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最後の夏 一九七三年 巨人・阪神戦放浪記 山際淳司著/マガジンハウス

 2020年、未知のウイルスが世界中の人々を不安に陥れました。まだウイルスの全容が知れない中、学校や幼稚園は休校になり、街角からは人の姿が消え、私たちの「ステイホーム」が始まりました。そんなころ、見直されたのが読書でした。読んだことのないジャンルに挑戦、家族と一緒に読書など、普段と違う時間が作れるかも。そのお手伝いとして、京都新聞社の記者がそれぞれ思いを込めた一冊を紙面で紹介しました。あの頃の空気感も含め、note読者の皆さんにも紹介します。

名試合の裏 濃密ドラマ 

 プロ野球は、ペナントレースが最終盤までもつれると見応えが増す。ファンは残り少ない試合数や結果、対戦カードに一喜一憂する。

 1973年は、大混戦を抜け出した巨人と阪神が激しく競り合った。1位阪神、2位巨人のゲーム差0.5で迎えた甲子園での直接対決の最終戦。阪神は0-9で敗れ、ライバルのV9阻止を果たせず終わる。

#プロ野球19日開幕へ

 最終戦への道のりを両チームの監督や選手を軸に、丹念に描く。ただ、大一番の描写はごくわずか。阪神の主砲・田淵幸一を取り上げた最終章は、試合後、「それから一週間、かれは一歩も外に出なかった」との一文で終わる。期待をあっけなく断たれた虎ファンの心情を映すように。

 今年のレギュラーシーズンは、セ・パとも120試合。観戦機会は減るが、変則日程がもたらすドラマを楽しみに、19日の開幕を待ちたい。


中西英明


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