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学校づくりのスパイス~異分野の知に学べ~

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学校のリーダーシップ開発に20年以上携わってきた武井敦史氏が、学校の「当たり前」を疑ってみる手立てとなる本を毎回一冊取り上げ、そこに含まれる考え方から現代の学校づくりへのヒントを… もっと読む
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2021年8月の記事一覧

#10「エビデンス」の功罪~ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』より~|学校づくりのスパイス

 今回は2016年の発売以来大ベストセラーとなり、ビジネス書大賞にも選ばれたユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』(河出書房新社、2016年)を取り上げます。上下巻併せて600ページ近い大著ですが、今回はとくにこの本の鍵概念である「フィクション」にヒントを得て教育におけるエビデンスについて考えてみようと思います。 ヒトを人たらしめるのは「フィクション」の力 本書はその書名のとおり人類の歴史を俯瞰して描いたものですが、その前半はホモ・サピエンスによる人類の統一劇のシナリオ

#9 ワクワクする学校再編のヒント~松村秀ー『ひらかれる建築』より~|学校づくりのスパイス

 学校再編に乗り出さざるを得ない自治体が増えています。2018年の7月に筆者の研究室で静岡県を対象に人口予測データを用いて学校配置可能数の試算研究をしてみましたが、通学圏内で一学年当たり小学校20人、中学校40人程度の規模を維持しようとすると、2030年までに少なくとも小学校で23%、中学校で16%程度の学校について配置見直しを検討する必要が生じるという結果が出ました。  当時、地元静岡新聞の一面で報道されて、大きな反響を呼んだのを憶えています。それだけ学校は地域の人々にと