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学校づくりのスパイス~異分野の知に学べ~

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学校のリーダーシップ開発に20年以上携わってきた武井敦史氏が、学校の「当たり前」を疑ってみる手立てとなる本を毎回一冊取り上げ、そこに含まれる考え方から現代の学校づくりへのヒントを… もっと読む
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2023年3月の記事一覧

#48「自分の正義」を疑う思考法~うめざわしゅん『ダーウィン事変』より~|学校づくりのスパイス

 今回はうめざわしゅん氏の『ダーウィン事変』(講談社、2020年~)というコミックスを手がかりに、私たちの抱く「正義」の感覚について考えてみようと思います。  物語の舞台はアメリカ、主人公は人間とチンパンジーの間に生まれた交雑種「ヒューマンジー」のチャーリーです。筆者は過去にアメリカの大学で研究員をしていたことがありますが、この作品では、アメリカの多様な社会背景や思想の交錯が非常にリアルに表現されています。 身勝手な「ヒト」 チャーリーは天才的に知能が高い実験用のチンパン

#47「死」という発明~スティーヴン・ケイヴ『ケンブリッジ大学・人気哲学者の「不死」の講義』より~|学校づくりのスパイス

 前回の連載では、私たちの人生の文脈を無視して訪れる「死」の意味について考えました。本連載の50回目となる今回は、『ケンブリッジ大学・人気哲学者の「不死」の講義』(日経BP、2021年)を足がかりに「死」というものの存在が、生きている人と社会に対して果たしてきた役割とその可能性について考えてみたいと思います。 「死」と人類の進歩 生物が個体の死からできるだけ免れようとするのはごく自然な現象です。叩こうとすれば虫は逃げ、植物は光に向かって伸びます。けれども死を日頃から意識して