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長野の醸造所の方々と

2022年7月26日

この日は午後から、長野県の合同庁舎というところで、県下のブルワリーの皆さん、農水省の皆さん、国税庁の皆さんに交じって、国産麦芽(モルト)の利用について意見交換をさせて頂きました。

どうにも殺風景な庁舎を見ると、ごくろうさまです、といつも思う

国からは、農水省の展開している補助事業の話、国税が推しているGI(産地呼称制度)や補助金の話。ブルワリーの皆さんからは、これまでの取り組みと、そこで感じた課題。こちらは米国事情などをお話ししました。

国税の方が、「長野はワインも日本酒もGIがあるんです!」と押して来られたのが可笑しかったですが、言われるようにビールはワインや清酒と違って、原料である麦を麦芽に加工する(製麦する)余分なステップが必要(コメだって酒蔵で麹に加工するステップを踏んでるわけですが、そこは措く)。

ビールやウィスキーをGIにしようと思えば、製麦する場がなければならない。これまでの皆さんの経験からは、原麦の安定供給体制の構築、できた麦芽の性能、そしてなにより価格が問題とされ、さらには製麦工場を建てるのに莫大な費用がかかる、と課題は明らか。日本の醸造シーンにおいてそれらを突破することで、大きな価値と可能性の扉が開くと篠田は信じているのですが、3年かかっても他人に分かってもらえていないわけで、なかなか難しい。

しかし、意見交換の中で農研機構品種である「小春二条」の麦芽(モルト)には特徴的なフレーバーがある、という情報を得られたのは収穫でした。そこが確かなら、日本にいくつかある、むしろ醸造用に磨き上げられていない品種(二条、六条とも)の麦芽に面白みがあるだろうと思っています。

現在契約栽培で大手ビール会社向けに作られている品種は、「きれいなピルスナーをいかに効率よく(=安価に)造るか」(←大事なことです)という一点に集中して品種改良を重ねてきたもの。そこには「味わい」や「品種による個性」といった発想はなかったといいます。
「小春二条」(農研機構 2009)

も、そうした品種の代表である名作「はるな二条」(サッポロビール 1981)の系譜を引くものですが、日本で最初に栽培された二条大麦品種の一つである「ゴールデンメロン」(1885頃)からの代が浅い(かけ合わせの数が少ない)ことが効いているのかもしれません。

今回は初回なので、顔合わせを主目的として散会しましたが、今後長野は「ビールもGI」を目指して動くのか。関係者の皆さんにもう一度ヤル気になっていただくにはどうすればいいのかなぁ?(ま、儲かるかだよな。)と考えながら帰りました。呼んでいただいてありがとうございました。深謝。