津軽線を道路交通に置き換えるメリット

昨年の災害で運休している青森県の津軽線が、廃止を含めた存廃協議をしている。
私は鉄道は時代遅れだから、新幹線、都市部の通勤路線、時速130km以上で走行できる区間を除き、廃止して次の時代に合う交通機関に置き換えるべきというのが持論。多くの地方都市近郊なら、廃止して高速道路並の高規格な道路整備をする方がより多くの人や企業の役に立つ。赤字ローカル線の在来線鉄道に補助金を出すのは無駄遣いだ。その分道路整備に使えばより地域は発展する。

津軽線もそんな区間である。
津軽線は、2022年の大雨で路盤流出など深刻な被害で運休している。復旧には6億円の費用と、赤字ローカル線なので、路線維持に年間4億円の負担が必要と言う。JR東日本も、今までは東京の通勤路線の黒字で地方の赤字ローカル線を支えてきたが、コロナ禍で東京の日通勤客や、新幹線の乗客も減り、いよいよ地方の赤字ローカル線を支えきれなくなった。2022年度は、鉄道単体でもわずかに黒字を計上したJR九州を除き、各社が赤字。東海道新幹線を抱えるJR東海すら赤字。国鉄分割民営化からもうすぐ40年。当時設計されたビジネスモデルが通用しなくなる時期はいずれ来ると予想したが、コロナ禍で早まった。少子高齢化で通勤通学需要も減る中、鉄道の災害復旧でも、赤字ローカル線は、地元負担を迫られ、負担できなければ廃線という流れもできつつある。もう都市部の収益でローカル線を維持するビジネスモデルは通用しなくなったのである。

津軽線関連の自治体の財政規模を見ると、外ヶ浜町は歳入64億円、歳出63億円、今別町は歳入37億円、歳出35億円、青森県は歳入8334億円、歳出8053億円である。しかし地方財政は、生活保護費など義務的経費が多く、元々余力はない。この規模の自治体で復旧に6億、毎年4億円の費用負担に耐えられるとは思えない。

鉄道解説YouTuberの鐵坊主さんが、以下の動画で津軽線を詳しく説明している。

https://youtu.be/62t4eDIuP18

私がJRから公表された輸送密度、自治体の人口、各自治体の中学生の数からの推計は、だいたい当たっている。実際高校生は40人前後と見られ、輸送密度107なら、ほぼ高校生が往復するとこの程度の数値になる。津軽線は並行交通機関や、終点からの交通機関がほぼ無いため、乗客は必ず往復するから、残り10人は、通院するお年寄りや、外から乗車目的でやって来た観光客がいると予想。しかしこれも鐵坊主さんのデータでほぼ通学利用しか需要がないことが示されている。特に外ヶ浜町の高校生はほぼ全て津軽線で通学している。奥津軽いまべつ駅の乗車人員が1日平均26人と言うのも、今別、津軽浜名駅付近に住む通学者数とほぼ一致する。ちなみに両駅がある今別町は、青森市内に通学する生徒に新幹線定期代の補助を出している。この分が新幹線に流れても、中学校の生徒数より鐵坊主さんの分析の通学者数が多いのは、大学生も含むからと思われる。結局のところ、ほぼ通学者しか需要がない路線と言える。代行バスも日中は走らず、1日3往復、学生の通学に合わせたダイヤになっているのも、学生しか使わないと証明しているようなものだ。お年寄りの通院や、観光客は、オンデマンドタクシーで十分と言える。

結局6億円で復旧させ、毎年4億円の運営費を払っても、40~50人の利用者しかいないなら廃止すべきだ。利用者40~50人にタクシー代を払っても、年間4億円(1人1000万円)はかからないだろう。その分を道路整備に使い、蟹田、奥津軽いまべつ、今別、三厩にタクシーを常駐させた方が低コストで質の良い輸送サービスを提供出来る。

バイパス整備として、2つの区間が考えられる。
1つめは蟹田~大平駅付近、上小国集落を避けて追い越しも出来る4車線のバイパス約5km。
2つめは、大平駅から奥津軽いまべつ駅までの小国峠をトンネルで抜けるバイパス約5km。
さらに大平、今別駅付近の国道、県道交差部の立体化で止まらず通過できるようにすれば良い。バイパス部分は、当然最近のバイパスと同じように、設計速度は時速80kmで建設する。バイパスは国の補助金制度が充実しているので建設しやすいし、2箇所の立体化は、津軽線復旧費用や運営費に使う分を流用すれば良い。

津軽線の被災前は、蟹田から三厩を41分で結んでいたが、代行バスは58分ほどかかる。カーナビで検索すると、所要時間37分と出る。この区間の道路の速度制限は時速40kmなので、制限速度で走れば45分、今別で信号に引っかかると47分程度かかる。(渋滞する場所もなく信号も1箇所しか無かった)
日本の速度制限は、道路構造令で決まるので実勢速度よりかなり低く抑えられている。実際には時速50~60kmで流れているのだろう。バイパス整備をして、上小国集落付近、小国峠を時速70~80kmで走れるようにすれば、蟹田から三厩は、30分程度で着くようになる。こうなると鉄道を残すより、タクシー転換の方が便利になる。
青森から蟹田までの津軽線も、約40分だが、三厩まで1時間程度になれば人口流出も抑えられないか?三厩駅は町外れにあるが、三厩自体は比較的小綺麗な住宅街が広がっていて、この付近ではそれなりに人口集積がある。三厩から龍飛崎も、国道が狭く、集落の中を縫うように走るのでバイパス化が望まれる。今別から龍飛岬まで国道の速度制限見直し、バイパス整備でより時間短縮すれば、青森から鉄道、タクシー乗り継ぎで60分程度で龍飛岬まで行けるようになる。これは津軽半島の観光振興に大きな効果がある。
また、三厩周辺の主要産業は漁業なので、道路整備が進めば、より遠くまで鮮魚を運ぶことができ、販路が広がる。漁業従事者の収入も上がる。
鉄道を廃止し、維持費を道路に使う方が圧倒的に地域の発展になる。

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