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学校づくりのスパイス~異分野の知に学べ~

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学校のリーダーシップ開発に20年以上携わってきた武井敦史氏が、学校の「当たり前」を疑ってみる手立てとなる本を毎回一冊取り上げ、そこに含まれる考え方から現代の学校づくりへのヒントを…
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2022年12月の記事一覧

#42 いろいろな自分を生きよう!~平野啓一郎『私とは何か~「個人」から「分人」へ』より|学校づくりのスパイス

 前回は、自閉症の東田直樹氏の著作を手がかりに、「首尾一貫した一つの意思を持つ個人」としての「主体」という発想を疑ってみる必要について考えてみました。  今回はこの論点を一歩進めて、さまざまな自分を持つことの必要性について、作家の平野啓一郎氏による『私とは何か―「個人」から「分人」へ』(講談社、2012年)を手がかりに考えてみたいと思います。平野氏は学生時代に投稿した作品で芥川賞を受賞した逸材ですが、氏の作品にはこの本で取り上げている「分人」のモチーフがしばしば登場します。

#41 自分の中のマイノリティ~東田直樹『自閉症の僕が跳びはねる理由』より~|学校づくりのスパイス

 さまざまな障害をもつ人々やLGBTQなど、私たちの社会におけるマイノリティの存在が注目を集め、マジョリティによって創作された社会通念を今一度振り返ってみようという機運が世界的に盛り上がっています。  今回は東田直樹氏の『自閉症の僕が跳びはねる理由』(KADOKAWA、2016年〈文庫版〉。単行本初版は2013年)を手がかりに「マイノリティ」を考える意味について問題提起してみようと思います。  マイノリティという存在を突き詰めてみると、そこには自分という存在も考え直してみ