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改正民法における「子の意見、意向等の尊重」の考え方(国会審議より)

2024年4月2日の衆議院法務委員会で改正民法における「子の意見、意向等の尊重」の考え方について公明党 大口善徳先生が質疑し、法務省 竹内努民事局長が答弁しています。発言No.はそれぞれNo.008, No.009です。

第213回国会 衆議院 法務委員会 第6号 令和6年4月2日

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発言No. 008
○大口委員 
父母が子の養育をするに当たっても、子の利益を確保することが重要であり、その際には、子供の意見、意向等を把握し、これを尊重することが肝要であります。  
現行法でも、家事事件手続法第六十五条によれば、家庭裁判所は、親権等に関する事件において、家庭裁判所調査官の活用その他の適切な方法により、子の意思を把握するよう努め、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならないとされています。
また、親権等に関する事件において、子が十五歳以上であるときは、裁判所は必ず子の陳述を聴取しなければならないとされています。  
本改正案では、子の意見、意向等の尊重の考え方がどのように反映されているのか、お伺いします。

※補足:
◯家事事件手続法第六十五条「家庭裁判所は、親子、親権又は未成年後見に関する家事審判その他未成年者である子(未成年被後見人を含む。以下この条において同じ。)がその結果により影響を受ける家事審判の手続においては、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、審判をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない。」

発言No. 009
○竹内政府参考人 
お答えいたします。 本改正案の民法第八百十七条の十二第一項は、父母が子の人格を尊重しなければならない旨を規定しております。この規定における人格の尊重とは、子の意見等を適切な形で尊重することを含むものと解釈されることになります。
また、本改正案の民法第八百十九条第六項では、親権者変更の申立て権者の範囲を拡張し、子自身が家庭裁判所に対し離婚後の親権者の変更を求める申立てをすることができることとしております。これは、親権者の変更により子に直接影響が生ずることから、申立て権を認め、子の意見を適切に考慮することを制度的に確保するものであります。
さらに、本改正案の民法第八百十九条第七項では、家庭裁判所が離婚後の親権者の指定又は変更の裁判をするに当たり、父母と子との関係その他一切の事情を考慮しなければならないこととしております。これは、子が意見を表明した場合には、その意見を適切な形で考慮することを含むものであります。

※補足:
◯改正民法第八百十七条の十二第一項「父母は、子の心身の健全な発達を図るため、その子の人格を尊重するとともに、その子の年齢及び発達の程度に配慮してその子を養育しなければならず、かつ、その子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならない。」
◯改正民法第八百十九条第六項「子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子又はその親族の請求によって、親権者を変更することができる。」
◯改正民法第八百十九条第七項「裁判所は、第2項又は前二項の裁判において、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。この場合において、次の各号のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならない。(以下略)」
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【所感】
現行法である家事事件手続法第六十五条にも「子の意思を考慮しなければならない」とありそれがしっかりと反映されているか微妙なところで、改正民法の効果で「子の意見を適切な形で考慮する」とされてもどうなのだろうと思うところですが、子自身が親権者変更の申立て権者となれることは大きな変化だと考えます。
改正民法での親権者変更なので一方から双方つまり単独親権から共同親権への親権者変更も含まれるはずです。
父母共に愛着対象であり、父母間に過度な対立がないのであれば、子は父母双方が親権者となることを望む可能性があります。
申立て自体は子の心に負担をかける可能性があり避けたいところではありますが、子の利益のための父母間の人格尊重・協力義務を違反し続けるのであれば子の申請で親権者変更があり得るということを同居している親に認識してもらうことで過度な親子交流制限の抑止になるのでは・・・と思います。



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