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学校づくりのスパイス~異分野の知に学べ~

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学校のリーダーシップ開発に20年以上携わってきた武井敦史氏が、学校の「当たり前」を疑ってみる手立てとなる本を毎回一冊取り上げ、そこに含まれる考え方から現代の学校づくりへのヒントを… もっと読む
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2023年9月の記事一覧

#60 同調圧力克服法~大塚ひかり『くそじじいとくそばばあの日本史』より~|学校づくりのスパイス

 教員にしても児童・生徒にしても、とかく「足並みをそろえる」ことが重視されてきたのが日本の学校現場です。この原因の一端は従来の日本社会のあり方自体に由来するものであろうし、よい面も確かにあるのですが、一方で学校という社会集団に必要以上の同調圧力を産む可能性もあります。  2021年の中央教育審議会でまとめられた、「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」においても「従来の社会構造の中で行われ

#59「仮」の効用~長尾重武『小さな家の思想 方丈記を建築で読み解く』より~|学校づくりのスパイス

 「動的な生」に特徴づけられる縄文の思想が現在も生き続けているということを前回は指摘しました。今回取り上げるのは、平安末期からの混沌の時代にまさにこの「動的な生」を体現した随筆家、鴨長明の発想です。  今回はイタリア建築史の研究者である長尾重武氏の『小さな家の思想 方丈記を建築で読み解く』(文藝春秋、2022年)を取り上げます。建築という視点に照らして方丈記を解釈しているのが本書のおもしろいところです。今回は本書にヒントを得ながら、教育における「仮」の効用について考えてみま