誰かのはなし


これは、誰の話だろう。夏の太陽みたいにまぶしいのに、冬の空みたいに灰色のひと。北陸出身なので、どうしても冬の空は灰色のイメージになる。たまにさす晴れ間も、どうせすぐいなくなっちゃうんでしょ、くらいの距離感。


人を疑わないひとが、この世に存在するのだろうか。いや違うな、人を信じられるひとってとても尊くてきらきらしているのに、世界で一番怖いな、と思う。信じた結果、裏切られた時のことを考えると、どうしてもダメになる。信じたフリはできるのに、寄り掛かかることはできない。相手に支えがあれば、そうしても平気だろう、というあたりはつけられるのだけど。

長いこと一緒にいるけど、未だに掴めないひと。だからたくさんの時間を共有できているのかもしれなくて、だからこそまだ寄り掛かかることもできなくて。手を広げて立ってくれているそのひとに、いつになったら飛び込めるんだろう。

私が私でいる限り、無理じゃないかなぁ。
かなしいはなしだね。
そうだねぇ。
でも、仕方ないんじゃないのかな。


人に寄り掛かる、ということは、一緒に死ぬことだ。決して一緒に生きることではない。だからこそ、長期的な話をされることがとても苦手で。今では大分ましになったけれど、昔は明日の約束をかろうじてしていた、そんな気がする。はぁ、なんの話だっけか。


そのひとの怖さ、最初は面白かった。次に気持ち悪くなって、嫌いだなと思った。今はどうなんだろう、わからないや。でもまぁ、うん。私から離れる必要はないくらいに怖さに慣れたから、怖いものからは目をそらす事にしたのに。相手がそれを許してはくれないらしい。もう、タイムリミットが来ているのかもしれないな。出会ってからの期間も私たちの年齢も、確かに一般的には。

「一般的」も「普通」もわかるよ、理解できる。でもね、いつまで経っても馴染まないんだよ。


ほんとうに、儘ならないねぇ。嫌いになれたほうが楽なのかもしれないけど、嫌いになることは難しくて、でも放置は許されない。出会わなければよかった?否。きっとそんなことはないよ。うん、きっとね。


#エッセイ #おはなし

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