捨てる」のはプロではありません。見捨てられ続けてきた結果が今のその子を作っているのだから、それを変えるためには「ムカついても見捨てない」ってことしかないのです。
 で大事なことは、変わらなくても「自分には力がないんだ…」と思わないこと。そんなに簡単に人を変えることができたら逆に怖い。教祖様じゃないんだから。自分がその子のためにやったことが、10年後20年後のその子の人生になんらかのプラスになるかもしれません。そしてそれは目に見えるものではないので、「この子のために自分は何ができるだろう」と考えて、自分にできることをするしかないのです。

ありがとうを伝える

 具体的に私が何をするかというと、ちょっとした仕事を頼んだりします。配りものとか机の整頓とか。そして「ありがとう」と伝えます。人間って誰かに必要とされると嬉しいですよね。あまり必要とされたり、感謝されたりした経験のない子たちは自分の存在価値に自信がありません。自分なんて必要とされない「透明人間」なんだ、と感じている子には「君は透明人間じゃないよ」ってメッセージを送ることが大切です。「透明人間」は嫌だから、存在を認知してもらうためにマイナスの行動をとっていたりします。だからその承認欲求をプラスの行動に変えるきっかけ作りをしていきます。

 小さなことだけど、そういったことの繰り返しで信頼感ができてきます。信頼してない先生に表面的なマイナス部分を怒鳴りつけられて、「そうだな~、反省しなきゃ」なんて思う生徒はいません。逆に、普段無駄に怒らない、信頼している先生から本気で怒られたときは「やば、やり過ぎたかな…」って感じてくれます。「怒る」と「叱る」は違うとよく言いますが、「怒」ろうが、「叱」ろうが、信頼がなければ同じです。どんなに正しく叱っても、人の言葉をシャットアウトしている生徒には入っていきません。(ちなみに私が本気で怒るのは誰かの尊厳を傷つけたとき。その時は信頼関係がない生徒だろうと関係ありません。教師と生徒は友達ではないので、ここだけは譲れない一線は必要だと思います。)

クラス全員に特別支援教育を

 そして気づいたでしょうか? この対応は別に「いじめっ子」に対する特別な対応というワケじゃありません。誰にも承認欲求があって「透明人間」になるのは嫌なのです。一人も「透明人間」にしないように、クラスに40人いれば40人全員に特別支援教育が必要なのです(ホントは欧米並みに1クラス20人くらいにしてほしい)。
 普段何も問題を起こさない手のかからない子も、教室の片隅でいつも本を読んでいる子も、「この子は大丈夫」と思わないことが大事です。中学生だってホントは見ててほしいのです。


 そして、すべての子を「個人として尊重」し続けているとクラスの雰囲気が柔らかくなってきます(※個人の感想です)。「自分は透明人間じゃない」という安心感を一人一人がもてれば、他の人が嫌がる行動はしないようになっていきます。そうすれば自ずといじめの起こりにくいクラスになっていくのです。


 私はこんなことを意識しながら学級づくりをしていますが、このやり方の問題点は即効性がないことと、成果が見えないことです。1人1人の気持ちに寄り添っていく様は、「生徒を甘やかしてる」と思われることもあります。怒鳴って力で抑えつけたり、厳しく支配・管理して、生徒たちを自分の思い通りに動かしている方が「指導力がある」ように見えちゃうんですよね。
 それに、クラスの居心地がよくなるとみんな問題行動を起こさないので、「楽なクラスだよね」と思われがちです。いやいや、問題が起こらないようなクラスを作ってるんですけど…


 残念ながら「怒鳴らなきゃダメだ!」と言う人はいまだにいます。パワハラ系の人たちって、助言じゃなくて押し付けなんですよね。そんなときは「ハイ」と爽やかに答えてスルーしときましょう。エライ人にホメられたくて教師になったワケじゃないんだから。

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