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学校づくりのスパイス~異分野の知に学べ~

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学校のリーダーシップ開発に20年以上携わってきた武井敦史氏が、学校の「当たり前」を疑ってみる手立てとなる本を毎回一冊取り上げ、そこに含まれる考え方から現代の学校づくりへのヒントを…
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2023年8月の記事一覧

#58「あわい」を生きるという選択~瀬川拓郎『縄文の思想』より~|学校づくりのスパイス

 今回から3回は歴史関係の書籍を取り上げたいと思います。近代教育の土台が大きく揺らいでいる今日、日本社会の深層に流れている歴史性との関連で現代の教育を捉え直してみるのもおもしろいのではないか、と考えたためです。  今回は日本社会の原点とも言える「縄文」と教育との接点について、瀬川拓郎氏の『縄文の思想』(講談社、2017年)を手がかりに考えてみます。 生き続ける縄文 「縄文」というと、はるか昔の原始時代で、現代の教育とは関連のないことのように感じられる読者も多いかと思います

#57 時には問題を「棚上げ」しよう~鈴木まもる『戦争をやめた人たち 1914年のクリスマス休戦』より~|学校づくりのスパイス

 ロシアのウクライナ侵攻から1年半の時間が経ちました。世界にはさまざまな正義があり、思想や信条によって社会に一定の軋轢が生じること自体は仕方のないことだと筆者は考えます。が、そうであればこそ「対立や反目に人がどのように関係すべきか」といった正解のない問題に応えていくことは、学校を含めこれからの社会ではますます重要になってくるはずです。  今回は、第一次世界大戦中にイギリス軍とドイツ軍の間で起こった実話を描いた鈴木まもる氏の絵本、『戦争をやめた人たち 1914年のクリスマス休