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「もう、こっちがビックリマン」と地元が唸った! 滋賀・東おうみ地域・スタンプラリーを巡る㊤

 何せ、ビックリマンのシールである。
 「これはもう、行かなアカンやろ。行かんかったら後悔するな」。
この情報に初めて接した時、思わず独り言が口をついて出た。

 滋賀県の東近江地域(東近江市、近江八幡市、日野町、竜王町)を舞台に、1月15日から今月11日まで開催されていた「東おうみビックリマンはじまりの地スタンプラリー」。東近江観光振興協議会が、ビックリマンチョコを製造・販売しているロッテと協力し、初めて実施した。

謎の使命感

 4市町の協賛店をめぐり500円以上の買い物をするともらえるスタンプを集めると、なんと各市町ゆかりの人物をイメージしたデザインのビックリマンシールが贈られるという。1月14日付けの滋賀県民版トップニュースを見て、目を見開いた。

 小学生時代に大流行。ビックリマンチョコが駄菓子屋に入荷されるなり、どこからか聞きつけてきた皆が群がった。

 開封時にはどのシールが当たるかと、心臓がドキドキと高鳴った。

 クラスの数人がコレクションを持ち寄り、学校に保管していたシールが、こつ然と姿を消したことも。なぜかクラス総出で「こっくりさん」で在り処を探ったのも懐かしい(結局、先生に没収されていただけだった)。

 正直内容はよくわからなかったけど、シール裏に記載されていた物語を一生懸命読み漁った記憶が今でも鮮明に浮かぶ。

 何日も連続でおやつとして食べた、あのウエハースチョコの味が口の中でよみがえるような気さえする。なお、筆者はあのチョコが好きなので一度も捨てたことはない。

 このような、80年代後半を煮しめたようなビックリマン経験がある筆者。いつしかコレクション熱は冷め、あれだけたくさんあったシールも今は手元にない。しかし、このスタンプラリーに参加する決心を即座にした。東近江地域は15年ほど前に赴任地として住んでいた場所でもある。ご当地ビックリマンのキャラを直接見てみたい思いも強かったからだ。

初陣の勝負メシは近江牛

 ラリー開始前日、SNSで反響を調べてみると、国内有数のシールコレクターの方々も続々と滋賀に向かってきている様子だった。日本各地から集まる猛者たちの報告を見ながら、熱気の高まりを感じた。

 連休が取れた2月上旬。自家用車で東近江地域へ向かった。

 スタンプラリーを完成させてもらえるシールは、1人1日1枚。自分1人で4日間回るのも良かったが、連日2市2町をドライブし続けるのはさすがにきつい。家人に頼みこみ、ついてきてもらうことにした。これで1回のラリー完走で、2枚のシールが入手できる。

スタンプラリー開始前に食べたステーキ重。いざ、出陣

 到着はお昼すぎ。訪問1カ所目は、竜王町の近江牛岡喜本店で昼食をとることに。美味しいものを食べてこれからのラリーに備えようと、ステーキ重を注文。軽く噛みしめるだけであふれ出る肉の旨み。強烈に「近江牛を食べている」という幸せな説得力がある。
 
 味の余韻に浸りながら、お店で竜王町のスタンプを押してもらった。スタンプカードをよく見ると、竜王町のスタンプは近江うし丸。ラリーのゴールにも設定されている「道の駅竜王かがみの里」のマスコットキャラクターだ。各地のスタンプは地元のキャラクターのようで、これらデザインを見るのも楽しみになった。

スタンプラリーのシート。完成させるとシールが1枚もらえる

疲れを癒すパイン大福

 次は日野町の和菓子店「氏郷庵かどや」へ。

日野町の和菓子店「氏郷庵かどや」

 地元ゆかりの戦国武将、蒲生氏郷像の隣をすり抜けてお店へ入ると、一気に思い出が蘇った。このお店に、来たことがある! 調べてみると2006年、大福の中にパイナップルを入れた商品「パイン大福」の取材で訪れていた。

 パイン大福はもちろん、いちご大福なども買い求め、スタンプを押してもらった。日野町のキャラクターは氏郷をモチーフにした「がもにゃん」だった。

パイン大福やイチゴ大福。

 ラリーについてお店の方に聞くと「もう、本当にラリーのお客さんがすごく多い」とのこと。ラリー初日には行列ができたというほどで、急きょ約500円のお菓子を詰め合わせにしたパックを用意したそう。ラリーで訪れた人たちが、スタンプに必要な500円を計算する時間を短縮するための心遣いということだ。
 
 訪れる人たちは筆者と同年代と思しき中年男性が多いようだ。なかにはビックリマンへの熱い思いを語る人もいたという。さすが全国各地から東近江に集まった精鋭たち。伝聞でも熱気に触れた思いだった。

スタンプラリー参加者が計算しやすいようにとの心づかいがうれしい500円パック

 「ビックリマンをよく知らなかったので、正直こんなにお客さんが来ると思っていませんでした。本当にもう、こっちがビックリマン」とおどけるお店の方の笑顔が印象的だった。仰る通り私たちがお菓子を選んでいる間にも、ラリー参加者たちが何人かやって来ていた。
 
 帰宅後、久しぶりに食べたパイン大福。パインの酸味と控えめな甘みのバランスが絶妙で、1日運転を続けた疲れを優しく癒やしてくれる味だった。食べたのは1つだけだったが、あと5個くらいは余裕で食べられそうな美味しさだった。

時間がない!

 シールの交換時間は午後3~4時半と決められている。その間に「竜王かがみの里」に到着できていなければ、この日に集めたスタンプも翌日扱いになってしまう。時計を見るともう午後3時半ごろ。あと1時間で東近江と近江八幡のスタンプを手に入れ、竜王に至らねばならない。
 
 次の目的地は東近江市の「世界凧博物館東近江大凧会館」。有名な百畳敷の大凧が展示されていることでも有名で、世界各地の凧を見学することもできる。赴任当時、この近くに住んでいたのもあり、取材でよく通った場所でもある。

節分にちなみ鬼をモチーフにした凧が展示されていた

 時間の兼ね合いもあり、急いで見学。スタンプを押してもらい、次の「安土城郭資料館」(近江八幡市)へ。渋滞につかまってしまうとタイムアップもありえる状況になってきたが、こんな時こそ安全運転をと心がけながらハンドルを握った。
 
 城郭資料館は、入館券が特別にビックリマン使用になっていてにっこり。使われているイラストはシールと同じだが、こういった特別なアイテムを入手できると訪れた思い出にもなり、より嬉しさが高まる。3枚並べるとラリー特別仕様の絵になる仕組みも良かった。ここも、急いで見学。ともに、またちゃんと時間を作って訪れたい所だった。

ビックリマン使用の安土城郭資料館の入館券
城郭資料館入館券の裏側はこんな感じ

初日は「ヘラクレオン」と「十字架天使」

 どうにかスタンプを4つ集め、急いでかがみの里へ。

 4時半ぎりぎりに到着し、どうにか交換場所に到着することができた。2人で集めたカードが2枚あるのでシールも2枚選ぶことができた。

 この日は、デザインがとても気に入った「ヘラクレオン氏郷&日野町」と「十字架天使&東近江市」を交換してもらった。ビックリマンチョコのシールよりは一回り大きめのシールで、専用の袋に入れてもらった。

この日に手に入れたシール

 念願のビックリマンシールを手に入れたぞ! と笑顔で帰路についた。シール4枚への感想などは、この連載の下にゆずることにしたい。


人見勅輔