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学校づくりのスパイス~異分野の知に学べ~

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学校のリーダーシップ開発に20年以上携わってきた武井敦史氏が、学校の「当たり前」を疑ってみる手立てとなる本を毎回一冊取り上げ、そこに含まれる考え方から現代の学校づくりへのヒントを… もっと読む
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2023年11月の記事一覧

#64「主体性」を疑おう~國分功一郎『中動態の世界 意思と責任の考古学』より~|学校づくりのスパイス

 今回のテーマは「主体性」についてです。昨今、学習指導要領をはじめ、さまざまな場面で「主体的な学び」が強調されていますが、私は実はこの「主体性」とはよくわからない概念だと前々から思っていました。今回はその「主体」の根拠について、哲学の観点から論点を掘り下げている國分功一郎『中動態の世界 意思と責任の考古学』(医学書院、2017年)を足がかりに考えたいと思います。 でっち上げられた「自由意志」 私たちが「主体的」という場合、それは自分自身の意志(自由意志)で行った、ということ

#63「成長の土壌」を忘れていないか?~ゲイブ・ブラウン『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』より~|学校づくりのスパイス

 「子どもの成長にとって理想の環境とはどのようなものか」――古〈いにしえ〉より現代に至るまで、くり返し問われ続けてきました。さらに、子どもの成長環境は今日激変しつつあります。今回はリジェネラティブ(環境再生型)農業の第一人者ゲイブ・ブラウン氏の『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』(NHK出版、2022年)にヒントを得て、この問題に切り込んでみたいと思います。 「足し算」・「かけ算」の農業 リジェネラティブ(環境再生型)農業とは、農場や牧場を一つの生態系として管理する