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50年前、京都の水族館にいたスナメリ、どんな生き物?もっと詳しく!  ~京都新聞ニュースサイトより

 京都新聞のニュースサイトで、50年前に京都にあった水族館について調べた記事を配信しています。

 八瀬遊園で飼育されていたとされる「スナメリ」という生き物。一般的な認知度はどれくらいだろう・・・と心配になり、勉強も兼ねて宮島水族館(広島県廿日市市)に取材をお願いしました。記事の中では簡単な説明にとどめていますが、今回のnoteではスナメリの個性をもっと詳しくご紹介したいと思います。

宮島水族館の外観

【ここからは、宮島水族館職員でスナメリ担当・赤木太さんとの会話形式でお送りします】

 よろしくお願いします。自分はスナメリを何度も見ているのですが、意外と読者の皆さんはご存じないのでは、と思いまして・・・。

「ははは。そうですね。でも結構身近な生き物なんですよ」

 そのあたり、ぜひ解説をお願い致します。

「よろしくお願いします」

2018年2月に宮島水族館を訪れた際、はしゃぐ筆者をあやすように泳ぐスナメリ。
つるりとした頭が可愛らしい

 動物図鑑を開くと、スナメリの項目はクジラの仲間(鯨類)のページにありました。

 「そうですね。スナメリをすごく簡単に表現すると、『小型のクジラ』ということになります。体長は1.6~1.9メートルくらい、体重は50~80キログラムと、鯨類の中では比較的小さい種類になります」

 くちばしや背びれはありませんが、サイズ感からイルカのように見えます。イルカではなくクジラなのですか。

 「分類的な話をすると、イルカもクジラなんです。クジラの仲間の内、大人の個体の大きさがだいたい4メートル以下のものを『イルカ』と呼んでいるだけなんです。クジラであり、イルカでもある、といった感じでしょうか。とにかくみんなクジラの仲間です」

 なるほど・・・スナメリが『小型のクジラ』というのはそういう意味だったんですね。先ほど、スナメリは身近な生き物だとおっしゃいましたが、日本の海にも生息しているんですか。

 「その通りです。日本だと一番北は仙台湾から、東京湾、伊勢湾、三河湾、大村湾、有明海などの水深50メートルよりも浅い海域、岸に近い所で数頭ほどの小さなグループを作って暮らしています。もちろん、宮島がある瀬戸内海にも生息しています。僕は毎日フェリーで通勤していますが、たまに泳いでいるところを見かけることがあります」

親子で一緒に泳ぐ姿が見られた

 スナメリって、○○クジラや○○イルカと呼ばれる他の種類と違って不思議な名前ですよね。どんな由来があるんでしょうか。

 「諸説あるのですが、一つはエサを食べる姿からきたという説です。野生のスナメリはイワシやアジなどの小型の魚の他に、イカ、エビ、カニなどをエサにしています。海底にいるエサを見つけるために、口から海水を吹いて砂を巻き上げるんです。海底の砂をなめるようにしてエサを食べる姿から、『砂滑スナメリ』と呼ばれるようになったと言われています。他にも、表面がつるつるしていてなめらかだから、とか。いろいろあるみたいですね」(太字部分の表現を一部、変更しています)

水槽越しでもスナメリの表面はつるつるしているのがわかる

 「日本のいろんな地域で見られたせいか、昔は地域ごとに呼び名が違いました。宮島水族館でスナメリを飼育し始めたのは1980年からなのですが、展示を始めた当時は地元のお年寄りから『スナメリって何だ?と思って見に来たら、なんだ。デゴンドウじゃないか』なんて言われたこともありました」

 広島では「デゴンドウ」と呼んでいたんですね。

 「ええ。他にもナメソとかナミノウオとか、瀬戸内海に面する地域だけでも似たような呼び名がいくつもあります。『スナメリ』というのは主に東京での呼び方で、それが標準語になったんです」

 スナメリの背中にはごつごつとした突起のようなものが見えることがあります。

 「あれは『竜骨(キール)』といいます。仲間とのコミュニケーションのためにこすり合わせたり、感覚器官のようにして使ったりすると言われています」

 日本国内だと、どこの水族館で見ることができますか。

 「鳥羽水族館(三重県鳥羽市)、マリンワールド海の中道(福岡県福岡市)、仙台うみの杜水族館(宮城県仙台市)、南知多ビーチランド(愛知県知多郡美浜町)、下関市立しものせき水族館「海響館」(山口県下関市)とうちを含めて全国6か所で見ることができます」


廣瀬 聡子